急増した昨年度の本邦FX取引とドル円相場への影響

外貨投資の視点
(No.214)
リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト 植野 大作
2015年4月15日
急増した昨年度の本邦FX取引とドル円相場への影響
ポイント
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2014年度の店頭外国為替保証金(FX)取引による売買金額は4707.8兆円と、2年度連続で過去最高を更新
所謂「アベノミクス効果」に加え、店頭FX業者間の商品開発競争による利便性向上が市場規模の拡大に寄与
2015年度のFX取引金額は、市場環境次第だが、最低でも年3600兆円程度を維持、為替市場に流動性を供与
本邦FX投資家層のドル円絡みのトレード嗜好からみて、当面は上値抑止力より下値サポート力が勝りそう
2014 年度の店頭外国為
替 保 証 金 ( FX ) 取 引 が
4707.8 兆円に増加、2 年
連続で過去最高を更新
本邦の外国為替保証金(FX)取引が歴史的な活況を呈している。金融先物取引業協
会が14日(火)に発表した「店頭FX月次速報」によれば、2015年3月の全通貨ペアの円建
て換算の取引金額は498.3兆円と、前月比+9.4%増加した(図1)。過去最高の取引金額
を記録した2015年1月の661兆8747億円に比べるとかなり見劣りするが、前年同月比では
+82.0%も増加しており、単月の店頭FX取引による売買高としては史上6番目の大きさと
なる。この結果、2014年度(2014年4月~2015年3月)の店頭FX売買金額は4707.8兆円と、
従来の過去最高記録だった2013年度の4191.3兆円を+12.3%も上回り、史上最高の売
買金額を2年連続で更新した。
図1:店頭外国為替保証金(FX)取引の月次取引高の推移
(兆円)
700
650
FXレバレッジ規制
600
(2010年8月、50倍上限)
550
500
450
FXレバレッジ規制
400
(2011年8月、25倍上限)
350
300
250
200
150
100
店頭FX月次取引金額
50
(折れ線は3ヶ月平均)
0
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
(兆円)
700
650
600
550
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
2015年
出所:金融先物取引業協会より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
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外貨投資の視点
今後、ドル円相場が思わ
ぬ調整局面を迎えた時の
FX 投資家の反応に注目
いずれにしろ、今後ドル円相場が「何らかの理由」で思わぬ調整局面を迎えたときの本
邦FX投資家層のリアクションは、当該時点における地合いの強度を試す試金石の一つと
なりそうだ。これまで同様、ドル円相場の差し込み局面でも基調的なドル買い・円売りポジ
ションを維持しつつ、逆張りの押し目買い発動による下値サポート力が健在なら、我々が
標榜している円安見通しの蓋然性を高める役割を果たすだろう。一方、これまでの経験
則では「逆張りのドル買いポジション」が積み上がりやすいはずの円高局面で本邦のFX
投資家層が何故か「ドン引き状態」になってほとんど動かなくなったり、「かなり異例の順
張りドル・ショート」を構築したりする姿が目撃された場合には、これまで相場の趨勢を支
配してきた「ドル円=右肩上がり」の長期トレンドが転換する予兆になる可能性もあるだろ
う。ドル円相場に深い利害関係を持ちながら日々の相場観察を余儀なくされている現在
の職責上、近年急速に売買高が膨張している本邦FX業界の動向は、必須のモニタリン
グ対象の一つとして成長し続けている。今後の動向を引き続き注視し、時宜に応じた情
報提供に努めたい。
(4月15日 10:00)
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