企業マインド悪化も景気底割れは回避へ - 三菱UFJモルガン・スタンレー

景気循環研究所レポート
企業マインド悪化も景気底割れは回避へ
2016 年 4 月 1 日
業況判断 DI は大企業・中
小企業ともに低下
企業マインドが大幅に悪化している。日本銀行が 4 月 1 日に発表した 3
月の「全国企業短期経済観測調査(短観)」によると、業況判断 DI は大企
業・中小企業ともに低下した(図 1、図 2)。大企業で 2 期連続、中小企業
では 6 期ぶりの業況悪化である。先行きについても、大企業・中小企業と
もに業況判断 DI の低下が続く見通しとなっている。
過去の景気後退局面と業
況判断 DI の関係
業況判断 DI の低下見通しが現実化した場合、大企業では同 DI の低下が
3 期連続となり、かつピークからの低下幅は 8 ポイントに達する。中小企
業についても、同 DI は 2 期連続の低下およびピークから 7 ポイントの低
下幅となる。いずれも、過去の景気後退局面とほぼ同程度の業況の悪化度
合いということになる。
緩和的な金融環境が景気
の底割れ回避に貢献
ただ 14 年には、中小企業の業況判断 DI が 2 期連続で低下し、かつピー
クから 7 ポイントの低下幅を記録したものの、景気は後退していない(図
1)。大企業についても、14 年における同 DI のピークからの低下幅は 8 ポ
イントと、16 年に見込まれる DI の低下幅と同水準だった。また 2007 年
には、大企業の業況判断 DI がピークを付けて 3 期連続で低下したが、景
気が実際にピークを付けたのは 08 年の 2 月である。08 年に金融機関の貸
出態度判断 DI(大企業)と業況判断 DI(同)が同時に急低下し、景気は
嶋中 雄二
景気循環研究所長
後退局面に転じた(図 2)。08 年に限らず、過去の多くの景気後退局面で、
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
の貸出態度判断 DI は、大企業・中小企業ともに上昇している。極めて緩
業況判断 DI と貸出態度判断 DI が同時に低下している。一方、16 年 3 月
和的な現在の金融環境が、景気の底割れ回避に大きく貢献している。
シニアエコノミスト
宮嵜
図 1. 14 年は企業マインド悪化も景気後退に至らず
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
40
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
20
福田
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
(DI、%ポイント)
マイナス金利
金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」-「厳しい」、中小企業)追加緩和
量的・質的
金融緩和
0
-20
先行き
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・
福田が執筆を担当しています。
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
-40
-60
業況判断DI(「良い」-「悪い」、中小企業)
-80
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年、四半期)
(注)シャドー部は景気後退局面(内閣府調べ)。
(資料)日銀「短観」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2016 年 4 月 1 日
借入金利水準判断 DI
金融機関が貸出態度を 16 年 3 月に一段と緩和させた背景には、日銀が 1 月
が急低下
29 日に導入を決定したマイナス金利政策がある。同政策の導入に伴い、金融
機関は貸出金利を大幅に引き下げた。その結果、日銀短観の借入金利水準判
断 DI は 16 年 3 月に急低下した(図 3)。金融機関は、マイナス金利政策に
よる貸出金利水準の低下を、貸出の残高を増やすことで補っている可能性が
高い。企業の資金調達コストが大幅に低下する中、今後は、金融機関の積極
的な貸出姿勢が、企業の設備投資や家計の住宅投資を促すとみられる。
図 2. 08 年は企業マインドと金融環境が急激に悪化
60
(DI、%ポイント)
金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」-「厳しい」、大企業)
40
20
0
先行き
-20
-40
-60
業況判断DI(「良い」-「悪い」、大企業)
-80
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年、四半期)
(注)シャドー部は景気後退局面(内閣府調べ)。
(資料)日銀「短観」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
図 3. マイナス金利政策で企業の借入金利が急低下
60
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
(DI、%ポイント)
借入金利水準判断DI(「上昇」-「低下」、中小企業)
先行き
借入金利水準判断DI(「上昇」-「低下」、大企業)
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年、四半期)
(注)シャドー部は景気後退局面(内閣府調べ)。
(資料)日銀「短観」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.4.1 宮嵜
浩)
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ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
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2016 年 4 月 1 日
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