外貨投資の視点 (No.194) - 三菱UFJ証券 - 三菱UFJフィナンシャル

外貨投資の視点
(No.194)
リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト 植野 大作
2014年12月19日
2014年のドル円相場を動かした人々=トップ10の発表
ポイント
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2014年のドル円相場は、序盤、中盤、終盤で激しく風景が変わる非常に難解な「アナリスト泣かせ」の1年に
今年のドル円相場を動かした人物ランキングの1位は黒田日銀総裁、以下、国内外に多彩な顔ぶれが並ぶ
日米金融政策の相違、為替需給の変化が思わぬ円安を惹起したが、原油価格の暴落が年末相場を攪乱
2014 年のドル円相場=
序盤は不気味な「陰線ス
タート」、中盤は異様なボ
ラ欠乏症の長患い
早いもので今年も為替営業日数で今日を含めてあと 9 日を残すのみとなった。ここで改
めて年初来のドル円相場を振り返ってみると、序盤、中盤、終盤と、相場の景色が激変す
る超難解な年だった。元日に 1 ドル=105 円 31 銭で始動した後、2 日高値の 105 円 44
銭をピークにいきなり急降下、1 月は非常に不気味な「陰線スタート」となった。2 月 4 日に
記録した 100 円 76 銭が結果的には今年の最安値となったが、その後のドル円相場は 101
円 00 銭前後の下値が異様に堅い一方、104 円 00 銭前後の上値も滅法重いレンジ取引
の呪縛にハマり、8 月中旬までの約半年間、上下に伸びた短いヒゲを駆り込むと、ほとんど
の時間帯を 101~103 円台の極小レンジで膠着した。深刻なボラ欠乏症が極まって仮死
状態に陥った 7 月には、市場の 1 ヶ月物予想変動率が一時 4.305%と過去最低水準に落
ち込んだが、今から思えばあの異様な低ボラ相場こそが「嵐の前の静けさ」だった。
2014 年のドル円相場=
晩秋から終盤にかけては
ドル高・円安の奔流が加
速、2007 年以来の高値圏
に吹き上がって乱高下
その後の展開は周知の通りだ。8 月中旬頃まで「死んだフリ」をしていたドル円相場だっ
たが、盆休み明けを境に米国景気回復期待への生体反応を徐々に強めると、その後は
一方的な上値探査を開始、10 月初旬には一時 110 円 09 銭界隈まで吹き上がった。想定
外のエボラ熱騒動が勃発すると一旦 105 円 20 銭台に急落する場面もあったが、この水準
では下値が堅く、10 月 29 日の米連邦公開市場員会(FOMC)での量的緩和打ち切り宣言
の翌日には 109 円台を回復した。晩秋以降は日本発の政策サプライズの独壇場となり、
10 月 31 日に集中した「日銀による異次元緩和の拡充」と「年金積立金管理運用独立行政
法人(GPIF)による外株投資の倍増計画」のほか、11 月に突如決まった「消費増税延期&
衆議院の解散騒動」などを受けてドル高・円安の奔流が加速、12 月 8 日には一時 121 円
85 銭と 7 年 5 か月ぶりの水準へ高騰した。年末を目前に原油価格が暴落、産油国市場の
混乱リスクが意識されると 115 円台に差し込む場面もあったが、油価急落にブレーキがか
かると 119 円 00 銭前後に買い戻され、現在は 120 円台手前で推移している(図 1)。
想定外のプライス・アクシ
ョンが頻発した 2014 年の
ドル円相場
恐らく断言して良いと思うが、今年年初の時点で「ドル円の 1 ヶ月物インプライド・ボラテ
ィリティーが夏場に 4%台前半の未体験ゾーンに落ち込む」などという事態を予見できた
人間は、世界中を探しても一人もいなかっただろう。「凪の後には時化がくる」のが相場の
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
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外貨投資の視点
難しい厄介なテーマだ。この先の原油価格の予測が非常に難しいこともあり、引き続き為
替予想のワイルド・カードになりそうだ。
今年のドル円相場を動か
した主要テーマは、「日米
金融政策の違い」と「為替
需給の構造変化」であり、
趨勢判断の軸足は来年も
動かさないことが肝要
以上、筆者が主観的に選んだ今年の「ドル円相場を動かした人物ランキング」だ。具体
的な順位の付け方などについては、諸々異論もあるだろうが、今年のドル円相場を動かし
た主要なテーマが、「日米金融政策の違い」と「為替需給の構造変化」であったことについ
ては、衆目の一致するところなのではなかろうか。新興国市場やコモディティー市場にお
けるボラアップ・イベントには引き続き要注意だが、この先いかなる攪乱要素がドル円市場
に飛び込んできた場合でも、最終的にはそれら不測のイベントによって日米の金融政策
運営や為替需給構造に甚大な影響が及ぶか否かが、趨勢判断の際の要諦になるだろう。
今後も様々な要素に目を配りつつ、時宜を得た予測判断および関連情報の提供に努め
たいと考えている。なお、我々の定点観測レポートによるドル円相場の見通し改定は、来
週金曜日に発行する予定である。
(12月19日 11:00)
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