景気循環研究所レポート 「原油安」が貿易収支の黒字化に貢献 2016 年 8 月 18 日 2 ヵ月連続の貿易黒字 貿易収支の黒字基調が定着しつつある。財務省が 18 日に発表した貿易 統計(7 月速報)によると、7 月の通関貿易収支は 5,135 億円となり、2 ヵ月連続の貿易黒字を計上した。 2011 年から始まった貿易収支の赤字基調は、15 年に入って赤字幅の縮 交易条件の改善が貿易収 支の黒字化に貢献 小が一気に進み、16 年の上期には 11 半期ぶりに貿易黒字に転じたが、月 次ベースでみると、貿易収支の黒字基調への転換は既に 15 年の暮れごろ から始まっている。季節調整値ベースでみた貿易収支は、直近 16 年 7 月 まで 9 ヵ月連続の黒字を記録した(図 1)。円高の進行もあって、輸出額 (季節調整値)、輸入額(同)ともに減少傾向が続いているが、原油の輸 入価格が下落している分、輸入額の落ち込みが相対的に大きくなり、貿易 収支の黒字転換に繋がった格好である(図 2) 。輸出価格と輸入価格の比 である交易条件指数(輸出価格指数÷輸入価格指数)は、原油価格の下落 がはじまった 14 年以降、急速に改善している(図 1)。 交易条件と企業収益の 関係 一方、円高や原油価格などの価格変動要因を除いた実質輸出および実質 輸入は、ともに横ばい圏の推移にとどまっている(図 3) 。現時点では、 実質輸出に国内景気をけん引する力強さは見受けられない。しかし、貿易 嶋中 雄二 景気循環研究所長 収支の黒字化をもたらした交易条件の改善は、変動費に関する企業の収益 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 はこれまでの交易条件の改善が、企業収益を押し上げる局面に入るとみら シニアエコノミスト 改善を通じて、実体経済に浸透しつつあるといえよう。 宮嵜 性の指標と位置付けられる。企業収益は足元で弱含んでいるものの、今後 れる(図 4) 。14 年から始まった「原油安」のプラス効果が、交易条件の 浩 図 1. 交易条件の改善が貿易収支の黒字化に貢献 シニアエコノミスト 03-6627-5132 40 (10年=100) (年率・兆円) miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 30 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。 交易条件(右目盛) 20 10 0 -10 -20 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 貿易収支(通関ベース、左目盛) -30 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (注)貿易収支は季節調整値。交易条件=輸出価格指数÷輸入価格指数。 (資料)財務省「貿易統計」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所作成 1 15 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 70 16 (年、月次) 2016 年 8 月 18 日 図 2.輸出入金額の推移 (兆円) 8.0 7.5 輸入金額(季節調整値) 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 輸出金額(同) 4.5 4.0 10 11 12 13 14 15 16 (年、月次) (資料)財務省「貿易統計」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 3. 実質ベースの輸出入動向 (10年=100) 125 実質輸入(通関ベース) 120 115 110 105 100 95 90 実質輸出(同) 85 10 11 12 13 14 15 16 (年、月次) (注)実質輸出(入)は貿易統計の輸出(入)額(季節調整値)を当研究所が 輸出(入)物価指数で実質化。 (資料)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」をもとに三菱UFJモル ガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 4. 交易条件は経常収支に 4 四半期先行する 60 (前年比、%) (前年比、%) 200 50 経常利益(右目盛) 150 40 交易条件(4四半期先行、左目盛) 30 100 20 50 10 0 0 -10 -50 -20 -30 -100 85 90 95 00 05 10 15 (年、四半期) (注1)交易条件=輸出物価指数÷輸入物価指数。直近は16年7月。 (注2)経常利益は全規模企業、金融保険業を除く全産業ベース。直近は16年1-3月期。 (資料)日本銀行「企業物価指数」、財務省「法人企業統計季報」をもとに三菱UFJモルガン・ スタンレー証券景気循環研究所作成 (以 上) みやざき ひろし (16.8.18 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 8 月 18 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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