好調な「サラリーマン世帯以外」の消費動向

景気循環研究所レポート
好調な「サラリーマン世帯以外」の消費動向
2016 年 8 月 30 日
7 月の勤労者世帯の実質
総務省が 30 日に発表した 7 月の家計調査報告(2 人以上の世帯)によ
消費支出は前年比 3.5%
ると、同月の 1 世帯当たり消費支出は、物価変動を除いた実質ベースで前
減少
年比 0.5%減少し、5 か月連続で前年同月を下回った。世帯主が雇用者で
ある勤労者世帯(サラリーマン世帯)の実質可処分所得が 2 ヵ月振りに減
少する中(前年比 0.4%減)、実質消費支出は所得以上の大幅な落ち込み
を記録している(同 3.5%減、図 1)
。7 月は完全失業率が約 21 年ぶりの
低水準となる 3.0%まで低下するなど、雇用情勢は順調に改善しつつある
ものの、勤労者世帯は依然として慎重な消費スタンスを崩していない。
「勤労者以外の世帯」の
一方、「勤労者以外の世帯」の消費は持ち直しの動きを強めている。7
実質消費支出は前年比
月の「勤労者以外の世帯」の実質消費支出は前年比 3.8%増加した。前年
3.8%増加
比の増加は 3 ヵ月連続であり、かつ 7 月の増加率は 6 月の 1.6%から拡大
している(図 1)。「勤労者以外の世帯」には、無職世帯のほかに個人経営
者、法人経営者、自由業者などの世帯が含まれるが、7 月の無職世帯の実
質消費支出が前年比 0.2%増だったことを踏まえると、無職世帯を除いた
中小企業経営者等の実質消費支出は、7 月に 4%を超える高い増加率を記
録した可能性がある。
嶋中 雄二
景気循環研究所長
過去をみると、「勤労者以外の世帯」の消費動向は、中小企業・建設業
の景況に大きく左右されるケースが多い。中小企業全体に占める建設業の
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
割合が高く、かつ建設業の景況が政府の経済政策の影響を受けやすいため
シニアエコノミスト
し DI・建設関連をみると、同 DI が「勤労者以外の世帯」の実質消費支出
宮嵜
にやや先行して推移している様子が見て取れる(図 1)。
浩
シニアエコノミスト
03-6627-5132
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
とみられる。実際、日本政策金融公庫「中小企業景況調査」の売上げ見通
図 1. 実質消費支出と中小企業売上げ見通し DI・建設関連の推移
(「増加」-「減少」)
(前年比、%)
12
福田
1世帯当たり実質消費支出・勤労者以外の世帯(左目盛)
8
圭亮
シニアエコノミスト
03-6627-5133
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
4
0
-4
-8
同・勤労者世帯(左目盛)
-12
-16
-20
景気循環研究所
東京都千代田区大手町 1-9-2
大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ
-24
中小企業売上見通しDI・建設関連(右目盛)
-28
13
14
15
(注)実質消費支出は2人以上の世帯。
(資料)総務省「家計調査報告」、日本政策金融公庫「中小企業景況調査」
をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
16 (年、月次)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
2016 年 8 月 30 日
経済対策が「勤労者
建設関連に限らず、中小企業の景況感は全体として持ち直しつつある(図
以外の世帯」の消費
2)。今後は、政府が 8 月 2 日に閣議決定した総事業規模 28 兆円超の経済対
回復の追い風に
策の実施に伴い、中小企業の景況感は一段と改善するとみられる。景況回復
の裾野の広がりが見込まれる中、「勤労者以外の世帯」の実質消費支出は、
引き続き好調を維持しよう。
「共働き世帯」の増
一方、勤労者世帯の消費動向についても、1 世帯当たりの有業人員が反転・
加と勤労者世帯消費
増加の動きを示しており、雇用情勢の改善が実質消費支出の持ち直しに繋が
の関係
る可能性が示唆されている(図 3)。今後は、政府・与党が配偶者控除の見
直しをはじめとした労働市場改革を推進し、「共働き世帯」等の増加が見込
まれる中で、勤労者世帯の所得および消費支出は持ち直しの動きに転じると
みられる。
図 2. 中小企業・売上げ DI および売上げ見通し DI の推移
40
(「増加」-「減少」)
中小企業・売上げ見通しDI
30
20
10
0
-10
-20
同・売上げDI
-30
-40
-50
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
16
(年、月次)
(注)シャドー部は景気後退局面(内閣府調べ)。
(資料)日本政策金融公庫「中小企業景況調査」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
図 3. 「共働き世帯」の増加が勤労者世帯の消費支出を促す
(前年差、%ポイント)
(前年比、%)
4
18
有業者2人世帯の割合(左目盛)
3
12
2
6
1
0
0
-1
-6
-2
-12
-3
1世帯当たり実質消費支出・勤労者世帯(右目盛)
-18
16(年、月次)
-4
10
11
12
13
14
15
(注)2人以上の世帯。
(資料)総務省「家計調査報告」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.8.30 宮嵜
浩)
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
2
2016 年 8 月 30 日
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