景気循環研究所レポート 輸出回復の裾野が広がる 2016 年 4 月 20 日 輸出は 1-3 月期の実質成 長率の押し上げ要因に 輸出が順調に回復している。財務省が 20 日に発表した貿易統計(3 月 速報)によると、16 年 1-3 月期の実質輸出(輸出金額の季節調整値÷輸 出物価指数)は前期比 0.9%上昇した。実質輸出の前期比上昇は 3 四半期 連続となる(図 1)。実質輸出は GDP 統計の財輸出(実質ベース)との連 動性が高く、5 月 18 日に発表される 1-3 月期の GDP 統計・1 次速報でも、 輸出が実質 GDP 成長率の押し上げ要因になるとみられる。もっとも、GDP の控除項目である輸入が 1-3 月期に急増したため、純輸出(輸出-輸入) は 1-3 月期の実質 GDP 成長率を下押しした可能性がある。 国・地域別の輸出数量指数(当研究所季節調整値)をみると、1-3 月期 対 EU 輸出が好調も、対中 国は足元でやや弱含む は対 EU 輸出数量が前期比 7.1%上昇と大幅に伸びた半面、対中国は同 1.1%上昇と相対的に低い伸び率にとどまった。月次ベースでみると、対 中国輸出数量は直近 3 月まで 2 ヵ月連続の前月比低下となっている(図 2)。しかし、対中国輸出数量の低下は一時的にとどまる可能性が高い。 中国の住宅販売と日本の 対中国輸出数量の関係 中国人民銀行の追加金融緩和が奏効して、中国の不動産市場は回復の動 きを強めている。直近 16 年 3 月の中国の住宅販売床面積は、 前年比 35.6% 増加した(図 3)。過去をみると、中国の住宅販売床面積が増加に転じる と、日本の対中国輸出数量が、6 ヵ月程度のタイムラグを経て持ち直すケ 嶋中 雄二 景気循環研究所長 ースが多い(図 4)。今後は住宅購入に伴う耐久消費財の買い替え需要の 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 製品の需要が高まり、対中国輸出数量が押し上げられる可能性が高い。 増加や、保有住宅価格の上昇による資産効果によって、中国における日本 図 1. 実質輸出入と実質 GDP 外需寄与度の推移 シニアエコノミスト 宮嵜 浩 シニアエコノミスト 03-6213-6573 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6213-2608 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・ 福田が執筆を担当しています。 景気循環研究所 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 70 (10年=100) 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 (%ポイント) 1.5 予測 1.0 実質輸出(左目盛) 0.5 0.0 -0.5 実質GDPの外需寄与度(右目盛) -1.0 -1.5 12 13 14 15 16 実質輸入(左目盛) 10 11 (年、四半期) (注)実質輸出入は輸出入金額(財務省季節調整値)を輸出入物価指数で 除して算出しているため、日本銀行算出の実質輸出入指数とは一致しない。 (資料)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」、内閣府「四半期別GDP統計」 をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 4 月 20 日 図 2. 国・地域別の輸出数量指数の推移 (10年=100) 130 対アメリカ 120 110 100 対EU 90 80 70 対中国 60 10 11 12 13 14 15 16 (年、月次) (注)当研究所季節調整値。 (資料)財務省「貿易統計(速報)」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所作成 (前年比、%) 図 3. 中国の住宅販売とマネーサプライ、マネタリーベースの推移 ① 180 ② 45 中国のマネタリーベース (準備率調整後、右目盛②) 150 40 3月 120 (前年比、%) 7.6 90 35 30 60 25 中国の住宅販売床面積 (左目盛) 30 35 30 25 20 15 10 5 0 20 0 15 -30 10 中国のマネーサプライ(M2、右目盛①) -60 5 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年、月次) (注1)中国の住宅販売床面積は前年比変動率の3ヵ月中央移動平均値。 (注2)マネタリーベースは、リザーブマネー(通貨発行高+中銀当座預金残高)。預金準備率調整は当研究所 による。01年9月と同11月の通貨発行高は前年比変動率の線形補間をもとに推計。 (資料)中国人民銀行、中国国家統計局、IMFをもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所作成 図 4. 中国の住宅販売と日本の対中国輸出数量の関係 (前年比、%) (前年比、%) 120 100 80 60 40 20 0 -20 -40 -60 -80 150 125 100 75 50 25 0 -25 -50 -75 -100 中国の住宅販売床面積(6ヵ月先行、右目盛) 日本の対中国輸出数量(左目盛) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年、月次) (資料)財務省「貿易統計」、中国国家統計局資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー 証券景気循環研究所作成 (以 上) みやざき ひろし (16.4.20 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 4 月 20 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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