マイナス金利でも期待インフレ率は低下 - 三菱UFJモルガン・スタンレー

景気循環研究所レポート
マイナス金利でも期待インフレ率は低下
2016 年 4 月 11 日
先行きの物価「上がる」
との回答割合が低下
消費者の期待インフレ率が下げ止まらない。日本銀行が 11 日に発表し
た「生活意識に関するアンケート調査」(16 年 3 月調査)によると、1 年
後の物価について「上がる」(「かなり上がる」と「少し上がる」の合計)
と予想した回答割合は 75.7%となり、前回 15 月 12 月調査(77.6%)に
比べ、1.9%ポイント低下した。同じく 5 年後の物価についても、「上がる」
回答割合は 12 月調査の 80.1%よりも 0.1%ポイント低い 80.0%だった。
日銀は 1 月 29 日にマイナス金利政策を導入したにもかかわらず、期待イ
ンフレ率の低下には歯止めがかからなかった。
日銀は、同調査の結果をもとに、独自に「家計の予想物価上昇率(期待
期待インフレ率は短期
0.44%、長期 0.72%
インフレ率)
」を推計している。当研究所が日銀の推計手法をもとに算出
した 16 年 3 月の期待インフレ率は、短期(今後 1 年間)で 0.44%、長期
(今後 5 年間)では 0.72%となった(図 1)。
家計・企業ともに期待イ
ンフレ率が低下
期待インフレ率は、短期・長期とも、前回 12 月調査の水準を下回った
が、特に長期については、13 年 4 月の量的・質的金融緩和の導入直前の
水準を大幅に下回っている。先般発表された日銀「短観」(16 年 3 月調査)
でも、企業の期待インフレ率(5 年後)は、前回 12 月調査に比べ 0.2%ポ
嶋中 雄二
景気循環研究所長
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
宮嵜
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
福田
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・
福田が執筆を担当しています。
イント低い 1.2%となっている。企業および家計のデフレマインドの転換
が遅れるリスクは、一段と増大している。
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
図 1. 家計と企業の期待インフレ率
(%)
企業の期待インフレ率(5年後)
消費者の
期待インフレ率
今後5年間
0.72
0.44
量 的・質 的
金 融緩和
追 加緩和
マイナス金利
消費者の期待インフレ率・今後1年間
10
三菱ビルヂング
13年3月
0.96
0.42
11
12
13
14
15
16
( 年、四 半期)
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
16年3月
1.2
(注)消費者の期待インフレ率は修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。
(資料)日本銀行「短観」「生活意識に関するアンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・
スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2016 年 4 月 11 日
期待インフレ率と個
人消費の関係
16 年 3 月の家計の期待インフレ率は、「長期」の低下幅が「短期」を若干
上回っている。過去をみると、長期の期待インフレ率の低下幅が相対的に大
きい局面が続くと、消費者心理が徐々に悪化し、最終的に個人消費が停滞す
るケースが多い(図 2)。長期の期待インフレ率が低下する局面では、自動
車や住宅などの高額品の購入を先送りする動きが強まり、それが先行きの景
気下押し圧力となって、消費者心理を冷え込ませると考えられる。
日銀はマイナス金利
個人消費の先行き不透明感が根強い中、日銀は長期の期待インフレ率を押
ではなく、量的・質
し上げるべく、追加の金融緩和に踏み切る可能性が高い。ただし、追加緩和
的金融緩和の拡充へ
の手段としては、現時点では期待インフレ率の明確な押し上げに繋がってい
ないマイナス金利よりも、国債買入額の増額や買入対象資産の拡大(地方債、
政府関係機関債など)といった「量的・質的金融緩和」の拡大が、より有力
な選択肢になるとみられる。
図 2. 期待インフレ率の長短スプレッドは個人消費の停滞を示唆
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
(%)
07
(前年比、%)
期待インフレ率
「今後5年間」-「今後1年間」
(3期先行、四半期、左目盛)
08
09
10
11
12
個人消費(月次、右目盛)
13
14
15
16
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
(年)
(注1)個人消費は消費総合指数。
(注2)期待インフレ率は修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」、内閣府資料をもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.4.11 宮嵜
浩)
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2016 年 4 月 11 日
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