経済対策が消費回復の追い風に - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

「平成 28 年熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げ
ますとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を祈念いたします。」
景気循環研究所レポート
経済対策が消費回復の追い風に
2016 年 5 月 31 日
実質消費支出は 3 ヵ月連
続の前月比増加
個人消費の落ち込みに歯止めがかかりつつある。総務省が 31 日発表し
た 4 月の「家計調査報告」によると、家計の 1 世帯当たり実質消費支出は
前年比 0.4%減少したが、減少幅は 3 月の 5.3%から大幅に縮小した(図
1)。季節調整済みの前月比でみると、4 月(前月比 0.2%増)は 3 ヵ月連
続の増加となっている。
勤労者の収入増加が続く
一方、4 月の勤労者世帯の実収入は、実質ベースで前年比 1.0%増加し
た。前年比の増加は 2 ヵ月連続であり、かつ増加率は 3 月の 0.3%から拡
大している。勤労者収入の内訳をみると、4 月は「世帯主」の実質収入が
9 ヵ月振りの前年比増加となった(前年比 3.3%増)。一方、
「世帯主の配
偶者」の実質収入は引き続き好調で、4 ヵ月連続の前年比増加となってい
る(同 2.0%増)。「他の世帯員」も前年比 2.3%増加した。
公共投資の増加が消費の
回復を後押し
一般に、1 世帯当たり実質消費支出の短期的な変動は、世帯主以外の就
業者数(有業者数)の増減に左右される傾向がある。近年では、大規模な
経済対策の実施が、世帯主以外の世帯構成員の就業増加を通じて、1 世帯
当たり実質消費支出を押し上げるケースが多い。過去を見ると、公共投資
の先行指標である公共工事請負金額は、1 世帯当たり実質消費支出に先行
嶋中 雄二
景気循環研究所長
して動いている(図 1)
。直近 16 年 4 月の公共工事請負金額は、15 年度補
正予算の執行もあって、前年比 10.6%増加した。今後は平成 28 年熊本地
震の復旧・復興事業もあり、公共投資の一段の増加が 1 世帯当たり実質消
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
費支出を押し上げる展開が予想される。
シニアエコノミスト
宮嵜
浩
図 1. 公共投資が家計消費を押し上げる
8
シニアエコノミスト
03-6627-5132
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
(前年比、%)
6
(前年比、%)
30
公共工事請負金額(右目盛)
4
20
2
福田
圭亮
0
シニアエコノミスト
03-6627-5133
-2
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
-4
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
-6
景気循環研究所
東京都千代田区大手町 1-9-2
大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ
40
10
0
-10
-20
1世帯当たり実質消費支出(左目盛)
-30
-8
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年、四半期)
(注1)実質消費支出は2人以上の世帯、月次前年比の単純平均、直近は16年4月。
(注2)公共工事請負金額の直近は16年4月。
(資料)総務省「家計調査」、保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」を
もとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2016 年 5 月 31 日
なお、個人消費の下押し要因となっていた平均消費性向は、4 月に 2.7%ポ
消費性向の動向
イント上昇して 74.2%となった(勤労者世帯、季節調整値)。4 月は名目消
費支出が前月比で大きく伸びた一方で(前月比 3.6%増)、名目可処分所得は
3 月に急増(同 3.6%増)した反動から小幅減となっている(同 0.2%減)。
3 月の所得増加の影響が 4 月の消費に後ずれした格好である。
一般に、株高や円安といった金融環境の改善は、資産効果を通じて家計の
追加緩和は家計の消
消費性向を高めるケースが多い。特に 12 年から 13 年にかけては、マネタリ
費性向を押し上げる
ーベースの急増に象徴される日本銀行の積極的な金融緩和が、株高や円安の
進行を通じて、消費性向を大きく押し上げた可能性がある(図 2)。一方、
日銀は 16 年 1 月にマイナス金利の導入を決定したが、金融緩和の量的な拡大
を伴っていないこともあり、マネタリーベースは依然として減速している。
日銀によるマネタリーベースの増額を伴った追加緩和の実施は、消費性向の
押し上げを通じて、個人消費の一段の底上げに繋がるとみられる。
図 2. 金融政策と家計の消費性向の関係
82
80
(前年比、%)
(%)
80
マネタリーベース(月次、右目盛)
60
78
40
76
20
74
0
72
70
平均消費性向(四半期、左目盛)
-20
-40
68
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(注1)平均消費性向は季節調整値(勤労者世帯、農林漁家を含む)。
(年)
(注2)マネタリーベースは準備率調整後。
(資料)総務省「家計調査報告」、日本銀行「マネタリーベース」をもとに三菱UFJモルガン・
スタンレー証券景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.5.31 宮嵜
浩)
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
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2
2016 年 5 月 31 日
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