期待インフレ率は「物価の基調」の下振れを示唆

景気循環研究所レポート
期待インフレ率は「物価の基調」の下振れを示唆
2016 年 7 月 12 日
日銀「生活意識に関する
日本銀行が 12 日に発表した「生活意識に関するアンケート調査」(6 月
アンケート調査」の物価
調査)によると、1 年後の物価が「上がる」(「かなり上がる」と「少し
予想
上がる」の合計)と予想した回答割合は 72.4%となり、前回 3 月調査
(75.7%)に比べ、3.3%ポイント低下した。一方、5 年後の物価につい
ては、「上がる」回答割合が 3 月調査の 80.0%よりも 3.6%ポイント高い
83.6%だった。
1 年後の期待インフレ率
は低下、5 年後は上昇
同調査の結果をもとに、当研究所が「家計の予想物価上昇率(期待イン
フレ率)」の推計値を算出したところ、16 年 6 月の期待インフレ率は、短
期(今後 1 年間)で 0.32%、長期(今後 5 年間)では 1.02%となった。3
月調査に比べ、短期の期待インフレ率が 0.12%ポイント低下したのに対
し、長期の期待インフレ率は 0.30%ポイント上昇している(図 1・2)。
日銀版コアコア CPI の下
振れを示唆
短期の期待インフレ率は、日銀が物価の基調判断において重視している
消費者物価指数(生鮮食品・エネルギーを除く総合=日銀版コアコア CPI)
の前年比に対し、先行して動く傾向がある(図 1)。今年 1 月以降、日銀
版コアコア CPI の前年比上昇率は縮小傾向を辿っているが、短期の期待イ
嶋中 雄二
景気循環研究所長
ンフレ率から判断すると、日銀版コアコア CPI の上昇幅は、今後一段と縮
小する可能性が高い。日銀は、7 月 28~29 日に開催される金融政策決定
会合において、物価の基調判断を下方修正すると同時に、追加の金融緩和
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
宮嵜
に踏み切るとみられる。
図 1. 期待インフレ率(1 年後)は日銀版コアコア CPI に先行する
浩
シニアエコノミスト
03-6627-5132
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
2.4
(前年比、%)
(前年比、%)
1.8
圭亮
シニアエコノミスト
03-6627-5133
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
景気循環研究所
東京都千代田区大手町 1-9-2
大手町フィナンシャルシティ
0.9
期待インフレ率(今後1年間)
(四半期、右目盛)
1.2
福田
1.2
0.6
0.6
0.3
0.0
0.0
-0.6
-0.3
-0.6
-1.2
消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)
(月次、左目盛)
-1.8
-0.9
-1.2
-2.4
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)期待インフレ率は修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー、10年以前は05年基準、
11年以降は10年基準)は日銀算出。
(資料)総務省「消費者物価指数」、日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
グランキューブ
1
2016 年 7 月 12 日
政府・日銀の政策変
一方、今回の長期的な期待インフレ率の上昇幅(0.30%ポイント)は、米
更が長期の期待イン
国連邦準備制度理事会(FRB)が量的金融緩和の縮小を決定し、円安が急速に
フレ率を押し上げた
進行した 13 年 12 月(0.32%ポイント)や、日銀が 2%の「物価安定の目標」
可能性
を導入した 13 年 3 月(0.39%ポイント)に匹敵する大きさである(図 2)。
今回の 6 月調査においても、その 1 ヵ月前に、安倍首相が消費税率引き上げ
時期の延期を決定している。いずれも政府・日銀による経済政策の大幅な変
更が、長期の期待インフレ率に大きな影響を及ぼした可能性を示唆している。
個人消費回復の環境
が徐々に整う
長期の期待インフレ率が上昇する局面では、自動車や住宅などの高額品の
購入前倒し意欲が強まるとみられる。一方、短期の期待インフレ率の低下は、
家計の実質購買力の向上を通じて、個人消費を刺激しよう。過去をみると、
期待インフレ率の長期・短期の差が拡大する局面が続くと、消費者心理が徐々
に改善し、最終的に個人消費が拡大するケースが多い(図 3)。日銀の追加
緩和観測も加わって、個人消費回復の環境は整いつつあるといえよう。
図 2. 長期と短期の期待インフレ率
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
(%)
13年3月
0.96
期待インフレ率
今後5年間
16年6月
1.02
0.42
量 的・質 的
金 融緩和
0.32
マイナス金利
追 加緩和
同・今後1年間
10
11
12
13
14
15
16
( 年、四 半期)
(注)修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・
スタンレー証券景気循環研究所作成
図 3. 期待インフレ率と個人消費の関係
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
(%)
07
(前年比、%)
期待インフレ率
「今後5年間」-「今後1年間」
(3期先行、四半期、左目盛)
08
09
10
11
12
個人消費(月次、右目盛)
13
14
15
16
(注1)個人消費は消費総合指数。
(注2)期待インフレ率は修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」、内閣府資料をもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
17
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
(年)
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.7.12 宮嵜
浩)
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2
2016 年 7 月 12 日
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