米国在庫増 - 日本総研

No.2015-032
2015年3月18日
≪藤井英彦の
藤井英彦の視点≫
視点≫
http://www.jri.co.jp
原油下落
~ 米国在庫増 ~
(1)原油価格が再び軟調。主因は需給緩和。OPEC各国の産油量を紛争激化のイラクを除いて
みると、総じて横這い(図表1)。減産の兆しなし。原油価格が1バレル100ドルを割り込んだ
昨年8月対比でみると、アンゴラ、とりわけUAEが昨年9~11月の減産姿勢を転換。昨年12月
から本年2月まで月を追って産油量増。盟主サウジは総じて増産。昨年9月から本年2月まで6ヵ
月連続減産はカタールとアルジェリアのみ。アルジェリアとリビアの減産は情勢流動化に起因。
(2)米国エネルギー省の短期エネルギー見通しによると、本年半ば、とりわけ5月にかけて世界の
原油需給は一段と緩和に向かう見通し(図表2)。原油価格が1バレル60ドルを割り込み、米国
リグ数の減勢が加速した昨年12月の見通しから最新3月版まで各月見通しを対比すると、総じて
月を追って産油量が上方修正。2015年全体の産油量は、3月見通しで2月対比日量408万バレルの
上方修正。国別にはアゼルバイジャンの同135万バレルが最大。次いでブラジル同118万バレル、
米国同106万バレル、カザフスタン同76万バレル。米国では、本年初来、原油在庫が大幅に増加
(図表3)。リグ数は大幅減ながら、在庫増から推せば、原油生産は一段と増勢加速の模様。
(3)3月4日、米国エネルギー省が在庫増の結果、本年2月20日時点で貯蔵施設稼働率が昨年同期の
48%から60%に上昇とレポート。とりわけ実物のWTI取引の中心地オクラホマ州クッシング
が注目。昨年9月末と本年2月20日を対比すると、同地の貯蔵施設稼働率は25%から67%に上昇
(図表4)。貯蔵容量がほぼ横這う一方、原油在庫が昨年11月から大幅増。直近値3月第1週は
5,154万バレル。2月20日の貯蔵容量は7,100万バレル。貯蔵容量横這い、在庫増は本年入り後の
1ヵ月1千万バレル増のペース持続とすると、今後2ヵ月で容量オーバーとなる計算。貯蔵余力の
ある他エリアに振り向けるなど対応の余地はあるものの、OPECに減産の兆しなく、米国を
はじめ世界的に増産傾向が強まるなか、貯蔵容量制約から価格下落圧力が強まる展開が視野。
(図表1)OPEC各国の産油量(除くイラク)
(図表2)世界の産油量と原油消費量(2015年)
2015年2月(左目盛)
(万バレル/日)
60
14年9月(14年8月差、右目盛)
14年10月(〃、〃)
14年11月(〃、〃)
48
14年12月(〃、〃)
15年1月(〃、〃)
36
15年2月(〃、〃)
(百万バレル/日)
10
8
6
20
総産油量-総消費量(14年12月推計、左目盛)
〃(2015年1月推計、〃)
〃(2015年2月推計、〃)
〃(2015年3月推計、〃)
総産油量(2015年3月推計、右目盛) (百万バレル/日)
95
総消費量(〃、〃)
(10万バレル/日)
4
24
15
94
2
12
10
93
0
0
5
92
0
91
-2
▲12
-4
▲24
▲5
90
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(出所) OPEC
(出所) US EIA
(図表3)米国原油在庫(除く戦略備蓄)
(注) EIA推計。
(月)
(図表4)オクラホマ州クッシング原油在庫、在庫可能量
60(百万バレル)
45 90
75
(%)
稼働率(左目盛)
在庫可能量(右目盛)
在庫量(〃)
(千万バレル)
55
43 80
オクラホマ州クッシング(左目盛)
全米(右目盛)
50
(百万バレル)
65
70
41
55
45
60
40
39
35
37
50
45
40
35
30
35
30
25
25
33 20
20
0
31 10
15
11
12
(出所) US EIA
13
14
15
(年/月/週)
15
2011
12
13
14
15
(出所)US EIA (注)各年3月末、9月末。15年のみ2月20日。(年/半期)
【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373)
≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。