パキスタン生産増-利下げ余地(PDF:233KB)

No.2015-039
2015年4月3日
≪藤井英彦の
藤井英彦の視点≫
視点≫
http://www.jri.co.jp
パキスタン生産増
~ 利下げ余地 ~
(1)パキスタン経済が昨夏来、持ち直し。鉱工業生産は昨年7月を底に8月から増勢(図表1)。
ラマダン明けの連休が2013年の8月から14年は7月となり季節調整に歪み。8、9月は反動増も。
10月マイナスの後、11月から再び増加。しかし輸出金額は昨年12月から、輸入金額は昨年9月
からほぼ月を追って減少。直近の本年2月について前年差をみると、輸入金額が全体で▲2.7
億ドル減るなか、原油▲1.5億ドル、石油製品▲3.9億ドルで合計▲5.4億ドル。原油関連以外
ではスマホやタブレットの通信機器、自動車など輸送用機械、鉄鋼や肥料など、幅広い品目
で増加。輸出は全体で▲2.8億ドル減るなか、ナフサなど石油製品▲0.3億ドル、肥料や医薬
品を除いた化学製品▲0.6億ドルと、原油関連で合計▲0.9億ドルのマイナス。加えてコメが
▲0.7億ドル、綿布▲0.4億ドル。これら4品目で▲2.0億ドルと輸出金額減少の大半。総じて
みれば原油安に伴う輸出入金額減。景況悪化を懸念する必要小。
(2)昨夏来の生産増を主要品目別にみると、とりわけ自動車と自転車が際立って増加(図表2)。
セメントやテレビも増加。投資や消費の盛り上がりが窺われる展開。そこで、自動車市場の
動向をみると、生産台数、販売台数とも昨年7月大幅減に陥ったものの、8月一転して大幅増
(図表3)。しかし生産台数は本年入り後、弱含み。一方、販売台数は本年に入り増勢加速。
期待を下回る販売で本年入り後、メーカーは生産を抑制。しかし本年入り後の大幅な販売増
から推せば、今後、生産増に転じる可能性大。
(3)加えて利下げ(図表4)。原油安に伴うインフレ圧力後退で政策金利が昨年11月引き下げ。
本年3月、消費者物価が前年比2.5%となるなか、1月に続き3月21日、3度目の利下げで8.0%。
05年3月以来の水準。さらに今後、物価横這いとすれば本年央前年比マイナス。一段の利下げ
余地。底堅い内外需に利下げの効果が上乗せされ、同国経済は実質4%台の成長持続の公算大。
(図表1)パキスタンの鉱工業生産と輸出入(季調済)
150
(2013年=100)
(図表2)主要品目別工業生産(季調済)
121
24
118
(ポイント)
輸入金額(左目盛)
輸出金額(左目盛)
鉱工業生産(右目盛)
140
130
114
18
112
107
(2013年=100)
120
100
110
93
100
86
90
79
80
12
106
6
100
0
94
▲6
88
72
2012
13
14
(出所) Pakistan Bureau of Statistics など
15
(年/月)
(出所) PBS
(図表3)二輪車と自動車の生産・販売台数(季調済年率)
(図表4)政策金利と消費者物価
20 16
85
増減(①-②、左目盛) (2014年
2014年4~6月(右目盛)
=100)
2014年7~9月(②、〃)
2014年10~12月(①、〃)
(万台)
(%)
18
81
14
(2013年
=100)
12
16
110
政策金利(レポ金利、左目盛)
消費者物価(前年比、左目盛)
消費者物価(右目盛)
(万台)
100
10
77
14 8
73
12
2
8
14
80
10
65
2013
6
4
二輪車生産台数(左目盛)
二輪車販売台数(左目盛)
自動車生産台数(右目盛)
自動車販売台数(右目盛)
69
90
15
(出所) Pakistan Automotive Manufacturers Association (年/月)
0
70
2010
11
12
13
14
15
(出所)Pakistan Bureau of Statistics、State Bank of Pakistan (年/月)
【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373)
≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。