米国住宅変調-値上がり期待後退と木材価格下落(PDF;pdf

No.2015-036
2015年3月27日
≪藤井英彦の
藤井英彦の視点≫
視点≫
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米国住宅変調
~ 値上がり期待後退と木材価格下落 ~
(1)米国住宅着工戸数が大幅減(図表1)。季調済年率ベースで本年1月の108.1万戸から2月、
89.7万戸。前月差▲18.4万戸。サブプライムショックで急減した2007年1月以来の大幅減少。
もっとも、13年11月の110.5万戸以降、毎月増減を繰り返し、一進一退。完工件数は本年1月
の98.6万戸から2月85.0万戸と前月差▲13.6万戸と大幅減。一方、建設許可件数は本年2月、
前月差3.2万戸増。さらに販売戸数は引き続き増勢。今後の行方をどのようにみるべきか。
(2)取引規模で新築市場を凌駕する中古住宅市場をみると、販売戸数が昨年10月の516万戸をピ
ークに本年2月488万戸に減少(図表2)。全米を4エリアに大別してみると中西部は昨年9月、
西部は昨年10月、北東部は昨年11月から減勢。中古市場を支えてきた南部も昨年12月をピー
クに本年1月マイナス。4エリアとも減勢に。
(3)中古住宅を含め、このところの住宅需要増は値上がり期待が牽引役の一つ。そこで住宅の
販売価格をみると、まず中古住宅では、昨年半ばから上昇ペースが次第に鈍化(図表3)。
本年1月は前年同月比+5.4%、前月比+0.2%。新築住宅では昨秋大幅に上昇したものの、11月
から一進一退。本年1月は前年同月比+3.3%、前月比▲8.0%。
(4)米国では木造住宅が中心。そのため木材価格が住宅着工戸数と相関(図表4)。もっとも、
13年末以降、相関に崩れ。主因は金利先高観。QE終了から利上げが視野に入るなか、駆け
込み需要発生の模様。木材価格は本年2月半ばから下落傾向が加速。3月中旬、12年3月以来の
水準へ下落。近年の木材価格と住宅着工戸数の関係に照らせば、直近の木材価格は70万戸台
前半の住宅着工戸数の水準。値上がり期待の後退や木材価格の下落から推せば、住宅建設の
力強い回復は少なくとも当面、期待薄。
(図表1)米国の住宅建設・販売戸数(季調済年率)
113
(図表2)中古住宅販売戸数(季調済年率)
54 24
(万戸)
(万戸)
50
102
20
46
55
(10万戸)
全米(右目盛)
北東部(左目盛)
中西部(左目盛)
南部(左目盛)
西部(左目盛)
(10万戸)
51
91
42
16
47
12
43
8
39
80
38
69
34
建設許可件数(左目盛)
着工戸数(左目盛)
完工戸数(左目盛)
販売戸数(右目盛)
58
30
47
26 4
2011
12
13
14
15
(出所) USDC
35
0
2011
(年/月)
12
13
14
15
(出所) NAR
(図表3)中古・新築別住宅販売価格
(年/月)
(図表4)住宅着工戸数と木材価格
45
180
(千ドル)
(万ドル)
115
(10ドル/mbf)
(万戸)
38
中古(左目盛)
新築(右目盛)
175
105
木材価格(左目盛)
着工戸数(右目盛)
36 40
95
34 35
170
85
32
30
165
75
30
25
160
65
28
155
26
150
20
55
24 15
2011
12
(出所)USDCなど
13
14
15
(年/月)
45
2009
10
11
12
13
14
15
(年/月)
(出所)USDCなど (注)右端は15年初から旬次。 (年/月/旬)
【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373)
≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。