地域・中小企業研究所 SHINKIN CENTRAL BANK ニュース&トピックス No.28-30 (2016.6.30) 〒103-0028 東京都中央区八重洲 1-3-7 TEL.03-5202-7671 FAX.03-3278-7048 URL http://www.scbri.jp e-mail : [email protected] 中国の消費を支えるネット通販 黒岩 達也 ポイント 15 年のインターネット通販は 3.9 兆元(約 72 兆円)となり、中国の個人消費のリード役となっている。 高成長の背景にはスマホの急速な普及があり、アパレル関連を中心に拡大を続けている。 中国のネット通販市場に参入する機会は開かれており、大きな障害は存在しない。 1.はじめに 16 年1~3月の中国の実質GDP成長率は 6.7%となり、15 年の 6.9%から一段と低下し た。投資の減速と輸出の不調が要因だが、その 一方で、最終消費の寄与率は 15 年が 60.9%、 (図表1)中国のネット通販の規模 (億元) 45,000 40,000 15,000 10.2%増と、2ケタの伸びを維持している。 2.中国のネット通販市場は 72 兆円規模 なかでも、インターネットを通じた物品・サ ービスの購入(ネット通販)の好調さは際立っ ており、消費のリード役となっている。 中国のネット通販(BtoC)は、この数年、ス 0.0 11 12 13 14 15 16.1-5 (図表2)ネット通販の利用状況 (万人) 80,000 (%) 70.0 PC通販利用率(右目盛) 70,000 30,000 年1~5月も、前年比 27.7%増、1兆 8,089 億 20,000 元(約 33.4 兆円)と、好調を維持している。 10,000 (スマホ)の普及に伴って、携帯電話からのネ 20.0 (備考)1.中国互聯合網路信息中心『20150 年中国網路購物 市場研究報告』16 年 6 月より作成 を占める規模に達している(図表1) 。続く 16 た。利用端末でみると、15 年はスマートフォン 30.0 10.0 2010 40,000 4.13 億人となり、前年末から 5,183 万人増加し 7,826 0 71.8 兆円)と、社会消費品小売総額の 12.9% 15 年末現在、中国のネット通販利用者数は 40.0 33.3 13,110 5,091 50,000 3.スマホの普及がネット通販の追い風に 50.0 18,089 42.2 5,000 15 年は前年比 33.3%増、3兆 8,773 億元(約 場は日本の 5.2 倍の規模である。 18,636 27.7 60,000 13.8 兆円1であったので、中国のネット通販市 60.0 56.1 53.7 10,000 マホの普及を追い風に高い伸びを続けており、 ちなみに、15 年の日本のネット通販販売額は 70.0 29,087 67.5 25,000 役を果たしている。月次の指標をみても、16 年 90.0 80.0 30,000 20,000 38,773 販売額 伸び率 35,000 16 年1~3月が 84.7%となり、景気の下支え 1~5月の社会消費品小売総額は前年比 (%) 100.0 96.9 60.0 60.0 55.7 54.8 50.0 携帯通販利用率(右目盛) 42.4 40.0 41,325 36,142 携帯電話による 利用者数(左目盛) 33,967 30.0 23,609 PCによる通販 利用者数 (左目盛) 20.0 10.0 0 0.0 14 15 (年) (備考)1.ネット通販利用率=ネット通販利用者数÷インタ ーネット利用者数 2.中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市 場研究報告』16 年 6 月より作成 ット通販利用率が 54.8%と、14 年の 42.4%か ら 12.4 ポイントも増加しているのが特徴であ る(図表2)。パソコンを持っていなくとも、 スマホなどから気軽に商品を注文できるよう になったことが、中国のネット通販市場発展の 追い風となっており、今後もこの傾向は続いて 1 経済産業省『平成 27 年度我が国経済社会の情報化・サービス化に 係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』平成 28 年 6 月調査 いくものと思われる。 実際、携帯電話などから手軽にネット通販が できるようになったことから、15 年の1人当た りの年間利用回数は 62 回と、14 年の 48 回から 大きく増えた(図表3) 。ちなみに、性別には、 (図表3)ネット通販利用回数の推移 (回) 70 60 男性が 32 回、女性が 30 回と、均衡している。 50 4.サービス分野でも高まる需要 40 15 年のネット通販利用率を商品別にみると、 して利用率が高い(図表4)。このほか、14 年 との比較では、日用雑貨(14 年 34.4%→15 年 0 いるが、とりわけ、オンライン・ゲームなどで の課金、航空券・ホテル予約、映画・コンサー ト、宴会・飲食サービスなど、サービス分野の 利用が高まってきており、こうした流れは今後 も続く可能性が大きい。 5.海外商品にも大きな関心 海外のネット通販(越境通販)の状況をみる と、15 年は前年比 13.8%増、1人当たり 5,630 元(約 10.4 万円)だった。1人当たり利用回 数は 8.6 回と、 14 年の 8.0 回からやや増加した。 品目別にみると、化粧品・美容関連が 53.4% と、海外の優良ブランドを購入する傾向が顕著 350 48 300 256 250 取引総数(右目盛) 36 175 200 173 150 20 10 総じて、各商品の利用率はレベルアップして 58 1人当たり利用回数 (左目盛) 29 20 51.0%)などの利用率が急速に高まっている。 87 100 56 32 50 0 10 11 12 13 14 15 (備考)中国互聯合網路信息中心『2014年中国網路購物市場研究報告』15年6月より作成 (備考)中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市場研究 報告』16 年 6 月より作成 (図表4)商品別のネット通販利用率(単位:%) 2014 服飾・靴 パソコン関連 日用雑貨 ゲーム課金カード等 家電 化粧品・美容関連 食品・保健製品 バッグ等 書籍・DVD等 航空券・ホテル予約 映画・コンサート 宴会・飲食サービス 体育・文化用品 ベビー用品 宝石・アクセサリー 2015 75.3 37.5 34.4 33.1 26.6 25.9 25.4 24.9 24.1 18.7 16.8 15.3 14.5 12.7 7.3 79.7 44.8 63.2 35.8 39.1 32.1 33.7 34.4 51.0 34.1 33.2 32.7 29.9 29.1 23.7 (備考)中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市場研究 報告』16 年 6 月より作成 (図表5)海外ネット通販の国別利用率 である。粉ミルク・幼児用品が 47.6%とこれに (%) 0.0 続く。この背景には、中国国内の商品の品質が 必ずしもよくないことがある。このほか、服飾 (37.8%)、保健品(34.8%)、リビング用品 オーストラリア 国別の利用率は、米国が 48.0%、日本が 10.0 の人気の高さがうかがわれる(図表5)。米国 の利用率が高いのは、ブランド力のほか、英語 30.0 40.0 37.8 18.6 ドイツ 16.6 ニュージーランド 9.8 香港・台湾 9.1 英国 7.4 4.4 2.0 スペイン 0.3 タイ 0.3 その他 60.0 48.0 韓国 イタリア 50.0 45.3 フランス 45.3%、韓国が 37.8%となっており、日本製品 20.0 米国 日本 (18.6%)などが続く。 (億回) 400 30 服飾・靴が 79.7%と、他の商品を大きく引き離 63.2%) 、書籍・DVD等(14 年 24.1%→15 年 62 6.8 になじみがあることもあろう。 (備考)中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市場研究 報告』16 年 6 月より作成 6.中国ネット通販市場は未だ黎明期 ら中国向け通販をする(主に中国語で通販サイ 経済産業省では、日本から中国への越境通販 の規模は 15 年の 7,956 億円から 19 年には2兆 3,359 億円になると予測され、中国のネット通 販のポテンシャルを高く評価している。 日本からの参入方法としては、①中国国内に ネット販売会社を設立する、②国外(日本)か トを立ち上げる)、③中国の既存の仮想商店街 に出展する、の3つである。 中国のネット通販は、規模的には大きいが、 まだ黎明期にあり、日本企業にとっても大きな 商機になることは間違いない。 以 上 本レポートは、情報提供のみを目的とした上記時点における当研究所の意見です。施策実施等に関する最終決定は、ご自身の判断でな さるようにお願いします。また、当研究所が信頼できると考える情報源から得た各種データ等に基づいて、この資料は作成されており ますが、その情報の正確性および完全性について当研究所が保証するものではありません。
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