No.2016-004 2016年1月19日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 原油下落 ~ 需給緩和拡大 ~ (1)年初来、原油価格が一段と下落。主因は原油需給のさらなる緩和懸念の拡がり。米国エネ ルギー省は最新の本年1月予測で、昨年12月予測比、世界の総産油量を上方修正(図表1)。 国別には米国産を上方修正。米国の陸上産油量は昨年10月央を底に次第に増加(図表2)。 原油増産で在庫高水準。とりわけWTI現物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシング の在庫量は昨年12月半ば、昨年4月の既往ピークを凌駕した後、週を追って増加(図表3)。 備蓄余力に対する懸念が再び台頭。加えてガソリン在庫も増加。年初来の増加量は2週連続、 既往最大。 (2)もっとも、先行き一段と需給が緩和に向かうか否かは不透明。まず米エネルギー省予測を 改めてみると本年1月予測の昨年12月比上方修正は、昨年12月実績として天然ガス採掘由来の 産油量が追加計上され、その分、本年1月以降の産油量が上振れたため(図表1)。市場実勢 として昨年12月と本年1~2月の需給はほぼ同様。さらに本年1月予測の昨年12月比上方修正は 年央まで。秋以降は下方修正。10月以降、下方修正に伴う減産量は月を追って拡大。主因は 米国産油量の減少。一方、需要量に大きな修正なし。国別にも大きな修正なし。先進国の消 費量が緩やかに増加するのに対し、中国をはじめ新興国の消費量は堅調な増勢持続の見通し。 (3)米国シェール産油量は今後、減勢加速の見通し(図表4)。米エネルギー省の最新、本年 1月推計によれば、7主要シェール田の産油量は、既往油田の産油量が引き続き減勢を次第に 加速させる一方、新規油田の産油量は本年2月、前年比マイナスに転じ、一段と減勢に拍車が 掛かる見込み。現下の原油価格では大半のシェール田が採算割れとみられるなか、昨年初来 のリグ数減少が次第に産油量へ反映。このようにみると、サウジ・イラン間の問題浮上など 中東情勢は依然予断を許さないものの、今後、原油価格の底入れが視野。 (図表1)世界の総産油量と原油総消費量(米EIA推計) 97 (図表2)米国の陸上産油量とリグ数 20 96 (10万バレル/日) (百基) (百万バレル/日) 94 18 92 16 96 90 95 産油量(陸上、 左目盛) 原油リグ数(右 目盛) 総リグ数(〃) 88 94 86 総産油量(2016年1月推計) 総産油量(2015年12月推計) 原油総消費量(2016年1月推計) 原油総消費量(2015年12月推計) 93 92 16 (年/月) 75 (千万バレル) 82 6 4 14 15 (出所) US EIA など 65 2010年1月~ 2011年1月~ 2012年1月~ 2013年1月~ 2014年1月~12月 2015年1月~ 10 8 (出所) US EIA (図表3)クッシングの原油在庫(除く戦略在庫) 12 84 80 2015 14 16 (年/月/週) (図表4)米国主要7シェール田の産油量(米EIA推計) 産油量(既往油田、前年差、左目盛) 産油量(新規油田、前年差、左目盛) 産油量(前年差、左目盛) 産油量(右目盛) (10万バレル/日) 18 56 (10万バレル/日) 55 12 52 6 48 0 44 45 35 25 ▲6 15 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 01 (出所) US EIA (月/週) 40 2014 15 (出所) US EIA 16 (年/月) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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