No.2015-037 2016年2月26日 http://www.jri.co.jp 原油市場における生産調整の行方 ~ サウジアラビアの出方をめぐり、米国シェールオイル生産の行方が焦点に ~ (1)サウジアラビア、ロシア、カタール、ベネズエラの4ヵ国は、2月16日、イランやイラクの同調を 条件に、2016年1月の水準での原油生産量の凍結で合意。もっとも、合意内容が減産ではなく、増産 の凍結にとどまったこと、米欧の制裁により生産量が大きく落ち込んでいるイランの増産凍結が期待 し難いことなどから、依然として原油市場の供給過剰感は拭えず。 (2)一方、原油安が長期化するなか、サウジアラビアの財政は一段と厳しさが増す状況(図表1)。実 際、財政赤字の補填による外貨準備高の急減が続くなか、2015年半ば以降、国の信用力を示すCDS 保証料率が大きく上昇(図表2)。 (3)こうしたなか、今後のサウジアラビアの出方をめぐっては、米国の原油生産の行方が焦点に。これ まで石油リグ稼働数が急減するなかでも高止まりが続いていた米国の原油生産は、昨年秋以降、よう やく減少傾向が明確化(図表3)。足許の見通しに沿って米国の減産が一段と進めば、財政収支の改 善を迫られつつも、原油生産シェアの維持を目指すサウジアラビアの態度に軟化の動きが出てくる可 能性。 (4)ちなみに、過去の原油価格と米国の石油リグ稼働数の推移を踏まえると、原油価格が50ドル前後ま で上昇してもリグ稼働数の増加は限られ、新たな原油供給力の積み増しが乏しくなるなか、米国の原 油産量の回復は限定的にとどまる公算(図表4)。このため、米シェールオイルの再増産を警戒する サウジアラビアにとっても、一定程度の原油価格上昇を許容する余地があると判断。 (図表2)サウジアラビアの外貨準備高とCDS保証料率 (図表1)サウジアラビアの財政状況と原油価格 財政収支均衡原油価格 (右目盛) 原油価格実績( 〃 ) 50 40 (%) (ドル/バレル) IMF見通し 100 20 50 10 0 0 ▲10 50 財政収支(GDP比、左目盛) ▲30 100 2008 09 10 11 12 13 14 15 16 (資料)IMF "Regional Economic Outlook: Middle Eastand Central Asia"(2015年10月) (注)原油価格は、北海ブレント・WTI・ドバイ原油の 平均価格。2016年は2月25日までの実績ベース。 外貨準備高(左目盛) 8,000 CDS保証料率(右目盛) 150 30 ▲20 (億ドル) (年) (ベーシス・ポイント) 300 250 7,000 200 6,000 150 5,000 100 4,000 50 3,000 2008 0 09 10 11 12 13 14 15 (資料)IMF "International Financial Statistics"、 Bloomberg L.P. (注)CDS保証料率は月末値。 16 (年/月) (図表4)原油価格と米国の石油掘削設備(リグ)稼働数 (図表3)米国・サウジアラビアの原油生産量 (基) (ドル/バレル) 石油リグ稼働数(左目盛) 2,000 (百万バレル/日) 11 10 EIA見通し 9 140 WTI原油先物価格(10週先行、右目盛) 1,800 120 1,600 1,400 100 1,200 8 80 1,000 7 6 サウジアラビア 800 米国 600 60 40 400 5 2010 11 12 13 14 15 16 (資料)EIA "Short-Term Energy Outlook"、 IEA "Oil Market Report" 17 (年/月) 200 2013 20 14 15 (資料)Bloomberg L.P.、Baker Hughes 16 (年/週) 【ご照会先】調査部 副主任研究員 藤山光雄(03-6833-2453、[email protected])
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