No.2015-150 2015年12月25日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 米国天然ガス下落 ~ 暖冬影響 ~ (1)米国天然ガス価格が一段の下落(図表1)。本年初の百万Btu当たり3ドル前後から3月来、 同2ドル台半ば、10月から同2ドル台前半へ切り下がり、12月半ばに同2ドル割れ。米国では、 発電用を中心に石油と競合するなか、10月来の下落は原油価格の影響も。 (2)もっとも12月入り後の急落は暖冬が主因。エルニーニョで北東部を中心に平年を10℃前後 上回る地域も。週次動向が追える天然ガスの在庫量をみると、まず例年と同様に11月半ばを ピークとして11月後半から減勢転換(図表2)。しかし、例年であれば暖房需要が増加して 在庫の減勢が加速する12月第2週、一転して減勢が鈍化。エルニーニョで暖冬だった昨年も、 11月半ばから在庫の減勢が鈍化。例えばニューヨークの平均気温は、平年の3.7℃に対して、 昨年は12月4.8℃。今月初来の推移が続けば、本年12月は昨年12月を上回る暖冬に。 (3)例年、天然ガスの消費量は11月から翌年3月、とりわけ12月から翌年2月に増加。しかし、 昨年の消費量は11月に例年通り増えたものの、12月増勢鈍化(図表3)。米エネルギー省は 本年12月、2013年とほぼ同様の天然ガス消費量の増加を展望。しかし本年のエルニーニョが 史上最大級とみられるなか、12月の消費量が昨年を上回る増勢鈍化に陥る公算大。 (4)米国シェールガス田では採掘の技術革新で近年、生産性が一段と向上(図表4)。しかし 主要7ガス田の生産量は本年7月をピークに次第に減少。米エネルギー省は直近の12月推計で 本年12月から減勢加速と予測。採算分岐点が百万Btu当たり依然3ドル台にとどまり、現下の 価格水準では大半のガス田が採算割れに陥っているとみられるため。天然ガス用のリグ数は 13年秋以降の300基台を本年2月割り込み、12月23日162基に。米国天然ガス需給は当面エル ニーニョ影響で緩和傾向が続くものの、やや長い目でみれば生産減に伴うタイト化が視野。 (図表1)原油価格と天然ガス価格(2015年1月~) 3.4 (図表2)米国の天然ガス在庫量 62 40 (ドル/百万Btu) (ドル/バレル) (千億立方フィート) 58 37 3.1 54 34 2.8 50 31 2.5 46 28 2010年7月~ 2011年7月~ 2012年7月~ 2013年7月~ 2014年7月~ 2015年7月~ 2.2 42 25 1.9 天然ガス(左目盛) 原油(右目盛) 38 22 1.6 34 19 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (出所) US EIA 07 (月/日) (図表3)米国の天然ガス消費量 09 10 11 12 (月/週) (図表4)米国の7ガス田の天然ガス生産量と生産性 95 生産量計(右目盛) 〃(イーグルフォード、〃) 〃(マーセラス、〃) 〃(パーミアン、〃) (10億立方フィート/日) 2011年7月~ 2012年7月~ 2013年7月~ 2014年7月~ 2015年7月~ 85 08 (出所) US EIA 9 生産性(バッケン、左目盛) 〃(ハイネスビル、〃) 〃(ニオブララ、〃) 〃(ウチカ、〃) (10億立方 フィート/日) (百万立方フィート/日/リグ) 42 8 40 7 6 75 38 5 65 4 36 3 34 2 32 1 0 55 07 08 (出所) US EIA 09 10 11 (注) 2015年12月はEIA推計値。 12 (月) 30 0 2013 (出所) US EIA 14 15 16 (注) 2015年12月と16年1月はEIA推計。 (年/月) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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