米国加州旱魃-下押し懸念(PDF:205KB)

No.2015-041
2015年4月8日
≪藤井英彦の
藤井英彦の視点≫
視点≫
http://www.jri.co.jp
米国加州旱魃
~ 下押し懸念 ~
(1)米国カリフォルニア州の旱魃が一段と深刻化。同州ブラウン知事は3月27日、旱魃対策と水
道インフラ拡充を盛り込んだ総額10億ドルプロジェクトの緊急対策条例案に署名。さらに4月
1日、州内全ての自治体で水道使用量の25%削減を目指す節水令を発令。平均気温と降水量を
みると平均気温は昨年末以降、一段と平年を上回って推移の模様(図表1)。一方、降水量は
昨年12月には平年の1.8倍の降雨となったものの、本年1月は一転して平年の10%と大幅減少。
2月平年並みに戻った後、3月再び大幅マイナスの模様。
(2)11月から翌年3月が同州降水時期。4月から10月にまとまった降雨は期待薄。旱魃が史上空前
の厳しさとなるなか、少なくとも今後、半年間、状況改善の可能性小。同州の貯水量をみると
例年12月から翌5月まで増加した後、6月から10月まで減少(図表2)。昨年12月、多量の降雨
で貯水量増加。しかし、本年1月は少雨で前月比ほぼ横這い。2月は平年並みの降雨で例年通り
貯水量が増えたものの、3月は再び少雨で貯水量ほぼ横這いの可能性。州政府の異例の対応に。
(3)米国西海岸の主要港湾では、待遇改善を巡る労使交渉が昨春から次第にエスカレート。米国
屈指の取扱量を誇る同州ロングビーチとロスアンゼルス2港の貨物取扱量をみると、出港分は
昨年6月から、入港分は昨年10月から減勢(図表3)。本年1月、労使交渉が行き詰まるなか、
入出港とも大幅減。2月20日の暫定合意で2月増勢回復の兆し。もっとも短期間の正常化は困難。
加えて、水制約。大量の水を消費する農業、原油採掘の鉱業など産業に対する節水令の影響は
限定的で、一部に経済へのインパクトは軽微との見方。しかし水道料金の値上がりはコスト増。
同州はテキサス州やノースダコタ州に次ぐ米国有数の産油エリア。同州の産油量は昨年央来、
弱含み(図表4)。さらに農業が盛んな同州中南部では、貯水率が1~3割まで落ち込み、供給
制約のリスクが拡大し始めたエリアも。異常気象が景気下押しに作用する展開が視野。
(図表1)カリフォルニア州の降水量と平均気温
(図表2)同州貯水池の貯水量
30 13
7
降水量(平年、左目盛)
降水量(2014年1月~15年3月、〃)
平均気温(平年、右目盛)
平均気温(2014年1月~15年3月、〃)
6
5
(℃)
(百万エーカー
・フィート)
25
平年差(②-①、左目盛)
平年(②、右目盛)
2014年1月~15年1月(①、〃)
30
(百万エーカー
・フィート)
26
11
(インチ)
20
4
22
15
9
3
10
18
2
1
5
0
0
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 01 02 03 (月)
7
14
50
10
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 01
(出所)NOAA など (注)15年2、3月は降水量が調査地点単純平均、
気温はロスアンゼルス、サンフランシスコ、サクラメント3都市平均。
(出所) California Department of Water Resources
(図表3)同州主要2港の貨物取扱量(季調済)
55
(月)
(図表4)同州の産油量と水道料金
70 110
(万TEU)
105
48
63
41
56
34
49
27
42
20
35
2009
10
11
12
177
(万TEU)
出港(左目盛)
空荷(右目盛)
入港(右目盛)
13
14
15
(出所) PLB, PLA (注) ロングビーチ港とロスアンゼルス港。(年/月)
(10万バレル)
(ドル/エーカー・フィート)
水道料金(左目盛)
産油量(右目盛)
産油量(3ヵ月移動平均、〃)
173
100
169
95
165
90
161
85
157
80
153
0
75
149
2010
11
12
13
14
15
(出所)EIA、Metropolitan Water District of Southern California(年/月)
【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373)
≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。