女 性 骨 盤 内 臓 器 - e-CLINICIAN

よ
う
注
意
が
必
要
で
あ
る
。
き
く
、
生
理
的
な
変
化
と
病
的
な
状
態
を
見
誤
ら
な
い
骨
盤
部
は
年
齢
や
性
周
期
に
よ
る
見
え
方
の
変
化
が
大
を
呈
し
診
断
に
苦
慮
す
る
こ
と
が
あ
る
。
ま
た
、
女
性
で
あ
る
が
、
非
典
型
的
な
症
例
で
は
多
彩
な
画
像
所
見
す
る
疾
患
は
典
型
例
で
は
特
異
的
な
画
像
診
断
が
可
能
!
︶
。
子
宮
筋
腫
や
卵
巣
嚢
胞
な
ど
の
日
常
よ
く
遭
遇
れ
た
M
R
I
の
果
た
す
役
割
が
高
く
な
っ
て
い
る
︵
図
は
と
く
に
X
線
被
曝
が
な
く
組
織
コ
ン
ト
ラ
ス
ト
に
優
し
い
も
の
が
あ
る
が
、
女
性
骨
盤
部
の
診
断
に
お
い
て
近
年
の
C
T
、
M
R
I
の
発
達
と
普
及
に
は
目
覚
ま
は
じ
め
に
粘
膜
下
筋
腫
は
と
き
に
ポ
リ
ー
プ
や
癌
な
ど
の
内
膜
病
注
意
深
く
読
影
す
る
必
要
が
あ
る
︵
図
#
︶
。
ま
た
、
た
め
、
子
宮
筋
層
か
ら
連
続
す
る
栄
養
血
管
の
有
無
を
れ
、
し
ば
し
ば
卵
巣
腫
瘍
と
紛
ら
わ
し
い
像
を
呈
す
る
下
筋
腫
は
子
宮
に
接
し
た
骨
盤
内
腫
瘤
と
し
て
描
出
さ
る
が
、
大
部
分
は
良
性
で
あ
る
。
変
性
を
伴
っ
た
漿
膜
浮
腫
や
変
性
に
よ
り
多
彩
な
信
号
パ
タ
ー
ン
を
呈
し
う
明
瞭
な
低
信
号
腫
瘤
と
し
て
認
め
ら
れ
る
︵
図
"
︶
。
患 る
で と
あ さ
る れ
。 、
典 日
型 常
例 の
は 診
M 療
R で
I 遭
の 遇
T2 す
強 る
調 機
像 会
に の
て 多
境 い
界 疾
子
宮
筋
腫
は
成
熟
女
性
の
2
∼
4
割
程
度
に
存
在
す
子
宮
病
変
(1
2
3
4)
女
性
骨
盤
内
臓
器
生
殖
器
・
泌
尿
器
領
域
松
崎
健
司
CLINICIAN ’05 NO. 545
88
!正常子宮(T2強調矢状断像) "子宮筋腫(T2強調横断像)
子宮前壁に境界明瞭な低信号腫瘤を認める。
成熟女性では、三層構造(内膜、
筋層内・外層)が明瞭である。
#嚢胞変性を伴った漿膜下筋腫
A:T2強調矢状断像
B:造影 T1強調横断像
U
骨盤部を占拠する巨大な腫瘤を認め、卵巣癌が疑われた。子宮(U)から連続
する栄養血管が索状の無信号域(矢印)として同定され、子宮由来が示唆され
る。
89
CLINICIAN ’05 NO. 545
(1
2
3
5)
!粘膜下筋腫(T2強調矢状断像)
"子宮収縮(T2強調矢状断像)
子宮内腔を占拠する腫瘤(矢印)
を認め、淡い高信号を呈する。画
像上は内膜癌との鑑別が困難な症
例である。
子宮後壁に筋腫もしくは腺筋症を思
わせる結節状の低信号域(矢印)を
認める。次いで施行された T2強調
横断像では消失しており、子宮収縮
と考えられた。
索
が
必
要
で
あ
る
。
た
だ
し
、
乳
癌
の
術
後
に
タ
モ
キ
る
の
で
、
ホ
ル
モ
ン
値
の
測
定
や
画
像
検
査
に
よ
る
検
(1
2
3
6)
転
移
性
卵
巣
腫
瘍
な
ど
︶
が
背
景
に
あ
る
可
能
性
が
あ
あ
る
腫
瘍
︵
卵
巣
の
顆
粒
膜
細
胞
腫
や
莢
膜
細
胞
腫
、
や
内
膜
の
肥
厚
を
認
め
た
場
合
は
、
ホ
ル
モ
ン
活
性
の
萎
縮
傾
向
を
み
る
が
、
年
齢
に
不
相
応
な
子
宮
の
腫
大
態
な
ど
に
よ
り
大
き
く
変
動
す
る
。
閉
経
後
の
子
宮
は
子
宮
の
大
き
さ
や
見
え
方
は
年
齢
や
ホ
ル
モ
ン
の
状
き
た
す
こ
と
に
よ
る
。
部 宮
の 筋
静 層
脈 が
血 局
が 所
駆 的
出 に
さ 生
れ 理
T2 的
強 な
調 収
像 縮
に を
て 起
信 こ
号 す
低 と
下 、
を 内
端
的
に
言
え
ば
子
宮
の
力
こ
ぶ
の
よ
う
な
も
の
で
、
子
所
見
で
あ
り
経
時
的
に
消
失
す
る
︵
図
"
︶
。
こ
れ
は
、
局
性
の
低
信
号
域
と
し
て
描
出
さ
れ
る
が
、
一
過
性
の
像
に
て
小
さ
な
筋
腫
も
し
く
は
腺
筋
症
を
思
わ
せ
る
限
と
し 比
て 較
、 的
子 若
宮 年
収 者
縮 の
が 正
あ 常
子
る 宮
。 に
子 認
宮 め
筋 ら
層 れ
に る
T2 偽
強 病
調 変
る
︵
図
!
︶
。
CLINICIAN ’05 NO. 545
変
に
類
似
し
た
像
を
呈
す
る
こ
と
も
留
意
す
べ
き
で
あ
90
!A:ナボット小胞(T2強調横断像) !B:悪性腺腫(T2強調横断像)
子宮頸部は腫大し、大小の嚢胞構造が集簇して認められる。画像上の両者の鑑別
は困難である。
疑
い
で
M
R
I
を
施
行
し
た
の
に
ま
っ
た
く
異
常
が
な
91
る
こ
と
も
あ
り
う
る
。
卵
巣
腫
瘍
や
子
宮
頸
部
腫
大
の
り
、
ま
た
正
常
の
前
屈
し
た
子
宮
頸
部
を
腫
大
と
見
誤
な
卵
巣
と
病
的
な
腫
大
の
鑑
別
は
し
ば
し
ば
困
難
で
あ
軟
部
の
コ
ン
ト
ラ
ス
ト
に
乏
し
い
C
T
画
像
で
は
正
常
女
性
で
は
と
き
に
5
"
程
度
ま
で
達
す
る
こ
と
が
あ
る
。
成
熟
女
性
の
卵
巣
の
大
き
さ
は
様
々
で
あ
り
、
若
年
卵
巣
病
変
CLINICIAN ’05 NO. 545
場
合
に
は
さ
ら
な
る
精
査
を
要
す
る
。
と
く
に
特
徴
的
な
症
状
︵
多
量
の
水
様
帯
下
︶
が
あ
る
と
診
断
さ
れ
る
こ
と
が
多
く
臨
床
的
に
問
題
と
な
る
が
、
︵
図
!
︶
。
悪
性
腺
腫
は
細
胞
診
や
組
織
診
で
も
陰
性
な
腺
癌
で
あ
る
悪
性
腺
腫
と
鑑
別
困
難
な
像
を
呈
す
る
ナ
ボ
ッ
ト
小
胞
で
あ
る
が
、
と
き
に
集
簇
し
て
高
分
化
め
る
。
そ
の
ほ
と
ん
ど
は
頸
管
腺
の
貯
留
嚢
胞
で
あ
る
子
宮
頸
部
に
は
し
ば
し
ば
小
さ
な
嚢
胞
性
病
変
を
認
呈
す
る
た
め
、
既
往
を
確
認
す
る
必
要
が
あ
る
。
シ
フ
ェ
ン
が
投
与
さ
れ
て
い
る
と
き
も
同
様
の
所
見
を
(1
2
3
7)
場
合
は
明
ら
か
な
充
実
部
が
見
ら
れ
な
い
限
り
、
短
期
月
の
経
過
観
察
に
て
消
失
す
る
も
の
で
あ
り
、
若
年
者
と
き
に
出
血
を
伴
う
。
病
的
意
義
に
乏
し
く
2
∼
3
カ
す
る
こ
と
に
原
因
が
あ
る
も
の
と
考
え
ら
れ
る
。
い
と
い
う
こ
と
も
珍
し
く
な
い
が
、
C
T
画
像
を
参
照
︵
図
#
︶
。
伴
っ
た
病
態
と
類
似
す
る
た
め
、
注
意
が
必
要
で
あ
る
わ 能 成 難 る
ゆ で 分 で 。
る あ を あ C
る 反 る T
。 映 が で
胸 し 、 は
症 腹 て T2 非
候 水 低 強 特
群 の 信 調 異
貯 号
的
︶
、 留 を 像 な
に
卵 を 呈
軟
巣 伴 す て 部
豊
癌 う る
濃
に こ 場 富 度
癌 と 合 な を
性 が に 間 呈
腹 あ は 質 し
膜 り 診 の 診
炎 ︵ 断 線 断
を い 可 維 困
腫
瘍
︵
線
維
腫
・
莢
膜
細
胞
腫
な
ど
︶
の
可
能
性
が
あ
(1
2
3
8)
Meigs
卵
巣
に
悪
性
を
思
わ
せ
る
充
実
性
腫
瘤
を
認
め
た
と
の
付
属
器
に
5
$
程
度
ま
で
の
嚢
胞
性
病
変
を
認
め
た
内
部
に
漿
液
性
の
液
体
が
貯
留
し
た
単
房
性
の
嚢
胞
で
、
認
め
る
。
卵
胞
嚢
胞
や
黄
体
嚢
胞
な
ど
の
総
称
で
あ
り
、
成
熟
女
性
の
卵
巣
に
は
機
能
性
の
嚢
胞
を
し
ば
し
ば
!正常な成熟女性の骨盤
(T2強調横断像)
生理的な腹水の貯留(黒矢印)を認
める。右卵巣には機能性嚢胞(白矢
印)を認める。
性
腫
瘍
が
疑
わ
れ
る
が
、
と
き
に
良
性
の
性
索
間
質
性
一
般
に
充
実
性
の
卵
巣
腫
瘍
に
遭
遇
し
た
と
き
は
悪
が
良
好
な
M
R
I
が
鑑
別
に
有
用
性
が
高
い
︵
図
"
︶
。
あ
る
。
こ
の
よ
う
な
症
例
で
は
、
組
織
コ
ン
ト
ラ
ス
ト
壁
在
結
節
様
に
見
え
る
こ
と
が
あ
り
、
注
意
が
必
要
で
隔
壁
や
粘
稠
な
内
容
を
反
映
し
て
超
音
波
や
C
T
に
て
胞
腺
腫
で
は
、
壁
在
す
る
集
簇
し
た
小
嚢
胞
が
内
部
の
悪
性
化
が
疑
わ
れ
る
所
見
で
あ
る
。
良
性
の
粘
液
性
嚢
嚢
胞
性
腫
瘤
に
壁
在
す
る
充
実
部
を
認
め
た
と
き
は
、
CLINICIAN ’05 NO. 545
の
経
過
観
察
を
考
慮
す
べ
き
で
あ
る
︵
図
!
︶
。
92
!卵巣粘液性嚢胞腺腫
B:T2強調矢状断像
A:単純 CT
単純 CT にて壁在結節(矢印)を伴う嚢
胞性腫瘤を認め、悪性病変が疑われた。
MRI では粘液に満たされた小嚢
胞が集簇した性状(矢印)が描出
され、良性の粘液性嚢胞腺腫と診
断できる。
93
な
病
態
が
存
在
す
る
。
卵
巣
腫
瘍
の
破
裂
や
捻
転
な
ど
女
性
骨
盤
部
に
は
卵
巣
病
変
と
鑑
別
を
要
す
る
様
々
な
い
た
め
に
は
知
っ
て
お
く
と
よ
い
だ
ろ
う
︵
図
!
︶
。
像
を
呈
す
る
こ
と
も
、
潜
在
す
る
原
発
巣
を
見
過
ご
さ
卵
巣
原
発
の
粘
液
性
嚢
胞
腺
腫
・
腺
癌
に
酷
似
し
た
画
が
必
要
で
あ
る
。
ま
た
、
大
腸
癌
の
転
移
は
し
ば
し
ば
内
視
鏡
検
査
で
も
発
見
し
に
く
い
こ
と
が
あ
り
、
注
意
る 腸 唆
癌 さ
が れ
多 る
い 。
が 卵
巣
腫 、
印 転
瘍 環 移
は 細 の
原 胞 原
発 癌 発
巣 の 巣
が 転 と
小 移 し
さ に て
く よ は
胃 る 胃
透 い 癌
視 わ や
や ゆ 大
Krukenberg
が
疑
わ
れ
、
緊
急
の
開
腹
手
術
に
て
他
の
臓
器
由
来
の
CLINICIAN ’05 NO. 545
あ
っ
て
卵
巣
に
も
転
移
を
き
た
し
て
い
る
可
能
性
が
示
が
り
か
た
と
し
て
は
不
自
然
で
あ
り
、
他
に
原
発
巣
が
臓
に
転
移
を
認
め
た
場
合
に
は
、
通
常
の
卵
巣
癌
の
拡
貯
留
や
播
種
を
伴
わ
な
い
卵
巣
腫
瘤
の
症
例
で
肺
や
肝
た
場
合
は
転
移
の
可
能
性
が
高
く
な
る
。
ま
た
、
腹
水
て
お
く
べ
き
で
あ
る
。
と
く
に
両
側
性
に
腫
瘤
を
認
め
な
る
が
、
常
に
転
移
性
腫
瘍
の
可
能
性
を
念
頭
に
置
い
き
は
、
原
発
性
の
卵
巣
癌
を
疑
っ
て
対
処
す
る
こ
と
と
(1
2
3
9)
!卵巣線維腫
"大腸癌の卵巣転移
(T2強調矢状断像)
(T2強調横断像)
T
卵巣線維腫(T)に腹水貯留(矢印)
を伴っている。胸水貯留も見られ、
Meigs 症候群と診断された。
画像所見は卵巣原発の粘液性嚢胞腺癌に
酷似している。
#回腸原発の GIST(T2強調横断像)
T
両側の卵巣癌が疑われた症例。よく見る
と両側の卵巣は腫瘤(T)の背側に同定
できる(矢印)
。回腸から外方性に発育
した2つの腫瘤が骨盤部に下垂していた。
成
熟
女
性
の
骨
盤
(1
2
4
0)
腹
水
貯
留
す
る
︵
図
!
︶
。
な
ど
が
診
断
に
寄
与
内
部
の
空
気
の
存
在
の
連
続
性
の
確
認
、
の
可
動
性
や
腸
管
と
難
と
な
る
が
、
病
変
伴
う
膿
瘍
形
成
な
ど
が
卵
巣
腫
瘍
に
類
似
す
る
こ
と
が
︶
や
憩
室
炎
な
ど
に
壁
外
性
に
突
出
し
て
発
育
す
る
こ
と
が
多
い
GIST:
部
に
は
排
卵
に
伴
う
あ
り
、
病
変
が
大
き
く
な
る
と
発
生
臓
器
の
特
定
は
困
Gastrointestinal stromal tumor
T
と
も
し
ば
し
ば
あ
る
。
消
化
管
由
来
の
腫
瘍
︵
と
く
に
で
あ
る
が
、
閉
経
後
で
は
萎
縮
に
よ
り
同
定
困
難
な
こ
き
い
。
ま
ず
は
正
常
な
卵
巣
を
同
定
す
る
こ
と
が
重
要
採
択
す
る
上
で
術
前
の
画
像
診
断
の
果
た
す
役
割
は
大
CLINICIAN ’05 NO. 545
腫
瘍
が
判
明
す
る
こ
と
も
あ
り
、
適
切
な
治
療
方
針
を
94
!子宮内膜癌
患
が
背
景
に
あ
る
可
能
性
が
高
い
。
と
く
に
担
癌
患
者
も
異
常
所
見
で
あ
り
、
癒
着
や
炎
症
な
ど
何
ら
か
の
疾
一
方
、
閉
経
後
に
腹
水
貯
留
を
認
め
た
場
合
は
少
量
で
す
る
腹
水
貯
留
は
正
常
な
所
見
と
考
え
ら
れ
る
︵
図
!
︶
。
"腹腔内貯留嚢胞
生 (T2強調矢状断像)
理
的
な
腹
水
貯
留
T
を
認
め
る
た
め
、
経 子宮内腔に腫瘤(T)を認める。明
時 らかな筋層浸潤はなく stage I 症例
的 と考えられたが、Douglas 窩に少量
に の腹水(矢印)を認める。手術にて
播種を伴った癌性腹膜炎と診断され
増 た。
減
る
︵
図
#
︵ ︶
。
徳
島
大
学
医
学
部
講
師
放
射
線
科
︶
95
CLINICIAN ’05 NO. 545
し
た
よ
う
に
見
え
、
内
部
に
正
常
な
卵
巣
が
同
定
さ
れ
め
、
辺
縁
部
に
沿
っ
て
腸
管
な
ど
の
既
存
構
造
が
嵌
入
(T2強調横断像)
子宮筋腫にて手術既往がある
症例。骨盤内の大きな嚢胞性
腫瘤が疑われたが、内部には
正常卵巣(矢印)を含み、骨
盤壁に沿って拡がっている。
手術にて明らかな嚢胞壁は認
められず、癒着による貯留嚢
胞と診断された。
る
。
通
常
の
嚢
胞
と
異
な
り
嚢
胞
壁
が
存
在
し
な
い
た
に
見
ら
れ
卵
巣
の
嚢
胞
性
腫
瘍
に
類
似
し
た
像
を
呈
す
た
癒
着
に
よ
る
腹
腔
内
貯
留
嚢
胞
は
、
と
き
に
多
房
性
手
術
や
外
傷
、
炎
症
、
内
膜
症
な
ど
が
原
因
と
な
っ
る
︵
図
"
︶
。
で
は
潜
在
す
る
癌
性
腹
膜
炎
を
念
頭
に
置
く
必
要
が
あ
(1
2
4
1)