腎機能障害をもつ高血圧患者におけるシラザプリルの - e-CLINICIAN

○シラザプリルの臨床○
一
う高血圧患者では、腎機能正常な高血圧患者に比
筆者らは、これまでにカプトプリル、エナラプ
較し、薬物の血中濃度曲線下面積︵AUC︶の増
すようにピリダジノ・ジアゼピンニ環縮合環を有
ラートとなり、強いACE阻害作用を発揮する。
リル、アラセプリル、デラプリル、リシノプリル
現在、本邦で発売されている、あるいは近日中に
し、分子中にSH基やプロリン骨格をもたない。
発売が予定されるACE阻害薬を化学構造上の特
加、尿中排泄率の低下がみられることを報告した。
⑪
シラザプリル︵インヒベース︶についても、腎
および降圧効果について検討を行い、腎障害を伴
徴などを考慮して分類すると、表②に示す通りで
機能障害を伴う高血圧患者および腎機能正常な高
などいくつかのACE阻害薬について、薬物動態
ある。これらACE阻害薬は、いずれも腎から排
血圧患者に、本薬を連続投与した場合の薬物動態
本薬はプロドラッグに属し、経口投与後、体内で
る。
薬物動態と降圧効果を臨床的に検討する必要があ
腎機能障害をも2局血圧患
者におけるシラザプリルの
降圧効果と薬物動態
シラザプリルは新しく開発されたアンジオテン
郎朗洋
脱エステル化されて、島碧こ体であるシラザプリ
シン変換 酵 素 ︵ A C E ︶ 阻 害 薬 で あ り 、 図 ① に 示
真秀
泄されるので、腎障害を伴う高血圧患者における
C:LINICIAN,91No.398 48
特集・ACE阻害薬と高血圧治療トピックス
植姫塩
之
田野
入
と降圧効果の差異について検討したので、その概
要を記述する。
対象は高血圧入院患者一二例であり、尿蛋白の
有無、血清クレアチニン値︵S−α︶、クレアチニ
ン・クリアランス値︵Ccr︶によって、腎機能
正常︵NRF︶群五例︵平均年齢五七歳、S−α一・
二㌦、Ccr六八・九嘱︶と腎機能障害︵1
Ccr二九・八努︶に群別した。シラザプリル
RF︶群七例︵平均年齢五一歳、S−α三・五覧、
ゆ
ハ
一・二五㎎を単回経口投与による血圧、脈拍の測
①シラザプリルと活性型代謝物
シラザプりラートの化学構造
嚇癖・豊・・
cilazapri1 二R二・OC2H5
cilazaprilat:R二一〇H
②アンジオテンシン変換酵素阻害薬の分類
1群
II群
lll群
プロリン骨格
(+)
a類
活性型で投与
カプトプリル
SR基
(+〉
b類
体内で活性化
アラセプリル
プロリン骨格
(+〉
a類
活性型で投与
リシノプリル
SH基
(一)
b類
体内で活性化
エナラプリル
インダニル骨格
(+)
a類
SH基
(一〉
b類
体内で活性化
デラプリル
プロリン骨格
(一〉
体内で活性化
シラザプリル
ヤ1群 ピリダジノ・
a類
ジアゼピン骨格(+〉
SH基
(一〉
プロリン骨格
(一)
49 C:LINICIAN,91No、398
b類
(175)
③腎機能正常群(NRF、n=5、○……○)および腎機能異常群(IRF、n=
7、● ●)におけるシラザプりル1.25mg単回投与ならびに連続投与
時の血圧・脈拍の推移
180 ベースライン 単回投与時 連続投与時
16()1響艶a 、.悉
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*繍******聾1…難****
血140
圧120
温
Hg100
)
拡張期
ゲσ.つ’一・σ一網 ****一** **弟
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80
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60
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拍
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260
愈
O1246810122401246810!22401246810!224
投与時間(時間)
)5**p<0.01***p<0.001:対応のあるt検定(べ一スラインとの比較)
*p<0.05 **p<0.01
定とともに、薬物血中濃度測定と尿中排泄量測定
を経時的に行った。また、同用量のシラザプリル
を一日一回経口投与を五∼八日問続け、投与最終
日に、初日単回投与と同様に血圧と脈拍を測定し、
IRF群ともにシラザプリル単回投与後一時間で
採血および採尿を行った。その結果、NRF群、
血圧は有意に下降し、最大降圧は投与後二∼四時
間で認めた︵図③︶。とくに連続投与時には、その
降圧効果は二四時間持続し、血圧の日内変動は小
さかった。降圧の程度は両群で同様であり、脈拍
の有意の変動は伴わなかった。
血漿中のシラザプリル濃度およびシラザプリラ
ート濃度の経時的推移を図④に示した。単回およ
び連続投与時のシラザプリル血中濃度はNRF群
とIRF群で全く同様であったが、IRF群のシ
ラザプリラート血中濃度は投与後二四時間にわた
ってNRF群より高値を示した。また、本薬の連
続投与により、IRF群では血中シラザプリラー
ト濃度およびAUCの増大傾向を認め、そのAU
(176)
CLINICIAN,91No.398 50
0 0 1 ・0
ヨ0
む 能●シー む
−む
、の血中ジアシド体濃度血中シラザプリル濃度<
︵ ㎎ / 認 ︶ ︵㎎/一︶*
④腎機能正常群(NRF、n=5、○一一一〇)および腎機能異常群(lRF、nニ
7、● ●)におけるシラザプリル1.25mg単回投与ならびに連続投与
時のシラザプりルとジアシド体の血中濃度推移
塑1000r 単回投与時 連続投与時
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012468 12
24
間(時間)
定(両側)による二群間比較
p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001:s
⑤腎機能正常群(NRF、nニ5、○…一〇=シラザプリル、△一一△:ジ
アシド体)および腎機能異常群(lRF、n=7、●一●:シラザプリ
ル、▲一一一▲=ジアシド体)におけるシラザプリルL25mg単回投与(左)
ならびに連続投与(右)時のシラザプリルとジアシド体の累積尿中排泄率
100
連続投与時/
単回投与時
80
累
一’△
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投与後時間(時間)
*p<0。051studentのt検定(両側)による二群間比較
51 CLINICIAN,91 No.398
(177)
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および連続投与後二四時問のシラザプリルおよび
のω寓o口o一μ国49巴. ”﹂。O巽&o<器ρ℃げ鷲目凶oo一、まu
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Cの増大はCcr低値例で著しかった。単回投与
シラザプリラートの累積尿中排泄率は図⑤に示し
紹♪一80
た。初回投与時の累積排泄率はIRF群で低値を
示したが、連続投与時のシラザプリラートの排泄
率の増加 は I R F 群 で よ り 顕 著 で あ っ た 。
以上の成績から、シラザプリルは降圧作用の発
現が速く、降圧効果持続時間の長いACE阻害薬
であり、一日一回投与による血中コントロールが
可能であることが示された。さらに、腎機能障害
を伴う高血圧患者では血中シラザプリラート濃度
とそのA U C が 増 大 す る が 、 他 の A C E 阻 害 薬 に
比べ、尿中排泄率の増加を認めるので体内蓄積性
は低いと考えられた。
︵横浜市立大学 講師 内科学︶
*︵横浜市立大学 内科学︶
文献
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CLINICIAN,91No.39852
(178)
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