市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 5 月 8 日(金)発行 No.059
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
米雇用統計で米ドル/円はレンジ上放れ?下放れ?
RBA の政策に変化、声明から読み解く
【アウトルック】 米雇用統計で米ドル/円はレンジ上放れ?下放れ?
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円→ 米雇用統計発表後も様子見姿勢が強まり、レンジが続く可能性も
<材料>4 月小売売上高(13 日)、NY 連銀製造業景気指数(15 日)
ユーロ/米ドル→ユーロ圏、EU 財務相会合でのギリシャ支援合意は困難か
<材料>ユーロ圏財務相会合(11 日)、独 1-3 月 GDP(13 日)
豪ドル/円↑利下げ実行で出尽くし感。米ドルが手掛けにくいなか、代替的なニーズも。
<材料>NAB 企業景況感(11 日)、中国小売売上高、鉱工業生産(13 日)
ポンド/円↑与党大勝で安心感が台頭、景気見通し上振れなら強含みの可能性も。
<材料>BOE 政策金利発表(11 日)、英失業率、インフレレポート(13 日)
◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:米経済指標下振れで米ドル売りが嵩む
今週の為替相場は、ユーロ圏の経済指標が堅調、米経済指標は下振れとなり、米ドル売りが嵩みました。
米ドル/円は、3 月貿易赤字が市場予想を上回り、約 6 年ぶりの水準となったこと、4 月 ADP 雇用統計が
市場予想を大幅に下回ったことなど、米経済指標が軒並み下振れしたため、米ドル安・円高が進みました。
米ダウ平均が 18000 ドル割れ、日経平均が 2 万円割れなど、日米株価下落によるリスクオフも米ドル安に
繋がりました。ユーロは、ユーロ圏 4 月製造業 PMI など経済指標の堅調に加え、ギリシャを巡る情勢が落ち
着いていたため対米ドル、対円とも一時 2 月下旬以来の水準に上昇しました。ポンドは、7 日の総選挙まで
小動きが続きましたが、与党・保守党が大勝との出口調査で一時 185 円に近づく場面も(8 日 9 時時点)。
豪ドルは、5 日に RBA(豪中銀)が利下げを行い、一時大きく下落しましたが、声明では追加利下げを示唆
する文言が外され、出尽くし感から上昇しました。NZ ドルは、6 日発表の NZ の 1-3 月期雇用統計が弱めの
結果となり、利下げ観測が台頭。週後半にかけて弱含みで推移しました。カナダドルは、WTI 原油先物が一
時 60 ドル台を回復、カナダドル/円は一時 99.97 円まで上昇し、100 円台回復が視野に入りました。
トルコリラは、小動きに終始。4 日のトルコ CPI が市場予想を上回りましたが、反応は限定的でした。南アラ
ンド/円は、とくに材料のないなか、ジリジリと下落。ただ NY 終値ベースでは 9.9 円を割り込みませんでした。
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来週のプレビュー:米雇用統計で米ドル/円はレンジ上放れ?下放れ?
相次ぐ米経済指標の下振れで、今週の米ドル/円は右下がりの推移を余儀なくされました。ただ 3 月下旬
以降の値動きをみると、3 月 26 日安値 118.33 円が下限、4 月 13 日高値 120.80 円が上限となる「レン
ジ相場」の範囲内での推移となっています(5 月 8 日 9 時時点)。3 月中旬から米ドル/円の上値は徐々に
切り下がっていますが、レンジ下限を割り込むほどの下げはなく、ある意味で「居心地の良い水準」といえるの
かもしれません。
過去 90 日間の様々な売買の平均コストにあたる「90 日線」は 8 日時点で 119.26 円にあり、ほぼ上述の
「レンジ」の真ん中にあります。90 日線は 4 月入り以降、ほとんど横ばいで推移しており、90 日線から大きく
上放れると「利益確定売り」が嵩んで下落、大きく下放れると「押し目買い」で反発という動きが続いており、
方向感が出にくい流れが続いています。
【米ドル/円日足と 90 日線】 (2015/2/20~5/8、 出所:M2J FX Chart Square)
本稿執筆時には結果が判明していない「米 4 月雇用統計」が市場予想(8 日時点で前月比 23 万人)を
上回り、「米の年央以降の利上げ開始」観測が高まれば、足もとの「レンジ相場」を上抜く可能性が出てきま
す。121 円台の回復、さらには 3 月 10 日高値 122.01 円更新も視野に入るかもしれません。
しかし、前哨戦と位置付けられた 6 日発表の 4 月 ADP 雇用統計が市場予想を大幅に下回り、昨年 1 月
以来の低い伸びとなったほか、同日発表の米 1-3 月期労働生産性も弱い結果となるなど、米労働市場を
めぐる不透明感が高まっています。仮に米雇用統計が市場予想を上回っても、今後の経済指標を見極め
たいとの姿勢が強まり、米ドル/円の「レンジ相場」が続く可能性もあるでしょう。
もしも米雇用統計が市場予想を下回ると、レンジ下限を割り込み、117 円台に入る可能性も考えられます。
ただ、右上がりで推移する週足一目均衡表の基準線が 7 日時点で 117.94 円にあり、118 円割れ水準で
は下げ渋ることも想定されるでしょう。
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一方ユーロは、4 日発表の独ならびにユーロ圏の 4 月製造業 PMI が市場予想をやや上回ったほか、6 日
発表のユーロ圏の 4 月サービス部門 PMI も市場予想を上回るなど、堅調な経済指標に支えられました。6
日には EU、ECB、IMF が一丸となってギリシャ支援協議に取り組んでいるとする共同声明を発表したことも、
ユーロ買いに繋がりました。
ただ、ギリシャ問題については財政改革案をめぐり協議中であり、同国への支援停止の可能性もゼロでは
ありません。今年 6 月末まではギリシャへの金融支援延長が決定されており、5 月 12 日の IMF 返済(8 億ユ
ーロ)、15 日の短期国債借り換え(14 億ユーロ)は実行されそうですが、7 月以降分の「支援第 3 弾」で合意
できないと、7、8 月の ECB 保有国債の償還が困難となりそうです。
来週は、11 日にユーロ圏財務相会合が行われます。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセル
ブルム議長(オランダ財務相)は 6 日、「11日のユーロ圏財務相会合で合意が得られる公算は小さいが、
見通しは明るい」と述べました。ギリシャ問題が悪化せず、米経済指標の下振れがあれば、2 月下旬以来の
高値圏にあるユーロ/米ドル、ユーロ/円は、一段高する可能性もありそうです。
逆に、ギリシャ懸念が再燃し、米経済指標が持ち直すと、ここもとの上昇ピッチが速かったユーロはスピード
調整に入るかもしれません。
現地 7 日にイギリスの総選挙が実施され、出口調査では与党保守党が 316 議席、最大野党労働党が
239 議席を獲得する模様と伝わりました。最終的な議席確定では多少のブレもありそうですが、「接戦」との
観測に反して与党大勝の結果になれば、ポンドの堅調に繋がりそうです。
与党保守党が単独で過半数を獲得できないと、政権樹立のための連立工作が本格化するとみられます。
政策の擦り合わせなどで1か月程度かかる可能性もあり、新政権誕生の遅れを嫌気したポンド売りが嵩む可
能性も考えられます。
ただ、11 日には BOE(英中銀)の政策決定会合(市場予想は据え置き)、13 日には失業率とインフレレポ
ートの発表が行われるため、BOE 会合を市場予想通りに無難に通過し、13 日の英経済指標に明るさがみら
れると、ポンドの下げは限定的となるかもしれません。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 RBA の政策に変化、声明から読み解く
RBA(豪中銀)は 5 日、政策金利を 2.25%から 0.25%引き下げ、過去最低の 2.00%にすることを決定し
ました。RBA の利下げは 2 月に続いて、今年 2 回目です。
RBA は声明で利下げについて、「家計部門の需要における最近の心強いトレンドを後押しするために、金
融政策を一段と緩和する機会をインフレ見通しがもたらしたと判断した」と表明しました。
豪州の 1-3 月期 CPI(消費者物価指数)は前年比+1.3%と、10-12 月期の+1.8%から一段と鈍化し、
RBA のインフレ目標の下限である+2%をさらに下回りました。インフレの鈍化が確認されたことで、景気のテ
コ入れのための利下げ余地が生まれたとみられます。
RBA の政策金利の推移
(出所:Bloomberg)
豪州のインフレ率(前年比)
(出所:Bloomberg)
◆RBA の利下げは打ち止めか?◆
今回の声明は、前回 4 月から文言がいくつかの点で変更されました。とりわけ「今後の金融政策」と「豪州
経済」に関する文言は、RBA の利下げが今回で打ち止めになる可能性を感じさせるものでした。
下の表は、前回 4 月と今回の今後の金融政策に関する文言です。前回 4 月は追加利下げの可能性に
言及しましたが、それが今回削除されました。
RBA 声明の「今後の金融政策」に関する文言
豪州経済に関する文言も、前回の「トレンドを下回るペースでの成長が続いている」から「家計部門の需要
が過去 6 か月で改善し、雇用がより力強く伸びている」との見方に変わりました。
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RBA 声明の「経済」に関する文言
利下げ時の声明は、暗めのトーンになりがちです。今年 2 月の利下げ時の声明は、豪州経済について「こ
れまでの想定よりも、生産の伸びはおそらく幾分長くトレンドをやや下回り続け、失業率のピークは若干高い」
との見方が示されました。それと比べると、今回はかなり前向きな見方と言えそうです。
今回の利下げは経済情勢が悪化したからではなく、経済の改善を後押しするためという点に、2 月と意味
合いが違うように感じられます。
◆利下げ打ち止め観測が豪ドルの支援材料に!?◆
今回の声明を受けて、市場でも RBA の利下げ打ち止め観測が浮上しており、それが RBA の利下にもか
かわらず、豪ドルが上昇した一因でした。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場は 5 月 7 日時点で、政策金
利が現在の 2.00%に据え置かれる確率を約 56%織り込んでいます。利下げの確率も約 44%ありますが、
今年 11 月までの市場のメインシナリオは「2.00%に据え置き」となっています。
豪ドルは RBA の利下げ観測がこれまで重石となっていました。RBA の利下げ打ち止め観測の浮上は、下
押し材料が弱まることを意味し、むしろ豪ドルにとって強い支援材料になる可能性があります。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
0.50%
5月11日 20:00 【英】BOE政策金利発表
【英】BOE資産購入目標
市場予想
0.50%
3750億ポンド
3 7 5 0 億ポンド
前回値
0.50%
3750億ポンド
現状維持となりそう。総選挙の結果、新政権が確定していなければ、不確定要素が大きいため、な
おさら政策変更を検討することはなさそう
【EU】ユーロ圏財務相会合
ギリシャはここで経済改革案の承認(=支援金の受領)を目指していた。ギリシャとEU(+IMF)との
交渉は前進しているとの見方もあるものの、合意成立の可能性はかなり低そう
【EU】ギリシャ、IMFへの返済 約8億ユーロ
5月12日
5月13日 15:00 【独】GDP速報値 季調済 前期比(1-3月期)
【独】GDP速報値 季調済 前年比(1-3月期)
18:00 【EU】GDP速報値 季調済 前期比(1-3月期)
【EU】GDP速報値 季調済 前年比(1-3月期)
0.8%
1.6%
0.4%
1.0%
0.5%
1.3%
0.4%
1.0%
0.7%
1.4%
0.3%
0.9%
ユーロ安、原油安、金利低下が景気にプラスに働いているもよう。欧州委員会は2015年のユーロ圏
成長率予想を1.3%から1.5%へ上方修正した
18:30 【英】BOEインフレーションレポート公表
BOEは自ら「次の一手は利上げ」となる可能性が高いと宣言しており、そのタイミングと幅を予想する
うえで重要な材料になりそう
21:30 【米】小売売上高 前月比(4月)
0.4%
0.2%
0.9%
寒波からの反動があった3月は期待されたほど伸びなかった。雇用の伸びの弱さやガソリン価格の
上昇に負けずに強めとなるか。既報の自動車販売台数は前月からやや減少した
5月15日 21:30 【米】NY連銀景気指数(5月)
22:15 【米】鉱工業生産指数 前月比(4月)
23:00 【米】ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値(5月)
7.00
0.2%
97.0
5.00
0.0%
96.5
-1.19
-0.6%
95.9
寒波や港湾ストなどの要因はく落により、景気の立ち直りが期待されるものの、これまでのところは
「まだら模様」。どこまで景気回復を示せるか
【EU】ギリシャ、短期国債借り換え 14億ユーロ
市場予想はBloomberg、5月8日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年10月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
67%
33%
英国
0.50
18%
78%
4%
NZ
3.50
70%
30%
0%
カナダ
0.75
21%
79%
0%
ユーロ圏
0.05
68%
31%
1%
豪州
2.00
44%
56%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。5月7日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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金融商品取引業
関東財務局長(金商)第 2797 号
(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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