外貨投資の視点 (No.199) リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト 植野 大作 2015年1月19日 ユーロスイス暴落の顛末と他通貨市場に与える影響 ポイント SNBが無制限介入による「死守」を宣言していたユーロスイスの下限を撤廃、ユーロが暴落、フランが暴騰 市場が注目する「SNBショック」の余震は、相対的にはユーロにネガティブ。ユーロドルの予測を下方修正 ドル円相場への間接的影響は短期かつ軽微。中長期で標榜する「ドル円=右肩上がり」の大局観を堅持 ユーロスイスは当面不安定な状態だが、今後は官製需給操作の影響が薄まり適正な落ち着き処を模索へ スイス中銀(SNB)がユー ロスイスの下限を撤廃、 19 分間で 3 割暴落 1月15日の18:30頃、欧州の為替市場を激震が襲った。スイス国立銀行(SNB)が2011 年9月に設定して以来、「無制限のユーロ買い・フラン売り介入で死守する」と言い続けて いた1ユーロ=1.2000フランの下値防衛線を突然撤廃すると発表したからだ。SNBによる あまりにも唐突な「梯子外し」を食らったユーロスイスは当然暴落、ブルームバーグ社が提 供しているBGNデータでは一時1ユーロ=0.85172フランと、発表直前の高値1.20098フラ ンから約19分間で▲3500ポイント近くも急落した(図1)。CMPNデータでは、この間に記 録されたユーロスイスの最安値は0.78124フランとなっており、当時の大混乱の中で実際 にどこまでの差し込みが生じたのか、正確には分からない。SNBによる発表の事実を知ら ずに、ただチャートだけみていた参加者の中には「ファット・フィンガー」による誤発注かと 思った人もいたという。ちなみに、今回のユーロスイスの暴落をドル円に置き換えてイメー ジすると、たった19分間で1ドル=120円09銭8厘から85円17銭2厘、あるいは78円12銭4 厘まで急落したことになる。主要通貨の歴史に残る大事件だ。 ユーロスイスを取り巻く国 際環境の変化が、もともと 無理な無制限為替介入政 策の限界を露呈させた 「何故このタイミングで無制限介入による防衛線を撤廃したのか」との問いに対して、 SNBのジョーダン総裁は、「国際情勢の変化などから持続可能ではないと判断した」など と述べたようだ。しかし、2012年7月30日に発行した外貨投資の視点(No.20)「注目される スイス中銀のフラン高防御戦の顛末」や2014年9月10日に発行した同レポート(No.177) 「SNBの無制限介入ラインに接近するユーロスイス相場」で詳述したように、「特定の水準 に防衛線を引いて無制限の為替介入で市場価格を制御し続ける」という政策自体が元来 無理筋であることは、非常に多くの市場参加者が指摘していた。実際、過去3年4か月も の長きにわたって「防御線を絶対破らせない」という約束を守るために大規模なユーロ買 い・フラン売りを続けた結果、スイスの外貨準備は昨年末に名目国内総生産(GDP)比で7 割超の水準に膨張、売却したフランの吸収もままならず、ベースマネーもほぼ並行して増 え続けていた。SNBによるフラン高抑止の介入は、2008年9月のリーマン危機の直後から 断続的に実施されてきたが、「無制限介入の開始」を宣言した2011年9月以降のベースマ ネーの増加ペースは尋常一様ではない。日米欧の3大通貨圏と比較してみると、1ユーロ 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 -1- 外貨投資の視点 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2015 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒112-8688 東京都文京区目白台3-29-20 目白台ビル 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 リサーチ部 (商号) 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2336号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA), Inc.が配布致します。 -9- 外貨投資の視点
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