対中輸出減を上回るインバウンド消費の急増

景気循環研究所レポート
対中輸出減を上回るインバウンド消費の急増
2015 年 11 月 19 日
7-9 月期のインバウンド
消費は 1 兆円台に
訪日外国人客による旅行消費額、いわゆるインバウンド消費は、15 年
7-9 月期に 1 兆 0,009 億円と、四半期ベースで初めて 1 兆円を突破した。
インバウンド消費はこのところ急ピッチで増加しており、7-9 月期の前年
比増加率は 81.8%に及んでいる。訪日外国人客 1 人当たりの旅行支出の
高い伸び率(前年比 18.3%増)に加えて、訪日外国人客数が同 53.7%増
と、4-6 月期の同 48.0%増から増加ペースが加速している。
中国からの訪日客が最大
一方、18 日に日本政府観光局(JNTO)が発表した 10 月単月の訪日外国
人客数(推計値)の前年比増加率は 43.8%と、7-9 月期および 9 月(46.7%)
から増加幅が縮小している。ただ、1 人当たり旅行支出額が相対的に高く、
かつ訪日客数が国・地域別で最大である中国からの訪日客数は前年比
99.6%増加しており、かつその増加ペースは 9 月から鈍化していない。訪
日外国人 1 人当たり旅行支出の増加が期待できることもあり、10-12 月期
は引き続き、1 兆円規模のインバウンド消費が見込まれる。
対中輸出減の影響を軽減
中国のインバウンド消費の好調は国内景気の好材料だが、その一方で、
中国景気の減速に伴う中国向け輸出の鈍化は景気の悪材料である。19 日
に発表された 10 月の貿易統計(速報)によると、中国向け輸出は前年比
嶋中 雄二
景気循環研究所長
3.6%減少した。中国のインバウンド消費の規模(1,075 億円、10 月、当
研究所試算)は中国向け輸出(1.2 兆円、10 月)に遠く及ばない。しかし、
前年同月からの増減額を比較すると、中国からのインバウンド消費の増加
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
額は、中国向け輸出の減少額を上回っている(図 1)。中国からのインバ
ウンド消費は、中国景気減速の悪影響を少なからず軽減している。
図 1. 中国向け輸出と中国インバウンド消費の推移
宮嵜
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
4,000
(前年差、億円)
①中国からのインバウンド消費
②中国向け輸出
3,000
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
①+②
2,000
福田
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・
福田が執筆を担当しています。
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
1,000
0
-1,000
-2,000
13
14
15
(年、月次)
( 注)中 国から のインバウント消費 =訪日 外客数 (中国 )× 1人当 たり旅 行支出 (同) 。1人当た り旅行 支出は
四 半期 ベースを月 次換算 、但し 直近 15年10月 は同年 7-9月期の 前年比 をもと に当研 究所試 算。
( 資料) 財務省 「貿易 統計」 、日本 政府観 光局( JNTO) 「訪日 外客数 ・出国 日本人 数」、 観光庁 「訪日
外国人 の消費 動向」 をもと に三菱 UFJモルガ ン・ス タンレ ー証券 景気循 環研究 所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(15.11.19 宮嵜
1
浩)
2015 年 11 月 19 日
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