いわきと福島の間の緑の回廊へ 鏑木儀郎

鏑木 儀郎のコラム
いわきと福島の間の緑の回廊へ
中間貯蔵・環境安全事業株式会社
鏑木 儀郎
わが社の中間貯蔵管理センターは福島県の JR いわき駅近くにある。
環境省の福島環境再生事務所は福島駅近くにある。
いわき駅前からは福島駅前に行く高速バスがある。
ということなので、会議で福島環境再生事務所に参上するときはこの高速バスを利用
するのが最も便利な方法となる。
実際、運よく会議の時間がバスの到着時刻にうまく合うときはこれを利用している。
ただ、残念なことに便数があまり多くないので、あらかじめ時間が決められている要
件の場合は利用することが難しい。
どのような具合かと言えば、午前中に福島につく便は 3 本しかなく、午後や夜に着く
便も含めて全7便の福島駅前到着時刻は 8:06、9:11、11:36、13:41、17:06、20:06、21:26
である。だから、例えば 11 時からの会議なら、バスの片道の所要時間は約 2 時間なの
で、7 時頃にはいわき駅前を出て 9:11 に福島駅前に着き、それから 2 時間弱現地での
時間待ちをするといった感じである。
つまり 11 時の会議ならその 4 時間前にいわきを出るということになってしまう。気
分的にも大きな時間のロスが生じてしまう。何といっても、いわき駅前を出発する朝 7
時というのはまだ勤務時間外であるので。
一方で自分が自由に出発時間を決められる車の場合、所要時間も高速バスより短いか
ら、11 時の会議の2時間程度前にいわきを出ればよい。すると、わが社の中間貯蔵管
理センターは 8:30 始業であるから、まずは朝会で所長としてみんなに檄を飛ばし、さ
らに一仕事してから福島に向かえばよい。
こんな感じなので、公共交通機関維持のためにも高速バスを利用したいと思いつつも、
やはり車社会となった地域では郷に入れば郷に従い車社会には逆らえない。
タイムロスの回避、出発時間の自由度、途中でスピードアップなどの時間に合わせた
コントロールもある程度できることなど、魅力満載。
東京にいると、あたかも全国的な傾向として若者はクルマを欲しがるものという方程
式はすでに崩壊していると実感していたのだが、生活実感としては、いわきや福島やほ
かの日本の多くの地方都市圏でしっかり形成された車社会に生きる若者たちには、依然
としてクルマは無くてはならないものである。
私自身は、正直なところ運転することが好きではあるのだが、「公共交通機関維持に
協力していきたい派」に属しており、バスや電車なら帰り道に会議の記録をすぐに作成
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 7 月 第 80 号
1
※無断転載禁止
することができてしまうというメリットも捨てがたい。ちょっと前に終わったばかりの
会議だから、記憶力が落ちても会議内容の記憶を呼び覚ますのに苦労しないし。
もし自分で運転していたらそうはいかない。
いわきまで 2 時間近く運転、その間手を動かす仕事はできない。
それだけではない。いわきのセンターに到着すると、すぐに他の仕事が待っていて、
すぐには記録作成に着手できない。後回しになって遅くなればなるほど、思い出すとい
う工程が必要になる。この、あとから思い出すという工程はだんだん難しくなってきた
ような気がする。
公共交通機関を利用したい理由はここにもある。
ちなみに高速バスと比較して鉄道はどうかというと、JR 磐越東線は高速バスよりも
さらに運行頻度は低くて、残念ながらとても我々の仕事には使えない。
ところで、福島県内での移動なのに、しかもほとんど高速道路を使うのに2時間もか
かるというのは時間がかかりすぎる、よほどゆっくり走るのだろう、などと思われるか
もしれないが、実はいわき市から福島市までは、およそ 120 キロメートルもあるのだ。
東京起点で北関東 3 県の各県庁所在都市まではおよそ 100 キロメートルであるから、
その二割増しの距離があるドライブである。
いわき市が属するのは浜通り地域であり、福島市や郡山市が属するのは中通り地域で
ある。このふたつの地域の間には阿武隈山地がある。
この山地を抜けていく磐越自動車道は結構きついアップダウンが反復して存在する
し、カーブも多い。急な下り坂=速度注意、上り坂=速度低下注意という道路標識に繰
り返しお目にかかる。確かに、速度を常に意識していないとすぐに失速してしまう。
ちなみに、動物に注意、という標識も多い。イノシシかシカかな。
今の季節、この山岳高速道路の運転はフロントウインドウに新緑の景色が広がり、か
なり和む。
いわきのインターチェンジにアクセスするあたりからすでに新緑の世界だが、そこか
ら磐越自動車道はずっと新緑。長い坂を上っていっても新緑、カーブを曲がってあたら
しい視界が開けてもやはり新緑、もちろん長い坂を下りてもやっぱり新緑。
東北自動車道と交わる郡山 JCT に着くまでは車窓はずっとそういう世界だ。
そういえば「緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ・・♪♪」という山口百恵さん
のヒット曲があったなと思い出す。
もしかしたら磐越自動車道ソングか??などと期待感を膨らませるが、残念ながら大
違いである。あの曲では「交差点では隣の車がミラー擦ったと騒いでいるから私もつい
つい大声になる♪♪」と展開していったと思うが磐越自動車道にはさすがに交差点はな
いから歌の世界ではない。
交差点があるとすれば、高速道によって生活圏を分断されてしまったイノシシ氏が、
ここはおいらたちの交差点だぜと横断している、それかもしれないが、この名曲とは別
の物語だろう。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 7 月 第 80 号
2
※無断転載禁止
これまでの巻頭コラムのバックナンバーはこちらから
鏑木儀郎のコラムバックナンバーはこちらから
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 7 月 第 80 号
3
※無断転載禁止