横浜から No,57「資源循環の中部リサイクルを見学して」

ゴミのつぶやき―横浜から(No,57)
資源循環の中部リサイクルを見学して
フォーラム環境塾運営委員長
杉島 和三郎
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はじめに
先月稿(56)は、本年10月初旬のフォーラム環境塾14期生見学会のうちの、中
京地区の一般廃棄物焼却処理施設について筆者の感想を中心に述べた。何れの施設も形
式は異なるものの焼却灰の溶融施設が設置され、減容化の効果は絶大なものがある。し
かし再生品販路と所要エネルギー増加の経済性から、国内の施設の一部では運用中止し
ている施設もあり、見学先でも検討を進めている施設があることを伺った。
そんな中で見学先の最後である中部リサイクル株式会社を訪問したが、正に上記施設
と関連する焼却施設からの焼却灰や飛灰を溶融固化し、再生材として利用していること
を施設の中心に位置づけ、前記の溶融固化の課題の一つに挑戦している姿を見て知見を
新たにした。以下にその概要を述べて諸賢の参考に供したい。
2 矢作製鉄(株)から中部リサイクル(株)への変遷概要
矢作製鉄(株)は1937年(昭和12)に名古屋市港区に誕生しているが、矢作工
業(現東亜合成)が硫化鉄鉱を焙焼して硫酸を製造する際に発生する硫酸滓から、矢作
水力(株)の電力を利用して銑鉄を製造する事業を展開していた。1939年(昭和1
4)には電気炉を設置し鋳物用製鉄メーカーとなって、新日本製鉄などと伍して4位の
製鉄メーカーとなっている。
廃棄物である硫酸滓を有効利用するプロセスは、石油化学などの各種工業でも経済性
を重視し活用されていたが、一部は不法投棄されて公害の原因となったことはよく知ら
れている。現在では資源枯渇と公害防止を前提にする資源化技術と進展しているが、そ
の意味では同社は早くから廃棄物資源化に取り組んできたと云える。
そして1962年(昭和37)には小型高炉を建設し合金鋼の生産も開始したが、オ
イルショックなどを契機として経営が悪化し、資本の移動や生産品の整理などに努力し
たものの1998年(平成10)に解散に至っている。
しかし1996年(平成8)に設立された矢作リサイクル(株)は、産業廃棄物処理
業・特別管理廃棄物処分業の許可を取得し、1999年(平成11)には環境施設企業
の荏原環境プラント㈱、廃棄物輸送の興和興業(株)、溶融固化の再生品を利用する大
有建設(株)の各社が株主となり、中部リサイクル(株)として今日に至っている。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 26(’14)年 12 月 第 73 号
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この間に一般廃棄物処理施設設置認可を取得し、愛知環境省優良賞などを受賞するほ
か、溶融能力の増強、ISO14001の取得、優良産廃処理業者認定取得、(独法)
石油天然ガス・金属鉱物資源機構と「処理物からの金属回収」共同特許の取得などと企
業体質の強化をしている。
3 中部リサイクルの施設概要
同社は「資源循環」を大きく打ちだし、焼却灰類(100t/24H)、飛灰類(2
6t/24H)、汚泥類(30㎥/24H)、廃酸廃アルカリ類(中和40㎥/8H)、
がれき鉱滓類(96t/8H)を対象物とする各プロセスを構築し、各プロセスフロー
を巧みに組み合わせて各種公害基準値をクリヤーしている。
下図は溶融プロセスを中心に示しているが、磁選やスクリーンを経てロータリーキル
ンで乾燥後、電気炉で溶融して鍋にバッチで出銑するが、冷却は屋外で自然空冷である
ことに一般廃棄物の溶融施設と大きな相違がある。スラグは株主である大有建設によっ
て土木建設資材として再利用されているが、自治体その他に活用の販路を拡げ、また工
場構内に庭園を作って地元住民の環境教育にも力を入れている。
また溶融メタルの銅や貴金属は非鉄原料として活用販売している。因みに焼却灰中の
貴金属含有量は富裕層が多い自治体は多い傾向があり、販売金額にも影響するという話
をお聞きし妙に納得した。
投入口での磁選した金属は鉄原料に、バグフィルタからの脱塩処理し脱水機を経由し
た固形物の亜鉛・鉛の非鉄原料は販売され、脱水機からの排水は排水処理され放流され
る。なお溶融後の排ガスはマルチサイクロン経由バグフィルタで集塵され排煙されるフ
ローである。
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4 おわりに
苦闘の歴史を刻んだ同社は、社名のとおりリサイクル事業会社として雄雄しく立ち上
がって繁忙であるとお聞きした。すなわち負の遺産であった旧矢作製鉄施設を上手に活
用する「工場のリユース」であって投下資産を圧縮し、加えて製鉄時代の優秀なエンジ
ニアや技能者の雇用を確保したことが大きいと推察した。
それらは見学にあたっての事前説明、現場の操業状況やプロセス改善説明から強く感
じられたが、処理困難物の産廃処理事業として処理技術の有無が重要であることを再認
識した見学でもあった。(2014・11・30記)
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