「ごみ焼却炉におけるストーカ式焼却炉の考証」 アーカイブ版発刊に思う

ゴミのつぶやき―横浜から(No,62)
「ごみ焼却炉におけるストーカ式焼却炉の考証」
アーカイブ版発刊に思う
フォーラム環境塾運営委員長
杉島 和三郎
1 はじめに
最近アーカイブと銘打って過去の歴史を振り返る例に接することが多い。2015年
(平成27)の今年は太平洋戦争が終わって70年、福知山線事故から10年など、痛
ましい戦争や事故を風化させないようにテレビなどでアーカイブ特集をしている。そん
な折に、筆者が1996年(平成8)~1999年(平成11)にわたって、季刊の「環
境施設」に「ごみ焼却炉におけるストーカ式焼却炉の考証」を14回も連載したが、本
年春に同出版社の篠田前編集長と山根現編集長から、アーカイブとして合本し出版した
いとの問合せがあった。
既に発刊されている近現代史的なものを纏めるだけで、アーカイブの名に相応しいか
と躊躇したが、筆者もスキャンデータはあるものの参照に不便さを感じていたことと、
序文を書くだけと言う編集長の甘い誘いで同意し、3月末には発刊され紙媒体も良いも
のだと感じている今日この頃で蔵書として書棚に収まっている。
2 「ストーカの考証」の執筆動機とアーカイブ発刊
筆者は既に述べたように三菱重工で原動機部門から廃棄物焼却など環境装置の開発
設計に従事し、関連エンジニアリング会社を1994年(平成6)に退職後も、廃棄物
関連コンサルタント・講師・執筆・学会活動をしたので、新しい技術情報や関連業界に
人脈が形成されていた。
その状況を知っていた故宮本房男環境施設編集長から、廃棄物焼却処理のマザーマシ
ン(母機)であるストーカの書籍がないので、後輩への技術伝承を念頭とした執筆の依
頼を受けた。とは云うものの文才も無く勤務した三菱重工分は社の了解が必要で、他社
も執筆了解に困難が伴うので逡巡したが、類書がないことと現役退職後での活動のひと
つとして心が動いた。
そこで筆者が拝命していた環境施設工業会理事・廃棄物学会理事・機械学会環境工学
委員長などの人脈を頼り、各社の責任者に発刊の主旨の説明や記述の公平性に配慮する
ことを前提に、ヒヤリングの機会や関連資料の公開、筆者の原稿執筆後の査読を条件と
してお願いしたところ、ご理解が得られたので執筆をお引受けしたのであった。
しかしスタート時はヒヤリングに時間がかかり、現在も本メルマガで健筆を振るわれ
ている東京都で活躍されておられた溝入茂氏が発刊された、「ごみの百年史」や「近代
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平成 27(’15)年 5 月 第 78 号
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ごみ処理の風景」を参考に、海外をはじめ日本の廃棄物処理発達の歴史を紐解いた記述
で初号を飾ることができ、引用をお許し頂いた同氏に心から感謝している。
引き続き燃焼理論・ストーカの構造などの基礎的事項を述べ、各社のアポを取りなが
ら執筆を続けた。幸い季刊なので4カ月の余裕はあるが、筆者自身の公私に関連する用
務もあり、ヒヤリング・執筆・査読依頼・修正などの執筆工程管理に戸惑った。途中息
切れした時には識者にご出席願って、流動床・ガス化溶融炉・ごみ発電・法改正などを
テーマに、
「どうなる焼却炉の行方」の座談会を記事にしたこともあった。
企業のご協力で執筆したのは、タクマ・日立造船・川崎重工・三菱重工・荏原製作所・
日本鋼管・住友重機械工業・クボタ・石川島播磨重工業・三機工業・川崎技研・三和動
熱の各社であったが、その後の需要変動などから撤退や子会社化してエンジニアリング
会社などに名称変更した社もあり、改めてアーカイブを読み直すと社会変動に感慨を覚
えた。
その一方で前記の座談会のテーマのようにガス化溶融炉が発展し、新日鉄などが復活
参入するほか、東南アジアなどにフルターキーの輸出が活況を呈した時期でもあった。
連載の最終稿はそれらの動向を整理し、社会動向と法整備関連・ごみ焼却炉の処理状況
や各社の技術提携関連・ごみ発電建設状況・東南アジア向ごみ焼却炉輸出状況などの表
を作成、併せて将来の展望などを述べたのであった。
3 おわりに
以上連載の概要や経緯を駆け足で述べたが、アーカイブの単行本の発刊は面映ゆい思
いをしている。連載時には執筆に追われて頁数の概念を持たず、アーカイブ発刊で24
2頁にもなっていることを知って驚き、一時期の断層の切り口を綴っただけだが、連載
後15年余の変遷の萌芽が潜み、新たな変化も生じていることが確認できた。
それらは、RDFやガス化溶融炉の衰退・廃棄物排出量の低下傾向・新方式の流動床
開発・行政の財源不対策としての施設長寿命化・災害時の廃棄物処理施設対策・中韓両
国の建設費低価格対策・EU圏の焼却施設設置動向と国際企業協業化・産廃と一廃の共
同処理検討・PFI進捗上の問題など、多くの課題が山積している。
特に本シリーズ(57)や(59)で述べたように、ストーカや流動床からのボトム
アッシュを各地の施設から輸送して専用灰溶融施設で大量処理する傾向は、ストーカ式
焼却炉に併設された溶融炉の停止や撤去のほか、直接ガス化溶融炉のニーズが少なくな
ってストーカに先祖帰りかと発言している向きもある。
その意味では先人が汗を流して開発や改良を加えたストーカの歴史を述べたアーカ
イブは、「歴史は繰り返す」と云われているので筆者が推奨するのは憚るものの、本稿
でご紹介したした次第である。因みに発売元は(株)公共投資ジャーナル社(〒105
-0003:東京都港区西新橋2-19-2)で、電話03-6721-5371、
Email; [email protected]
で、定価3,000円+税である。最後になるがご協力頂い
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た各社に重ねてお礼を申し上げて本稿の筆を措きたい。(2015・4・30記)
追伸:本アーカイブを依頼されたのは、2015年1月17日に開催された吉葉正行首都
大学東京教授が主催する環境・エネルギーフォーラム in 船橋に出席した際で、本稿のはじ
めに記載したように前・現編集長からであった。
その篠田淳司前編集長は病魔に侵されて現編集長に交代して1年余であったが、廃棄物
処理の在り方について誌上でも力強い提言をされ続け、船橋のフォーラムでもパネリスト
として元気に発言されていた。
その篠田淳司前編集長が本稿投稿時には入院されていたが、訃報のお知らせを5月初旬
に受取り、アーカイブご依頼時の元気な姿を思い出して耳を疑った。お通夜で無事アーカ
イブが発刊された事を報告したが、本稿校正時に間に合ったので経緯を追記しご冥福を祈
りたい。合掌。
事務局より:本記事に紹介されました杉島先生の著書「ごみ焼却施設におけるストーカ式
焼却炉の考証」のご案内パンフレットはこちらから
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