2016年3月7日号(PDF/588KB)

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2016 年 3 月 7 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
2015 年 10-12 月期 GDP(前年比)
今週の注目点
直近
前回
3.0%
2.5%
日付
経済指標・イベント
3 月 10 日 ECB 預金ファシリティ金利
前回
市場予測
-0.3%
-0.4%
金融市場・原油・為替
指数等
S&P/ASX200 指数
2016年3月4日
2016年2月26日
前週比
2015年3月4日
前年比
5,090.03
4,879.96
+4.3%
5,901.59
-13.8%
1,318.6
1,336.8
-1.4%
1,329.9
-0.8%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.32%
2.29%
+3bps
2.36%
-4bps
豪州債券 10 年物利回り
2.55%
2.38%
+17bps
2.64%
-8bps
豪ドル円
84.63
81.24
+3.39
93.56
-8.93
豪ドル米ドル(セント)
74.39
71.26
+3.13
78.17
-3.78
62.9
62.0
+0.9
64.4
-1.5
S&P/ASX200 不動産投信
豪ドル TWI
先週の主な話題
先週もリスク資産持ち直しの流れが続きました。株式市場が上昇したほか、債券利回りは反転上昇、クレジット・スプレッドは縮小、コモディティ
価格は反発、豪ドル相場も 1 豪ドル=0.74 米ドル超まで上昇しました。先週一週間で米国株は+2.7%、ユーロ圏株は+3.5%、日本株は+5.1%、
中国株は+3.9%、豪州株は+4.3%と軒並み上昇しました。直近安値と比べて、米国及び世界の株式は+9%、豪州株は+7%、原油は+37%、豪
ドルは+8%、鉄鉱石は+34%持ち直しています。こうした幅広い回復は、世界経済の先行きについてこれまで悲観論が行き過ぎていたことの表
れであると思われます。
株式やその他のリスク資産の回復を促した要因として、以下の通り、複数の要因が考えられます。
第 1 に、世界経済の成長が幾分減速したと見られるものの、壊滅的ではないことです。年初には各国株式市場が織り込みつつあった景気後退
は、特に米国において顕著であるように、足元の経済指標においてその兆候を全く示していません。このことを如実に表すのが、2 月の雇用統
計の結果です。雇用者数は 24 万 2,000 人増となり、米国経済が底堅さを維持していることが示唆されるなか、労働参加率が上昇、平均時給の
伸び率も鈍化したことから、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを見送る余地が多分に残された形です。
第 2 に、現在、中央銀行が市場の不安払拭に取り組んでいることです。先週、ニューヨーク連銀ダドリー総裁が、インフレ見通しについての警戒
感や世界経済の動向が米国経済に及ぼす影響についての懸念を表明し、利上げに慎重な姿勢を示しました。その結果、3 月米連邦公開市場
委員会(FOMC)会合で利上げが見送られるとの見方が強まりました。また、中国人民銀行(PBOC)も、銀行の預金準備率を引き下げ、追加の
金融緩和を実施しました。
第 3 に、人民元相場がここ最近、落ち着きを取り戻しつつあることなども一助となり、中国の政策を巡る不透明感が解消されたと見られることで
す。(年初に人民元が下落した際には、投資家心理を悪化させる主因となりました)。
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最後に、豪州において、GDP が予想を上回る伸びを示し、国内の銀行や住宅市場に対する警戒感が緩和されたことです。
もちろん、今後も FRB の動向や世界経済の減速に関する懸念を背景に、度々市場の回復力が試され、ボラティリティも高まる可能性が高いこと
から、金融市場が(現時点で好調だからといって)、波乱なく推移すると考えるのは早計です。とは言え少なくとも、市場が冷え込んだ過去数ヶ月
と比べれば、状況は改善しているように思われます。
先週、やや憂慮すべき動向がありました。米大統領予備選挙におけるドナルド・トランプ氏の快進撃です。予備選挙の山場であるスーパー・チュ
ーズデーの結果を受け、11 月の本選挙はクリントン氏対トランプ氏の対決となる可能性が一段と高まっています。共和党予備選挙におけるトラ
ンプ氏の支持率は依然 30~40%に留まってはいるものの、「反トランプ」票が特定の共和党候補者に一本化されていないことから、結果的にト
ランプ氏に有利な状況が生まれています。従って、「反トランプ」派候補を絞ることが先決と言えるでしょう。共和党の主流派はここへ来て巻き返
し始めたようであり、トランプ氏の勢いを阻止できる可能性もあります。
一方、民主党クリントン氏が大統領に就いた場合もまた、政権運営が難航すると予想されます。これは特に、共和党が議会多数派を占めている
ためですが、その分、政策の合理性は高まると考えられます(この点に関し、ビル・クリントン政権期が想起されます)。トランプ氏が大統領の座
を勝ち取るかどうかは不透明であり、同氏の主張には理解し難い部分も見受けられます。更に、こうした主張や一連の過激な発言を別にしても、
実際、大統領としてどのような政策を行う方針なのか、明確には見えてきません。トランプ氏が大統領に就任した場合には、議会が彼を賢明な
路線に導くことが期待されますが、希望的観測に過ぎないかもしれません。しかし、そうなる前の段階で、中道派の有権者の間に良識ある判断
が広がることを願うべきでしょう。
世界経済指標
米国の経済指標は好調な内容となりました。2 月の ISM(米供給管理協会)製造業景況指数は、前月に続き新規受注が高水準となるなか、前
月比+1.3 ポイントの 49.5 を記録、ISM 非製造業景況指数も底堅さを維持したほか、1 月の建設支出は予想を上回り、2 月の雇用統計も良好な
結果を示しました。
ユーロ圏では、1 月の小売売上高が予想を上回りました。失業率は低下基調を維持、一方 2 月の各種購買担当者景気指数(PMI、改定値)が
若干上方修正されたことから、2 月下旬に掛けて(株式市場の回復と歩調を合わせる形で)経済状況が改善した可能性がうかがえます。
日本の経済指標はまちまちの結果を示しました。鉱工業生産が予想以上に増加、雇用関連指標も力強さを維持した反面、家計調査・消費支出
は依然として弱い結果となっています。
中国では、2 月の各種 PMI が総じて期待外れの内容となったことから、中国経済が今年に入り、若干減速した可能性が読み取れます。もちろ
ん、この結果には、春節(旧正月)時期のずれによる統計上の歪みも影響を及ぼしたと考えられますが、先週、銀行預金準備率を 0.5%引き下
げ 17%とする追加の金融緩和が発表されたことから、当局が引き続き経済成長の押し上げに注力していることが推察されます。また預金準備
率はなお高水準であることから、今後、更なる引き下げも見込まれます。他方、不動産価格は上昇を続けており、捜房(SouFun)調査において
主要 100 都市の 2 月の住宅価格が平均 0.6%上昇したことが明らかとなりました。この点に関するリスクとして、主要都市で再び投機バブルが
発生する恐れがあり、更に、株式市場と不動産市場で一進一退が続いていることを踏まえれば、株価の低迷につながる可能性も想定されます。
一方で、第 4 回全国人民代表会議では、今年の経済成長目標が 6.5%~7%に設定され、財政赤字が若干拡大し、いくつかの経済改革が発
表されるなど、経済面では特段の新しい展開はありませんでした。
豪州経済指標
豪州の経済指標は極めて好調な結果となりました。15 年 10-12 月期 GDP が予想を大きく上回り前年比+3%の伸びを示したほか、2 月の
AIG(オーストラリア産業グループ)製造業及びサービス業 PMI は着実に上昇、1 月の小売売上高及び HIA(豪州住宅協会)新築住宅販売件
数もプラスを維持、貿易赤字は縮小しました。先行きについては、資源投資の縮小が続いていることから、16 年の GDP 成長率は+2.5%前後ま
で減速すると見られます。また、資産効果の剥落が個人消費の重石となり、住宅建設許可件数の伸びが鈍化するなか住宅建設の経済成長へ
の寄与も縮小すると考えられますが、豪州経済は以下の理由から、引き続き下支えを受ける見通しです。(1)低金利と豪ドル安が非鉱業セクタ
ーに好影響を与えていることは明らかで、特に観光や高等教育セクターの外貨収入の拡大につながっており、(2)新たな LNG 輸出プロジェクト
も輸出高の伸びを支えると見られ、(3)豊富な人口を抱えるニューサウスウェールズ州やビクトリア州では力強い成長が続くと予想されます。
豪州準備銀行(RBA)は 3 月の理事会で緩和姿勢を維持し、「インフレ率が低水準で推移している(2 月の声明で『可能性がある』としていたの
とは対照的です)ことから、適切な場合に、一段の緩和策を実施する余地が生まれており…」と述べ、緩和バイアスがやや強化された模様です。
とは言え、GDP の伸びが RBA の予想を上回るなかでの追加利下げは考えにくく、失業率の上昇がカギと見られます。以上を踏まえ、私自身
は「RBA は今後追加利下げの必要性に迫られる」との見方を維持していますが、その可能性は非常に際どいものになったと言えるでしょう。
一方、主要都市の住宅価格は 2 月の伸び率が+0.5%と緩やかな水準となり、前年比では+7.6%と、2015 年 7 月に記録した直近のピーク
(+11.1%)から大きく鈍化しています。シドニーは引き続き鈍化傾向にあり、弊社では、シドニーとメルボルンの住宅価格が今後、以下の図のよ
うな推移を辿ると予想しています。
出所:コアロジック RP データ、AMP キャピタル
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今週の注目点
向こう 2 週間には、主要中央銀行の定例会合が集中しており、欧州中央銀行(ECB、10 日)、日銀(15 日)、FRB(16 日)の各会合を控えてい
ます。ECB 理事会では、ユーロ圏で加速するデフレや銀行リスクへの対応策として、量的緩和プログラムの月間購入額の拡大が打ち出される
見通しです。具体的には、社債を買い入れ対象に含め、現在月額 600 億ユーロとしている資産購入規模を 700 億ユーロまで引き上げる措置が
想定されます。このほか、銀行向けの低利融資(長期リファイナンスオペ(LTRO))の再開も可能ですが、銀行間貸出金利が低水準に留まって
いることから、実効性は低いと見られます。ECB はまた、中銀預金ファシリティ金利を現行の-0.3%から更に 10bp(ベーシス・ポイント)引き下げ
ることも検討している可能性もありますが、(マイナス金利導入によって混乱を招いた)日銀の経験を再考するべきでしょう。
中国では、2 月の経済指標の発表が予定されていますが、この時期の統計結果は春節(旧正月)休暇のタイミングによる歪みが生じやすいとい
う点に留意する必要があります。貿易収支については引き続き低迷が予想され、消費者物価指数は前年比+1.8%に留まり、生産者物価指数は
前年比の低下幅が前月同様やや縮小、新規融資は大幅に拡大した 1 月から鈍化、鉱工業生産の伸びも僅かながら減速が見込まれる一方、小
売売上高はやや増加すると見られます。
米国では、FRB のフィッシャー副議長の講演も控えており、利上げに関して何らかの手掛かりが得られるかに注目が集まるでしょう。
相場見通し
株式はここ最近売られ過ぎの状態にありましたが、先週に入り着実に持ち直し、この流れが加速することも考えられます。しかし、FRB はなお
年内の利上げを検討しており、世界経済の減速懸念も残っていることから、短期的には不安定な相場展開が続く見通しです。また目先の不透
明感が解消された場合には、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に金融緩和が加速していること、緩やかな経済成
長が続いていることから、株式市場は今年、上昇基調を辿ると弊社は見ています。
債券利回りが極めて低い水準にあることから、ソブリン債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられますが、不安定な経済成長、
余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取ることは難
しいと言えます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は、主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前
後まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
RBA が今後政策金利を 1.75%まで引き下げる可能性があることから、キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まると考えられ
ます。
豪ドル相場については、FRB による利上げ見送りが続き、豪州の経済指標が改善すれば、短期的には一段と上昇するリスクがあります。しか
し、行き過ぎの水準となる可能性は低く、下落基調を維持するでしょう。というのも、(1)RBA は最終的には追加利下げに踏み切るか、少なくとも
口先介入を実施、FRB もいずれ利上げを再開すると見られ、それに伴い、これまで豪ドル高の要因となってきた豪州・米国間の金利差が縮小に
向かうと予想され、(2)コモディティ価格は依然低迷しており、(3)豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回るのも珍しいことではないためです。
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