2016年4月26日号(PDF/807KB)

お客様用
2016 年 4 月 26 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
熟練技能者求人
今週の注目点
直近
前回
-1.2%
-0.9%
日付
経済指標・イベント
4 月 28 日 米 1-3 月期 GDP (年率/前期比)
前回
市場予測
1.4%
0.6%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年4月22日
2016年4月15日
前週比
2015年4月22日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,236.37
5,157.49
+1.5%
5,837.49
-10.3%
S&P/ASX200 不動産投信
1,365.70
1,372.90
-0.5%
1,280.50
+6.7%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.28%
2.28%
+0bps
2.27%
+1bps
豪州債券 10 年物利回り
2.63%
2.56%
+8bps
2.44%
+20bps
86.17
84.01
+2.16
93.00
-6.83
豪ドル米ドル(セント)
0.77
0.77
-0.00
0.78
-0.00
豪ドル TWI
65.1
64.7
+0.4
63.9
+1.2
豪ドル円
先週の主な話題
年初から市場の重石となっていた成長への懸念が引き続き後退しており、ドーハでの会合で OPEC とロシアが増産凍結の合意に至らなかった
にもかかわらず原油価格が8%も上昇するなど、市況環境が改善する中、世界の株式市場は先週も上昇しました。米国株は 0.5%の上昇に留
まりましたが、欧州株は 2%、日本株は 4.3%、豪州株が 1.5%それぞれ上昇し、豪州株式市場は 2015 年年末の水準付近まで値を戻しました。
景気対策期待の後退から、中国株は 3.9%下落しました。市場が‘リスクオンモード’になったことで、債券利回りとコモデティティ価格は上昇、豪ド
ルも1豪ドル 0.78 米ドルまで上昇しましたが、最終的には1豪ドル 0.77 米ドルで取引を終えました。鉄鉱石価格も1トンあたり 70 米ドルをつけ
ました。世界を取り巻く鉄鋼の過剰供給の問題はどこに行ってしまったのでしょうか?
主要生産国の間で増産凍結が合意に至らなかったにもかかわらず、原油と株式市場が上昇トレンドにあることは、非常にポジティブな傾向です。
ドーハ会合については、有力産油国であるサウジアラビアと既に生産能力がほぼ上限水準に達しているロシアの参加が注目されていましたが、
イランは参加の見込みが当初から薄く、原油価格とリスク資産の上昇は、他の様々な要因によってけん引されています。グローバルの原油需要
は緩やかに回復しており、アメリカを初めとする他の産油国からの供給が減少していることから、ドーハ会合の結論とは関係なく、原油市場の均
衡は進んでいます。
弊社としては、株式市場の上昇トレンドがしばらく継続するという見方を維持する一方、次の波乱要因としては、米連邦準備制度理事会(FRB)
による追加利上げについての議論の再開と見ており、債券利回りは再度上昇傾向にあるため、株式市場のバリュエーションの重石となることに
懸念を抱いています。市場は、デフレと成長という不安の間を行き来し、債券利回りの上昇と FRB による利上げに対する恐怖は過去数年間に
渡り市場を支配し続けています。
ニューヨーク州の予備選で勝者となった 2 名について、ヒラリー氏は民主党候補者への地位を固めた一方、トランプ氏も7月の共和党全国大会
で指名を得るチャンスが残っています。トランプ氏は、全国党大会に向けて過半数を獲得するためには、残りの党員集会で代議員の 53%を獲
得する必要があります。現在のところ 48%に留まっていますが、共和党全国大会での勝利のチャンスは依然として残されています。興味深いこ
1/3
とに、これまでの予備選の一般投票でトランプ氏が獲得した代議員数は全体の 34%に留まっており、まだ過半数の支持は獲得していません。
次回の共和党予備選挙は 4 月 26 日の予定ですが、6 月 7 日の 172 人の代議員を有する大票田のカリフォルニアの動向が重要となります。未
だに長い道のりです。
オーストラリアは、上院にて法案が二度否決され、憲法上、上下両院同時解散選挙が可能になったため、7 月 2 日の上下院同時解散総選挙に
一歩近づきました。もちろん 5 月 3 日の予算発表が終わるまで解散は宣言されませんが、2013 年と同様に選挙日が事実上大幅に前倒しで発
表され(のちほど変更となりましたが)、オーストラリアでも事実上長丁場の選挙キャンペーンとなりそうです。各党の政策の違いについて話すの
は時期尚早ですが、労働党は税金の引き上げ(ネガティブギアリング、スーパーアニュエーション、キャピタルゲインなどに対する軽減税率の抑
制)などによって財政再建に力をいれる方針と見られ、一方で自由党・国民党連合は、税金の引き上げも行うものの、同時に歳出抑制により力
をいれる方針であることは明らかです。選挙そのものが及ぼす短期的な影響としては、家計や企業の支出に関する判断が選挙期間中は保留に
されるとうことがありますが、事実上長い選挙活動期間となる今回、そのリスクは高いと考えられます。カンタス航空は既にそのリスクを指摘して
います。しかしながら、過去に選挙が行われた年を見ると、経済成長が抑制されたという明確な傾向はありません。1980 年以降の選挙が行わ
れた年の経済成長率は 3.7%と、この期間全体を平均した 3.2%を上回っています。株式市場については、選挙期間中軟調に推移する傾向が
見られますが、しかし、選挙後の3か月間の平均リターンは 4.9%と好調で、問題はないと言えるでしょう。
出所:トムソン・ロイター、AMP Capital
豪準備銀行(RBA)のグレン・スティーブン総裁の金融政策には限界があるという見解は正しいと考えます。金融政策は、成長局面における循
環的な変動による下ブレを一部オフセットすることができますが、いわゆる“長期的なスタグネーション”を解決する手段は持っていません。成長
の妨げとなるものを取り除き、生産性の高い資産への投資を促すのは、政府の役割です。中央銀行の使命は、通常 2%程度が目標とされるイ
ンフレターゲットを安定的に達成することで、インフレ率が目標を恒常的に上回ったり下回ったりする場合は、介入をする必要があります。これが
直近の中央銀行による行動の背景で、日本のように金融政策の手段が限定されてきている国では、ヘリコプターマネー(紙幣を刷って政府支出
や税金引き下げをファイナンスすること)が議論されています。幸いにもオーストラリアは、仮にインフレーションが長期に渡って目標を下回るよう
な事態になった場合(現在直面しているリスクですが)でも、伝統的な金融政策における手段が多く残されています。
世界経済指標
米住宅市場の指標は、住宅着工と建築許可件数は低下したものの、NAHB 住宅市場指数と中古住宅販売は堅調な内容で、まちまちな結果と
なりました。その他の米国マクロ経済指標は、4月の製造業 PMI が低下、住宅価格は上昇、先行指標と失業保険申請者数は低下するなど、こ
ちらも強弱入り混じる結果となりました。これまでに S&P500 社の 26%が3月期の業績を発表し、このうち 82%の企業が予想利益を、59%の
企業が予想売上高を上回りました。
ECB(欧州中央銀行)は 3 月に大胆な政策パッケージを発表した後、今回の会合では予想通り政策の据え置きを発表し、ドラギ総裁は必要で
あれば追加的措置をとるとの考えを示しました。ECB の銀行貸出調査ではローン需要の堅調な伸びが確認され、また、4 月のコンポジット PMI
も底堅い内容となりました。
日本の製造業 PMI は、直近の地震が影響した可能性があり、48 まで低下しました。
中国の住宅価格は、一級都市にけん引され上昇が続いています。これは景気回復の兆しを示すその他の経済指標とも一致しますが、同時に、
いくつかの都市においてバブルが指摘されているため、政策が変更されるリスクともなりえます。
豪州経済指標
オーストラリアでは、経済指標の発表が比較的少ない一週間でした。3 月の熟練技能者求人が減少しており今後雇用の増加が鈍化する可能性
を示唆しています。
今週の注目点
アメリカでは、水曜日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)に注目が集まっています。今回の会合で追加利上げが実施される可能性は
非常に低いものの、ドットプロット(FOMC 参加者による金利予測)は今年 2 回の利上げを予測しており、6 月、7 月の会合において追加利上げ
を実施するというシグナルが発信されるかもしれません。「慎重に追加利上げを行う」というジャネット・イエレン議長からの最近のコメントは、来
週利上げを実施する可能性が、ほぼゼロに近いことを示唆しています。しかしながら、現在市場で織り込まれている利上げの確立は、6 月で
20%、7 月で 34%と低いことから、利上げに対する織り込みがすすむよう FRB が市場の期待に働きかける可能性があります。ただし 6 月は、
英国における EU 離脱の是非を問う国民投票と、ギリシャの債務削減交渉が行われることから、FRB は 6 月の利上げを回避するかもしれませ
ん。
アメリカで発表予定のマクロ経済指標は、新築住宅販売と耐久財消費受注は増加、住宅価格指数は引き続き上昇トレンド、消費者信頼感指数
は横ばいになると見られます。1-3 月期の GDP 成長率は前期比年率 0.5%、雇用コスト指数は前年比 2%程度と低く留まり、インフレ率は 3 月
のコア PCE デフレーターが前年比 1.5%と予想されています。1-3 月期の GDP 成長率は前期比年率 0.5%と低い予想ですが、季節的な要因
2/3
から過去 20 年間に渡り当期の成長率は平均で 1%と、4-6 月の平均 3%と比べても低くなる傾向があります。また、3 月期の決算発表も続きま
す。
FRB の動向が確認された後、市場の注目は、追加緩和を実施する可能性の高い日銀へと移行するでしょう。直近見られる円高の進行や、成長
率とインフレ率の鈍化、地震の影響などを踏まえると、ETF や REIT、社債の買い入れ額の増額やマイナス金利幅の拡大などを通じて金融緩和
が強化される可能性があります。また、経済指標では、消費者物価指数と家計支出、鉱工業生産などが発表される予定です。
ユーロ圏の 1-3 月期 GDP は前期比 0.4%へと鈍化する見通しです。経済信頼感は、3 月に低下しましたが今回発表分は改善が予想されてい
ます。インフレ率は 4 月も低水準となる見通しです。
オーストラリアでは、1-3 月期の消費者物価指数に注目が集まっており、低いガソリン価格と価格決定力の欠如が、ヘルスケアと教育の季節的
な上昇を相殺し、前期比で 0.3%、前年比で 1.8%となる見通しです。CPI トリム平均値は、前期比で 0.5%、前年比で 1.9%上昇する見込みで
す。インフレ率は、引き続き RBA の目標の下限を下回る見通しで、そのため弊社は RBA が追加利下げを実施すると予想していますが、今回発
表されるインフレ率が予想を大幅に下回る低下をしない限り、5 月の利上げは難しいと見ています。また、輸出と輸入物価、生産者物価、そして
民間部門信用も発表される予定です。
相場見通し
5 月に向けて、株式市場のボラティリティは短期的に高い状態が続くと見られます(相場の格言に、“5 月に売って、いったん市場から立ち去り、
セント・レジャー・デー(競馬のレースが行われる 9 月の第二土曜日)まで戻ってくるな”という格言があります)。FRB は徐々に次の金利引き上
げに向けて市場への働きかけを始めるでしょう。しかし、短期的なボラティリティは見られるとしても、今年は年末に向けて株式市場はさらに上昇
すると見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に金融緩和が加速していること、緩やか
な経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。しかし、不安定な経済
成長、余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取るこ
とは難しいと言えます。相対的に見て、豪州、米国、中国など、高い利回りを提供する国の債券には投資妙味があると考えられます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前後
まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
RBA が今後政策金利を 1.75%まで引き下げる可能性があることから、キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まると考えられ
ます。
豪ドル相場については、FRB が利上げを見送り続け、豪州の経済指標が改善すれば、1 豪ドル 0.8 米ドル程度まで短期的に一段と上昇するリ
スクがあります。しかし行き過ぎの水準となる可能性は低く、長期的には下落基調を維持するでしょう。というのも、RBA は最終的には追加利下
げに踏み切るか、少なくとも口先介入を実施、FRB もいずれ利上げを再開すると見られており、それに伴ってこれまで豪ドル高の要因となってき
た豪州・米国間の金利差が縮小に向かうと予想されるほか、コモディティ価格は依然低迷しており、豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回る
のも珍しいことではないためです。
3
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
AMP キャピタル・インベスターズ株式会社
ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
有価証券への投資を勧誘する目的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されており
加入協会: 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
ますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。当資料中のいかなる内容も将来の投資成果及び将来の市況環境の変動等
を保証するものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
3/3