2016年7月19日号 (PDF/427KB)

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2016 年 7 月 19 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
7 月 ウェストパック消費者信頼
感指数
今週の注目点
直近
前回
-3.0%
-1.0%
日付
経済指標・イベント
7 月 21 日 欧州 ECB 預金ファシリティ・レート
前回
市場予測
-0.4%
-0.4%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年7月15日
2016年7月8日
前週比
2015年7月15日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,429.57
5,230.54
+3.8%
5,636.23
-3.7%
S&P/ASX200 不動産投信
1,510.50
1,495.50
+1.0%
1,281.00
+17.9%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.95
1.97
-2bps
2.15
-20bps
豪州債券 10 年物利回り
1.97
1.88
+9bps
3.03
-106bps
79.48
76.10
+3.38
91.33
-11.85
0.76
0.76
+0.00
0.74
+0.02
64.30
63.10
+1.2
62.40
+1.9
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
米国や中国における良好な経済指標の発表、米国の底堅い決算報告や日本における一段の刺激策が確実視されたことから、先週の市場では
再びリスクオンモードが拡がりました。米国株が 1.5%上昇して過去最高値を更新し、欧州株と日本株もそれぞれ 3.9%、8.9%上昇して Brexit
による下落を取戻しました。グローバル株は去年の高値からの下落傾向を終わらせ、豪州株は 3.8%上昇して今年の最高値に達しました。中国
株も 2.6%上昇しました。更に、コモディティ価格もまずまずとなり、クレジットスプレッドが縮小、債券利回りも上昇し、米国 10 年債は 19 ベーシ
ス・ポイント(bps)上昇しました。豪ドルはほぼ横ばいとなりました。
そのため、市場は概して Brexit 投票後の数日間に見られた直後のパニック的な反応から一歩前進しました。その要因はなんでしょうか?市場に
おける反発を説明するのに以下 8 つの要因が考えられます:
1) 各国中央銀行が Brexit 後のグローバル金融政策をより緩和的かつ長期的とすることを示唆したこと。
2) 債券利回りの低下により、株式の相対的な魅力が一段と増したこと。
3) Brexit 後の EU あるいはユーロ圏の離脱に対して、他の欧州諸国から大きな共感を得たようには見受けられないこと。実際スペインの選挙
によって浮き彫りとなったように、かえって離脱とは反対の方向に傾いているように思われます。もちろん欧州諸国が常に英国以上に自国を
「欧州圏」と感じていたことは念頭に置いておく必要があります。
4) グローバル経済指標は全体的に良好であったこと。非常に懸念されていたグローバルの景気後退の兆候は見られませんでした。
5) 米ドルと原油価格の安定化により、米国企業の業績は底打ちの兆候を示しています。
6) 投資家が足元の中国人民元の下落について、落ち着きを見せていること。その理由として、中国からの資本流出に歯止めがかかりつつある
こと、外国からの中国資産への需要が見られること、人民元市場の崩壊はないと中国政府が改めて断言したこと、人民元の為替の変動が
落ち着きを見せたこと等がおそらく影響していると思われます。
7) 投資家が実際の離脱までにはまだ長い時間がかかり、その影響は軽く済むかもしれないことが認識されたことも要因かと思われます;そして
8) Brexit の混乱、中国の債務、米国の減速、混戦となった豪州の選挙に対する今までの議論が弱気に傾き過ぎであったように思われたことか
ら、かえって市場が大きく反発するきっかけとなったようです。
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日本では、安部首相率いる与党連合が参議院選挙で勝利したことで、安部首相が「アベノミクスをしっかりと加速せよということだと思う。」とコメ
ントし、日本の更なる景気刺激策を決定づけたように思われます。一連の大型の景気刺激策や、おそらく日銀(BoJ)の 7 月 29 日の金融政策決
定会合において一段の金融緩和がなされるとの期待から円安を後押ししました。日本は、「ヘリコプターマネー」を実施する見込みが高くなってい
ます。すなわち、中央銀行による財政ファイナンス、恒久的な減税等の方法で実施されるかもしれませんが、最初のうちは用いられない可能性も
あります。
イングランド銀行(BOE)は 7 月の金融政策委員会の金融緩和を見送る中、「委員会の大半のメンバーが 8 月に金融緩和政策を見込んでいる」
とする議事録で今後の緩和方針を明らかにしています。
一方、英国新首相となったテリーザ・メイ氏は、Brexit 離脱派の主導的存在だった議員を任命し、国民に対して妥協点(自由貿易取引を継続す
るために移民を受け入れる必要がある、など)を説明する義務を与え、もし Brexit 交渉が上手くいかなかったら、非難の責任を取らせることにし
ました。リスボン条約第 50 条は来年まで持ち出されない可能性もあり、また、その時までに英国の景気が減速し、Brexit への賛成論が弱まった
場合、Brexit 自体への賛成論を抑えることもできるかもしれません。そのため Brexit の影響を軽く済ませることも出来るかもしれませんし、ある
いは Brexit を撤回することも出来るかもしれません。いずれにしても Brexit は今後も問題となるものではありますが、市場はそれらを取り巻くす
べてのノイズとともにそれを甘んじて受け入れることを学ぶであろうと思います。カギとなるのは、もし Brexit が、EU 残留以上により多くの困難
があることが明らかとなったならば、ドミノ倒しのように EU 離脱が進むリスクは大きく減少するであろうということです。
さらにより根本的な解決として、メイ首相はまず Brexit への投票を促したとされる不平等を削減することに焦点を合わせることを示しました。政府
が特に米国と英国では顕著となっている不平等に対処する必要があるのは明らかである一方で、経済的合理主義政策から乖離することで最終
的には生産性や成長を脅かすリスクに直面し、1970 年代に経験したような投資リターンになる恐れがあります。
先週、南シナ海における緊張、フランスでのテロ攻撃、トルコでのクーデター未遂事件など、地政学的リスクが再び高まりました。
 国連の仲裁裁判所が、南シナ海における係争中の「島」に関する帰属問題に対してフィリピンの申し立てを支持する裁定を下したことで、ま
た一つ地政学的リスクを引き起こしました。中国の外務省は判断が「無効である」と強く反発し、その後中国から防空識別圏(ADIZ)を主張す
る談話が発表されました。ただ日本とも 2013 年に島を巡って中国により ADIZ が宣言されましたが、実際には実施には至りませんでした。
また、中国外務大臣は、中国寄りのフィリピンの新大統領との直接交渉によって平和的に解決したいとの意思を示しました。南シナ海では多
くの地政学的リスクが散見されますが、これは何年にもわたって続いており、時々火花が散ることがある程度で何とか収まっています。
 先週、フランスで起こった悲惨なテロ行為はフランス株式市場に静かなネガティブインパクトを与え、金曜日は- 0.3%と下落し、観光関連株
も下落しました。しかし金融市場が、このような攻撃に対して耐性が出来ているように見えることや、最近のテロ攻撃の市場への影響が長く
は続かないということは注目すべき事であると思われます。
 軍隊が民主主義と自由を取り戻すと宣言し、トルコでクーデター未遂が起こったことはトルコが位置する紛争地域の地政学的リスクを一段と
深めました。しかし、少なくとも 1960 年からトルコで起こったクーデターとしては 4 回目で、当然、トルコにとっては良い結果をもたらすもので
はありませんが、グローバル市場に長期的な影響を与えるとは思えません。
世界経済指標
米国経済指標は良い結果となりました。小売売上高と鉱工業生産は予想を上回り、NFIB 中小企業楽観指数は若干ながらも上昇しました。
JOLT(求人労働移動調査)求人件数は若干低下したものの引き続き堅調となり、失業保険申請件数は引き続き超低水準となっています。コア
CPI は 6 月までで前年比 2.3%と上昇し、デフレリスクが後退し、個人支出コアデフレーターは前年比 1.6%の伸びを見せています。米連邦準備
制度理事会(FRB)のメンバーは雇用統計発表された後、また Brexit の影響に関して米国経済について安心感を見せており、今年まだ 1 回の
利上げの可能性が残っていることを示唆しました。米国金融市場は、今年の利上げの可能性について、雇用統計発表前はわずか 12%しか織り
込んでいませんでしたが、依然その可能性は低いものの、今は 45%に上昇しています。一方で、実際に米ドル高がどこまで進むか、もしくはそ
の可能性がどの程度高まるかが、FRB にとってどこまで金利を引き上げるかの制約になるでしょう。
日本では、機械受注や賃金成長の減速が顕著となり、一段の政策刺激策への圧力となっています。
中国の成長は安定しています。4-6 月期の国内総生産(GDP)成長率は 6.7%と横ばいとなる中、6 月の経済指標は、輸入と固定資産投資は
やや下落したものの、鉱工業生産、小売売上高、資金調達総額とマネーサプライはすべて市場予想を上回り上昇しました。長期間減速傾向が
続いていた中国の経済成長率は 6.5%を若干上回る程度で安定しているように見え、コモディティ価格と、豪州にとってポジティブ要因となってい
ます。一方 PPI が低下を続けていることは良い傾向ですが、コア CPI(除く食品)が前年比 1.2%と低く推移していることから、さらなる財政刺激
策の余地があることを示しています。
豪州経済指標
豪州の経済指標はまずまずとなりました。ウェストパック消費者信頼感指数はおそらく混戦となった選挙結果や、Brexit などに反応して下落した
のに対して、低下幅は僅か 3%となっており、ここ数年間の高いレンジを維持しています。一方選挙前であるものの 6 月の企業景況感は堅調で
した。住宅着工件数は 1-3 月期上昇し、労働市場も 6 月は堅調さが続きました。弊社では豪州準備銀行(RBA)が来月再び金利引き下げを行
うとの見方を維持していますが、足元の経済指標がまずまずの結果を示していることから、実際に引き下げが行われるかどうかは 7 月 27 日に
発表される 4-6 月期のインフレ率がさらに下落した場合となるでしょう。6 月のナショナル・オーストラリア銀行(NAB)調査において、小売価格
の下落傾向がはっきりと見受けられています。
今週の注目点
米国では、NAHB 住宅市場指数は堅調となると見られ、住宅着工件数および建設許可件数は上昇が見込まれます。FHFA 住宅価格指数は上
昇すると見込まれますが、中古住宅販売件数は若干の減少、マークイット米国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 51.5 と予想されています。
クリーブランドでの共和党大会(7 月 18-21 日)は 11 月の大統領選挙に対する焦点となるでしょう。
米国の 4-6 月期の決算報告を迎え、S&P100 種及び 500 種組み入れ銘柄の報告が始まります。市場コンセンサスとしては 4-6 月期の収益
は前年比 4%の下落と見ていますが、米ドル高が一服したことや原油価格が安定したことから、1-3 月期と比較した場合およそ 7%上昇となる
と見込まれます。言い替えれば、米国企業の収益減速が止まったと言えます。
欧州では、欧州中央銀行(ECB)は木曜日に開かれる理事会において、金融政策を現状維持すると見られ、年始早々に発表した一段の緩和政
策の効果を静観する見込みです。しかし、引き続きハト派であることは変わりはなく、Brexit 及びイタリアの銀行に関するリスクを注視するとして
います。もし緩和策がとられる場合、量的緩和(2017 年 3 月以降)と銀行への流動性支援プログラム(TLTRO)の拡大が現時点では有望です。
一方、7 月の各種 PMI は Brexit からの影響を見極める為注目を集めると見られます。ただ、その結果は市場予想を大きく逸脱しないと思われ
ます。
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日本では、7 月の日経日本 PMI 製造業が、6 月の 48.1 の低水準から回復するかが注目されます。
豪州では、直近の RBA 金融政策会合の議事録が公表され、7 月 27 日にリリースされる 4-6 月期の CPI が期待インフレ率を下回ることが確
認されるなら、もう一段階の金利引き下げの可能性を示唆すると見られます。技術職求人もリリースされます。
相場見通し
Brexit の不確実性やイタリアの銀行のリスク、米ドルの上昇に加えて、季節要因として 7-9 月期は軟調となる傾向が高いことから、短期的には
株式市場のボラティリティが一段と高まることが予想されます。とはいえ、短期的な不確実性の後には、まずまずのバリュエーション水準や世界
的に超低金利環境が継続していること、緩やかな経済成長が続いていることなどを背景に、株式市場は年末にかけて上昇トレンドになると見て
います。
(グローバルで国債利回りの 3 分の 1 がマイナス金利となっている)超低水準の債券利回りにより、中期的には債券からのリターンは軟調となる
見込みです。しかし、脆弱な世界経済成長、余剰生産能力、低インフレ及び現在進行形の様々なイベントリスクを鑑みると、過度に弱気になるこ
とは難しいと思われます。とはいえ、最近の債券利回りの上昇は、債券利回りが急騰するリスクをはらむほど、非常に低い水準となっています。
新たに FRB の金利引き上げ観測は原動力となるかもしれません。
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、融資基準の厳格化と供給増加によってシドニー、メルボルンでの過熱感が沈静化に
向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。住宅価格はパースとダーウィンで低下が続くと見られます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
豪ドルはまだフェアバリュー(適正価値)よりは高いことから、長期的には下落基調となるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行
っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、引き続き国債の格下げリスクが高
まっていること、コモディティ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリューを下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは今後 1 年
間で、1 豪ドル 0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
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当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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