2016年8月8日号 (PDF/367KB)

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2016 年 8 月 8 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
豪準備銀行 政策金利
今週の注目点
直近
前回
1.50%
1.75%
日付
経済指標・イベント
8 月 12 日 米国 7 月小売売上高(前月比)
前回
市場予測
0.6%
0.4%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年8月5日
2016年7月29日
前週比
2015年8月5日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,497.41
5,562.36
-1.2%
5,673.98
-3.1%
S&P/ASX200 不動産投信
1,516.30
1,546.40
-1.9%
1,303.00
+16.4%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.79
1.87
-8bps
2.15
-36bps
豪州債券 10 年物利回り
1.87
1.87
-0bps
2.80
-93bps
77.58
77.53
+0.05
91.84
-14.26
0.76
0.76
+0.00
0.74
+0.03
64.10
63.30
+0.8
62.10
+2.0
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
先週の株式市場は、まちまちの結果となりました。7 月の上昇相場後の利益確定売りや、日本の景気刺激策が失望的な内容だったこと、ユーロ
圏の銀行に対する警戒感が続いたこともあって、日本株式市場は 1.9%の下落、豪州株式市場は 1.2%の下落、ユーロ圏株式市場は 0.4%の
下落となりました。一方で金曜日に発表された 7 月の米国非農業部門雇用者数変化は予想を大きく上回る結果となり、米国株式市場は結果的
に先週 1 週間で 0.4%上昇し、市場最高値を更新しました。英国株式市場は、イングランド銀行(BOE)による積極的な金融緩和策が市場に好
感され 1%の上昇となりました。中国株式市場はほぼ横ばいでした。コモディティ市場もまちまちで、原油価格は、6 月の高値から 23%下落した
後、テクニカルな支持線で反発しわずかに上昇しました。金属価格は下落しました。好調な雇用統計結果を受けて米ドルが上昇した一方で、豪
ドルは小さな変化に留まりました。債券利回りは、米国と日本で急上昇したものの、豪州ではほとんど変化しませんでした。
様々なリスクが積み残され、一般的に 8 月から 10 月にかけての期間は株式市場にとって季節要因的に困難な時期でその他のリスク要因も依
然として残されているものの、株式市場は下値固めをしているように見受けられることから全般的な上昇基調が続くと思われます。米国の予想
を上回る好調な経済は、いずれ欧州や豪州、新興国諸国に波及し各国経済を下支えすると見込まれることから、世界経済成長が急激な悪化局
面にないことを示唆しており、また企業業績についても最悪の時期は終わりを迎えつつあること、金融財政政策は引き続き緩和的な政策が維持
(もしくはもう一段の緩和)されることが見込まれ、これらすべてが株式市場の支援材料となるでしょう。金融経済政策については、7 月末に日本
銀行(日銀)が発表した金融緩和策は失望的な内容でしたが、先週発表された英国の緩和策は予想を上回る内容で、豪州も金融緩和とハト派
寄りのコメントを発表しています。
7 月末に日銀から発表された金融緩和策が市場を失望させる内容だったことに加えて、その後日本政府が発表した財政刺激策も迫力に欠ける
内容でした。今年度の実質的な刺激策はわずか 4.5 兆円(GDP の 0.9%)に過ぎず、数週間前から仄めかされてきたものと比較すると、昨年の
刺激策(GDP の 0.7%)から小幅の増額にとどまっただけの小粒なものとなりました。市場関係者の一部で憶測が飛び交っていた「ヘリコプター
マネー」が見送られたことで、日本株式市場のセンチメントは悪化し、再び円高リスクが高まりました。
日本とは対照的に BOE は、政策金利の引き下げや英国債および社債を対象としたさらなる量的緩和、銀行に対する 4 年間の低利融資、そし
てもう一段の緩和を示唆するなど、その政策は予想を大きく上回る内容でした。中でももう一段の緩和を示唆したことは、目先の英国経済に対
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する信頼感の回復につながっています。今回の緩和と、それ以上に 2010-2014 年の平均的な為替水準から 15%も下落している英ポンドが輸出
を押し上げ、経済への悪影響を緩和するのではないかと見ています。決断力のある BOE が、6 月の英国の EU 離脱(Brexit)後の諸問題につ
いて、適宜対応策を出してくるものと思われます。
豪州準備銀行(RBA)は先週、政策金利の引き下げを行い、11 月のもう一段の利下げに含みを持たせたハト派寄りの姿勢を維持しました。今
回の決定において、経済成長は主な懸念事項とはなっていません。RBA の関心は(直接コメントはしてませんが)、むしろ目標を下回るインフレ
率が期待インフレ率として市場に定着することを避けることと、米連邦制度準備理事会(FRB)の政策金利の引き上げが後ろ倒しとなっている中
で、豪ドル高圧力を弱めたいとの思惑が背景としてあります。RBA の 8 月の金融政策に関する声明では、およそ 3%の GDP 成長率と今後 2
年間のインフレ率を 1.5-2.5%とする見通しに対して目立った変更はありませんでしたが、声明は実際かなりハト派寄りのものとなっています。
RBA は、今後 2 年間のほとんどの期間においてインフレ率は 2%を下回る状況が続き、経済成長については上振れする余地はあるものの、リ
スクとして、積み上がる家計債務と急騰した住宅価格が低下に転じることを挙げており、労働市場における先行指標もまちまちである、としてい
ます。これらのコメントの中でも、とりわけ RBA がインフレ率は目標レンジである 2-3%の中央値近辺に戻る可能性が極めて低いと見ていること
は、緩和バイアスを維持することを示唆していると思われます。7-9 月期のインフレ率が予想通り引き続き低い水準となり、その時に FRB が超
スローモードの利上げ姿勢を維持し続けている場合は、これも予想通りとなりますが、RBA は 11 月にもう一段の利下げを行うと見ています。
世界経済指標
米国の経済指標は、ISM 製造業景況指数が米国の製造業がスランプから脱したことを裏づける内容となったことや、サービス業の購買担当者
景気指数(PMI)は引き続き堅調で、6 月の自動車販売も大きく増加、個人消費支出(PCE)も上昇、雇用統計も好調を維持するなど、総じて良
い結果となりました。とりわけ 7 月の雇用統計は、米非農業部門雇用者数変化が予想を上回る 255,000 人の増加となり、292,000 人の増加と
なった 6 月に続き好調を維持しました。失業率は 4.9%と横ばいの結果となったものの、これは労働参加率の上昇によるものです。賃金上昇率
は前年比で 2.6%の増加と引き続き緩慢な伸びに留まったものの、穏やかな上昇トレンドは続いています。世界金融危機(GFC)以降、失業率
は 10%前後の水準から現在の 4.9%まで低下し、不本意でパートタイム職に就いている人や職探しを諦めた人も含めた広義の失業率も 18%
前後から 9.7%に下落しており、この間に米国経済が大きく改善したことが明らかとなっています。7 月の雇用統計が堅調な内容となったことか
ら、9 月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利引き上げの可能性があるものの、FRB のリスク管理手法や低インフレ環境が続いているこ
とを考慮すると、柔軟な対応が可能であり、12 月の金融政策決定会合までは様子見姿勢を維持する可能性が高いと思われます。
米国企業の業績も底打ちが確認されています。S&P500 採用企業のうち 433 社の 4-6 月期決算発表が終わり、そのうち 78%の企業が利益予
想を、56%の企業が売上高予想を上回る決算となりました。利益は、前年比で 3%の減少となっているものの予想を 2%上回る結果となってお
り、前期比では 8%の増加となりました。
中国の 7 月の購買担当者景気指数(PMI)は、製造業、サービス業において平均をわずかながらも上回る結果となり、経済成長が安定化しつつ
あることを示唆しています。
インドでは、経済改革が再び軌道に戻っています。インドの上院が物品サービス税(GST)の憲法改正案を可決したことは、極めてポジティブな
動きです。GST の憲法改正に至るまではとても長い道のりでしたが、実施されればインドにとっては無数の無駄な税金をなくす大きな飛躍となる
でしょう。税制の一本化と効率化によって生産性は大きく向上すると見られます。また、インドがもう一段の改革を進める上でポジティブなサイン
となります。モディ政権が経済改革において野党と合意に達することができたということは、インドがもう一段の改革を進める上でもポジティブな
サインとなります。インド政府は、インド準備銀行(RBI)に対して、インフレ目標を 4%を中心とした上下 2%のレンジで正式に定めていますが、イ
ンフレ目標の手段として国際的にも最良の方法として見做されています。
先月、その予兆があったように、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)が、低すぎるインフレ率と高すぎるニュージーランド・ドルの水準を受けて、
政策金利の引き下げを行うことが予想されています。
豪州経済指標
先週の豪州の経済指標はまちまちの結果となりました。6 月の貿易赤字は悪化し、小売売上高はモメンタムの低下が継続、建設許可件数も下
落基調が続きました。一方で、1-3 月期の GDP に大きく貢献したその他の純輸出は 4-6 月期の GDP 成長にとってはニュートラルな貢献となる
見込みで、建設許可件数は減少が続いたものの依然として高い水準にあり、住宅の建設案件は数多くあり、新築住宅販売は好調を持続、非住
居の建設許可件数は改善の兆しを見せており、購買担当者景気指数(PMI)は製造業、サービス業ともに主要先進国の水準を大きく上回ってい
ます。これらのことから、経済成長が続くと見られます。メルボルン研究所のインフレゲージは、7 月のインフレ率が依然として弱いことを示してお
り、コアロジック社のデータでは豪州の住宅価格上昇率が鈍化していることを示しています。
今週の注目点
米国では、7月の小売売上高に注目が集まり、引き続き適度な上昇が見込まれます。また、中小企業楽観指数、JOLT(求人労働移動調査)求
人件数、生産者物価指数が発表される予定です。
中国では、7月の貿易収支が発表予定で若干の改善が予想されています。生産者物価指数の低下が和らぐことが予想されますが、消費者物
価指数は前年比で 1.7%に低下すると見られています。これは、食品価格の低下や、マネーサプライ及び新規融資伸び率が 6 月に上昇した反
動による低下が主な要因と見ています。小売売上高は前年比 10.6%、鉱工業生産は同 6.2%となる見込みですが、固定資産投資は一段と減
速すると見ています。
豪州では、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)ビジネス・サーベイによる企業景況感及び企業信頼感指数が公表予定で、概ね堅調に推移す
ると見ています。また消費者信頼感指数についても、今月 RBA が政策金利を引き下げたことや、キャンベラにおける政局の不透明感が解消さ
れつつあることも手伝って、小幅ながらも反転すると見ています。6 月の住宅ローン件数は 5 月の政策金利の引き下げを受けて回復する見込
みです。RBA グレン・スティーブンス総裁が声明を出す予定で、政策金利に関するコメントに注目が集まっています。
また、ニューズコープ、CBA、フェアファックス、テルストラ社を含む豪州の主要企業 23 社の下半期決算報告(1-6 月期)が始まる予定です。
2 月の上半期決算報告の際に収益見通しを引き下げたことから、下半期決算の決算に対する市場の期待感は相対的に低いものとなっています。
2015 年 7 月-2016 年 6 月期の業績に対するコンセンサス予想は 8%減益となっており、資源関連企業の利益が 50%程度の減益、銀行が
2%程度の減益になると予想されています。その他のセクターの平均では 1%の増益が予想されています。今後の主要なテーマとしては、①資
源関連企業の業績が、鉄鉱石と原油価格の安定により改善に向かうのか、②NAB ビジネス・サーベイによる企業景況感に改善の兆しが見られ
るものの、資本財セクターの収益成長は引き続き抑制されるのか、③コストの削減は続くのか、④銀行に対する逆風は続くのか、⑤配当の動向、
などが挙げられます。 セクター別にみると、一般消費財、資本財、ゲーム、ヘルスケア関連が好調な決算を発表すると見ています。一方で、コン
センサス予想を下回った企業の株価は、急落することが予想されます。
2/3
相場見通し
7-9 月期は株式市場にとって季節要因的に厳しい時期であることや、イタリアの銀行、FRB の金融政策、世界経済成長見通しを巡るリスク等に
よって、短期的にはボラティリティの高い相場展開になると見ています。 とはいえ、短期的な不確実性の後には、まずまずのバリュエーション水
準や世界的に超低金利環境が継続していること、緩やかな経済成長が続いていることなどを背景に、株式市場は今後 12 ヵ月間にわたって上
昇トレンドになると見ています。
現在の債券利回りは“超”低水準の状態にあることから、中期的には債券からのリターンは軟調となる見込みです。しかし、脆弱な世界経済成
長、余剰生産能力、低インフレ及び現在進行形の様々なイベントリスクを鑑みると、過度に弱気になることは難しいと思われます。 とはいえ最近
の債券市場の急騰により、債券利回りは目も当てられない程の非常に低い水準まで低下しており、債券利回りが反転急上昇するリスクが大きく
なっています。
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、融資基準の厳格化と供給増加によってシドニー、メルボルンでの過熱感が沈静化に
向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
Fed が引き続き金利の引き上げを先送りする中、豪ドルは 1 豪ドル 0.76 米ドルまで上昇し、引き続き 4 月につけた 0.78 米ドルという高値を再
び試し、その後 0.80 米ドルまで押し上げられるリスクがあります。短期的な見通しはさておき、長期的な豪ドルの下落基調は続いていると見て
います。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られていることから今後は金利差
の縮小が見込まれることや、引き続き国債 の格下げリスクが高まっていること、コモディティ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリュ
ーを下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは今後 1 年間で、1 豪ドル 0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
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当資料は、投資の参考となる情報の提供を⽬的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局⻑(⾦商)第 85 号
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加⼊協会: ⽇本証券業協会、⼀般社団法⼈⽇本投資顧問業協会
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