2016年9月12日号 (PDF/685KB)

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2016 年 9 月 12 日
豪州主要経済指標
今週の注目点
経済指標・イベント
直近
前回
日付
経済指標・イベント
前回
市場予測
8 月 ANZ 求人広告件数(前月比)
1.8%
-0.8%
9 月 16 日
米国 9 月 ミシガン大学消費者態度
指数(速報値)
89.8
90.6
金融市場・原油・為替
指数等
2016年9月9日
2016年9月2日
前週比
2015年9月9日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,339.18
5,372.80
-0.6%
5,221.13
+2.3%
S&P/ASX200 不動産投信
1,418.00
1,468.20
-3.4%
1,251.80
+13.3%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.73
1.73
+0bps
2.17
-44bps
豪州債券 10 年物利回り
1.96
1.85
+11bps
2.74
-77bps
77.44
78.68
-1.24
84.57
-7.13
0.75
0.76
-0.00
0.70
+0.05
64.00
63.60
+0.4
60.30
+3.7
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
先週は、日本株式市場と中国株式市場がそれぞれ 0.2%、0.1%と僅かながらも上昇した一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)メンバーの
一部からタカ派寄りのコメントが出されたことや、欧州中央銀行(ECB)によるもう一段の金融緩和が見送られたことを受けて、金曜日は債券
利回りがさらに上昇し、欧州圏株式市場と米国株式市場はそれぞれ 1%、2.4%の下落となりました。豪州債券市場でも債券利回りが急上昇
したことから、豪州株式市場は 0.6%下落しました。コモディティ価格は上昇し、特に原油価格はメキシコ湾の嵐の影響で米国の原油在庫が
減少していることを受けて概ね堅調でした。FRB の利上げ観測が高まったことで豪ドルは下落しましたが、下落率は一週間でわずかに 0.4%
でした。
債券利回りは、最近、様々な要因を背景に上昇してきました。中央銀行がマイナス金利政策に消極的になりつつあること、景気刺激策における
議論の中心が金融政策から再び財政政策に移っていること、コモディティ価格の上昇を受けてデフレ圧力が弱まっていること、債券の割高感が
懸念されていること、FRB の利上げ観測が高まっていることなどがその背景になっていると見られます。豪州では、豪州準備銀行(RBA)の金融
緩和サイクルが終盤にある、もしくは終盤が近づいているとの思惑を背景に、債券利回りへの上昇圧力が高まってきました。ここ 2-3 日の債券
利回りの上昇は、ECB が金融緩和策の現状維持を決めたことや、ハト派で知られる米ボストン連銀のローゼングレン総裁が利上げの見送りを
過度に先延ばしするリスクについて警告を発したことが主な要因となっています。
足元の株式市場は、調整局面を迎え不安定な展開となっています。今年の株式市場は、2 月の上昇相場と、Brexit(英国の EU 離脱)国民投票
後の安値からの上昇相場の 2 度の上昇局面を経験しましたが、ともに短期的なボラティリティ指標で見て買われ過ぎの水準となっています。
現在は株式市場が季節的に不安定になりやすい時期で、また今年は様々なイベントリスクを抱えています。FRB の利上げ、イタリアの問題、
米国大統領選、南シナ海の緊張、北朝鮮のミサイル核実験問題など、株式市場にとっての波乱材料が続きます。したがって株式市場は短期的
により大きな調整を経験する可能性はありますが、ただ長くは続かないと見ています。
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中央銀行がマイナス金利政策に消極的になっていることや、景気刺激策の軸が金融政策から財政政策に移っていること、コモディティ価格の
安定化によってデフレリスクが低減していることなどを踏まえると、債券市場の最良の時期は過ぎ去ったように思われます。一方で、長期債
利回りが急上昇し、イールドカーブがスティープ化する材料もなかなか見当たりません。世界の経済成長は依然として緩慢かつ国や地域に
よってばらつきがあり脆弱で、コアインフレ率は目標には程遠い状態が続いています。FRB がもう一段の利上げに向けて着実に準備を進めて
いる一方で、最近の強弱入り混じった経済指標の結果を踏まえると、利上げ時期は 9 月から 12 月にずれ込む可能性が高まっています。
また ECB や日本銀行(日銀)については、金融刺激策の継続もしくは強化に動く可能性が高いと見られます。
ECB は先週の定例理事会で、予想通り金融政策の現状維持を決めました。ECB の経済見通しに大きな変更はなく、ドラギ総裁は現在の量的
緩和プログラムの期間延長について議論されなかったことを明らかにしました。とはいえ、インフレ率は目標には程遠い水準に留まっており、
ECB の経済見通しも現在の量的緩和プログラムの継続を前提としていること、インフレの上昇圧力が力不足であることを巡るドラギ総裁の
様々なハト派的なコメントを考慮すると、今年 12 月の定例理事会において来年 3 月に予定している量的緩和プログラムの終了時期の延長を
決定する可能性があると見ています。また現在の量的緩和プログラムの効果を確実にするために、購入対象資産の拡大を発表する可能性も
あります。
先月利下げをしたばかりということもあって、RBA は 9 月の定例理事会で政策金利を 1.5%に据え置くことを決定しました。
弊社では、10 月下旬に 7-9 月期のインフレデータが発表された後、経済予測の見直しが行われる 11 月の会合において RBA がもう一段の
利下げに踏み切るとの見方を維持しています。世界的にインフレ圧力が弱いことや豪州国内の賃金成長率が過去最低水準となっていること
などを背景に、足元のインフレ率には下振れリスクが高まっています。また為替市場においては豪ドルが高すぎる水準にあり、また FRB が
利上げを先送りしていることから 4 月の高値である 1 豪ドル 0.78 米ドルの壁を破るリスクに直面しています。とはいえ、力強い経済成長率が
続いていることを考慮すると、もう一段の利下げは僅差の判断となり、7-9 月期のインフレ率が予想を下回る結果となることが政策判断の重要な
カギを握ると思われます。いずれにしても、豪州では、キャッシュレート(政策金利)が 1%、もしくはそれ以下に引き下げられることや、量的
緩和策が導入されたりする可能性は極めて低いでしょう。
世界経済指標
米国の経済指標は強弱入り混じったものとなり、FRB が早急に利上げに踏み切るための支援材料は見当たりません。求人労働異動調査
(JOLTS)において求人件数、採用率、自発的離職率はすべて高水準で、新規失業保険申請件数は極めて低い水準にあることから、米国の
労働市場は非常に好調な状況が続いている一方で、ISM 製造業景況感指数の下落に続いて、ISM 非製造業景況感指数も鈍化しました。
これらの結果から、市場では米国の経済成長が鈍化しているのではないかとの懸念が高まっています。FRB の発表したベージュブックでは、
(全般的にやや下方修正されたものの)緩やかな経済成長見通しについての明確な描写はなく、労働市場の引き締まった状態が続いているにも
関わらず、インフレの兆候がほどんど見当たらないことが述べられていました。鈍化が見られた ISM 景況感指数は経済統計上の単なるノイズの
可能性があるものの、低いインフレ率が続いている環境において 9 月の利上げを遅らせることが FRB にとって賢明な判断だと思われます。
フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場における市場の 9 月の利上げ予測は 30%で、12 月は 60%となっています。弊社では 12 月の利上げを
基本シナリオに置いていますが、しばらくの間は利上げの実施や時期を巡る見方が錯綜する流動的な状況が続くと思われます。
ユーロ圏の 7 月の小売売上高は前年比で 2.9%上昇し予想を上回る結果となりましたが、ドイツの 7 月の鉱工業生産や製造業新規受注は
予想を下回りました。
日本の経済指標は、先週からのポジティブな流れが続きました。4-6 月期の GDP 成長率は改定値において上方修正され、賃金成長も予想を
上回る結果となりました。また景気先行指数も上向きとなり、景気ウオッチャー調査-現状判断DIも上昇し、東京のオフィス空室率は 3.9%に低下
しました。
中国の経済指標は輸出入で改善が見られ、世界および中国国内の需要がそれぞれ上向いていることが示されました。また Caxin サービス
部門購買担当者景気指数(PMI)も若干ではあるものの上昇し、中国経済が安定化に向かっていることに対する確信が強まりました。
8 月の生産者物価指数の下落率が縮小を続けており、中国の名目 GDP 成長が高まっていることを示唆しています。一方で中国国務院
(内閣に相当)は、財政刺激策と脆弱な経済分野への投資強化策を打ち出しており、中国の経済成長に対する懸念が後退しています。
豪州経済指標
先週は豪州への楽観的な見方を裏づける経済指標の発表が続きました。4-6 月期の GDP は前期比 0.5%増、年率で 3.3%増と堅調な結果
となりました。前期比の伸びは 1-3 月期の 1%を下回っており、鉱業セクターへの投資の低迷が成長の足かせとなっている中、仮に公共支出
(とりわけ防衛分野)の急増がなければ経済成長はマイナスとなっていたかもしれません。一方、前期比での伸び率鈍化は避けられなかった
ものの、今後は新規資源開発プロジェクトの操業が開始されることから純輸出の堅調は続くと見られ、またニューサウスウェーズ州とビクトリア州
のインフラ・プロジェクトにより公共投資が増加傾向であること、資源ブームの終焉後過去数年間にわたる大幅な減少が経済成長の大きな
足かせとなってきた鉱業投資については、調整が進んだことで来年からはそのマイナス影響がほぼなくなる見込みであること、依然として高い
家計貯蓄率と新築住宅完工によって堅調な消費支出が続く見込みであること、コモディティ価格の安定と交易条件の改善が国民所得の回復に
繋がること、生産性の向上が前年比 2.9%と好調であることなどにより、豪州経済は下支えられると見ています。さらに年率 3.3%となった 4-6
月期 GDP 成長率は、米国の 1.2%、ユーロ圏の 1.6%、日本の 0.6%をはるかに上回っており、豪州経済の成長の原動力が多様であること
(鉱業、住宅、公共投資、等々)は、過去 25 年間において一度も前年比ベースでマイナス成長に陥ることのなかった根拠の裏づけとなって
います。
他の経済データでは、7 月の住宅ローン件数は減少し、AIG サービス業指数と AIG 建設業指数は先週の AIG 製造業指数と同様に低下
しました。ただしこれらの指数は変動が大きくなりがちなので、注意が必要です。
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一方で、8 月の ANZ 求人広告件数は(引き続き堅調な雇用増加を示唆しており)好調な結果となりました。また、7 月の貿易赤字額も、(変動の
大きい金の輸出が牽引役となったことから見かけほど良好という訳ではありませんが)著しい減少となりました。
一方、メルボルン・インスティチュートが発表するインフレ指数では、8 月もインフレ率が低い状態が続いていることが明らかになりました。
今週の注目点
米国では、小売売上高(除く自動車)が 7 月の下落の後、8 月は前月比 0.2%程度の反発が見られるかどうかが注目材料されるでしょう。
米国では、現在、小売売上高は個人消費全体の 43%しか占めていません。その他、8 月の鉱工業生産は減少、9 月のフィラデルフィア連銀の
製造業景気指数は若干の低下が予想されていますがニューヨーク連銀の製造業景気指数は改善、8 月のコア CPI は前年比で 2.2%程度の水
準に留まることが予想されます。
イングランド銀行(BOE)は、先月の金融緩和の効果を見極めるため、金融政策を維持することが予想されます。
中国では 8 月の経済指標が発表される予定で、鉱工業生産が前年比 6.2%の増加、小売売上高は横ばい、固定資産投資は僅かながらも下落
することが予想されます。
豪州では、8 月の NAB 企業景況感指数が発表される予定で、7 月同様、まずまずの水準に落ち着くことが予想されます。その他の 8 月の経済
指標では、消費者信頼感指数はほぼ横ばい、新規雇用者数は 15,000 人増、失業率は 5.7%で横ばいが予想されます。
相場見通し
7 月から 8 月初めにかけての株式市場は力強い上昇を演じましたが、今後数ヵ月間は調整局面となる可能性があり不安定な展開が予想され
ます。豪州株式市場は 8 月の高値からは既に 4%下落していますが、グローバル株式市場は下落が始まったばかりです。9 月、10 月は季節
的に市場が不安定になりやすい時期ですが、今年は今後数ヵ月間に様々なイベントリスクも存在します。FRB の利上げ、イタリアの銀行問題、
イタリアの上院改革をめぐる憲法改正の国民投票を巡るリスクや、米国大統領選、世界経済成長を巡る懸念など、株式市場にとって大きな
イベントが控えています。しかしながら、短期的な調整局面を経た後、株式市場は適正なバリュエーション、世界的な超金融緩和政策、
そして緩やかな世界の経済成長を背景に、その後 1 年間にわたって上昇基調を辿ると見ています。
超低水準の債券利回りにより、中期的には債券からのリターンは軟調となる見込みです。しかし、力強さを欠く世界経済成長、余剰生産能力、
低インフレ及び現在進行形の様々なイベントリスクを鑑みると、過度に弱気になることは難しいと思われます。とはいえ、最近の債券利回りの
上昇はまだ不十分で、利回りが急上昇するリスクは残っており、市場はまさに今そのリスクに直面しています。
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、購買能力の低下や融資基準の厳格化、供給量の増加によってシドニー、メルボルン
での過熱感が沈静化に向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
FRB が引き続き利上げを見送る場合、豪ドルが再び 4 月の高値となる 1 豪ドル 0.78 米ドルを試す展開が予想され、RBA にとっては困難な
状況が続くことになるでしょう。しかし、豪ドルはまだフェアバリュー(適正価値)を上回っていることから、長期的には下落基調となることが予想
されます。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小
が見込まれることや、引き続き豪州国債の格下げリスクが高まっていること、コモディティ価格が依然として安値圏で安定して推移していること、
豪ドルがフェアバリューを下回るのも珍しいことではないためです。
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
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