2016年7月11日号(PDF/672KB)

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2016 年 7 月 11 日
豪州主要経済指標
今週の注目点
経済指標・イベント
直近
前回
5 月住宅建設許可件数 前月比
-5.2%
3.3%
日付
経済指標・イベント
7 月 15 日 米国 小売売上高 前月比
前回
市場予測
0.5%
0.1%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年7月8日
2016年7月1日
前週比
2015年7月8日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,230.54
5,246.61
-0.3%
5,469.53
-4.4%
S&P/ASX200 不動産投信
1,495.50
1,483.40
+0.8%
1,255.50
+19.1%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.97
1.95
+2bps
2.15
-18bps
豪州債券 10 年物利回り
1.88
1.95
-7bps
2.75
-86bps
76.10
76.85
-0.76
89.68
-13.58
0.76
0.75
+0.01
0.74
+0.01
63.10
62.80
+0.3
61.90
+1.2
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
イタリアの銀行に対する懸念等が浮上したことにより、先週の株式市場は再び神経質な展開となりましたが、金曜日に発表された米国の好調な
雇用統計の結果を受けて幾分か反発して週を終えました。その結果、先週は市場によってまちまちの結果となり、ユーロ圏の株式市場は 1.6%
の下落、日本株市場は 3.7%の下落、豪州株市場は 0.3%の下落となった一方で、米国株市場は 1.3%上昇し史上最高値を更新したほか、中
国株市場は 1.2%上昇しました。世界中で銀行株が弱含んでいることを背景に豪州の銀行に対する懸念が高まっていることや、豪州健全性規
制庁(APRA)が豪州の銀行に対して資本の積み増しを求める可能性について示唆したこと、S&P が豪州国債と銀行債の格付け見通しを「ネガ
ティブ」に変更したことなどを背景に、豪州株式市場の重石となりました。債券利回りは引き続き低下、また、米ドルの上昇によって、原油価格や
金属価格は上値の重い展開となり、中国人民元も 2010 年以来となる水準まで下落しました。米ドルの上昇や、S&P が豪州国債の格付け見通
しを「ネガティブ」に引き下げたにもかかわらず、豪ドルは上昇しました。
英国では Brexit の結果を受けた景気後退に対する懸念が、引き続き企業の景況感を大きく悪化させています。英国企業が EU 市場とこれま
で通りの事業を続けられるのかどうかについて、不安が高まっていることは明らかです。これらの懸念によって英国の商業不動産市場も打撃を
受けており、いくつかの実物不動産に投資を行うファンドが解約停止に踏み切っています。これは企業が拠点を英国外に移転する動きが本格化
した場合、英国不動産市場の先行きはかなり厳しいものになるとの投資家の予測が背景にあります。イングランド銀行(BOE)が銀行の自己資
本の積み増し規制を先送りし、また英ポンドの下落が続いていることも英国経済にとっての支援材料になると考えられるものの、年後半以降は
景気後退に転じると予想されており、それを食い止めるには十分ではないと思われます。ここで留意しておきたいのが、英国経済は世界の GDP
の 2.5%しかないことです。また英国の不動産ファンドの問題は、Brexit 後の英国に限定された問題を反映したものであることも気に留めておく
必要があるでしょう。世界の商業不動産市場全般に対する問題を示唆している訳ではないということです。
Brexit は本当に起こるのでしょうか?英国内で離脱に対する後悔(Bregret)や混乱が高まっていることを考えると、EU からの離脱手続きを定
めたリスボン条約第 50 条を発動しない可能性も残っています。もし新しい保守党のリーダーが第 50 条の発動を来年まで行わないとした場合、
景気後退によって Brexit に反対する世論が高まる可能性があり、また総選挙の実施が表明された場合は、Brexit についての国民投票をやり直
す可能性も否定できません。一方で、英国が第 50 条の発動に踏み切る可能性もあります。しかしその場合は、その他の EU 諸国との交渉は上
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手く行かないことが想定されます。いったん第 50 条を発動すると恐らくは後戻りはできないと言われていることから、足もとの環境においては
EU も何とか英国に留まってもらう方法を見つけ出そうとするでしょう。ただ、これら一連のことが片付くまでは遠い道のりです。もっとも世界経済
や金融市場にとっての本質的な問題は、欧州に対する影響と、ユーロ圏諸国におけるドミノ効果のリスクです。しかし、もし英国が最終的に離脱
しなかったり、残留するよりも離脱によってより大きな問題を抱えることが明らかになった場合、ドミノ効果のリスクは大きく減少するでしょう。
現在に話を戻すと、ユーロ圏において Brexit 後のリスクとして先週主な焦点となったのは、銀行問題、その多くはイタリアの銀行です。何年にも
わたった低成長と超低金利、そして規制の厳格化によって、これらの銀行は弱体化してきました。これらのリスクは Brexit 前からありましたが、
Brexit によって再び焦点が当たり、銀行株は下落、その結果増資が困難な環境となっています。イタリアの銀行がリスクに晒されていることに議
論の余地はなく、イタリア政府は一部の銀行に対する資本注入を望んでいますが、欧州委員会は株主・債権者に損失を負担させるベイルインに
よる処理を要求しています。資本注入がなされなければ、銀行融資の鈍化、低成長、失業率の増加といったリスクが想定され、その結果イタリア
のように問題を抱えるユーロ圏諸国において、EU 離脱の動きが高まるリスクが予想されます。現時点では、そこまでの状況には至っていないも
のの、これらの問題を乗り切るための何らかの解決策が期待されます。もっとも、解決策が出されるまでの間は、投資家の不安は続くことになる
でしょう。
足元の不安を相殺する明るい材料としては、イタリア、スペインの債券利回りが史上最低水準で推移しており、欧州中央銀行(ECB)の介入が
機能していることを示していることです。また、最近の米ドル相場の上昇と人民元の下落が今年初めに見られたような中国からの資本流出とい
ったパニックには繋がっていないこと、コモディティ価格がほどほどの水準で底堅く推移しており、世界の経済成長にとって良い兆しであると思わ
れます。とはいえ繰り返しになりますが、リスクを判断するにはまだ時期尚早で、米ドルのもう一段の上昇については引き続き注意深く見ておく
必要があります。欧州から域外の安全資産への逃避が進行すると同時に、6 月の雇用統計で雇用者数が大きく伸びたことで確認されたような
米国経済がまずまずの状況が続き、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げの可能性が市場予想の 21%から大きく高まると、米ドルに対
する上昇圧力が現実的なリスクとなります。米ドルの上昇は、原油やその他コモディティ価格、新興国通貨や中国人民元をはじめとする新興国
通貨にとってもマイナス材料となります。
豪州では、(なぜこれほど時間がかかるのかは不明ですが)総選挙の投票結果について未だ最終集計を終えていませんが、単独過半数政権
になるか、ボブ・カッター議員のような無所属諸派の議員を含めた保守連合少数派政権となるかのいずれにおいても与党保守連合の政権獲得
が確実となったことから、野党労働党のビル・ショーテンが敗北を認め、与党保守連合のマルコム・ターンブルは勝利宣言を行いました。もっとも
問題は上院で、過去 3 年間よりもさらに非協力的な姿勢をとることが見込まれ、与党保守連合政権は、企業に対する減税(少なくとも中小企業
向けの減税)、スーパーアニュエーション制度に関する一部変更といった連邦予算の重要法案を通過させるのがますます困難になるでしょう。
2014 年の予算についてすら通過待ちのものがあります。したがって、財政黒字の状態に戻るにはさらに時間がかかりそうです。重要な経済改
革についても、議題から外れそうです。一方で良いニュースとしては、お互いに「妥協点を探る」といった話し合いが持たれたことです。期待感を
持ってしばらく様子を見ましょう。
予算案の通過がさらに遅れるリスクを反映して、S&P が豪州国債の格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げましたが、サプライズはありません
でした。もちろん将来の格下げが避けられないということではありませんが、新しく発足する国会が「財政赤字を大幅に縮小するための財政収支
改善策を法制できる可能性が小さい」との S&P の見解については、恐らくそうなる可能性が高いでしょう。このニュースについては長い間話題に
上ってきたことでもあったので、今のところ金融市場は落ち着いて行動しています。理論的には、格付けの引き下げによって金利は上昇します。
外国人投資家が連邦債務に対してより高い利回り(プレミアム)を求め、それが州債務、銀行や企業の債務、そして住宅ローン金利に波及してい
くと予想されます。ただ実際には、この影響は限定的と思われます。2011 年の米国や先週の英国の例を見ても、格付け変更後において債券利
回りは低下しており、また(イタリアやスペインといった)豪州よりも格付けの低い多くの国が、より低い金利で借入を行っています。さらに、どのよ
うな場合においても、豪州準備銀行(RBA)は政策金利の引き下げによって住宅ローン金利の上昇を相殺する手段を持っています。
AAA 格付けを失う可能性が投げかけている最大の問題は、むしろ今日の豪州の政策決定のあり方についてです。豪州は 1986 年に格下げと
なった後、経済改革に真摯に取り組み、2002 年に AAA 格を回復しました。再び AAA 格を失うということは、ホーク/キーティングやハワード/コス
テロ時代の努力を忘れて方向性を見失い始めており、公的支出をコントロールできない状況に陥っているというシグナルといえます。
世界経済指標
米国の経済データは、6 月の雇用統計で雇用者数が再び大きく増加したことや、新規失業保険申請者件数に低下傾向が続いていること、6 月
の ISM 非製造業指数が 56.5 と堅調に伸びていることなど、総じて好調でした。6 月の非農業部門雇用者数は 287,000 人増となり、弱かった 5
月の伸びを補って余りある結果となりました。月次データのブレを平準化すると、過去 3 か月間は平均で 147,000 人増となり、米国経済は堅調
であることを示しています。FRB は恐らく、米国経済が持続的に成長しているのか、Brexit 後のグローバルリスクが落ち着き始めているのかに
ついて、しばらくは様子見の姿勢を続ける意向と見られ、特に賃金成長率が依然として伸び悩んでいる中で、急いで政策金利の引き上げに踏み
切ることはないと思われます。とはいえ 6 月の雇用者数の好調な伸びを勘案し、FRB が年内、恐らくは 12 月にもう一段の利上げを行うとの見
方を維持しています。米国の金融市場では 21%が年内の利上げを予想(雇用統計発表前の 12%から上昇)しており、これはあまりに悲観的過
ぎるので、今後は増えていくと見ています。一方で債券利回りについては、どこかの時点から年末にかけて上昇圧力が高まっていくと思われま
す。
日本では、足元の弱い PMI 指標や賃金の減少、日本円が昨年の高値から 20%も上昇したことから、日本銀行(BoJ)に対する金融緩和圧力は
ますます高まっていると考えられます。BoJ は間もなく、円安誘導に向けたもう一段の金融緩和策を打ち出す可能性があります。
豪州経済指標
豪州では、RBA はもう一段の利下げ機会をうかがっており、「さらなる情報」待ちの姿勢を打ち出していることから、今月終わりに発表される 4-
6 月期のインフレデータが今後の政策を占う上で重要な材料になると思われます。弊社では、インフレ率が低下するリスク、(Brexit や豪州総選
挙の期待外れの結果が)経済成長を下振れさせるリスク、豪ドルが依然として高値圏にあること等の理由から、RBA がもう一段の利下げを行う
と予想しています。年末までに 0.25%の利下げを 2 回行うと見ており、第一弾は 8 月に行われると予想しています。
豪州の経済データは、建設許可件数の減少や小売売上高のモメンタム低下など軟調なものが多かった中で、ANZ 求人広告件数は依然として
雇用市場の緩やかな成長を示すものとなりました。
今週の注目点
米国では、6 月の小売売上高がわずかな上昇に留まると予想され、鉱工業生産も若干の改善、コア CPI は前年比で 2.2%と予想されています。
アルコアが米国企業の先頭を切って 4-6 月期決算の発表を行います。コンセンサス予想は前年比で 5%の減益が予想されていますが、米ド
ルと原油価格の安定を背景に前期比では増益予想となっています。
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今週は、BOE が金融緩和に踏み切ると予想されています。
中国では、4-6 月期 GDP の結果が発表される予定で、市場予想では前年比 6.6%増と 1-3 月期の前年比 6.7%からやや低下すると予想さ
れています。ただし、前期比では増加するものと見られます。鉱工業生産、小売売上高、投資はいずれも若干の鈍化を示すと予想しています。
豪州では、5 月の住宅ローン件数は減少、6 月の NAB 企業景況感指数はほぼ横ばいになると予想されています。Brexit や豪州総選挙後の不
透明感から 7 月のウエストパック消費者信頼感指数は小幅な下落、6 月の新規雇用者数は 10,000 人の増加、一方で 6 月の失業率は前月より
わずかに上昇して 5.8%になると予想されています。
相場見通し
Brexit の不確実性やイタリアの銀行のリスク、米ドルの上昇に加えて、季節要因として 7-9 月期は軟調となる傾向が強いことから、短期的には
株式市場のボラティリティが一段と高まることが予想されます。とはいえ、短期的な不確実性の後には、まずまずのバリュエーション水準や世界
的に超低金利環境が継続していること、緩やかな経済成長が続いていることなどを背景に、株式市場は年末にかけて上昇トレンドになると見て
います。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。ただし、世界的に脆弱
な成長が続いていることや生産能力の余剰、低インフレ、Brexit 後の不確実性から、当面は過度に債券投資に対して弱気になることは難しいと
思われます。とはいえ、最近の債券市場の上昇によって利回りは説明のつかない水準まで低下しており、今後どこかの時点において急激な揺り
戻しが起こるリスクが高まっています。再び FRB の金融引き締め予想が高まった時が、そのきっかけになるかもしれません。
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、融資基準の厳格化と供給増加によってシドニー、メルボルンでの過熱感が沈静化に
向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇する
と見られます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
豪ドルはまだフェアバリュー(適正価値)よりは高いことから、長期的には下落基調となるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行
っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、引き続き国債の格下げリスクが高
まっていること、コモディティ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリューを下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは今後 1 年
間で、1 豪ドル 0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
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当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
有価証券への投資を勧誘する目的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されており
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を保証するものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
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