豪州主要経済指標 今週の注目点 金融市場・原油・為替 先週の主な話題

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2016 年 6 月 6 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
住宅建設許可件数(前月比)
今週の注目点
直近
前回
日付
経済指標・イベント
3.0%
2.9%
6月8日
米国(4 月) JOLT 求人件数
前回
市場予測
575.7 万件 565.0 万件
金融市場・原油・為替
指数等
2016年6月3日
2016年5月27日
前週比
2015年6月3日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,318.89
5,405.91
-1.6%
5,583.58
-4.7%
S&P/ASX200 不動産投信
1,434.90
1,438.00
-0.2%
1,274.50
+12.6%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.00
1.97
+3bps
2.15
-15bps
豪州債券 10 年物利回り
2.23
2.26
-2bps
2.89
-66bps
78.49
79.28
-0.79
96.75
-18.26
0.74
0.72
+0.02
0.78
-0.04
61.50
61.30
+0.2
64.60
-3.1
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
先週の株式市場は全体的に軟調でした。中国株式市場は 4.4%上昇しまずまずの結果となりましたが、米国株式市場は雇用統計が低調だった
ことから横ばいとなりました。欧州株式市場は Brexit(英国の EU 離脱問題)懸念が再燃し 2%下落しました。また、日本株式市場ではさらなる
財政出動が打ち出されなかったことを失望し 1.1%下落、豪州株式市場も鉄鉱石の下落と GDP 成長率が市場予想を上回る結果となり、豪州準
備銀行(RBA)の金利引き下げが先延ばしになることを懸念して 1.6%下落しました。5 月の米国雇用統計の低調な結果を受けて、米連邦準備
制度理事会(FRB)の次回の政策金利引き上げ時期が先延ばしになる可能性が高まったことから、債券利回りは低下、米ドルも下落しました。コ
モディティ価格は、原油価格が下落する一方で貴金属が上昇するなど、まちまちの結果となりました。豪ドルは、米国の低調な雇用統計に反応
して 2.5%上昇しました。
5 月の米国の雇用統計が低調な結果に終わったことで、FRB の金利引き上げ時期がさらに後退するという可能性も出てきました。
5 月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数が予想を大幅に下回る 3 万 8,000 人増となり、賃金成長率も前年比 2.5%増にとどまり
ました。一方、失業率は 4.7%に減少しましたが、これは労働参加率の低下によるものだと考えられます。今回の結果は FRB を動揺
させ、6 月の理事会では政策金利の引き上げについて議題に上がらない可能性があります。米国金融市場の予想では、6 月の利上げの
可能性は 4%に留まっています。7 月の政策金利引き上げの可能性は弊社の基本シナリオとしてまだ残っていますが、6 月の非農業部
門雇用者数がどこまで回復するかによると考えており、現在のところ 9 月まで先延ばしになるというリスクもあると見ています。し
かしながら、5 月の雇用統計のショックは FRB の判断に影響を与えると考えられますが、この結果を深読みしすぎるのも危険です。
新規失業保険申請件数の大幅な低下は米国の雇用市場が依然として好調であることを示しており、景気後退懸念を再び議論するよう
な材料はありません。
先週の世論調査において EU 残留派と離脱派が再び拮抗してきていることを考えると、前回私が Brexit のリスクは後退していると述べたのは
早急すぎたようです。ここで、6 月 23 日に行われる国民投票について注目すべきポイントを挙げてみます。
第一に、もし結果が離脱となったとしても、離脱の条件が合意されるまで 2 年程度かかるとみられます。
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第二に、離脱派が勝利すると、EU 市場とその金融セクターへのアクセスや労働市場の柔軟性が制限される恐れがあり、英国にとっては不利な
条件となる可能性がでてきます。どの程度の影響になるかは、EU とどういった離脱条件になるかなどの交渉次第となりますが、英国の GDP は
2%程度減少すると見られています。これは英ポンドも含めて、英国資産全体に悪影響を与えるでしょう。英国は(ノルウェーと同様に)ゆくゆくは
EU と貿易協定を結ぶと考えられますが、英国は発言権を持つことができず EU のルールに従わざるを得なくなることから、国際的な地位の低
下につながることが見込まれます。
第三に、(英国経済は大幅に縮小するとして、)現実的な問題は、ユーロ圏全体への影響に対する認識でしょう。英国はユーロ圏ではないことか
ら、Brexit と Grexit(ギリシャのユーロ離脱問題)とは全く同列ではないのです。これは EU やユーロ圏を離脱しようとする動きがユーロ圏諸国
(例えばフランスの Frexit)に広がる可能性が出てくるという意味で、ユーロの存続性に対する懸念が再燃することが考えられます。つまり欧州
周縁国が発行する債券への信用不安が再発し、ユーロから米ドルへといった安全資産への逃避が起こり、ひいては人民元などの新興国通貨や
コモディティ価格への下押し圧力を高める可能性があります。ここで述べた全てが、世界金融市場を神経質にする引き金になる可能性がありま
す。突き詰めていくと、英国の EU 離脱は欧州の統合に向けた圧力が増すきっかけになることから、後半の可能性は小さいと見られますが、市
場は当初そのことを織り込まないでしょう。
第四に、離脱派の勝利は、すでに世界的規模で見られているような反グローバリゼーションの波を促すことになりかねません。
第五に、Brexit は最近絶えず議論されており、直近の調査でもファンドマネージャーにとって最大の“テールリスク”と捉えられているなど、否定
的な声がよく聞かれます。したがって、少なくとも部分的には市場に織り込んでいると考えられます。
最後に、世論調査は拮抗しているものの、残留への支持層の方がこれまで優勢である点に留意が必要です。私の見方では、昨年のスコットラン
ド独立を巡る住民投票と同様に、投票権を持つほとんどの英国人が現状維持を選択すると考えており、よって 70%の確率で残留となるでしょう。
中国は本当に過剰投資状態なのでしょうか?そもそも過剰投資が前提として受け止められており、日本などと比較して、コモディティ需要に対す
る弱気な見方を正当化するための材料とされているようにも思えます。しかし、私は少々懐疑的で、最近 2 つの出来事がその考えを補強する材
料として加わりました。第一に、もし中国の住宅市場が幽霊都市などで例えられるように本当に供給過剰の状況にあるのであれば、なぜ中国の
不動産価格は規制当局が規制を緩めるたびに上昇するのでしょうか。不動産会社の捜房(SouFun)が算出する 100 都市住宅価格指数は 5 月
に 1.7%上昇し、前年比で 10.3%も上昇しています。第二に、次にあげる各国の空港の数に関する統計です。米国 13,513;カナダ 1,467;ロシ
ア 1,218;ドイツ 539;豪州 480(小規模も含む);中国 507。これを見ると、中国に過剰投資の兆候はありません。さらに、私は中国のインフラに
ついても同様に懐疑的です。
豪州の最低賃金は 7 月 1 日より 2.4%上昇し、1 時間当たり 17.70 豪ドルとなる予定ですが、これは労働人口全体の 15%以下にしか影響を
与えないことから全体の賃金成長に影響を与えるものではなく、マクロ経済に対する影響も限られたものとなるでしょう。豪州の最低賃金は米ド
ルベースで経済協力開発機構(OECD)の各国標準を上回っているものの、国際競争力の観点から考えると、豪ドルが 30%以上の下落をした
今はそれほど大きな問題ではありません。
世界経済指標
米国の経済指標はまちまちの結果となりました。具体的には、4 月の消費支出の増加や住宅価格の上昇、また予想外に上昇した 5 月の ISM
製造業指数、新規失業保険申請件数の低下、予想以上に縮小した貿易赤字、そして自動車販売が好調だったものの、軟調な非農業部門雇用
者数、予想を下回った ISM 非製造業指数や建設支出、消費者信頼感指数などが発表されました。一方、FRB が参考指標としている個人消費
支出(PCE)コア・デフレーターは、目標値 2%に対し 4 月は前年同月比で 1.6%と横ばいとなりました。ベージュブックでは、経済は「緩やかに」
拡大しているとし、賃金成長や「わずかな」物価上昇が報告されました。
欧州中央銀行(ECB)は、6 月の理事会において、予想通り現行の金融緩和政策の効果を見極める姿勢を維持しました。しかし、ECB がインフ
レ目標値(2018 年に 1.6%)を変更しないことや、ドラギ総裁のハト派なコメントを踏まえると、緩和バイアスを維持することが示唆されています。
ユーロ圏の景況感は 2 ヵ月連続で回復しており、経済成長はまずまずの水準を維持しています。一方で、失業率は 10.2%と引き続き高水準で
すが、銀行融資は引き続き緩やかに増加しており、消費者物価指数は小幅上昇しましたが、コアインフレ率は 0.8%と依然として目標値を下回っ
ています。
大方の予想通り、日本の安倍首相は 2 回目となる消費増税を 2019 年 10 月に再延期し、今後「大胆な」経済政策が発表される予定です。4 月
の雇用統計は堅調に推移し、鉱工業生産指数も上昇しましたが、1 年前と比べるとまだ下降傾向にあり、家計支出も引き続き弱含んでいます。
中国の 5 月の購買担当者景気指数(PMI)は横ばい~若干の低下となり、最近つけた最低値を上回る水準を維持していることから、GDP 成長
率は 6.5~6.7%と予想されます。
インドは 1-3 月 GDP 成長率が前年比 7.9%上昇となり、世界的に見ても引き続き突出して良好な数字となっています。
豪州経済指標
先週発表された豪州の経済指標は、ほぼ良好な結果となりました。GDP 成長率は予想を上回り対前年比で 3.1%上昇となり、建築許可件数も
記録的な水準まで回復してきており、住宅価格もシドニーが牽引し回復に向かっています。また、小売売上高の伸びもまずまずの結果となり、貿
易赤字も引き続き縮小してきています。 しかしながら、5 月は新築住宅販売件数と AIG 製造業指数が低下するなど軟調となった指標も見られま
した。 複数のプロジェクト(鉱業ブームの第三段階)が完了し、資源輸出ブームから、消費支出、住宅及びサービスへの経済の構造転換を図った結果、
景気後退懸念からは脱却できました。
しかしながら、いくつかのマイナス材料もあります:経済需要の伸びは引き続き非常に弱く、民間最終需要も横ばいとなっています。; 資源輸出
が数量ベースで増加したとしても、大きな雇用創出にはならないでしょう。;名目 GDP(前年比 2.1%)は、コモディティ価格の低下と低インフレ率
を反映し非常に低い値となっています。; 従って、企業収益にも悪影響となります。;またシドニーとメルボルンの不動産ブームと、集合住宅の認
可の急増が不動産バブルのリスクを増幅させている可能性もあります。
全体として、様々な材料を踏まえると、我々は RBA が今後数ヵ月のうちに急いで追加利下げに踏み切ることはないと見ているものの、今年後半
には利下げを実施するとみています。一方、もし住宅価格指数の上昇が一時的なものではない場合、豪州健全性規制庁(APRA)が住宅ローン
の伸びを抑制する新たな規制を講じると考えています。
今週の注目点
米国では、イエレン FBR 議長による講演が予定されていますが、5 月の非農業部門雇用者数が軟調だったことから、6 月の金利引き上げの可
能性の低下について言及する可能性があります。今週は、JOLT(求人労働移動調査)求人件数と、消費者態度指数が発表予定です。
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中国では、5 月の各種経済指標が公表予定となっており、貿易収支については、若干の改善が予想されます。また、インフレ率に関しては、生
産者物価指数(PPI)の一層の低下が見込まれますが、消費者物価指数(CPI)は前年比 2.3%あたりを維持すると予想されます。鉱工業生産指
数、小売売上高及び投資に関しては、4 月の統計とあまり変わらない可能性があります。ローンについては、4 月の下落からの回復が予想され
ます。
豪州では金利の引き上げに再び焦点が集まりますが、今週行われる RBA の金融政策決定会合では、金利は据え置かれる可能性があります。
1-3 月期の賃金成長率が予想を下回るものであったことや、豪ドル高が引き続きインフレ率の下振れリスクを高めており、これらが政策金利引き
下げのサポート要因となっているものの、堅調な実質 GDP 成長や、RBA は再利下げを行う前に 5 月の利下げ効果について「さらなる情報」を
確認したいとの意向をもっていることから、8 月まで様子見の姿勢を維持すると思われます。一方、今週発表される ANZ 求人広告指数では、雇
用成長の伸び悩みが見込まれますが、4 月の住宅ローン件数は約 3%の増加が予想されています。
相場見通し
今月と来月にかけて、特に重要なイベント(FRB の理事会、Brexit を問う国民投票、スペインの出直し選挙、豪州の総選挙)が控えており、また、
相場格言の「株は 5 月に売れ」とあるように、短期的には、ここ 2、3 ヵ月は株式市場のボラティリティは引き続き高いと見られます。とはいえ、短
期的なボラティリティは見られるとしても、今年は年末に向けて株式市場はさらに上昇すると見ています。その理由としては、株式のバリュエーシ
ョンが債券と比べて割安であること、世界的に超低金利環境が継続していること、緩やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。ただし、世界的に低成
長、余剰生産能力や低インフレが見込まれることから過度に債券投資に対して弱気になることは難しいと思われます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前後
まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
1 豪ドル=0.78 米ドルはテクニカル面での売られ過ぎの状態であり反発すると見られます。とはいえ、短期的なリバウンドは限定的なものとなる
可能性が高く、長期的には再び下落基調が始まるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行っている一方で、FRB はいずれ利上げ
を再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、コモディティ価格が依然低迷していること、豪ドルがフェアバリュー(適正
価値)を下回るのも珍しいことではないためです。
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当資料は、投資の参考となる情報の提供を⽬的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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