2016年4月11日号(PDF/582KB)

お客様用
2016 年 4 月 11 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
2 月 小売売上高 季調済み(前月比)
今週の注目点
直近
前回
日付
経済指標・イベント
0.0%
0.3%
4 月 13 日
米国 3 月
小売売上高速報(前月比)
前回
市場予測
-0.1%
0.1%
金融市場・原油・為替
指数等
S&P/ASX200 指数
2016年4月8日
2016年4月1日
前週比
2015年4月8日
前年比
4,937.62
4,999.39
-1.2%
5,960.73
-17.2%
1,355.9
1,335.9
+1.5%
1,318.9
+2.8%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.25%
2.28%
-3bps
2.28%
-2bps
豪州債券 10 年物利回り
2.40%
2.53%
-12bps
2.33%
+8bps
81.63
85.69
-4.06
92.31
-10.68
豪ドル米ドル(セント)
0.76
0.77
-0.01
0.77
-0.01
豪ドル TWI
63.2
64.3
-1.1
63.3
-0.1
S&P/ASX200 不動産投信
豪ドル円
先週の主な話題
先週は、ほとんどの経済指標がまずまずの結果であったにもかかわらず、市場では世界経済の成長に対する懸念の再燃が見られ、市場は下
落しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)から発表された直近会合の議事録も、利上げに対する慎重姿勢を再確認するものでした。日
本株は円が対米ドルで 7%上昇したことを背景に 1.1%の下落、米国株、欧州株、豪州株はそろって 1.2%程度の下落となりました。豪州株につ
いては、引き続き銀行株が市場全体の重石となりました。また中国株も 1.1%下落しています。市場において、成長に対する不安が台頭し“リス
ク・オフ”モードへの移行が進んだことから債券利回りが低下、日本円が上昇し、豪ドルが下落しました。コモディティ市場では、金属価格は急落
したものの、OPEC が 4 月 17 日の会合で増産凍結に関する共同声明でおそらく合意できるだろうとの楽観的な見方から、原油価格は上昇しま
した。
IMF のクリスティ-ヌ・ラガルド専務理事が、世界経済の成長はあまりにも緩慢で脆い状況にあるとのコメントが出され、市場が神経を尖らせる
局面もありましたが、このコメント自体は本質的に新しいニュースというわけではありません。IMF は、今年の世界経済の成長率を 3.4%と予想
しているものの、依然として楽観的な水準であるので、今後 3%程度に修正するものと思われます。専務理事のコメントは、サプライサイドの経
済構造改革の推進を各国政府に促す目的から発せられたものではあったものの、3 月の各種購買担当者景気指数(PMI)において幅広く改善
が見られ、世界経済のモメンタムが足元でやや改善に向かっている、もしくは少なくとも安定化に向かっていることが示唆されたことは注目すべ
きポイントです。
1/3
グローバル製造業PMIおよびサービス業PMI
60
サービス業PMI
55
50
製造業PMI
45
40
35
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
出所:ブルームバーグ、AMP キャピタル
最近の円高(昨年の最安値から対米ドルで 14%の上昇)については、注視する必要があります。それは日本の経済成長に悪影響を及ぼすだ
けでなく、(投資家が割安な日本円を借り入れて、世界各地に投資を行う)キャリートレードの巻き戻しが起こり、その結果として資本のリスク回避
を招く前兆になりうるという点において、世界経済にとってもマイナスの影響を及ぼす可能性があるからです。その反面、投資家が相場に対して
神経質になっているときに円高が進行するのはよくあることで、円高の進行が日銀に対する金融緩和圧力を高めることになります。
米国では、ドナルド・トランプ氏がウィスコンシン州の予備選で敗北し、“広言戦略”の行き詰まりから、トランプ氏のキャンペーンもようやく失速を
見せ始めました。トランプ氏が代議員総数の過半数である 1,237 人を獲得し 7 月の共和党全国大会で候補者指名を獲得するためには、残りの
州の党員集会で 56%の代議員を獲得する必要がありますが、これまでのところ 47%しか獲得していません。今後予備選が行われるニューヨー
ク州(4 月 19 日)やカリフォルニア州(6 月 7 日)といった大票田の州においても、トランプ氏が勝利することは困難と言わざるを得ません。これら
の州におけるトランプ氏に対する支持率が芳しくないからです。一方、もう一人の有力候補テッド・クルーズ氏にとっても、1,237 人の代議員数を
獲得することは事実上不可能と言わざるを得ません。クルーズ氏は残りの州の党員集会で 82%の代議員数を獲得する必要がありますが、これ
までのところ 33%しか獲得していません。したがって、今度の共和党全国大会は消去法で候補者を選択する様相を強めています。民主党サイド
では、ヒラリー・クリントン氏が順調に勝ち進んでいます。クリントン氏はこれまでに 62%の代議員数を獲得しており、指名獲得には残りの州で
32%の代議員数を獲得するだけになっています。米国大統領選挙では、良識が勝利を収めることになるでしょう!
豪州では、豪州準備銀行(RBA)は政策金利を据え置く判断をしましたが、豪ドル高が「現在進行している経済の調整を複雑」にしていると不快
感を表明しました。これは、豪ドル高が進行する場合、RBA が緩和バイアスを実行に移して再び政策金利を引き下げる可能性が高まることを示
唆しています。弊社では、次の 6 つの理由から豪州の経済成長がやや鈍化することが想定されることから、RBA が再び政策金利の引き下げに
踏み切るとの予想を維持しています。1)鉱業投資ブームの巻き戻しの継続、2)住宅セクターからの寄与の鈍化、3)失業率が 6%程度と比較的
高く推移、4)インフレ率が引き続き低水準で推移、5)RBA の金融政策とは無関係に、民間銀行が再度住宅ローン金利の引き上げを行う可能性
(クイーンズランド銀行はすでに引き上げに踏み切っています)、6)観光や高等教育といった産業にとって豪ドル高が脅威となっていること、など
です。1-3 月期のインフレ統計は 4 月 27 日に発表されますが、軟調な結果となった場合、5 月に利下げが行われる可能性があります。しかし、
状況次第で 4-6 月期の数値を確認してからになる可能性も残しています。
世界経済指標
米国では、2 月は貿易赤字が拡大しましたが、3 月の(求人市場における労働者信頼感の指針となる)求人、雇用、離職率は好調を維持してお
り、新規失業保険申請件数も低水準を維持、ISM 非製造業景況総合指数も改善しました。アトランタ地区連銀の「GDPNow」によると 2016 年 1
-3 月期の GDP 成長率は年率でたったの 0.4%と推計しているものの、過去 20 年間において、1-3 月期の平均成長率はたった 1%でも 4-
6 月期の平均成長率は 3%だった季節要因パターンが見られたことと、3 月の各種購買担当者景気指数が改善したことから、先行きについて気
をもむほどの理由はありません。一方で、直近の FRB 会合の議事録では、FRB 理事は総じて 4 月会合で再び政策金利を引き上げることにつ
いて消極的で、利上げに対して慎重な姿勢が確認されました。ジャネット・イエレン FRB 議長のコメントによると、雇用統計には依然として回復の
緩慢な指標がいくつか見られ、FRB が慎重な姿勢の維持する根拠としています。
ユーロ圏の経済指標は、強弱まちまちの結果となりました。ドイツの 2 月の製造業新規受注、3 月のサービス部門購買担当者景気指数はともに
下落したものの、サービス部門購買担当者景気指数については依然として穏やかな経済成長と整合性のとれた水準を維持しています。また、
(依然として高水準ではあるものの)2 月の失業率は再び低下しました。
中国からの資本流出の最悪期は、脱したものと思われます。3 月の中国の外貨準備高は、5 ヶ月ぶりに増加に転じました。為替による評価変動
調整後の 3 月の外貨準備減少額は 420 億米ドルと、昨年 12 月の 1,420 億米ドルから減少し、資本流出のペースが鈍化していることがわかり
ます。人民元と中国経済が崩壊に向かう可能性は大きく後退し、成長モメンタム改善に対する確信度が高まっていると見られ、この点について
は、3 月 Caixin サービス部門購買担当者景気指数が改善したことでも確認できます。
インド準備銀行(RBI)は、政策金利の引き下げを行いました。このことから、世界では依然として金融緩和に向かっていることが浮き彫りになり
ました。
豪州経済指標
豪州の経済指標は軟調でした。2 月の住宅建設許可件数は前月比で 3.1%増加したものの、前月に 6.6%減少したことの反発の域を出ず、トレ
ンドは明らかに下向きで、住宅投資は前年から鈍化しています(次の図表を参照)。2 月の小売売上高も予想を下回る結果となり、勢いを失った
感が見られます。2 月の貿易赤字も拡大、3 月のサービス・建設部門の購買担当者景気指数も、(製造業部門が強かったのとは対照的に)軟調
な結果となりました。メルボルン研究所の発表する 3 月の豪 MI インフレ指数は、総合インフレ率、基調インフレ率ともに前年比で 2%を下回りま
した。
2/3
建築許可件数の低下は建設セクターの鈍化を示唆
Falling building
approvals point to slowing dwelling investment
30
Annual % %
change
年率変化
Dwelling
建設投資
Investment
20
10
0
-10
建築許可件数
Building Approvals
(lead 2 qtrs)
-20
-30
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
出所:オーストラリア統計局(ABS)、AMP キャピタル
今週の注目点
米国では、3 月の小売売上高の改善が見込まれ、3 月の消費者物価指数(CPI)については前年比で 1.1%、コア・インフレ率も前年比で 2.3%
の上昇、3 月の鉱工業生産指数は前月比で若干のマイナスを予想しています。FRB のベージュブックもリリースされます。今週は、アルコアが 1
-3 月期決算概要の発表を行うなど決算発表シーズンが本格化しますが、コンセンサス予想では前年比で 8-9%の減益が予想される中、アッ
プサイドのサプライズ余地があると思われます。
中国の 1-3 月期 GDP 成長率は前年比で 6.7%と、10-12 月期の前年比 6.8%からわずかながらもモメンタムの低下が観測されると予想さ
れ、年初からの軟調な経済指標と整合性のとれた結果となるでしょう。とはいえ、より時宜にかなった 3 月の経済指標は堅調を維持すると見ら
れ、貸出残高の成長やマネーサプライの増加、輸出入の回復、鉱工業生産や小売売上高や固定資産投資において改善もしくは安定的な成長
が予想されます。
4 月 17 日に開催される OPEC の会合は、増産凍結に関する共同声明にイランが含まれるかどうかが大きな焦点となるため、市場の注目を集
めるものと思われます。ただし、イランは経済制裁が解かれて原油生産が回復途上にあることから増産凍結に合意するとは考え難く、たとえサ
ウジアラビアを含む他のメンバーが共同声明に含まれたとしても、増産凍結の影響について楽観的な見方をとることは難しいでしょう。イランが
原油の増産を行うことで、OPEC 全体の原油供給量は増え続けると考えられるからです。
豪州では、2 月の住宅ローン件数が増加すると予想されます。また 3 月 の消費者信頼感指数、NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)企業景況
感指数に大きな変化は見られず、3 月の雇用者数は 1.7 万人増加すると見込まれるものの、失業率は 5.9%と若干の増加が予想されます。
RBA が半期に 1 度の金融安定協議会(Financial Stability Review)を開催することから、不動産市場を取り巻くリスクについて RBA が評価を
変更したかどうかについて注目が集まるでしょう。
相場見通し
グローバル株式は、2 月の安値からの力強い回復を経て、足元では買われ過ぎの水準に達し調整のリスクもあり、これにより豪州株式につい
ても、上値の重い展開となっています。とはいえ目先の不透明感が解消された場合には、年内、上昇基調を辿ると弊社は見ています。その理由
としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に金融緩和が加速していること、緩やかな経済成長が続いていること
などが挙げられます。
現在、世界の国債の約 25%で利回りがマイナス圏に沈んでいるように、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが
中期的に低調になる可能性が考えられます。しかし、不安定な経済成長、余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ
持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取ることは難しいと言えます。相対的に見て、豪州、米国、(恐らく)中国など、高い利
回りを提供する国の債券には投資妙味があると考えられます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前後
まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
RBA が今後政策金利を 1.75%まで引き下げる可能性があることから、キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まると考えられ
ます。
豪ドル相場については、FRB が利上げを見送り続け、豪州の経済指標が改善すれば、短期的に一段と上昇するリスクがあります。しかし行き
過ぎの水準となる可能性は低く、長期的には下落基調を維持するでしょう。というのも、RBA は最終的には追加利下げに踏み切るか、少なくとも
口先介入を実施、FRB もいずれ利上げを再開すると見られており、それに伴ってこれまで豪ドル高の要因となってきた豪州・米国間の金利差が
縮小に向かうと予想されるほか、コモディティ価格は依然低迷しており、豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回るのも珍しいことではないため
です。
3
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
AMP キャピタル・インベスターズ株式会社
ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
有価証券への投資を勧誘する目的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されており
加入協会: 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
ますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。当資料中のいかなる内容も将来の投資成果及び将来の市況環境の変動等
を保証するものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
3/3