2016年4月18日号(PDF/482KB)

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2016 年 4 月 18 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
雇用者数変化(3 月)
今週の注目点
直近
前回
2 万 6,100 人増
700 人減
日付
経済指標・イベント
4 月 19 日 米 3 月住宅着工件数(前月比)
前回
市場予測
5.20%
-0.7%
金融市場・原油・為替
指数等
S&P/ASX200 指数
2016年4月15日
2016年4月8日
前週比
2015年4月15日
前年比
5,157.49
4,937.62
+4.5%
5,908.42
-12.7%
1,372.9
1,355.9
+1.3%
1,305.1
+5.2%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.28%
2.25%
+3bps
2.25%
+4bps
豪州債券 10 年物利回り
2.56%
2.40%
+15bps
2.28%
+28bps
84.01
81.63
+2.38
91.52
-7.51
豪ドル米ドル(セント)
0.77
0.76
+0.02
0.77
+0.00
豪ドル TWI
64.7
63.2
+1.5
62.9
+1.8
S&P/ASX200 不動産投信
豪ドル円
先週の主な話題
先週は、悪化が予想されていた米国企業の決算報告が予想以上に良好であったこと、好調な経済指標、年初からの市場の混乱が落ち着きを
見せたことで、市場を高値に押し上げました。米国株 1.6%、欧州株は 4%、日本株は 6.5%、中国株は 3.1%、豪州株は 4.5%の上昇となりま
した。米国株については、年初来 1.8%上昇しています。 “リスク・オン”モードが戻り、鉄鉱石価格が 1 トン当たり 60 米ドル近辺に戻ったことで、
債券利回りが上昇、金を除くコモディティ価格も上昇しました。米ドルが若干上昇するなか、コモディティ価格の上昇や好調な豪州経済指標に支
えられ、1 豪ドル=0.77 米ドルとなりました。
サプライズ - 世界経済成長見通しについて新たな不透明感が高まったとして、IMF は今年の世界経済の成長予測を 3.4%から 3.2%に、
2017 年については 3.6%から 3.5%に再び引き下げました。ただし、IMF の今回の引き下げについては、年初の金融市場の混乱を引き起こし
た投資家の懸念に基づいたものであり、今までにも IMF は成長予測を引き下げていることは念頭に置く必要があります。次のチャートをご覧下
さい。通常 IMF は年初に世界経済成長予測を約 4%と発表し、その後次第に 3%近辺に修正・引き下げを行っています。つまり、直近の IMF の
成長見通し引き下げは目新しいものではありません。
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IMF世界経済成長予想
(%)
(年)
出所:IMF、AMP キャピタル
さらに重要なことは、今年初めに市場の混乱を引き起こした懸念の多くは後退を見せていることです。例えば、(1)中国の経済指標は、より良好
になってきていること、(2)金利引き上げに際し、FRB がグローバル経済の状況について慎重かつ気を配っていることを示唆し続けていること、
(3)米ドルの下落が新興国市場に対する圧力を緩和していること、(4)中国の人民元が貿易加重ベースでみると安定化を見せていること、そし
て、(5)ユーロ圏の銀行を取り巻く懸念が後退していることなどです。
サウジアラビアは、増産凍結には会議に出席しなかったイランを含まなければならないと主張したため、長く待ち望まれていたドーハでの
OPEC とロシアとの協議は、石油生産凍結に関して合意できないまま終わりました。まだ制裁からの回復しつつあるイランが、参加するとは考え
にくいため、これは常に最大のリスクでした。今回の合意見送りを受けて、2 月の安値から大きく回復していた原油価格は、その反動から短期的
に調整を余儀なくされ、株式市場を含めた他のリスク資産にも影響する可能性があります。しかし会議の結果に関係なく、原油価格の安定化を
支えるため、米国を含め、あちこちで生産制御が行われることから、世界の原油市場は徐々に均衡に向かっているように見えます。
豪州では、連邦予算編成時期(5 月 3 日)が近づいています。それについては、いつものように格付け機関を含め、皆がそれぞれの主張を繰り
広げています。連邦予算の黒字化は進んでいませんが、これまでのところ豪州の AAA ソブリン格付けには影響はありませんでした(下図参照)。
一方で、有効な歳出削減や税制改革が限られていることに関するムーディーズが公表した懐疑的なコメントは、格付け機関が AAA 格を付与す
ることに対する忍耐を失いつつあることを示唆しています。予算の黒字化は労働党および自由党の両党ともに課題としているものの、上院がよ
り協力的にならなければ、歳出削減の実現は楽観的にはなれない状況であり、有効な税制改革は(再び)棚上げ状態となっています。しかし、楽
観的な見通しに至る理由は、いくつかあります。シクリカルなタイミングで、5 月の予算編成の際には黒字化が先送りされる可能性は低いでしょう。
なぜなら経済・財政中間見通し(MYEFO)では 39 米ドル/トンとされていた鉄鉱石価格が 60 米ドル/トン近辺に上昇したことや、強い雇用成長に
よる税収入の増加によって、黒字化が見込まれるからです。これはしかし、あくまで「外的要因」が変化したためであり、構造的な赤字に対して具
体的な改善が見られないことは、格付け機関の忍耐を試し続けることとなり、AAA 格へのリスクはまた上昇する可能性があります。実際、AA1
への格下げは本当に問題となるでしょうか?他国での経験に基づけば、格下げは、債券利回りへの影響は限定的であることを示唆しています
が、民間部門の借入コストを僅かに押し上げる可能性を示しています。ただ、それは国家にとって精神的に打撃となり、それは 1980 年代後半に
格下げされてから AAA 格を回復するまでにかかった低迷する期間を思い起こさせることになるでしょう。
(%)
財政黒字予測 – 追い風を受けている
予算収支
対GDP(%)
黒字
2013-14予算
2014-15予算
2012-13予算
2015-16予算
2015-16
MYFEO
赤字
(年)
出所:連邦財務省、AMP キャピタル
世界経済指標
米国の経済関連指標は強弱入り混じる内容でしたが、まずまずの内容となりました。新規失業保険申請件数は、1973 年以来の最低水準となり
ました。3 月の小売売上高は予想を下回ったものの、ここ数ヶ月は上方修正されており、まずまずの結果となっています。3 月の鉱工業生産は予
想を下回りましたが、ニューヨーク連銀製造業景気指数は回復しました。NFIB(全米独立企業盟)中小企業楽観指数は低下し、生産者物価指数
(PPI)は予想を下回りました。このような弱いインフレ指標は、インフレ率の急上昇に警戒するジャネット・イエレン FRB 議長にとって政策金利の
引き上げをスムーズに進めるための余地を与えることになります。1-3 月期の決算報告は、これまでのところ、83%が利益予想を上回り、57%
が売り上げ予想を上回る良好なスタートを切っています。ただ、S&P500 種インデックス構成銘柄のうち、まだ 33 社しか発表が行われていませ
ん。市場の予想では、1-3 月期の利益予想は対前年同期比-9%となっていますが、やや良い-5%近辺になる可能性が高くなっています。
中国の経済成長の安定化や改善を示唆する指標は、少しずつ表れていましたが、現在、明らかに確認できるようになっています。1-3 月期の中
国の GDP 成長率は、年初の弱いスタートを反映し、予想通り前年同期比 6.7%に減速しました。しかし、3 月には様々な指標が安定または改善
を示すようになりました。PMI、生産者物価インフレ率、輸出入、電力消費、鉄道貨物輸送、鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資、総融資残
高などです。 要点としては、昨年の追加景気刺激策が今の成長を支えているということです。このことは、今度はコモディティ価格の上昇に反映
されています。
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豪州経済指標
豪州の経済指標は驚くべきことに好調でした。2 月の所有者向けおよび投資家向け住宅ローンともに堅調な伸びを見せ、企業景況感は直近 8
年間で最も高く、NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)企業信頼感は好調で、予想を上回る雇用成長により 3 月の失業率は 5.7%に低下しまし
た。ただ、全ての指標がポジティブであったわけではありません。ウェストパック消費者信頼感指数は 4 月に再び低下し長期平均を下回る水準と
なり、月次の雇用成長は昨年の平均が 30,000 人増と高水準であったのに対し、8,000 人増と鈍化してきており、労働時間も鈍化しています。し
かし、失業率は低下傾向にあると見られ、このような背景から豪州準備銀行(RBA)が政策金利の引き下げを実施するとは思われません。その
ため、5 月の政策金利引き下げはないと見ています。ただし、弊社では、1)住宅セクターからの寄与の鈍化する中、豪ドル高が継続する場合、2)
鉱業投資の低迷が継続する場合、3)インフレ率が引き続き 2%以下の低水準で推移する場合、4)民間銀行が住宅ローン金利の引き上げを行
う場合等には、豪州の経済成長を下支えするため、RBA が再び政策金利の引き下げに踏み切るとの予想を維持しています。
RBA が最近発表した半期金融安定化報告(FSR)によると、当局による規制によって、住宅ローンにかかるリスクは減少しているとしています。
ただし、集合住宅開発に関するリスク(特にメルボルン、ブリスベンの都心部およびパースにおいては顕著な傾向が見られます)、いくつかの商
業用不動産市場、および資源関連企業についてのリスクは見られるとしています。ただ、銀行の資源関連へのエクスポージャーは低いことや、
非資源事業に関するリスクも低いとしています。
今週の注目点
米国では、来週にかけて 1-3 月四半期の決算発表が一斉に行われます。指標関連では米 NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数が若
干上昇すると見られ、2 月に大きく上昇した住宅着工件数は若干下落すると見られます。住宅販売と住宅価格は上昇し、4 月の製造業 PMI は
やや上昇と見られます。また、今週はニューヨーク州予備選が 19 日にあります。
欧州では、欧州中央銀行(ECB)の会合が開かれますが、3 月の会合の追加緩和政策にさらに変更を発表することはないと見ています。しかし
会合後のコメントは、ユーロ圏経済の推移を見る判断材料としてそれは間違いなく重要です。 4 月のサービス業購買担当者景気指数(PMI)は、
わずかな改善を示すことが予想されています。
豪州では、RBA 政策決定会合の議事録の公表とグレン・スティーヴンス RBA 総裁のスピーチが発表され、政策金利見通しについての何らか
の手がかりが得られると思われます。総裁のスピーチは、タイムリーなものとなるため、より多くの関心が集まるでしょう。RBA は、緩和バイアス
を維持すると見られますが、最近の指標からは、経済のリバランスがさらに進んだ可能性があります。熟練技能者求人に関するデータが今週リ
リースされます。
相場見通し
5 月に向けて、株式市場のボラティリティは短期的に高い状態が続くと見られます(相場の格言に、“5 月に売って、いったん市場から立ち去り、
セント・レジャー・デー(競馬のレースが行われる 9 月の第二土曜日)まで戻ってくるな”という格言があります)。FRB は徐々に次の金利引き上
げに向けて市場を懐柔し始めるでしょう。しかし、短期的なボラティリティは見られるとしても、今年は年末に向けて株式市場はさらに上昇すると
見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に金融緩和が加速していること、緩やかな経済
成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、世界の国債の約 25%で利回りがマイナス圏に沈んでいるように、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが
中期的に低調になる可能性が考えられます。しかし、不安定な経済成長、余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ
持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取ることは難しいと言えます。相対的に見て、豪州、米国、(恐らく)中国など、高い利
回りを提供する国の債券には投資妙味があると考えられます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前後
まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
RBA が今後政策金利を 1.75%まで引き下げる可能性があることから、キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まると考えられ
ます。
豪ドル相場については、FRB が利上げを見送り続け、豪州の経済指標が改善すれば、短期的に一段と上昇するリスクがあります。しかし行き
過ぎの水準となる可能性は低く、長期的には下落基調を維持するでしょう。というのも、RBA は最終的には追加利下げに踏み切るか、少なくとも
口先介入を実施、FRB もいずれ利上げを再開すると見られており、それに伴ってこれまで豪ドル高の要因となってきた豪州・米国間の金利差が
縮小に向かうと予想されるほか、コモディティ価格は依然低迷しており、豪ドルがフェアバリュー(適正価値)を下回るのも珍しいことではないため
です。
3
当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
AMP キャピタル・インベスターズ株式会社
ABN 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の
登録番号: 関東財務局長(金商)第 85 号
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