ご参考資料 マーケットレポート 2016年2月5日 日銀によるマイナス金利導入の影響について 日銀は、1月28日~29日の金融政策決定会合で、 「マイナス金利」政策の導入を決定しました。具体的 には銀行など金融機関が保有する日銀当座預金の 残高の一部について、▲0.1%のマイナス金利を適用 するものです。 マイナス金利の適用イメージ 日銀当座預金残高 ▲0.1% ◆マイナス金利政策の概要 政策金利残高 当座預金を、①基礎残高、②マクロ加算残高、③政 策金利残高の3層に分別し、各々に+0.1%のプラス金 利、ゼロ金利、▲0.1%のマイナス金利を適用します。 日銀は各金融機関が2015年に積み上げたとみなす 部分を「基礎残高」とし、従来どおり+0.1%の金利を付 与します。また金融機関が日銀に法律上預ける必要 がある所要準備額部分、貸出支援基金など日銀が金 融機関に資金供給を行っている場合の残高相当額、 および日銀が適宜加算する額について「マクロ加算 残高」とし、0%を適用します。残りの部分を「政策金 利残高」とし、▲0.1%のマイナス金利が適用されます。 日銀は年間で約80兆円相当のペースでマネタリー ベースの増加を目指す量的金融緩和政策を実施して おり、2015年12月末時点で日銀当座預金は250兆円 強となっています。マイナス金利導入当初は大半が 「基礎残高」、「マクロ加算残高」が占めるものと見ら れますが、マネタリーベースの拡大が続くにともない、 「政策金利残高」が増大していくこととなり、マイナス 金利=金融機関が日銀に支払うコストが増加するこ とになります。 ◆日銀のマイナス金利導入の狙い 日銀は29日の声明文で、「日本銀行当座預金金利 をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き 下げ、大規模な長期国債買入れとをあわせて、金利 全般により強い下押し圧力を加えていく」と説明して います。 金融機関は従来、余剰資金を日銀当座預金に預け ることで確実に+0.1%の収益をあげられましたが、今 後は預金増加分に▲0.1%のコストが発生する可能 性があります。このため金融機関は、日銀当座預金 からコール市場や短期国債など別の資産に資金をシ フトすることが考えられ、その結果、現状はプラス金 利で取引されているコール市場等にもマイナス金利 が波及していくことが予想されます。 日銀の狙いどおり、国債市場では短期から中長期、 超長期まで幅広い年限で利回りが低下し、残存期間 8年程度の国債までマイナス金利で取引されています。 10年国債の利回りは一時過去最低となる0.045%まで 低下しています(2月3日時点)。 0% マクロ加算残高 基礎残高 +0.1% (出所)日銀の公表資料を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 マネタリーベース残高の推移 (兆円) (2011年1月末~2016年1月末、月次) 400 日銀当座預金残高 350 銀行券発行高 300 マネタリーベース残高 250 200 150 100 50 0 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 (年/月) (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 日本国債のイールドカーブの変化 1.4 (%) 1.2 1月28日 1.0 1月29日 0.8 2月3日 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 -0.4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 30 (年:国債の残存期間) (出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法にもとづく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。本資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 1/3 ご参考資料 ◆マイナス金利政策の概要 マイナス金利政策は、いわゆる「アナウンスメント効果」と「市場金利の低下を通じた効果」の2つの効果 を狙ったものと考えられます。 <アナウンスメント効果> 日銀は今回の政策変更の背景について、年初来の金融市場の混乱によってデフレマインドの改善が遅 れ、先行きの物価に悪影響を及ぼすリスクが増大したことをあげています。29日の会見で黒田総裁は、 「重要なのは物価目標に向けて日銀が必要なことは何でもやると示すことで、デフレ心理の転換をはかる こと」と説明しています。 実際には、日銀がマイナス金利を導入することで、ただちに消費や設備投資が活発化するとは考えにく いものの、「日銀が2%の物価目標達成に本気で取り組んでいる。日銀はまだまだ追加緩和の手を緩めな い」といったメッセージを発したことは、企業や消費者の心理を通じて景気や物価の動向にプラスに作用 するものと期待されます。 <市場金利の低下を通じた効果> まず1つ目の効果として、銀行預金金利、貸出金利の双方が低下することがあげられます。市場金利低 下によって金融機関の資金運用がさらに困難となるため、コスト削減の観点から定期預金の金利を普通 預金並みに引き下げる動きが見られます。一方、企業向け貸出金利や長期固定型の住宅ローン金利は、 各々金融機関間の短期資金の取引金利や長期の国債利回りを基準に決定されており、今後は低下圧力 がかかることが予想されることから、金融機関の民間貸出の増加や設備投資の増加が期待されます。 2つ目は円の短期金利がマイナスとなることで外国為替市場では「円買い・米ドル売り」の取引を行った 場合の資金コストが増加するため、円高を抑制する効果が期待されます。今回の声明文では「今後、必 要な場合、さらに金利を引き下げる(=マイナス幅を拡大する)」と明記されています。日銀による追加利 下げへの思惑など、投機筋による円買いをけん制する効果がありそうです。 3つ目は機関投資家や個人投資家の投資行動の変化です。市場金利の低下で国債など債券への投資 で得られる収益が減少することから、より高い収益を求めて相対的に配当利回りの高い国内株式やJREITに資金を振り向ける動きが強まりそうです。また為替変動リスクがあるものの、上記の円高抑制への 効果もあり、外貨建資産への投資の増加も想定されます。 以上 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法にもとづく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。本資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。 2/3 ご参考資料 【 ご留意事項 】 ●当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したもので あり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。 ●ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断 ください。 ●投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価 額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益 は全て投資者の皆様に帰属します。 ●投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではあり ません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。 ●当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するもので はありません。また、今後予告なく変更される場合があります。 ●当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示 唆あるいは保証するものではありません。 ● 当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開 発元もしくは公表元に帰属します。 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、 証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。 3/3
© Copyright 2024 ExpyDoc