EY Institute 24 February 2015 執筆者 シリーズ:原油安の影響⑥ ~家計にはプラス効果か? 原油価格の影響は身近なところにも 原油価格の低下は、家計にどのような影響を及ぼすのだろうか。 鈴木 将之 EY総合研究所株式会社 経済研究部 エコノミスト <専門分野> ► 日本経済の実証分析・ 予測 ► 産業関連分析 身近なところでは、原油価格が低下することによって、それを原材料とするガソリンや灯油価格 が低下することが考えられる。実際、2014年後半のガソリン価格は、毎週のように低下してお り、資源エネルギー庁によると、15年1月26日時点で27週連続の下落となった。また、少し長い 目でみれば、原油安の状態がつづくことで、それが電気代などに反映されるので、今後、光熱費 も低下に向かう。特に、ここ数年、光熱費の負担が重荷となってきた家計にとって、その軽減は 恩恵といえるだろう。 また、間接的に原油を使う製品の生産コストが、軽減する影響も見逃せない。原油価格が低下 する影響は、輸送費や電気代の低下を通じて、魚や野菜などの生鮮食品からサービスまで、幅 広い製品・サービス価格に押し下げ圧力をかけることになる。昨年の夏には、身近な生鮮食品の 価格上昇が家計を圧迫したこともあり、その負担の軽減効果は大きいと考えられる。 昨年を振り返ると、賃金上昇が、消費税率引き上げを含む物価上昇に追いつかなかったこと で、購買力が低下し、消費の回復の足を引っ張っていた。こうした中で、購買力の回復につなが る原油価格の低下は、消費回復を後押しすると期待される。 特に、原油価格の低下の影響として、地方経済への恩恵も注目される。総務省『家計調査』に よると、光熱費・ガソリン代は、消費額の1割弱を占めている。それを地域別にみると、北陸の光 熱費・ガソリン代の割合が関東の2倍となるなど、都市部にくらべて、自動車保有比率の高い地 方の方が多い傾向がみられる。これまでの景気回復の恩恵が、地方に行き渡らなかったことを 踏まえると、原油価格の低下によって、地方の消費が下支えされる効果への期待は大きい。 また、原油価格の低下は、消費の回復を通じて、企業業績の改善につながることも期待され Contact EY総合研究所株式会社 03 3503 2512 [email protected] る。特に、国内では14年4月の消費税率引き上げ後の消費の回復の遅れが目立っていたことが ある。原油価格の低下によって、多くの企業において原燃料コストが低下するので、ならしてみ れば、企業全体としてプラス効果が期待される。その結果、今後の賃上げにも弾みがつく可能性 があるだろう。 原油価格の動向に家計も注目 このように家計の立場からみると、原油価格の低下は、14年冬ボーナスの増加につづく朗報と いえるだろう。そのため、家計にとっては総じて、原油価格の低下のプラス効果があらわれると みられる。 もちろん、以上のような効果が大きくなるのか否かは、原油価格の動向次第である。原油価格 がすぐに反転して上昇してしまえば、その恩恵は限られる。また、原油価格が落ち着いた水準が 高ければ、企業もコスト削減効果に乏しく、円安によって輸入原材料コストが上昇していることも あって、販売価格の引き上げに動くだろう。そうなれば、家計は再び物価上昇に直面することに なる。 このため、今後、原油価格が低下した状態がいつまでつづくのか、そしてどの程度の水準に落 ち着くのかが注目される。 図 家計の消費額の割合 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トラ ンザクションおよびアドバイザリー などの分野における世界的なリー ダーです。私たちの深い洞察と高 品質なサービスは、世界中の資本 市場や経済活動に信頼をもたらし ます。私たちはさまざまなステーク ホルダーの期待に応えるチームを 率いるリーダーを生み出していき ます。そうすることで、構成員、クラ イアント、そして地域社会のために、 より良い社会の構築に貢献します。 EYとは 、ア ーン スト・ アンド ・ ヤン グ・グローバル・リミテッドのグロー バル・ネットワークであり、単体、も しくは複数のメンバーファームを指 し、各メンバーファームは法的に独 立した組織です。アーンスト・アン ド・ヤング・グローバル・リミテッドは、 英国の保証有限責任会社であり、 顧客サービスは提供していません。 詳しくは、ey.com をご覧ください。 食料 26% その他の消費支 出 18% 教養娯楽 11% 住居 8% 教育 3% ガソリン 2% 交通・通信 12% 保健医療 4% 光熱・水道 8% 家具・家事用品 4% 被服及び履物 4% 出典:総務省『家計調査』(2013年)よりEY総合研究所作成 EY総合研究所株式会社について EY総合研究所株式会社は、EYグ ローバルネットワークを通じ、さま ざまな業界で実務経験を積んだプ ロフェッショナルが、多様な視点か ら先進的なナレッジの発信と経済・ 産業・ビジネス・パブリックに関する 調査及び提言をしています。常に 変化する社会・ビジネス環境に応 じ、時代の要請するテー マを取り 上げ、イノベーションを促す社会の 実現に貢献します。詳しくは、 eyi.eyjapan.jp をご覧ください。 © 2015 Ernst & Young Institute Co., Ltd. All Rights Reserved. 本書は一般的な参考情報の提供のみを 目的に作成されており、会計、税務及び その他の専門的なアドバイスを行うもの ではありません。意見にわたる部分は個 人的見解です。EY総合研究所株式会社 及び他のEYメンバーファームは、皆様が 本書を利用したことにより被ったいかな る損害についても、一切の責任を負いま せん。具体的なアドバイスが必要な場合 は、個別に専門家にご相談ください。 EY Institute 02 シリーズ:原油安の影響⑥ ~家計にはプラス効果か?
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