Title Author(s) Citation Issue Date Type 在日中国人留学生と食の文化変容 : 日本での食生活に対 する満足度 田中, 共子; 髙濵, 愛 多文化関係学会第11回年次大会発表抄録集: 100-103 2012-10 Conference Paper Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/25456 Right Hitotsubashi University Repository 在 日中国 人留学 生 と食 の 文 化 変容 日本 での食 生活 に対す る満 足度FoodAc c ul t ur a t i oni nChi nes eSt ude nt si nJ a pa n: Sa t i s f a c t i onwi t haJ a pa ne s eDi e t 「 o田 中共 子 ( 岡 山大 学 ) TomokoTa na ka ( Oka ya maUni ve r s i t y) 高嶺 愛 ( 一 橋 大 学 ) AiTa ka ba ma( Hi t ot s ubas hiUni ve r s i t y) は じめに 食 行 動 ・食 生活 は、留学生活 を健 康 に過 ごす うえで大変重 要 な要素 で あ る。 しか し、安 友 ・西尾 ( 2008) 等 、留 学 中の食 生活 - の栄養 学 的 な調 査 が散 見 され る程度 で 、文化 受容 の観 点 か らの解 明 は進 んでお らず 、母 文化 と滞 在 先 文化 の狭 間 にお け る食 青 が ど うあ るべ きか も未詳 で あ る。 そ こで我 々は 、 日本 で学ぶ 留学 生 と して最 も人数 の多 い 中国人留学 生 を対象 と して 、 日本 留学 中の食 生活 に関す る探 索的研 究 を試 み、食 の変容 と健康行動 と し て の問題 点 を探 った。先 には面接 に基づ き、中国人 留 学生 21名 の基本 的 な食生活構 造 を分 析 した (田中 ・高嶺 、2 01 2) 。 そ こで明 らか に な った こ とは、来 日後 の彼 らの食 生活 は健 康 的 な望 ま しい面 ばか りで はな く, - 日本 人 学生 と似 た不健 康 な面 も併せ持 っていた こ と、 彼 らに とって身近 なの は家庭 料理、 に代 表 され る伝 統 的 な食 文化 で は な く、外食 産 業や コン ビニや スーパ ー の手軽 な食 文化 の方 だ とい うこ とで あった。今 回 は この うち 1 7名 を対象 に、 追加 調 査 を行 って、食 生活 の満 足度 とそ の理 由を尋 ね た結果 を報 告 し、心理 的 な豊 か さの 観 点 を含 めた食 青 の構 成 につ い て検討 す る。 方法 調査対象者 日本 留学 中の調査 (田中 ・高嶺 、2012) に協力 した 中国人 留学生 21名 の 中か ら、追加 調 査 に も参加 した 17名 ( 表 1) 。 地方都 市 にあ る大学 ( Ul、U2、U3) に所 属 してお り、L P、R、U は理 系 、残 りは文 系 の学生 で あ る。 手続 き 留学生の 都 合 にあわせ て、メール 、電話 また は対面 で の対話 を行 い、以 下 につ いて尋 ね た。 ( 1) 末 ・既婚 の別 、 ( 2)中国在 住 時 の主 な食 事 の形 態 、( 3) 現在 の食 生活 の評価 ( 10件 法)とそ の理 由 、( 4)中国在住 時 の食 生活 の評価 ( lo件 注)とその理 由。 ー1 00- 表1 イ ンフォー 調 査 対 象者 の属性 日本 滞 在 期 間 性別 年齢 居住形 態 出身 地 ( 記 号) ( 月数 ) マ ン ト記 号 省 1 L 女 21 1 4 下宿 ( Bとル ー ム シ ェ ア ) B 女 21 20 下宿 ( A とル ー ム シ ェ ア ) C 女 20 9 寮 D 男 27 8 寮 H 女 23 48 下宿 I 男 23 3 寮 K 女 24 65 ホー ム ステ イ L 男 25 31 寮→下 宿 M 女 24 1 下宿 N 夷 31 13 寮 0 女 22 25 寮- 下宿 P 男 21 32 寮- 下宿 Q 男 25 3 寮 R 男 24 69 寮 - 下宿 S 男 24 26 下宿 T 男 22 32 下宿 ( ル ー ム シ ェア ) U 男 25 32 下宿 ( 妻 と二 人 暮 ら し) 23.71 21,86 2.33 20.02 省 1 L A 省 1 L 区 1 1 V ∧ S 省 省 1 l N- Z 区 省 2 1 ▲ 1 T J T J S L 省 1 省 省 2 S 省 省 3 1 T J T J L 省 1 省 2 T J 省 ∫ β 1 S 省 平均 注 1)A、B、C、0は U2、L は U3、その他は U lに所属。注 2)E、F、G、Jは今回の調査に不参加。 結果 留 学生 の回答 の概 略 をま とめて 、表 2に示 した。食 事 のパ ター ン と して は、 中国在 住 時 には、主 に学校 の食 堂 で食 事 を とってい た学 生 が 、17人 中 13人 と最 も多 か った。 学食 以 外 で は、家 で親 が作 って くれ る食 事 を食 べ て いた者 が 8人 を 占め、 うち 4名 がた ま に外食 を してい た と答 えた。 来 日前 と後 にお け る食 生活 の満 足度 を尋 ね る と、 日本 にお け る現在 85点 ( Sβヒ1. 58) 、 中国在 住 時 は平均 7. 82点 ( SZ た. 86)とともに比較 的 高 の食 生活 は平 均 6. か ったO しか し対応 の あ る t検 定 を行 った ところ、現在 の ほ うが、 中国在 住 時 よ りも有意 に食 生活 の満足度 が低 い こ とが示 され た ( i ( 16) =2. 45, p<. 05)a 日本 の食 生活 に対す る評 点 につ い て は 、8名 が肯 定的理 由 、12名 が否 定的理 由を記 した。 複 数 の回答 が得 られ た もの を抜 き出す と、日本 の食 生活 に関す る肯定的理 由 と して、食 事 ・ 栄養 のバ ランスが よい ( Ⅰ、Ⅹ)、 自炊 してい る ( M 、0) が挙 げ られ た。否 定 的理 由 と して -1 01- は 、辛 い物 が あ ま り辛 くな い ( A、B、C)、 自炊 が 下 手 、飽 き た 、手 間 ( 山、M、N、S、T)、 A、R)が 挙 げ られ た。一 方 、中国 の食 事 に対 して は 、肯 定 的 ・ 中 国 の食 品 ・調 味料 が な い ( 否 定 的 理 由 を記 した者 は各 1 0名 で あ った。 肯 定 的 理 由 は 、お い しい か ら ( Q、S、T)、家 L、M、0)、否 定 的理 由 に は 、安 全 性 ・衛 生 面 の懸 念 族 が作 っ て くれ る ・な じみ が あ る ( ( A、B、C、D、Q、R)、 油 っ ぽ い ( H、Ⅰ) が 挙 げ られ た。 表2 イ ン フォ ー 中 国 での 婚 姻 状 態 と食 事 形 態 、 お よ び 日本 と中 国 に お け る食 生 活 の 満 足度 (1)未 ・ ( 2)中国在住時の食事の主な形態 マ ン ト記 号 既婚 ( 3)現在の ( 4)中 国 在 住 時 食 生活評価 の食 生活評価 大学入学前 :父の手作 り料理、大学 ・毎 A 未婚 8 7 7 9 6 7 日学 食 大学入学前 :家の手作 り料理、大学 :学 B 未婚 C 未婚 D 未婚 学食 7 8 H 未婚 中学か らずっと学食 4 7 Ⅰ 未婚 学食 8 7 K 未婚 自炊、学食 9 7 L 未婚 学校では学食、休みは母の料理や外食 8 8 M 未婚 学校では学食、家では母の料理 7 9 N 未婚 学食 5 7 o 未婚 学 食 、 家 の 料理 8 9.5 P 未婚 学 食 か 家 の 料理、外食は殆 どなし 9 8 Q 未婚 学食 7 7,5 R 未婚 家での食事、外食は殆 どな し 4 8 S 未婚 学食 5 8 T 未婚 自炊、外食 6.5 7 U 既婚 学食 8 9 6.85 7. 82 1.58 0.86 食 と外食半々 大学入学前 :家での手作 り料理、大学 : 学食 と外食半々 平均 SD -1 02- 考察 今 回み て きた在 日中国人 留 学 生 は 、渡 目前 に 中国 で暮 ら して い た 時 よ りも、調 査 時 点 に お け る 日本 で の食 生活 の満 足度 の ほ うを有 意 に低 く評 定 して い た。 す なわ ち母 国で の食 並 み の満 足度 は得 て い な い とい え る。 そ の評 点 の理 由に は 、 中国 の食 事 に は味 に な じみ が あ るが 、和食 に は慣 れ て い な い とい うものや 、 日本 の辛 さに対 して物 足 りな さを覚 え る とい う、 心理 生 理 的 な 「 慣 れ 」 の 問題 が挙 げ られ て い た。 さ らに 自炊 - の抵 抗 感 を示 す もの も み られ た。 異文化 適応 の 心理 的課題 と食 生 活 上 の 問題 は連 続 して お り、不 可分 の 関係 に あ る。 心理 的満 足 を伴 う食 生活構 築 を視 野 に入 れ るな ら、栄養 素 の摂 取 を基 準 に した 日本 的 食 生活 モデル の呈示 のみ で は 、食 青 と して は不 十 分 で あ ろ う。 大 学 生 の食 生活 の乱れ に影 響 され つ つ 、文化 的 な慣 れ や 生 活 パ ター ンの揺 らぎが 、彼 らの食 生 活 の主観 的評価 を左 右 してい る と考 え られ る。 今 回 の結 果 か ら考 え るな ら、バ ラ ンス の 良 い 自炊 が知 識 ・技 能 的 に も環 境 的 に も可能 で 、 あ る程 度 母 国風 の調 理 が 可能 な場 合 に 、彼 らの食 の満 足度 が高 ま る可 能性 が あ ろ う。 彼 ら の食 青 を考 えて い くには 、彼 らに とって望 ま しい食 生 活 とは何 か 、何 を問題 と考 え るべ き か 、 どの よ うな食 生 活 が可 能 なの か 、食 に何 を求 めて い るの か な どの検 討 が さ らに必 要 で あ る。 異 文化 環 境 下 で の食材 や 調 理 方 法 の制 約 とい った客観 的条 件 以外 に 、異 文化 適 応 の 度合 いや 異 文化 受容 の意 欲 とい った 心理 的 な適応 も食 生 活 と深 く関わ る と考 え られ る。 我 々 の先 の調 査 で は食 の社 交 的機 能 が明 らか とな り、食 の共行 動 は 同朋 とのネ ッ トワー ク強化 や ホ ス トとの 関係 作 りに活 用 され て い た し、食 事 の作成 と消費 は文化 交 流 の手 段 と もな ってい た。 こ うした食 の多機 能性 は 、異 文化 滞 在者 の食 生 活 に多 要 素 が 関わ る複 雑 な 過 程 を背 景 と して い る。 文化 の狭 間 に あ る滞 在 者 の健 康 行 動 は どの よ うに あ るべ きか 、文 化 受容 と心身 の適 応 過 程 を理 解 した うえで の支援 が求 め られ よ う。 引用文献 田中共子 ・高演 愛 ( 201 2) 「 在 日留 学 生 にお け る食 の文化 受 容一 異文化 滞在 者 の食 青 とい う 課 題 - の示 唆 - 」2 01 2年 度 異 文 化 間教 育 学会 第 33回大会 抄録 集 、pp.1 46-1 47. 安 友裕 子 ・西尾 素子 ( 2008) 「留 学 生 の食 生 活 と食 環 境 との 関連 に 関す る萌芽 的研 究-N大 4、pp. 83 -95. 学 の事 例-」 『生活 学論 叢 』 1 謝辞 本 研 究 は 、平 成 23年 度 山陽放 送 学術 文化 財 団 の助 成 を受 けた ( 代表 田中共 子 )。 また 、本研 究 は 、 岡 山大 学 文 学 部 平成 23 年 度 卒 業 生 ・渡 辺 荊 加 氏 の卒業研 究 の 一環 と して行 われ た調 査 の結果 を再構 成 した もの です 。 発 表 へ の ご快 諾 とご協 力 に感 謝 い た しま す。 -1 03-
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