大阪市 立大学看護学雑誌 【 その他】 第 2巻 ( 2006. 3) 保健 医療機 関・ 教育機 関のDV防止 ・ 支援-の取り組み -マサチューセッツ州およびカリフォルニア州から- Appr oa chest o Domes t i cVi ol e c epr ev e nt i on a nd s uppor ti n Hea l t ha ndMe di c a l I ns t i t ut i on/ Educa t i ona l I ns t i t ut i on :I nMa s s a chus et t sSt a t ea ndCal i f omi aSt a t e 友 田尋子 高 田昌代 1 ) Hi r ok oTomoda 2) Ma s a yoTa ka da キー ワー ド :ドメスティック ・パ イ レンス、 ア メ リカ合衆 国、看護教育 Keywor ds:Domes t i cVi ol e nc e,USA,Educa t i onorNur s l ng 4年度科学研究費補助金基盤研究( B) ( 2 ) そ こで、平 成 1 Ⅰ.はじめに によ り、平成 1 4年 8月 20 日か ら 29日の 1 0日間、マサ 家族内暴力問題へ の取 り組みが先駆的であ る とされる チューセ ッツ州 での医療機 関 をは じめ とす る様 々な関連 アメ リカ合衆 国で も、子 どもの虐待へ の取 り組 み に長い 機 関の DV 防止 ・支援 への取 り組み を視察 ・研修 して き Dome s t i cVi ol e nc e: ドメ 時 間がかか った よ うに、DV ( た。視察 ・研 修対象 をマサ チ ューセ ッツ州 とカルフ ォル スティック ・バ イオ レンス)被害へ の支援 お よび DV 防 ニア州 に した理 由は、 2つ の州 は DV お よび子 どもの虐 止の取 り組み に も長 い時間がかか った。 DV 防止の取 り 待等 に家族 内暴力 に関す る解決 ・支援 のモデル的役割 を 960 年代 の女性- の支援 に DV も含めた支援 組み は、 1 担 っている州 であ るこ とだ った。 その一部 は既 に報告 を か ら始 まった と言 われ、半世紀 に及んだ。医療 における した ( 高 田 ら、2005) が、今回は平成 1 5 年度科学研究 996 年 に始 まった。 取 り組み に関 して は さらに遅 れ て、 1 費補助金基盤研 究 ( B) ( 2 ) に よ り、平成 1 5年 8月 8日か ら DV は公衆衛生の問題 であ り全米 の保健 医療機 関は DV 24 日の 1 6 日間、マサチ ューセ ッツ州 お よびカ リフ ォル 問題 に取 り組 むべ き課題 である と、前 クリン トン大統領 ニ ア州での看護職教育 にお ける・ DV の取 り組み を視察 ・ によって方針が打 ち出 され、その結果 DV 関係 に予算が 研修 したので その一部 を報告 す る。 お りるようにな り保健 医療 関係 者 の トレーニ ングが各地 Ⅱ.アメリカの保健 ・ 医療 における DV に関する取り組みの で少 しずつ始 まった。 経緯 わが国では 200 年 に制定 された 「 配偶者か らの暴力 DV 防止 法 ) 」で、 の防止 と被害者 の保護 に関す る法律 ( 医療 の役割 と して DV 被害者の承認後の報告 と情報提供 996 年 の前 ク リン トン大統 領 に よっ ア メ リカで は、 1 の努力義務が明記 され た。 しか し臨床 において保健 医療 て医療 は DV 問題 に取 り組 むべ き課題 であ る とした こと 関係者の多 くが DV 被害者 に遭遇 しているに もかか わ ら によ り、DV に関す る解決 ・支援 の取 り組 みが全州 で本 ず、保健 医療 関係者 の DV 被害者への対応 は十分 で ない。 格的 に開始 した。 この時点 で、 ア メリカの保健 医療機 関 その原 因の ひ とつ と して、DV に関す る トレーニ ングが における子 ど もの虐待 に関す る解決 ・ 支 援 システムは、 着手 されてお らず、教育の未整備がある ( 友田 ら、20 5)0 わが国に比べ る と格段 に整 っていた。 しか し、わが 国が 1 )大阪市立大学医学部看護学科 os a kaCi t yUni v e r s i t y Sc hoolofNur s i ng ' 3) 神戸市看護大学看護学部看護学科 KobeCi t yCol l e geofNur s i ng - 3 5 - 大阪市立大学看護学雑誌 第 2巻 ( 20 6. 3) 子 どもの虐待問題 に着手 した 1 99 0 年の頃、女性の問題 の取 り組み と類似 している。点が線へ と結 びつ くための は子 どもの問題 とは引 き離 した援助 になっていたの と同 長い時間 と各々の関わ りと弛 まない努力 を経 て、今 日の じように、 1 99 0 年代初 めのアメ リカ も子 どもの問題 と 虐待問題の保健医療関係者が果たす役割 についての基本 女性の問題が相互乗 り入れ した援助 になっていなかった。 的共通認識 に到達 したのはアメリカ も同 じであった。 さらに保健医療機関では、女性への暴力は女性 にも問 題があ る といった被害女性への避 貯 1 . ' ・ 1㌦ 子 どもに対する人権意識が高 まった 1 97 0 年代、家庭 内の子 どもへの暴力 を早期 に発見 し援助す るためのス ク 「 夫婦喧嘩は犬 も食わぬ」 とい う諺 注2 1 が存在す るように痴話喧嘩扱い、 リーニ ングが医療機 関で始 まったが、それか ら 2 0 年遅 喧嘩i r i : ・ : は家庭 内の問題 であ り男女の問題 は当人同士が れて、女性への暴力 を発見するためのスクリーニ ングが 解決す るべ きだ とい う男女関係のモラル意識や家族神話 始 まった。 スクリーニ ングの有効性が高 ま り必要性が明 に基づいた誤 った認識が行 き渡 っていた。そ して、 らかになるにつれて、医療従事者の個 々の スクリーニ ン DV 神話は5'とジェンダー問題 もそこに大 きく影瞥 して グ方法に質の格差がないようにすることの重要性 に専 門 いたのである。結果的に、子 どもの虐待 の発見、予防を 機 関は気づ いていった。そ して、 どの ような教育内容が 支援す る保健医療機関は数多 くあったが、女性への暴力 ス クリーニ ングお よび DV 被害女性への対処方法 に必 要 99 0 問題 を積極的 に関わ り解決 ・支援 してい る機関は 1 かつ重要であるかが明 らか にされ、保健お よび医療従事 年代 の アメリカで も限 りな く少 なかったのである。 者 を対象 とする DV に関す る トレーニ ングが各地で始 ま 卜 . ' i : ・ 4 ' 1 996 年の前 クリン トン大統領 の宣言 ( 彼 自身が DV ったのである。 家庭で育 った子 どもであることに依拠す る と言われてい る)には、政策的な意図があった。 この頃のアメリカで 倫理的配慮 は、DV による心身の健康障害の治療 にかかる医療費は 視察 ・研修 を行 った保健医療機関、大学等 は、DV 関 8億 ドル と推定 されている。WHO ば . DV 被害女 年間 1 しては屈指の支援機関及び教育機関であることを現地 に 性の治療 にかかる医療費 を考える と、その費用 を削減す 詳 しい専 門家 よ り予 め聞 き取 り、視 察 ・研 修 した。視 るため には DV 予防に投資する方が施策上 も有意義であ 察 ・研修 した期間や担当者や関わった人たちには視察 ・ る ( WHO1 1 999) と強調 した ことが、変革の大 きなき 研修 した結果 を報告する了承 を得て、今回の視察 ・研修 っかけ となった。 内容 を報告する。 DV 関係 に多額の予算が保健医療機関-お りるように Ⅲ.医療現場の取り組み なった こと、DV 被害女性 を支援する様 々な女性支援機 関か ら DV被害女性の多 くが暴力の被害 を受けている期 間に一度か ら数十回 と医療機関で治療 を受 けている事実 Bos t onCi t yHos pi t al( ボス トン市立病院) が報告 される ようになったこと、民事禁止保護命令の制 1 990年代のころの Bos t onCi t yHos pi t alでは、殺 人現 定、暴力の被害者の安全確保- と進展 してい き女性への 場 を目撃 したや親が殺 されたなど劣悪 な事件 を経験 した 暴力防止法がで きたこ とが保健医療での本格的な取 り組 子 どもの うち情緒 的影響がある場合に、子 どもへの カウ みの始 ま りとなった。 この ような取 り組みがすすみ、そ ンセ リングを行い、その中で間接的 に DV 問題へ関与 し の結果、保健 医療機関 に通報の義務 と罰則規定が盛 り込 て きた。. しか し、警察か ら送 られて くる事件 レポー トに ま・ れ、保健医療機関は DV を発見する最初のまたは唯一 0%以上は DV 事件 による子 どもの情緒 よると、その 9 の機関 となる場合が多 く重要な役割 を担 う機関であるこ 的 ・身体的影響があ り、子 どもの年齢 は全 て 8歳以下、 とが保健医療 関係者 に認識 されていった。 さらには DV その うち 8 0%が 6 歳以下であった ( Gmve s , 2 0 2)。 DV の真相 が明 らかにされ、医療の援助の方向性が明 らかに 環境下にいる乳幼児期の子 どものほ とん どに情緒的影響 なっていった。 があ り、子 ども-の早急 な対応が必要であ ることも明 ら 保健 医療機関による DV 解決 ・支援 は、初めか らスム かになった。Bos t onCi t yHos pi t a lにある Bos t onMe di c a l ーズにシステムが整 ったわけではない。 1 98 0 年代か ら ce nt e rでは、これ らの経緯か らDV被害女性 を援助 する DV を受けて重症なけが を負 う、精神的 なダメージがあ だけではな く、DV 環境下で暮 らす子 どもへの情緒的影 .る、性 にまつ わる問題 に苦 しんでいる女性 の状況 を DV 響 を未然 に防 ぐためのプログラム として、CWVP( Chi l d と気づいた保健医療関係者が個 人的に関係機関へ連絡 を を設立 したのである。小児科 wi t n e s st oⅥol e nc ePr qj e c t ) した り、情報 を提供 した りしていたにす ぎなかった。 こ 部門に設置 された cwvp は臨床心理士、医師、看護師、 れは、わが国の子 どもの虐待問題 に取 り組み始めた初期 メデ ィカルソーシャルワーカー、警察官、弁護士、児童 -36- 大阪市立大学看護学雑誌 第 2巻 ( 20 6. 3) 福祉関係職員等の メンバー構成 ( 写真 1)に よって多様 なプログラムを準備 している。 写真 1 CWVPに携わるメンバーの一部とBo s t o nMe d i c a l Ce n t e r内 CWVPのプログラムは児童保護機関 ( DSS:De p a r t me n t o fS o c i a lS e r ic v e掛' ' ) に組み込 まれたプログラム とされ、 実施することは困難であ り、学校教育で統一 した共通の 教育が必要であることもわか った。 利用者の負担 は-切 ない。家族 内暴力の問題 を解決支援 を超 え、統合 して関わることを重要視 したチーム医療が Un i v e r s i t yo fCa lf o r n i a ,Sam Fr a n c i s c o (UCS F) Me d i c a lCe nt e rWo me nsHe a l t h (カル フォルニア大学 ここでは行 われていた。 サ ンフランシス コ校 するためには必須条件 ともいえる、官民 ・専 門性の垣根 女性健康 セ ンター) 病院全体 としての取 り組みは、病院監査 と して義務づ このセ ンターは女性の妊娠期 だけではな く女性のライ s t o nCi t yHo s p i t a lに受診する 12歳以上の女 け られ、Bo フコースに焦点 をあてて女性 の健康 をケアする とい う立 性 に対 して看護師 は、DV スク リーニ ング必ず実施 して 場 に立 った 5つの事業 を展 開 している。その うちのひと いた。 しか し、DV と子 どもの虐待 を同時 に援助 してい つに、DV と子 どもの虐待 があ り、その中には保健お よ s t o nCi t yHo s p i t a lで さえ、全 ての子 どもへ のスクリ る Bo び医療従事者-の暴力防止支援 のための教育 プログラム ニ ングを行 ってお らず、 1 3 歳以下の子 どもの場合 は があった。ハ イリスク母子へのプログラム、 リーダーシ 診察中に 「 疑問 ( 子 どもへの虐待 ではないか、暴力 を目 ップの育成、 コ ミュニテ ィへの働 きかけといった他事業 」を感 じf =時 にス ク リーニ ン 撃 した子 どもではないか ) とリンクされた内容が暴力問題 には必要 となるのだが、 グ を して い た 。 こ の 「疑 問 」 を感 じる た め に E D それぞれのパ ーツで抜 け落 ちることのない ようにシステ ( Ema g e n c yDe p a r t me n t:救急 治療室) に勤務 す る看護 ム化 されて きめ細 か くプログラ ミングされていた。 また、 師に対 しては卒後 l年 目か ら毎年 、DV の教育 と試験 を DV の問題 は子 どもの問題 で もあるとい う認識 に立 った 実施 しているが、それ以外の部 門では実施 していなかっ 事 業計 画 は、小 児 科 医 師- の トレーニ ングの ため の た。 V T Rを作成す るな ど、小 児科部 門がかな り関与 してい この状況 は、家族 内暴力問題の取 り組み とケアでは全 ることが、他機 関 に比べ て先駆的な取 り組み といえる。 UCS Aの中 にあるセ ンターであるため、. このセ ンター 米の中で最高 レベルの医療機関 とされている平成 1 4年 度 に視察 ・研 修 を した Ma s s a c h us e t t sGe ne r a lHos pi t a l で も同様 の ス ク リーニ ング普 及状況 だ った こ と ( MGH) ついてのカリキュラム ( 表 1)があ り、医学生 はこの授 をみて も、保健医療機関に勤務す る職員への統一の困難 業 を必ず受講す るよう義務づ け られている。 では大学院医学研究科 2回生 を対象に した家族内暴力 に さの一端が伺 える。 しか し、DV についての教育 を受 け 授業 は二 日にわけているが ゆえに医学生へ事前の課題 てス クリーニ ング した場合 と受 けず にスクリーニ ングを 提供がで き、予習 ・復習 を必修 に した講義 ・演習のため、 した場合 とでは、発見率 とその後 のケアには有意 に差が 医学生の学習の到達度 は高い とい うことであった。ただ Al p e r t , 1 997) もあ り、医療現場で あることを示す研 究 ( し、 これは医学部のみ実施 している段階であ り、必要性 は今後 も取 り組み を続 けてい くこ とは確かであ った。た は十分 に感 じなが らも看護研 究科では実施 していない と だ し、卒後教育 において DV についての基本的 な教育 を い うことであった。 - 37 - 大阪市立大学看護学雑誌 表1 第 2巻 ( 2006. 3) Medi caICent erWomensHeal t hカリキュラム Se s s i onONE 9: 009: l O Pr e t es ta ndi nt r oduc t i ons 9: 1 09: 2 0 Ba c kr ound r a t i ona l eandgoa l sofLI NC whywea r ea ddr e s s l ● ngpe di a t r i ci a ns pa r t i ci pa nte xpe c t a t i ons 9: 2 09: 5 0 Wha t ー sHa ppen● nga tHome? def i ni t i on,pr e val enc ea nddyna mi c sofDV ef f e c t sofwi t nes s i ngDVonchi l dr e nandyout h( vi de oa ndha ndout ) 9: 5 01 0: 00 Br e a k 1 0 l : 00 Suppor tA ndRes our ce sf orvi ct i msa ndt he i rc hi l dr e n-pa nelpr e s ent a t i on Or i anaLewi s , Vol unt e e rTr ai ni ngCoor di na t or ,Women,Ⅰ nc. AnnaKel l e he r ,Advoc a t e,Fam il yVi ol e nc ePr o j e c tofSFDi s t r i c tAt t or ne yT s J odyFr i edma n, LCSW LI NCCl i ni c alCqor di nat or - l Se s s i onTWO 9: 009: 40 Rol eoft hePe di a t r i c i a n s cr e e n● ngf ora ndi de nt i f yi ngs gnSOfe xpos ur et oDV r es pondi ngt odi s cl os ur ea nds a f e t ypl a nnl ngt OPr Ot e C tChi l dr e n ma nda t or yr e por t i ngl S S ue S 9: 451 0: 45 Pr a c t i c eSe s s i on:Smal lGr oupRol e pl a ys s c r e enl ● nga ndr e s pondi ng:' ' ge t t l ● ngOV e rt hef ea rofa' T yes ' ' ' gr oupdi s cus s i on 1 0: 45ll : 00 Wr a pup ques t i ons&a ns we r s サ ンフランシス コ総合 SamFr am is c oGe ner l Hos a pi t l ( a ベ テランであって もパ ックのひ とつ ひとつ をチ ェ ックし 病院) てい くようにされたキ ッ トを使用す ることで、いか なる MGH の ように全科で全ての女性 に DV スク リーニ ン グ してはいなかったが、ED -受診 した患 者 に対 しては 時も 「 抜 け落 ちる」「うっか り忘 れ る」こ との ない よう に注意が払 われているのである。 女性 だけでな く全 てi E7の患者へ の DV ス クリーニ ング この ような充実 した DV に関す る教育 を現任のス タッ を実施 していた。そのため、ED に勤務 す る医療従事者 フを対象 に実施 している機 関は多 くない。 ただ しここで l yVi ol enc ePr event i onFundにある DV は 6ケ月間の Fami も、ED に勤務す る医師、看護師、事務職全てのス タッ 防止支援 の教 育プログラムを トレーニ ングすることを義 フに限定 されているため、他部門でのそれ以上 の発見率 務づ け られていた。ED の担当 を してい る Kapl a n医師は、 を上げることは困難であることが課題 の ようである。 0%が その トレーニ ングを受 けた 6ケ月後 には彼 らの 8 インタビューバ ックで きるまで変化 していた と述べ、研 Ⅳ.看護教育の取り組み 修 の有効性 を明 らかに してい る ( Kapl a n、 1 995・1 997)。 ここでは、平均 で 1日250名ほ どの受診患者の うち、 5 人の DV 被害者 を発見 していた。 看護教育の中で DV に関する教育 をどの ように実施 し ているのか、 どの科 目で DV について教授 され、到達 目 DV 被害者がスクリーニ ングされ詳細 な状況 を尋ね ら 標 は何か といった ことを知 ることを目的 と し教育機 関を er vent i on Pa c k (1人の患者 れ る場合 には、共通 した ht 視 察 した。 「DV に関する教育 をなん らかの形 で受 けて につ き各、 ガイ ド・質問紙 ・シー ト・記録用紙 ・リー フ きている看護師」の DV に関す る教育 には、 1コマ程度 レッ ト 情報 リス ト等が ファイル され た もの) を作成 し を DV につ いて準備 している単元 の受講 か ら、科 目で て実施 しているところにこの病院の特徴がある。 どれだ DV に関連 した単元や内容があった場合に DV について け トレーニ ングを積み上げて も、個 人の差 は存在 し、時 触 れてい る程度 の受講 と、その差 はかな りの幅があ った 間の経過 とともに発見率 は下が ることも明かであるため、 -3 8- 0 ( 高 田ら、205)。 大阪市立大学看護学雑誌 第 2巻 (2006. 3) Bos t onCol l e g eSc 0l ofNur s i ng ( ボス トン大学看護学部) につ いての科 目を、大学 院 1年次 に暴 力 問題 を研 究 して Bos t onCol l e geSc oolorNur s i ngで は、母性 看護学領域 い る Humphr e ys教授 が担 当 してい た。 さ らに博士 課 程 で DV に看護 師が 関 わる必 要性 と重要性 お よびその方 法 で■ Vi ol e nc e & He a l t hH 科 目が必修 であ り、大学 院生 は こ につ いて教授 されていた。 さらに看護 師の役割 と技 術 を れ らを履修 し、保健 医療現場 での家庭 内の暴力発見へ の 教授 した り研 究 す るだけで はな く他機 関 との連携 を も行 具体 的 な方 法 まで習得 す る こ とがで きる ように教育 して っていた。 しか し専 門的 な研 究活動 が存在 してい る に も いた。 ここで は、看護学生 は民 間の シェル ターへ ボ ラ ン 拘 わ らず Bos t onCol l e g eSc oolorNur s i ngで は、DV に関 テ ィア と して行 くこ ともカ リキュラムに組 み込 まれて い す る科 目が独 立 して存在 してい なか った。 それぞれの科 る ところが他 大学 とは異 な ってお り、特徴 で もあ った。 目や専 門領域 で、 DV や子 どもへ の虐待 な ど家族 内暴 力 Uni v e r s i t yorCa l f bmi a ,Sa nFr a n c i s c oSc ootorNur s i ngにあ に関連 した場 合 に各人が教授 していた。科 目や専 門領域 る助 産 コー スで は、妊娠 で の リスク要 因 と しての DV に での重要性 の違 い に よる教育 内容 の 「質の不安 定 さ」 は、 e ys教授 は、 つ いて、単 元 の一部 を教授 していた。 Humphr 各専 門領域 で調整 を行 っていた。学生 は、暴力 問題 につ 看護 の書籍 に DV につ い ての書物 が少 ないため UcsF い て何 らかの科 目で、在学 中に受講 で きる よ うに、各専 以外 の ア メ リカ全州 、 さらにカナ ダ、 ロ ン ドンに まで活 門領域 で調整 し工 夫 していた。 同時 に、大学教 員が臨床 躍 す る看護 師 たち十 人ほ どで協 同 して、教材使 用 で きる 現場 に出向 き、現 任看護 師へ の DV の発 見 と予 防 に関す 家 族 内 暴 力 に 関 す る 書 物 を 執 筆 し 出 版 して い た る教 育 を実施 して いた。 マサチ ューセ ッツ看護協 会 と連 ( Humphr e ys、 2004)。 この よ うに一 部 の 看 護 教 育 現 場 携 し暴 力 と看護 につ いての研 修 を行 うこ とで、DV 防止 で は、暴力 と看護 に関す る教材 の検討 も始 まってい る こ 支援 の普 及 を図 っていた。 しか し、 これ も全 ての病 院が とが わか った。 実施 してい るわけではなか った。 V. 他機 関による医療 従事者へ の教 育 の取 り組み Bos t on Uni ve r s i t y,Sc hoolofPubl i c He al t h,Sc hoolof Me di c i ne ( ボス トン大学 医学部公 衆衛 生学 ) Fam il yVi ol e nc ePr e v e nt ionFund ( 家族内暴力防止基金) a l t hHuma nCe nt e r (日本 での厚 生 ア メ リカ合衆 国 He Bos t onUni ver s i t yで は、大学 院の教育機 関 で家族 内 一 Fami l y 暴 力 を科 目 と して教授 して い た。 そ れ らは、 一 労働省 の ような機 能 と役割 を持 つ) に よる要請 を受 けて 、 i cHe a l t h一 一 が 家庭 内暴力 に Ⅵol e n c e a ndt h ePr a c t i c eofPubl カ リフ ォルニ ア州 にあ る Fa mi l yVi ol e nc ePr e v e nt i onFund ついての科 目、 H Se x ua l Ⅵol e n c e: hbl i cHe a l t hPe r s pe c t i v e s で は、医療機 関へ の DV解 決防止 に向 けての プ ログラム i nI nt e r v e nt i ona ndPr e v e nt i on一 一 につ いては性 虐待 につ いて と情報提 供 を実施 してい る。 ここは、保健 医療部 門 をひ の科 目が あ り、大学 院生 は これ らを必修 で履修 す る。 こ とつ の部 門 と してお り、 シェル ター部 門、相談部 門 な ど t onCol l e g eで も、DV につ い ての基礎 れ につい ては Bos 細 か くわけ、啓発活動 を中心 的活動 内容 と していた。写 的知識 を看護教育 の 4年 間で漏 れ るこ との ない よ うに科 真 2のバ イ ンダー式 の プ ログラムは全米で よ く使用 され 目間で調 整 しあ う程度 と し、 ケア とその方法 につ いての てい る保健 医療 関係 者 の ための指導者が教授 す る ときの 講義 は大学 院で実 施 す る と してい た。今 回の渡 米 した時 テキス トで あ った。 この よ うなプ ログラム をい ち早 くわ 期 は 日本 と同様 に夏期休 暇 中で、授 業 を参観す る こ とが が 国 に取 り入 れる こ と も今 回の 目的であ ったため、帰 国 で きなか ったが、AI p e r t助 教授 主催 に よる専 門職対 象 の 後 は早速 に翻訳 し出版 した ものが その横 にあ● る本 で あ る ( 写真 2) 0 研修 を受講 し、 ひ とつの科 目に 20 頁以上 に もなる シラ バ ス を閲覧す る こ とでその内容 と方法が理解 で きた。受 講 した 2日間の専 門職対象 の研修 内容 も密度 の濃 い もの であ ったが、大学 院授 業 は さらに詳 し く、 1セ メス ター で講 義 と演 習 (ロー ルプ レイング等) を実施 してい た。 Uni ve r s i t yofCa lf om i a, SamFr anc i s c o (カル フ ォルニ ア 大学 サ ンフラ ンシス コ枚 ) ● Uni v e r s l t yOfCa l f bmi a ,Sa mFr a nci s c o, Sc oolofNur s l ngで は、大学 院の学生 に対 して、家族 内暴力 ( 女性 へ の暴 力 、 子 ど もへ の虐待 、老 人- の虐待等 ) につ い て、家族理論 写真 - 39 - 2 FVPF の プ ロ グ ラ ム 本 とそ の 翻訳 本 ( 2005年発刊 ) 大阪市立大学看護学雑誌 保健 医療機関へ の DV 解 決防止 に向けてのプログラム と 第 2巻 ( 2 06. 3) い きたい。 情報提供 については、DV に関す る資料 を集積 している だけではな く、健康問題 にかかわる人々 ( 学生か ら大学 注 釈 教授 、ス タッフまで) と全国 レベ ルで組織 している。 プ 注 1:暴力の被害 を受 けている女性 の中には、精神疾 ログラム作成 にあたって は、F a mi l yVi ol e n c ePr e v e n t i o n F u n d以外 の医療専 門職 や有識者 に よって評価 を繰 り返 患 、アルコール依存 を含 む薬物濫用、欝病 な どと共存 し し改訂 し、その都度実施 している。 また これ らはカ リフ ていた り、犯罪歴のある女性 な ども多かった。 しか し、 ォルニ ア州 だけではな く、全州 で使用 されているほ どに だか らとい って殴 られて良い とい う理 由にはな らないの 信用 されたプログラムであ った。つ ま り、各機関や大学 だが、 この頃の アメリカで は殴 られて も当然 といった磐 において、マニ ュアルや教育 プ ログラム、必要媒体 など 余が存在 していた。 わが国では今で も、殴 られる女性 に を作成す るにはその能力や費用 な どの問題 もあることか も非がある と公然 と訴 える加害男性 や世相が後 をたたな ら、DV に関わる専 門家 によって標準的 な もの を作成す い。 ローマ法典 には 「 親指 よ り太 くない鞭 で女性や子 ど るこ とが有益 であ り、効率 的な方法が とられていた。 もを殴 るの は、暴力ではな くしつ けである」 と記 してあ り、い まなお消 されることな く存在 している とい う。 この ような保健医療機 関以外 の部 門か らの医療従事者 .注 2:ア メリカに もわが国 と同 じような諺 は存在 す る。 へ の取 り組み は、 1 998 年以降 に増加 して きてい る。 例 えば、民 間シェル ターや YW CA といった機関 も医療従 例 えば、 「 Ev e nd og sd o n twa n tt oc a r et h eq u a 汀e lo ra 事者の意識や実践力の向上 を求 めて、教育の必要性 を説 ma ie m dc o p u l e . 」。 イギ リスの古 い諺 で は 「 A wo ma n,a き実践 している。 d o g , a n dawa l n u t t r e e , t h emo r ey o ub e a tt h e mt h eb e t t e rt h e y b e . 」がある。 注 3 :暴力 とい う犯罪意識が ここには存在 しない。喧 Ⅵ.おわりに 嘩 とは、争 うことであ り、互いに自分 の気持 ちを通 そ う 様 々な保健医療 と教育機 関 を視察 ・研 修 した。今回報 と張 り合 う、議論 することであ り一方的に罵 られ支配 さ 告 した機関はその中g )一部 の機 関であ り、DV について れ殴 られ抵抗 で きず にいる DV の場 合 は争 いでない。暴 はア メ リカ合衆 国内で も高 い レベ ルにあ る と言わ れてい 力 とは権力 と支配 の関係 であ り、男性 であ る優位性 を利 る機 関 に限定 した。結果、渡米 す る以前 に認知 していた 用 した特定 の人にだけ向け られる暴力、私的な場 におけ それぞれの保健 医療機 関お よび教育機 関の状況 は、実際 る権力関係 を悪用 した もの を DV は指す。 この違いは歴 に見 聞 きしてみる と違 うこ とが わか った。家族 内暴力の 然 としているに も拘 わ らず、女性- の暴力 を喧嘩 と して 問題 は公衆衛生 の問題 とされてか らの ア メリカでの医療 い たのである。 現場 の DV 問題へ の支援 の動 きは早い ものの、多 くの課 注 4 :ここでい う神話 とは、存在 しない事実 を真実 と 題 もその後 にみつか っている。例 えば、看護教育の現場 認識 していることである。例 えば、家族 とは最 も親密 な での家族 内暴力問題 に関す る教 育やケアの方法 はい まだ 関係 であ るためその大切 な家族 に暴力 な ど振 るわけが な 模索段 階であ った。 ア メリカ国内の看護系大学等の多 く い、家族 はいかなる場合 も愛 し合 っている、 といったこ が、学部の レベ ルでは DV 等 の家族内暴力 につ いての科 とである。 目はなか った。 しか し、 わが 国の ように 30% ほ ど しか 注 5 :DV 神話 とは、事実 とは違 ってい ることが暴力 DV に関す る教育 を行 っていなか った とい った ことはな が発生す る要因や状況 を成す事実 である として信 じられ く、学部 4年 間で一度 は学ぶべ きもの とい う認識 は どの ているこ とである。例 えば、被害者 はいつ で も家か ら離 教育機 関 も共通 していた。また、専 門領域 で DV のケア れることがで きる、加害者 は社会 的に失敗者である、加 と予 防 についての科 目を立 ててい るの は、学部 ではな く 害者 は女性 だけで はな く誰 にで も乱暴 であ る、 とい った 大学 院であった。看護系大学等 に暴力 と看護の研究 を専 ことであ る。 注 6:日本では児童福祉機 関 と して考 える と良い。 カ 門 とす る教授 が存在す る場合 には、科 目間 を越 えて学生 が家族内暴力 についての授業が受 ける ことがで きていた。 DV に関す る教育 を一気 に可能 にす る方法 をわが国で i l dPr o t e c t i v eS e r v i c e ( CPS) と言 ル フ ォルニ ア州 で は、ch われてい る。 開発 す る?ではな く、各専 門領域が必 要 とする教育プ ロ 注 7:サ ンフラ ンシス コには、「 Th eⅥme so fHa r v e y グラムの基本 を明 らか に し、標準 的 なマニュアルの作成 Mi l k」で もわか る ように Ca s t o rの街 を代 表 して、Ga y やL es b i a nや Bi s e x u a lの人々が多 く暮 らしている。 「 Th e に必 要な内容 と方法 について今後の研 究で明 らかに して -40- 大阪市 立大学看護学雑誌 ¶me sofHa r v e yMi l k」 はサ ンフランシス コ市 長 が Ga y であ ったことで社会問題 になった実話映画 であ るが、サ ンフランシスコ市長が Ga y であ った ことか ら Ga y を中 s e xua lたちが多 く住み始 め た と言 われ 心に L es bi a n や Bi y 関係 間の DV も他市 に比べ て頻 ている。 そのため Ga 発 してお り、サ ンフラ ンシスコでは男女 を問 わず全 ての 患 者が ス クリーニ ング対象 とな っている。 参考文献 Ba t hKa pl a n( 1 995) : TT l ePhys i c a n' sg ui det oDomes t i c Vi ol e nc e; Howt oa s kt her ightQue s t i onsa ndRe c og ni z e Abus e ? , Ame ica r nMe di c a l As s oc i a t i on,Ca l f omi a Ba t hKa pl a n( 1 997) : Dome s t i cⅥol e nc ea ndHe a l t hCa r e Wha te v e r ypr of e s s i ona ln e e dst ok now? , SAGE nl bl i c a t i ons ,b ndon Be t s yMc Al i s t e rGr ov e s ( 2002) : Chi l dr e nWhoSe el boMuc h, Be a c onPr e s s , Bos t on AI pe r t , Che r ylL. 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