ハイライト表示 - 大阪市立大学学術機関リポジトリ

大阪市 立大学看護学雑誌
【
その他】
第 2巻 (
2006.
3)
保健 医療機 関・
教育機 関のDV防止 ・
支援-の取り組み
-マサチューセッツ州およびカリフォルニア州から-
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キー ワー ド :ドメスティック ・パ イ レンス、 ア メ リカ合衆 国、看護教育
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4年度科学研究費補助金基盤研究(
B)
(
2
)
そ こで、平 成 1
Ⅰ.はじめに
によ り、平成 1
4年 8月 20 日か ら 29日の 1
0日間、マサ
家族内暴力問題へ の取 り組みが先駆的であ る とされる
チューセ ッツ州 での医療機 関 をは じめ とす る様 々な関連
アメ リカ合衆 国で も、子 どもの虐待へ の取 り組 み に長い
機 関の DV 防止 ・支援 への取 り組み を視察 ・研修 して き
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時 間がかか った よ うに、DV (
た。視察 ・研 修対象 をマサ チ ューセ ッツ州 とカルフ ォル
スティック ・バ イオ レンス)被害へ の支援 お よび DV 防
ニア州 に した理 由は、 2つ の州 は DV お よび子 どもの虐
止の取 り組み に も長 い時間がかか った。 DV 防止の取 り
待等 に家族 内暴力 に関す る解決 ・支援 のモデル的役割 を
960 年代 の女性- の支援 に DV も含めた支援
組み は、 1
担 っている州 であ るこ とだ った。 その一部 は既 に報告 を
か ら始 まった と言 われ、半世紀 に及んだ。医療 における
した (
高 田 ら、2005) が、今回は平成 1
5 年度科学研究
996 年 に始 まった。
取 り組み に関 して は さらに遅 れ て、 1
費補助金基盤研 究 (
B)
(
2
)
に よ り、平成 1
5年 8月 8日か ら
DV は公衆衛生の問題 であ り全米 の保健 医療機 関は DV
24 日の 1
6 日間、マサチ ューセ ッツ州 お よびカ リフ ォル
問題 に取 り組 むべ き課題 である と、前 クリン トン大統領
ニ ア州での看護職教育 にお ける・
DV の取 り組み を視察 ・
によって方針が打 ち出 され、その結果 DV 関係 に予算が
研修 したので その一部 を報告 す る。
お りるようにな り保健 医療 関係 者 の トレーニ ングが各地
Ⅱ.アメリカの保健 ・
医療 における DV に関する取り組みの
で少 しずつ始 まった。
経緯
わが国では 200 年 に制定 された 「
配偶者か らの暴力
DV 防止 法 )
」で、
の防止 と被害者 の保護 に関す る法律 (
医療 の役割 と して DV 被害者の承認後の報告 と情報提供
996 年 の前 ク リン トン大統 領 に よっ
ア メ リカで は、 1
の努力義務が明記 され た。 しか し臨床 において保健 医療
て医療 は DV 問題 に取 り組 むべ き課題 であ る とした こと
関係者の多 くが DV 被害者 に遭遇 しているに もかか わ ら
によ り、DV に関す る解決 ・支援 の取 り組 みが全州 で本
ず、保健 医療 関係者 の DV 被害者への対応 は十分 で ない。
格的 に開始 した。 この時点 で、 ア メリカの保健 医療機 関
その原 因の ひ とつ と して、DV に関す る トレーニ ングが
における子 ど もの虐待 に関す る解決 ・
支 援 システムは、
着手 されてお らず、教育の未整備がある (
友田 ら、20 5)0
わが国に比べ る と格段 に整 っていた。 しか し、わが 国が
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)大阪市立大学医学部看護学科 os
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3)
神戸市看護大学看護学部看護学科 KobeCi
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3 5
-
大阪市立大学看護学雑誌
第 2巻 (
20 6.
3)
子 どもの虐待問題 に着手 した 1
99
0 年の頃、女性の問題
の取 り組み と類似 している。点が線へ と結 びつ くための
は子 どもの問題 とは引 き離 した援助 になっていたの と同
長い時間 と各々の関わ りと弛 まない努力 を経 て、今 日の
じように、 1
99
0 年代初 めのアメ リカ も子 どもの問題 と
虐待問題の保健医療関係者が果たす役割 についての基本
女性の問題が相互乗 り入れ した援助 になっていなかった。
的共通認識 に到達 したのはアメリカ も同 じであった。
さらに保健医療機関では、女性への暴力は女性 にも問
題があ る といった被害女性への避 貯
1
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子 どもに対する人権意識が高 まった 1
97
0 年代、家庭
内の子 どもへの暴力 を早期 に発見 し援助す るためのス ク
「
夫婦喧嘩は犬
も食わぬ」 とい う諺 注2 1 が存在す るように痴話喧嘩扱い、
リーニ ングが医療機 関で始 まったが、それか ら 2
0 年遅
喧嘩i
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:
・
: は家庭 内の問題 であ り男女の問題 は当人同士が
れて、女性への暴力 を発見するためのスクリーニ ングが
解決す るべ きだ とい う男女関係のモラル意識や家族神話
始 まった。 スクリーニ ングの有効性が高 ま り必要性が明
に基づいた誤 った認識が行 き渡 っていた。そ して、
らかになるにつれて、医療従事者の個 々の スクリーニ ン
DV 神話は5'とジェンダー問題 もそこに大 きく影瞥 して
グ方法に質の格差がないようにすることの重要性 に専 門
いたのである。結果的に、子 どもの虐待 の発見、予防を
機 関は気づ いていった。そ して、 どの ような教育内容が
支援す る保健医療機関は数多 くあったが、女性への暴力
ス クリーニ ングお よび DV 被害女性への対処方法 に必 要
99
0
問題 を積極的 に関わ り解決 ・支援 してい る機関は 1
かつ重要であるかが明 らか にされ、保健お よび医療従事
年代 の アメリカで も限 りな く少 なかったのである。
者 を対象 とする DV に関す る トレーニ ングが各地で始 ま
卜
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1
996 年の前 クリン トン大統領 の宣言 (
彼 自身が DV
ったのである。
家庭で育 った子 どもであることに依拠す る と言われてい
る)には、政策的な意図があった。 この頃のアメリカで
倫理的配慮
は、DV による心身の健康障害の治療 にかかる医療費は
視察 ・研修 を行 った保健医療機関、大学等 は、DV 関
8億 ドル と推定 されている。WHO ば .
DV 被害女
年間 1
しては屈指の支援機関及び教育機関であることを現地 に
性の治療 にかかる医療費 を考える と、その費用 を削減す
詳 しい専 門家 よ り予 め聞 き取 り、視 察 ・研 修 した。視
るため には DV 予防に投資する方が施策上 も有意義であ
察 ・研修 した期間や担当者や関わった人たちには視察 ・
る (
WHO1 1
999) と強調 した ことが、変革の大 きなき
研修 した結果 を報告する了承 を得て、今回の視察 ・研修
っかけ となった。
内容 を報告する。
DV 関係 に多額の予算が保健医療機関-お りるように
Ⅲ.医療現場の取り組み
なった こと、DV 被害女性 を支援する様 々な女性支援機
関か ら DV被害女性の多 くが暴力の被害 を受けている期
間に一度か ら数十回 と医療機関で治療 を受 けている事実
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ボス トン市立病院)
が報告 される ようになったこと、民事禁止保護命令の制
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990年代のころの Bos
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alでは、殺 人現
定、暴力の被害者の安全確保- と進展 してい き女性への
場 を目撃 したや親が殺 されたなど劣悪 な事件 を経験 した
暴力防止法がで きたこ とが保健医療での本格的な取 り組
子 どもの うち情緒 的影響がある場合に、子 どもへの カウ
みの始 ま りとなった。 この ような取 り組みがすすみ、そ
ンセ リングを行い、その中で間接的 に DV 問題へ関与 し
の結果、保健 医療機関 に通報の義務 と罰則規定が盛 り込
て きた。.
しか し、警察か ら送 られて くる事件 レポー トに
ま・
れ、保健医療機関は DV を発見する最初のまたは唯一
0%以上は DV 事件 による子 どもの情緒
よると、その 9
の機関 となる場合が多 く重要な役割 を担 う機関であるこ
的 ・身体的影響があ り、子 どもの年齢 は全 て 8歳以下、
とが保健医療 関係者 に認識 されていった。 さらには DV
その うち 8
0%が 6 歳以下であった (
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2
0 2)。 DV
の真相 が明 らかにされ、医療の援助の方向性が明 らかに
環境下にいる乳幼児期の子 どものほ とん どに情緒的影響
なっていった。
があ り、子 ども-の早急 な対応が必要であ ることも明 ら
保健 医療機関による DV 解決 ・支援 は、初めか らスム
かになった。Bos
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ーズにシステムが整 ったわけではない。 1
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0 年代か ら
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rでは、これ らの経緯か らDV被害女性 を援助 する
DV を受けて重症なけが を負 う、精神的 なダメージがあ
だけではな く、DV 環境下で暮 らす子 どもへの情緒的影
.る、性 にまつ わる問題 に苦 しんでいる女性 の状況 を DV
響 を未然 に防 ぐためのプログラム として、CWVP(
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と気づいた保健医療関係者が個 人的に関係機関へ連絡 を
を設立 したのである。小児科
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した り、情報 を提供 した りしていたにす ぎなかった。 こ
部門に設置 された cwvp は臨床心理士、医師、看護師、
れは、わが国の子 どもの虐待問題 に取 り組み始めた初期
メデ ィカルソーシャルワーカー、警察官、弁護士、児童
-36-
大阪市立大学看護学雑誌
第 2巻 (
20 6.
3)
福祉関係職員等の メンバー構成 (
写真 1)に よって多様
なプログラムを準備 している。
写真 1 CWVPに携わるメンバーの一部とBo
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CWVPのプログラムは児童保護機関 (
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) に組み込 まれたプログラム とされ、
実施することは困難であ り、学校教育で統一 した共通の
教育が必要であることもわか った。
利用者の負担 は-切 ない。家族 内暴力の問題 を解決支援
を超 え、統合 して関わることを重要視 したチーム医療が
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h (カル フォルニア大学
ここでは行 われていた。
サ ンフランシス コ校
するためには必須条件 ともいえる、官民 ・専 門性の垣根
女性健康 セ ンター)
病院全体 としての取 り組みは、病院監査 と して義務づ
このセ ンターは女性の妊娠期 だけではな く女性のライ
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lに受診する 12歳以上の女
け られ、Bo
フコースに焦点 をあてて女性 の健康 をケアする とい う立
性 に対 して看護師 は、DV スク リーニ ング必ず実施 して
場 に立 った 5つの事業 を展 開 している。その うちのひと
いた。 しか し、DV と子 どもの虐待 を同時 に援助 してい
つに、DV と子 どもの虐待 があ り、その中には保健お よ
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lで さえ、全 ての子 どもへ のスクリ
る Bo
び医療従事者-の暴力防止支援 のための教育 プログラム
ニ ングを行 ってお らず、 1
3 歳以下の子 どもの場合 は
があった。ハ イリスク母子へのプログラム、 リーダーシ
診察中に 「
疑問 (
子 どもへの虐待 ではないか、暴力 を目
ップの育成、 コ ミュニテ ィへの働 きかけといった他事業
」を感 じf
=時 にス ク リーニ ン
撃 した子 どもではないか )
とリンクされた内容が暴力問題 には必要 となるのだが、
グ を して い た 。 こ の 「疑 問 」 を感 じる た め に E
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それぞれのパ ーツで抜 け落 ちることのない ようにシステ
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t:救急 治療室) に勤務 す る看護
ム化 されて きめ細 か くプログラ ミングされていた。 また、
師に対 しては卒後 l年 目か ら毎年 、DV の教育 と試験 を
DV の問題 は子 どもの問題 で もあるとい う認識 に立 った
実施 しているが、それ以外の部 門では実施 していなかっ
事 業計 画 は、小 児 科 医 師- の トレーニ ングの ため の
た。
V
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Rを作成す るな ど、小 児科部 門がかな り関与 してい
この状況 は、家族 内暴力問題の取 り組み とケアでは全
ることが、他機 関 に比べ て先駆的な取 り組み といえる。
UCS
Aの中 にあるセ ンターであるため、.
このセ ンター
米の中で最高 レベルの医療機関 とされている平成 1
4年
度 に視察 ・研 修 を した Ma
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で も同様 の ス ク リーニ ング普 及状況 だ った こ と
(
MGH)
ついてのカリキュラム (
表 1)があ り、医学生 はこの授
をみて も、保健医療機関に勤務す る職員への統一の困難
業 を必ず受講す るよう義務づ け られている。
では大学院医学研究科 2回生 を対象に した家族内暴力 に
さの一端が伺 える。 しか し、DV についての教育 を受 け
授業 は二 日にわけているが ゆえに医学生へ事前の課題
てス クリーニ ング した場合 と受 けず にスクリーニ ングを
提供がで き、予習 ・復習 を必修 に した講義 ・演習のため、
した場合 とでは、発見率 とその後 のケアには有意 に差が
医学生の学習の到達度 は高い とい うことであった。ただ
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997) もあ り、医療現場で
あることを示す研 究 (
し、 これは医学部のみ実施 している段階であ り、必要性
は今後 も取 り組み を続 けてい くこ とは確かであ った。た
は十分 に感 じなが らも看護研 究科では実施 していない と
だ し、卒後教育 において DV についての基本的 な教育 を
い うことであった。
-
37 -
大阪市立大学看護学雑誌
表1
第 2巻 (
2006.
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ベ テランであって もパ ックのひ とつ ひとつ をチ ェ ックし
病院)
てい くようにされたキ ッ トを使用す ることで、いか なる
MGH の ように全科で全ての女性 に DV スク リーニ ン
グ してはいなかったが、ED -受診 した患 者 に対 しては
時も 「
抜 け落 ちる」「うっか り忘 れ る」こ との ない よう
に注意が払 われているのである。
女性 だけでな く全 てi
E7の患者へ の DV ス クリーニ ング
この ような充実 した DV に関す る教育 を現任のス タッ
を実施 していた。そのため、ED に勤務 す る医療従事者
フを対象 に実施 している機 関は多 くない。 ただ しここで
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onFundにある DV
は 6ケ月間の Fami
も、ED に勤務す る医師、看護師、事務職全てのス タッ
防止支援 の教 育プログラムを トレーニ ングすることを義
フに限定 されているため、他部門でのそれ以上 の発見率
務づ け られていた。ED の担当 を してい る Kapl
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n医師は、
を上げることは困難であることが課題 の ようである。
0%が
その トレーニ ングを受 けた 6ケ月後 には彼 らの 8
インタビューバ ックで きるまで変化 していた と述べ、研
Ⅳ.看護教育の取り組み
修 の有効性 を明 らかに してい る (
Kapl
a
n、 1
995・1
997)。
ここでは、平均 で 1日250名ほ どの受診患者の うち、 5
人の DV 被害者 を発見 していた。
看護教育の中で DV に関する教育 をどの ように実施 し
ているのか、 どの科 目で DV について教授 され、到達 目
DV 被害者がスクリーニ ングされ詳細 な状況 を尋ね ら
標 は何か といった ことを知 ることを目的 と し教育機 関を
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k (1人の患者
れ る場合 には、共通 した ht
視 察 した。 「DV に関する教育 をなん らかの形 で受 けて
につ き各、 ガイ ド・質問紙 ・シー ト・記録用紙 ・リー フ
きている看護師」の DV に関す る教育 には、 1コマ程度
レッ ト 情報 リス ト等が ファイル され た もの) を作成 し
を DV につ いて準備 している単元 の受講 か ら、科 目で
て実施 しているところにこの病院の特徴がある。 どれだ
DV に関連 した単元や内容があった場合に DV について
け トレーニ ングを積み上げて も、個 人の差 は存在 し、時
触 れてい る程度 の受講 と、その差 はかな りの幅があ った
間の経過 とともに発見率 は下が ることも明かであるため、
-3
8-
0
(
高 田ら、205)。
大阪市立大学看護学雑誌
第
2巻 (2006.
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ボス トン大学看護学部)
につ いての科 目を、大学 院 1年次 に暴 力 問題 を研 究 して
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oolorNur
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ngで は、母性 看護学領域
い る Humphr
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ys教授 が担 当 してい た。 さ らに博士 課 程
で DV に看護 師が 関 わる必 要性 と重要性 お よびその方 法
で■
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科 目が必修 であ り、大学 院生 は こ
につ いて教授 されていた。 さらに看護 師の役割 と技 術 を
れ らを履修 し、保健 医療現場 での家庭 内の暴力発見へ の
教授 した り研 究 す るだけで はな く他機 関 との連携 を も行
具体 的 な方 法 まで習得 す る こ とがで きる ように教育 して
っていた。 しか し専 門的 な研 究活動 が存在 してい る に も
いた。 ここで は、看護学生 は民 間の シェル ターへ ボ ラ ン
拘 わ らず Bos
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oolorNur
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ngで は、DV に関
テ ィア と して行 くこ ともカ リキュラムに組 み込 まれて い
す る科 目が独 立 して存在 してい なか った。 それぞれの科
る ところが他 大学 とは異 な ってお り、特徴 で もあ った。
目や専 門領域 で、 DV や子 どもへ の虐待 な ど家族 内暴 力
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に関連 した場 合 に各人が教授 していた。科 目や専 門領域
る助 産 コー スで は、妊娠 で の リスク要 因 と しての DV に
での重要性 の違 い に よる教育 内容 の 「質の不安 定 さ」 は、
e
ys教授 は、
つ いて、単 元 の一部 を教授 していた。 Humphr
各専 門領域 で調整 を行 っていた。学生 は、暴力 問題 につ
看護 の書籍 に DV につ い ての書物 が少 ないため
UcsF
い て何 らかの科 目で、在学 中に受講 で きる よ うに、各専
以外 の ア メ リカ全州 、 さらにカナ ダ、 ロ ン ドンに まで活
門領域 で調整 し工 夫 していた。 同時 に、大学教 員が臨床
躍 す る看護 師 たち十 人ほ どで協 同 して、教材使 用 で きる
現場 に出向 き、現 任看護 師へ の DV の発 見 と予 防 に関す
家 族 内 暴 力 に 関 す る 書 物 を 執 筆 し 出 版 して い た
る教 育 を実施 して いた。 マサチ ューセ ッツ看護協 会 と連
(
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ys、 2004)。 この よ うに一 部 の 看 護 教 育 現 場
携 し暴 力 と看護 につ いての研 修 を行 うこ とで、DV 防止
で は、暴力 と看護 に関す る教材 の検討 も始 まってい る こ
支援 の普 及 を図 っていた。 しか し、 これ も全 ての病 院が
とが わか った。
実施 してい るわけではなか った。
V.
他機 関による医療 従事者へ の教 育 の取 り組み
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ボス トン大学 医学部公 衆衛 生学 )
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家族内暴力防止基金)
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yで は、大学 院の教育機 関 で家族 内
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暴 力 を科 目 と して教授 して い た。 そ れ らは、 一
労働省 の ような機 能 と役割 を持 つ) に よる要請 を受 けて 、
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が 家庭 内暴力 に
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カ リフ ォルニ ア州 にあ る Fa
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で は、医療機 関へ の DV解 決防止 に向 けての プ ログラム
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につ いては性 虐待 につ いて
と情報提 供 を実施 してい る。 ここは、保健 医療部 門 をひ
の科 目が あ り、大学 院生 は これ らを必修 で履修 す る。 こ
とつ の部 門 と してお り、 シェル ター部 門、相談部 門 な ど
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eで も、DV につ い ての基礎
れ につい ては Bos
細 か くわけ、啓発活動 を中心 的活動 内容 と していた。写
的知識 を看護教育 の 4年 間で漏 れ るこ との ない よ うに科
真 2のバ イ ンダー式 の プ ログラムは全米で よ く使用 され
目間で調 整 しあ う程度 と し、 ケア とその方法 につ いての
てい る保健 医療 関係 者 の ための指導者が教授 す る ときの
講義 は大学 院で実 施 す る と してい た。今 回の渡 米 した時
テキス トで あ った。 この よ うなプ ログラム をい ち早 くわ
期 は 日本 と同様 に夏期休 暇 中で、授 業 を参観す る こ とが
が 国 に取 り入 れる こ と も今 回の 目的であ ったため、帰 国
で きなか ったが、AI
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t助 教授 主催 に よる専 門職対 象 の
後 は早速 に翻訳 し出版 した ものが その横 にあ●
る本 で あ る
(
写真 2)
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研修 を受講 し、 ひ とつの科 目に 20 頁以上 に もなる シラ
バ ス を閲覧す る こ とでその内容 と方法が理解 で きた。受
講 した 2日間の専 門職対象 の研修 内容 も密度 の濃 い もの
であ ったが、大学 院授 業 は さらに詳 し く、 1セ メス ター
で講 義 と演 習 (ロー ルプ レイング等) を実施 してい た。
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大学 サ ンフラ ンシス コ枚 )
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は、大学 院の学生 に対 して、家族 内暴力 (
女性 へ の暴 力 、
子 ど もへ の虐待 、老 人- の虐待等 ) につ い て、家族理論
写真
- 39 -
2 FVPF の プ ロ グ ラ ム 本 とそ の
翻訳 本 (
2005年発刊 )
大阪市立大学看護学雑誌
保健 医療機関へ の DV 解 決防止 に向けてのプログラム と
第 2巻 (
2
06.
3)
い きたい。
情報提供 については、DV に関す る資料 を集積 している
だけではな く、健康問題 にかかわる人々 (
学生か ら大学
注
釈
教授 、ス タッフまで) と全国 レベ ルで組織 している。 プ
注 1:暴力の被害 を受 けている女性 の中には、精神疾
ログラム作成 にあたって は、F
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d以外 の医療専 門職 や有識者 に よって評価 を繰 り返
患 、アルコール依存 を含 む薬物濫用、欝病 な どと共存 し
し改訂 し、その都度実施 している。 また これ らはカ リフ
ていた り、犯罪歴のある女性 な ども多かった。 しか し、
ォルニ ア州 だけではな く、全州 で使用 されているほ どに
だか らとい って殴 られて良い とい う理 由にはな らないの
信用 されたプログラムであ った。つ ま り、各機関や大学
だが、 この頃の アメリカで は殴 られて も当然 といった磐
において、マニ ュアルや教育 プ ログラム、必要媒体 など
余が存在 していた。 わが国では今で も、殴 られる女性 に
を作成す るにはその能力や費用 な どの問題 もあることか
も非がある と公然 と訴 える加害男性 や世相が後 をたたな
ら、DV に関わる専 門家 によって標準的 な もの を作成す
い。 ローマ法典 には 「
親指 よ り太 くない鞭 で女性や子 ど
るこ とが有益 であ り、効率 的な方法が とられていた。
もを殴 るの は、暴力ではな くしつ けである」 と記 してあ
り、い まなお消 されることな く存在 している とい う。
この ような保健医療機 関以外 の部 門か らの医療従事者
.注 2:ア メリカに もわが国 と同 じような諺 は存在 す る。
へ の取 り組み は、 1
998 年以降 に増加 して きてい る。 例
えば、民 間シェル ターや YW CA といった機関 も医療従
例 えば、 「
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事者の意識や実践力の向上 を求 めて、教育の必要性 を説
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」。 イギ リスの古 い諺 で は 「
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き実践 している。
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」がある。
注 3 :暴力 とい う犯罪意識が ここには存在 しない。喧
Ⅵ.おわりに
嘩 とは、争 うことであ り、互いに自分 の気持 ちを通 そ う
様 々な保健医療 と教育機 関 を視察 ・研 修 した。今回報
と張 り合 う、議論 することであ り一方的に罵 られ支配 さ
告 した機関はその中g
)一部 の機 関であ り、DV について
れ殴 られ抵抗 で きず にいる DV の場 合 は争 いでない。暴
はア メ リカ合衆 国内で も高 い レベ ルにあ る と言わ れてい
力 とは権力 と支配 の関係 であ り、男性 であ る優位性 を利
る機 関 に限定 した。結果、渡米 す る以前 に認知 していた
用 した特定 の人にだけ向け られる暴力、私的な場 におけ
それぞれの保健 医療機 関お よび教育機 関の状況 は、実際
る権力関係 を悪用 した もの を DV は指す。 この違いは歴
に見 聞 きしてみる と違 うこ とが わか った。家族 内暴力の
然 としているに も拘 わ らず、女性- の暴力 を喧嘩 と して
問題 は公衆衛生 の問題 とされてか らの ア メリカでの医療
い たのである。
現場 の DV 問題へ の支援 の動 きは早い ものの、多 くの課
注 4 :ここでい う神話 とは、存在 しない事実 を真実 と
題 もその後 にみつか っている。例 えば、看護教育の現場
認識 していることである。例 えば、家族 とは最 も親密 な
での家族 内暴力問題 に関す る教 育やケアの方法 はい まだ
関係 であ るためその大切 な家族 に暴力 な ど振 るわけが な
模索段 階であ った。 ア メリカ国内の看護系大学等の多 く
い、家族 はいかなる場合 も愛 し合 っている、 といったこ
が、学部の レベ ルでは DV 等 の家族内暴力 につ いての科
とである。
目はなか った。 しか し、 わが 国の ように 30% ほ ど しか
注 5 :DV 神話 とは、事実 とは違 ってい ることが暴力
DV に関す る教育 を行 っていなか った とい った ことはな
が発生す る要因や状況 を成す事実 である として信 じられ
く、学部 4年 間で一度 は学ぶべ きもの とい う認識 は どの
ているこ とである。例 えば、被害者 はいつ で も家か ら離
教育機 関 も共通 していた。また、専 門領域 で DV のケア
れることがで きる、加害者 は社会 的に失敗者である、加
と予 防 についての科 目を立 ててい るの は、学部 ではな く
害者 は女性 だけで はな く誰 にで も乱暴 であ る、 とい った
大学 院であった。看護系大学等 に暴力 と看護の研究 を専
ことであ る。
注 6:日本では児童福祉機 関 と して考 える と良い。 カ
門 とす る教授 が存在す る場合 には、科 目間 を越 えて学生
が家族内暴力 についての授業が受 ける ことがで きていた。
DV に関す る教育 を一気 に可能 にす る方法 をわが国で
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われてい る。
開発 す る?ではな く、各専 門領域が必 要 とする教育プ ロ
注 7:サ ンフラ ンシス コには、「
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グラムの基本 を明 らか に し、標準 的 なマニュアルの作成
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rの街 を代 表 して、Ga
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lの人々が多 く暮 らしている。 「
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に必 要な内容 と方法 について今後の研 究で明 らかに して
-40-
大阪市 立大学看護学雑誌
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k」 はサ ンフランシス コ市 長 が Ga
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であ ったことで社会問題 になった実話映画 であ るが、サ
ンフランシスコ市長が Ga
y であ った ことか ら Ga
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lたちが多 く住み始 め た と言 われ
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y 関係 間の DV も他市 に比べ て頻
ている。 そのため Ga
発 してお り、サ ンフラ ンシスコでは男女 を問 わず全 ての
患 者が ス クリーニ ング対象 とな っている。
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バ イオ レンスに関す る看護教育の現状 ,平 成 1
4年 1
7年度科学研究基盤研 究(
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第 2巻 (
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