KJ00004421005

島根県立大学短期大学部出雲キャ ンパ ス
研究紀要 第 3巻 ,123-135,2009
青年期の心理的自立に関する国内文献レビュー
小 田美紀 子
概
要
ひ き こ も りや家庭 内暴力 な ど,社 会 的不適応 の背景 に存在す る と考 え られ る青
年期 の心理 的 自立 に 関す る国内研 究 の動 向や内容 を分析 し,今 後 の研 究課題 を検
討 した。心 理 的 自立 の研 究 は, 自立 の概 念研 究 か ら始 ま り,社 会 ・ 時代 的状 況 に
関連 させ た研 究が展 開 されて い た。今後 の研 究課題 は,1)心 理的 自立概念 の 明確
化や尺 度 開発研 究 の継続 ,2)青 年期 の社会 問題 に対 し,心 理的 自立 をキ ー ヮー ド
に した研 究 の 実施 ,3)心 理的 自立 を研 究す る際 は,そ の背景 にある文化 ,社 会 ・
時代 的状況 ,性 差 ,居 住環境 を考慮す ること,4)心 理的 自立 に関連す る要 因 の解
明,5)心 理 的 自立 に関連 す る家庭環境 につ い て,そ の基盤である夫婦 関係 に焦点
をあてた研 究 の実施 ,以 上5点 が明 らか となった。
キ ー ワー ド :心 理 的 自立 ,精 神 的 自立 ,青 年期 ,文 献 レビュー
本論では,ひ きこ もりや家庭内暴力など,社 会
I.は
的不適応 の背景に存在すると考え らる青年期 の
じめ に
心理的 自立 に関する国内の研究 の動向や内容 を
近年,青 年期 におい て社会的不適応 をお こす
者が増加 してい る。筆者が約 15年 前 に保健 師 と
分析 し,今 後 の研究課題について検討すること
を目的 とした。
して働 いていた際 に,20オ 代 の社会人によるひ
Ⅱ.研 究 方 法
きこ もりや家庭内暴力 の相談が増 えた。彼 らの
特徴 は, 自己判断 。自己決定 し,そ のことにつ
いて 自己責任 をとることが出来ず,感 情的な自
己 コン トロール もで きない,つ ま り心理的 自立
1.研
がで きていない状態であった。 また,相 談家庭
へ の関わ りの中でみえて きたのが,親 子関係が
2.研 究対象
子 どもの 自立を妨げて い るのではないか とい う
'こ と,そ の親子関係 に夫婦 関係 の問題が影響 し
てい るのではないか とい うことであった。
心理的 自立 は,青 年期 の発達課題 の一つであ
る。福 田 (1991)は ,社 会的不適応 には,心 理
的自立に関する深刻 な葛藤が背景 に存在すると
報告 して い る。現代 の青年 の特徴 として,「 大
人にな りた くない」と答 え,そ の理由として「子
どもでい る方が楽 だか ら」,「 大人になることが
究期間
2008年
1月 か ら2009年 9月
CiNii(NH論
文情報 ナ ビゲ ー タ)で ,「 心理
的自立」,「 精神的自立」
,「 青年期 , 自立」
,「 大
学生,自 立」,「 高校生,自 立」,「 中学生,自 立」
のキー ワー ドで検索 を行った。対象 とした研究
論文は1968年 以降か ら2008年 に至 るまでに投稿
された研究論文 である。
3.分
析方法
収集 した研究論文 の中か ら,青 年期 の心理 的
自立 に関す る研究論文のみを抽出 し,内 容によ
り分類 をした。
何 とな く不安 だか ら」 と自立へ のとまどい を感
じてい る青年が多 い ことが明 らか にされてい
る。
- 123 -
小 田美紀子
動規範 を獲得 し,他 者・社会 との調和 をはか り
,
Ⅲ .結 果
社会 を維持す ることに貢献 で きる こととし,具
上記の方法 にて検索 された研究論文 は,419
体 的には,精 神 的 自立 と社会 的 自立 の 2側 面か
ら成 り立 つ もの と定義 した。
件 であった。内訳は,「 心理的 自立」 18件 ,「 精
神 的 自立」28件 ,「 青年期, 自立」119件 ,「 大
近年 ,心 理的 自立の定義化 を試みたのは,高
坂 ・ 戸 田 (2003)で あ る。 高坂 ・戸 田 (2003)
学生 ,自 立」174件 ,「 高校生,自 立」48件 ,「 中
学 生 , 自立」32件 であった。その中か ら,青 年
は,心 理的 自立 を「成人期 にお いて適応 す るた
期 の 心理的 自立 に関す る研究 を抽 出 した結果
27件 が本論 の研究対象 となった。
め に必要 な心理 ・社 会 的 な能力 を備 えた状態」
と定義 した上で,久 世 ら (1980),上 子 (1982),
,
Steinberg(1986),渡 邊 (1990)の 4名 の理 論
対 象 となる論文の研 究内容 を分類 した とこ
ろ,「 心理的 自立 の概念 ・定義」,「 心理的 自立
研 究 を改 めて分析 し,青 年期 の心理 的 自立 は
行動 ,価 値 ,情 緒 とそれ らの基盤 となる認知 の
尺 度 の 開発」,「 心理的 自立の発達 的変化 と性
差」,「 心理的自立 と親子関係」,「 自立 と居住環
境」,「 自立 と進路・職業選択」,「 心理的自立 と
4側 面か らなる ことを見 い だ し,そ れぞれ の再
社会 的不適応 (ひ きこ もり・非行 )」 ,「 自立 に
おける文化 ・国際比較」 の 7つ に分類する こと
がで きた。
,
定義化 を行 った。 これに よる と,「 行動 的 自立」
とは, 自 らの意志 で決定 した行動 を, 自分 の力
で行 い,そ の結果 の責任 を とることがで きるよ
うになる こと(実 行 と責任 )。「価値 的 自立」とは
行動・思考 の指針 となる価値基準 を明確 に持 ち
,
,
それに従 って物事 の善悪 ,行 動 の方針 な どの判
1.心 理的 自立の概念・定義
「心理的自立」 に関する研究は,「 自立」 の概
念研 究か ら始まってい る。心理学では,か つ て
断を下す ことがで きるようになること (価 値 と
判断)。 「情緒的 自立」 とは,他 者 との心の交流
自立 とは,依 存 の対概念 として考 え られてお
り,他 人に依存 しない ようになることが 自立 を
をもつ とともに,感 情 の コン トロールがで き
常に心 の安定 を保 つ ことがで きるようになるこ
獲得す ることと捉 えられてきた。その後 ,高 橋
(1968),関 (1982)の 研究に よ り, 自立 は依存
と(自 己統制 と適切 な対人関係 )。 「認知的自立」
性 の対概念 ではな く,発 達的変容 の結果 と捉 え
る考 えがみいだ された。 しか し, これ らの研 究
に,他 者 の行動,思 考,立 場及 び外的事象 を客
観的 に理解 ・把握す ることがで きるようになる
も自立 を依存性 とい う一側面か ら捉 えたにす ぎ
己認知 と社会的知識 ・視野 )。 なお外
的事象 に関する知識 を得 ることもこれに含む こ
なか った。 吉本 (1984)は ,高 橋 (1968),加
藤 ・ 高木 (1980)の 研究 を例 に挙 げ,「 どの研
究 も自立 の一局面を とらえたす ぐれた研究 では
あ るが,総 合的な概念 として「 自立」 をとらえ
た ものではない」 と述べ てい る。その後 ,久 世
ら (1980),上 子 (1982),渡 邊 (1990)に よっ
て 自立概念が もつ多面性 を明 らかにする研究が
なされた。 3名 の研究者 のあ る程度共通 した 自
立の側面は,身 体,行 動,情 緒 ,価 値 ,経 済 の
5つ であつた。
,
とは,現 在 の 自分 をあ りのままに認 めるととも
こと
(自
ととす ると定義 している。
先 行研 究 の 中 で「 心 理 的 自立 」 と い う言
葉 が使 われ始 め た の は,1986年 か らで あ り
「精神 的 自立 」 とい う言葉 が使 われ始 めたの
,
は,1991年 か らである。 なお,「 精神 的 自立」
,
「 心 理 的 自 立 」 は,い ず れ もPsychoiogical
independenceの こ とであ り,医 療 ・福 祉系 の
学者 は前者 を心理系の学者 は後者 を使用 してい
る者が多 い。
2.心 理的 自立尺度の開発
最初 に心理的 自立の定義化 を試みたのは,福
島 (1992)で あ った。福 島 は,心 理的 自立 を「親
や他 の大人へ の完全な依存 か ら脱却 し,一 人 の
加藤 ・高木 (1980)は ,青 年期 における依存
か ら独立へ の過程 の解明 は,青 年枡究 にお いて
人間 として大入社会の一 員 になる過程 とす る。
すな わち,単 に自己の確立 のみを意味す るので
中心 となるべ き課題 の一つ とされているが,実
証的 レベ ルで十分解明され て きた といいがたい
はな く,社 会 を構成す る一員 として望 ましい行
と指摘 し,独 立意識の測定尺度 の作成 を試みた。
- 124-
青年期 の心理 的自立に関す る国内文献 レビュー
表
タイトル・研究者名
「思春期から成人にわ
たる心理的 自立― 自
立尺度の作成及び発
達的検討」
福島朋子
「自立と自己の性の受
容 (3)― 性差・発達差
の検討―J
渡邊蒸子
「青年期のおける心理
的 自立 (Ⅳ )― 心理的
自立の発達的変化―」
高坂康雅
戸 田弘二
l
心理 的 自立 の発達的変化 と性差 に関す る枡 究
青年 から成 人 にかけての
調査内容】質問紙調査。①心理的自立尺度 :筆 者作成 (福 島,1992)
【
人
子計
子計
147名
300名
253名
学男子 103名
学女子 111名
校男子 76名
校女子 91名
大学男子 58名
大学女子 123名
への
の 目立」
立 と,I∼ へ
という幅極的 E
自立への発達は,1親からの自立」という消極的 自立と
立の二つの側面が考えられるが,特 に青年期前期から中期にかけては,前 者 が大き
な課題とされてきたことから,親 との心理的関係についてさら1こ 詳しく,父 母別に検討
する。
調査内容】質問紙調査。①生活身辺行動12項 目,② 自立の自己認知 (自 立意識)7項 目,③ 自
己の性の受容9項 目,④ 性役割観6項 目,⑤ 自立意欲7項 目,⑥ 親との関係 (父・母
別)各 22項 目,⑦ 友人関係・勉学関係28項 目および属性。
年期の心理的 自立獲得過程における男女の違いを検討する。
大学 生
172名
男子 計
女子 計
合計
367名
411名
調査内容】質問紙調査。①心理的自立尺度 :PJS 2(高 坂・戸田,2005),② 充実感尺度 :「 充実
感気分―退屈・空虚感」11項 目(大 野,1984)
778名
作成にあた り,中 学 ・高校生お よび大 学生 を対
象 に調査 を実施 してい る。その結果 ,「 独立性」
,
「親へ の依存性」,「 反抗 ・ 内的混乱」 の 3因 子
20項 目の独立意識尺度 を作成 した。この尺度は
,
としては青 年期 を姑 象 とした尺度である。作成
にあた り,中 学 ・ 高校 生 に対 して調査 を実施 し
て い る。 その結果 ,「 反理想化 と独 自性」,「 依
存 と同化」,「 親子 の大人認知」 の 3因 子 17項 目
一部 の研究者に よって現在 も心理的 自立 を測定
す る尺度 として使用 されてい る。
の心理 的 自律尺度 を作成 した。 なお,こ の研究
,独 立へ の意識が高 まる思春
を自分が責任 を持 ち, 自己 の規範 に沿 って統制
期か ら成人にかけての 自立の過程 を考察するた
めに心理的自立尺度の作成 を試みた。作成 にあ
た り,中 学 ・高校 ・大学生お よび成人に調査 を
で きる こと」 と捉 え られて い る。 い わゆる自己
責任 と自己統制 につ いて説 明が な されて い るた
め, ここで言 われて い る 自律 と自立 はほぼ 同義
実施 している。その結果, 4因 子22項 目の心理
的 自立尺度を作成 した。第 1因 子 は, 自分 の価
で使用 されて い る と判 断す る。
高坂 ・戸 田 (2006)は ,そ れ まで理論的な枠
値観 を確 立 し, 自分 の能力や個性 を認めていこ
組み に もとづい た心理的 自立 の程度 を測定す る
うとす る主体性 に関す るもので「主体的自己」
第 2因 子 は, 自分 のことは 自分 で判断 し責任 を
ための尺度が なか った と指摘 し,尺 度作成 を試
みた。作成 にあた り,中 学 。高校 ・大学生お よ
とろ う とす る】
大態 に関す る内容 の もので,「 判
び成人 を対 象 に調査 を実施 して い る。その結果
「 将 来志 向」,「 適切 な対 人 関係 」,「 価値判 断・
福島 (1992)は
,
断,責 任性」,第 3因 子 は,親 は 自分 とは異 な
る一人の人 間であることを認めていこ うとす る
もので「親 か らの心理 的離乳」,第 4因 子 は
親へ の情緒的な交流 を軸 とした相 互の信頼関係
,
にお い て 自律 とは,「 自分 の 感情 ,思 考 ,行 動
,
実行」,「 責任」,「 社会 的視野」,「 自己統制」 の
6因 子 30項 目の心 理 的 自立尺 度 (PJS-2)を 作
成 した。
以上 ,加 藤 ・高木 (1980)の 独 立意識尺 度
に関するもので「親 との信頼関係 の確 立Jで あ
る。
安藤 (2004)は , 日本 には自律性 に 関す る尺
度が存在 しな い ことか ら,米 国 のL.Steinberg
,
福 島 (1992)の 心 理 的 自立尺 度 ,安 藤 (2004)
の心理 的 自律尺度 (」 EAS),高 坂・戸 田 (2006)
の心 理 的 自立尺 度
(P」 S‐
2)の 4つ が,我 が 国
&S.B"Silverberg(1986)が 作 成 した 思 春 期
おける青年期 の心理 的 自立 を測定す る主 な尺度
の 自律 性 を 測 定 す る た め の 尺 度 Emotional
である。
Autonomy Scale(EAS:心 理面 の 自律性尺度
の 日本語 版小 児用 自律性 尺 度EAS(」 EAS)の
作 成 を試 みた。小 児 用 とな って い るが ,内 容
3.心 理的 自立 の発達 的変化 と性差
)
、
心理的 自立の発達 的変化 と性差 に関す る研 究
の 目的,調 査 の対象 ・ 内容 は表 1に 示 した。
- 125 -
小田美紀子
表2
タイトル・研究者名
「青年期の 自立と親子関係 J
渡邊恵子
心理的 自立 と親子 関係 に関す る研 究
学男子 103名
学女子 111名
校男子 76名
子 関係 を父母別 に分析 する。
目 的 】青年の自立的行動・自立
調査内容】
質問紙調査。①生活身辺行動12項 目,② 自立の自己認知 (自 立意識)7項
目,③ 自己の性の受容9項 目,④ 性役割観9項 目,⑤ 自立意欲7項 目,⑥ 親と
の関係 (父・母別)各 22項 目,⑦ 友人関係・勉学関係28項 目および属性。
大学男子 58名
大学女子 123名
計 562名
「母親による子どもの 自立の受
容―青年期 の子どもとのコミュ
ニケーションをめぐって― 」
目
「母子間のコミュニケーション量は,男 子青年よりも女子青年の方が多い」
的】
「母子間コミュニケーションを母子共に多いと感じている群の母親ほど子ども
の自立を受容している」の2点 について検討する。さらにSCTを 用いて,子 ども
の 自立の受容度 の高い母親と低い母親 のアイデンティティのあり方や子ども
の自立に対する意識について検討する。
,
講閉 辱
撃
懸 :鋪
行畠i読筆
「SCT(子 ど の
長崎千夏
受容尺度J,④
もの」
「精神的 自立と家庭環境」
大女子 1年 生
舜畿
l`
3幣 触
も 自立に関するものキアイデンティティに関する
目的】
え
子
患
尾
与蠣
墓
鼻
尋
紀朋 録
繁そ
!真発写
耕 騒の 臭
1こ
大きいものがある。よつて,家 庭環境と精神的自立と 関連を明らかにする。
赤津純子
質問紙調査。本人の性格 :① YGイ L格 検査の下位項 目12側 面,② EPPS性 格
調査内容】
検査の下位項 目15側 面,③ アイデンアィティの確立,基 礎に関する項 目2側
面 (下 山,1992),④ 結婚と仕事について:筆 者作成3項 目,⑤ 社会的関心・
自立的な生活意識 :筆 者作成5項 目,⑥ 親の養育態度 :TK式 診断的新規子
関係診断テストの下位項 目(干 渉,心 配,溺 愛,矛 盾)と P C R5側 面,⑦家族
機能測定に関する家族の疑集性と適応性に関する項目2XRl面 (草 田・岡堂
1993),① 日常生活について:筆 者作成2項 目
,
「青年期における心理的 自立
(Ⅲ )― 青年 の心理 的 自立に及
ぼす家族機能の影響 ―J
大学男子92名
大学女子237名
母親 140名
父親 H5名
高坂康雅
戸 田弘二
「ポスト青年期の親子関係意
「自立」の関係
識 :「 良好さ」と
米村千代
い理的 自
中で徐 々に獲得されていくものである,特 に親子 関係 ,家 族関係がサ
立の獲得にとって重要な基盤と考えられる。よつて,青 年・母親・父親 の家族
認知機能と青年 の心理的 自立の獲得との関連を検討する。
調査内容】質問紙調査。大学生用質問紙は,① 心理的 自立尺度(PJS):筆 者作成,② 家
【
族機能認知尺度 (Rへ I):家 族アセスメントインベントリー (西 出,1993)。 母親・
父親用質問紙は,学 生用の②と同じ。
大人になる"過 程としてのポスト青年期 の親子関
青年期と成人期 の間にある“
係の良好さと自立意識との関連について考察する。
醐査
閉冨
含
ら
碗
駅
賛
雲
翻
馨
縮
訪翌
辮 詠ついて ,撃
の
の
由に書いてくださいJ,50
は就職前
/後 規子関係 変化などに
,自
才代 :「 親子関係およびあなた自身のことについて,自 由に書いてください」
渡邊 (1992)は ,自 立の 自己認知 につい て,父・
母 との絆 。依存 の 関係 を分 析 して い る。その結
成人 になる と,男 女 ともに精神 的 自立 の各側
面 のバ ラ ンス が獲得 され ,人 格 の統合 が行 われ
果 ,女 子 の母 との 関係 を除 き中学か ら高校 は絆・
て い く傾 向 にあった。 また,親 か らの分離 と親
依存 の 関係 は強 くな く,高 校 か ら大学 にか けて
との信頼 関係 の確 立の側 面 との差が な くな る傾
向 にあ った ことか ら,自 立 とは,親 とのア ンビ
強 くな ってい くこ とが 明 らか になった。
福 島 (1995)も ,心 理的 自立 の発達的傾 向に
つい て分析 して い る。その結果 ,中 学 生 は,親
には頼 らず ,親 か ら自立 して い るつ も りで も
,
自己 の主体性 や 自分 で判断 し実行す る とい った
バ レン トな状態か ら開放 され 自由にな ることで
もあるだろうと考えられた。全体的には,女 子
は男子 に比べて精神的自立の獲得時期がやや遅
いことが明らかになった。
男女別 の心理的 自立 の獲得過程 をみ る と,男
面 ではそれほ ど 自立 して い ない とい える。
高校 生 の男子 は,親 か ら独 立 した存在 であ り
子 は, まず親か ら分離 し,親 と 自分 は異 なる存
たい と思 って い て も,独 立 の意識 のみが先行 し
在 で あ るこ とが意識 され る。その うえで, 自分
親離 れ しよう ともがいてい る段階である とい え
る。一方,女 子 は,親 との信頼関係が強い傾向
の意見 や将来性 に関す る具体 的な確 立が な され
にあった9
く。 一 方 ,女 子 では,親 か らの独立の意識 はや
大学生 は, 自己 の主体性 の確 立はまだ高 い レ
ベ ルにはないが ,判 断性 に関 しては比較的自立
や 高 まるが ,す ぐにそれ と平 行 して親 との 和
解 ,信 頼 関係 の確 立が なされ る。そ して,親 と
してい る傾向にあった。
の 暖 か い相 互作用の信頼 関係 を通 して, 自己 の
,
て い き,親 との 自立 した関係が再構 成 されて い
-126-
青年期 の心理 的 自立 に関す る国内文献 レビュー
自主性 を確 立 してい く。渡邊 (1992)の 研究 で
も同様 に, 自立意識 の獲得 に性差がみ られ,男
子 は年齢 が進むにつ れて自立意識が高 まってい
くのに対 し,女 子 はそ うではないことが明 らか
になって い る。
この よ うに,精 神的自立 の発達的様相 に男女
差が示 された。 これについて福 島 (1992)は
「 日本で は,女 性 に対す る女性役割へ の期待 は
,
依然 として強 く,社 会的にはあ くまで女 である
ことの要 求が根強 く存在す る。女子が 自立 し
,
identityを 形成す る上で,ス テ レオ タイプ的社
会規範が障害 となってい る可能性が充分考 えら
れる」 と述べ てい る。
高坂 ・戸 田 (2006)も ,青 年期 における心理
的 自立 の発達 的変化 につい て男女別 に検討 を
行 ってい る。その結果,男 子 は心理的 自立尺度
(P」 S-2)の 6下 位尺度得点すべ て にお い て,成
人にな りわず かに上昇 し始めるが,中 学 か ら成
人の どの年代 において も大 きな変化 はみ られな
かった。 一方女子 は,「 将来志向」「価値判断・
が,強 い関係 ではない。父へ の反抗 は,中 学か
ら大学 にかけてあまりな く,年 齢 が進んで も変
化がない。父へ の 自己主張は,中 学 ・高校 では
うま くで きないが,大 学 では少 しで きるように
なる。中学か ら大学 までいずれの段階で も父 と
の絆 ・依存が強い ほど,反 抗的ではな く,父 へ
の 自己主張 はで きてい る。
息子 と母 との関係 をみると,絆 ・依存 の関係
は,父 に対す る関係 と同 じ傾 向 を示 してい る。
母へ の反抗 は,全 体的 に弱 い。中学 ・高校 で も
あまり反抗的でな く,大 学 になるとさらに反抗
の度合 いは弱 くなる。母へ の 自己主張 も父に対
して と同様 の結果 を示 してい る。
娘 と父 との関係 をみると,絆・依存 の関係 は
,
中学 ・高校 では弱 く,大 学 になると強 まる。父
へ の反抗 は,い ずれの時期 もあま り反抗的では
ないが,年 齢 が進むにつ れて,反 抗 の度合 い は
弱 くなる。高校 ・大学 では,父 との絆 ・依存が
強 い ものほど,父 に対 して自己主張がで き,反
抗的でないとい える。
子 は高校 生が得点上 昇 の転換期 となって いた。
娘 と母 との関係 をみると,絆・依存 の関係 は
中学か らやや強い傾向があ り,大 学 でさらに顕
著 に強 くなる。母へ の反抗 は,中 学 の時か らあ
福 島 (1992)と 同 じように,心 理的 自立獲得過
程 に男女 の違 いがある ことが明 らかになった。
まり反抗的ではな く,大 学 になると明 らかに反
抗 の度合 い は弱 くなる。母 に封す る自己主張 は
これ らについ て高坂 ・戸 田 (2006)は ,「 自立
す るとい う課題 がそ もそも性役割期待 における
中学 の時で もかな り出来 てい るが ,特 に大学 で
顕著 に出来るようになる。母 との絆 。依存が強
男性的な課題 であることか ら,男 子 と女子 では
心理的 自立が異なった発達的変化 を示 している
い ものほど,母 に対 して 自己主張が で き,反 抗
もの と思 われる。男子 は社会に適応 しやす いが
ゆえに心理的自立 を獲得す る機会がな く,い つ
2)親 子関係 と性差
「社会的視野」におい て,年 代が
実行」「責任」
上が るにつ れ,得 点が上昇 してい た。 また,女
まで も中学生 と同程度 の ままであ り,女 子 は
女性 らしさと男性的な自立 の折 り合 い 。統合が
,
求 め られ,高 校生を大 きな転換期 として,心 理
的自立獲得へ の取 り組みがなされ るようになる
のだろ う」 と述べ てい る。
,
,
的でないこ とを明 らかにしてい る。
父親・母親 に対す る依存 ・絆,反 抗 , 自己主
張 を男女別にみる と,明 らかに娘 と母の絆 ・依
存 が,他 の関係 に比べ て強 い とい う性差 が見 い
だされている(渡 邊,1995)。 また,長 崎 (2000)も
,
母子間 コ ミュニケー ションにお け る 差 につい
て検討 した結果,女 子青年 の方が男子青年より
母子間の コ ミュニケー ションが有意 に高 いこと
J陛
,
4.心 理 的 自立 と親子関係
心理的 自立 と親子関係 に関す る研究 の 目的
調査 の対象 ・内容 は表2に 示 した。
を明 らか に して い る。「対等 の会話」,「 反抗」
,
1)親 子 関係 と発達差
渡邊 (1995)は ,親 子関係 を絆・依存 ,反 抗
自己主張 の関係 で分析 してい る。その結果,息
子 と父 との 関係 をみると,絆 ・依存 の 関係 は
,
,
中学 ・高校 では低 く,大 学 でやや上昇 してい る
因子 にお いて は性差が見 られなかったが,「 楽
しい会話」,「 悩みの開示」因子 は女子青年の方
が男子青年 よ り有意に高かった。長崎 (2000)は
,
「笑 い話や悩み事 に関す る話 を母親 に多 くもち
かける女子青年 の姿が浮 き彫 りになった」 と述
べ てい る。娘 と母 との関係 は,他 の関係 に比べ
-127-
小 田美紀子
表3
タイトル・研究者名
「大学生の自立の行動・意識・
意欲― 自宅通学と自宅外通学
の比較J
大学 1∼ 4年 生
渡邊恵子
平塚知恵
「短大生における一人暮らしと
心理的 自立―拓殖大学北海
道短期大学学生のアンケート
調査から―J
自立 と居住環境 に関す る研究
が,親 の有り難さを知り自立的であるとか,現 在の大学生には一人暮らしこそ
が必要であるという教員もいるが,こ の問題は実証的にはほとんど取り上げら
れていない。そこで,生 活身辺的・経済的・精神的 自立に関して,自 宅通学
生と自宅外通学生との差異を明らかにする。
質問紙調査。精神的自立意識・意欲 :① 主体的自己2項 目(将 来目標 ,自 カ
調査内容】
解決),② 判断責任2項 目(自 力判断・感情処理),③ 心理的分離2項 目(自
活能力・親への甘え離脱),④ 自立認知6項 目(自 信・自力充実・打ち込める・
広い視野・精神的自立・一人前)の 4側 面計12項 目(福 島,1922'渡 邊1992)
第二次心理的離乳の様相を青早期の心理的 自立として捉え,一 人暮らしと
青年期の心理的 自立との因呆関係 について検討する。具体的には,過 去と
現在 の心理的 自立,一 人暮らしの希望の有無,暮 らしに対するlHl足 感につ
いて,一 人暮らしをしている学生とそうでない学生を比較することにより,一 人
暮らしと心理的 自立の因果関係 について検討する。
大学1年 生 162名
城谷ゆかり
―
帥帥刹霧雲象臀講侍
曇
議曽
諧目
期ど
僻
fi彰 留
問う,② 現在の心理的 自立度 :独 立意識尺度20項 目働田
藤・高木,1980)
強 い傾向にあ る とい える。
親 の矛盾 した養育態度 は,子 どもの心 を不安定
3)親 子関係 と父母差
渡邊 (1995)は ,息 子 ,娘 と もに父 よ り母 と
にさせ る。家族 の結束が強 い ことは,そ れ を背
景 に安定 した気持 ちや 自信 を持 つ ことにつ なが
の絆 ・依存が強 い こ とを明 らか に し, この結果
る。色 々 な場面 に応 じて適応 的に機能,役 割 な
は,「 現代 の青年 の 親子 関係 にお け る父 親 との
関係 の希 薄化 を支持 して い る」 と述 べ て い る。
どを変化 させ ることがで きる家族 では, 自分 を
主張す ること,耐 える粘 り強 さ,変 化 へ の対応
犬塚 (2002)の 研 究 にお い て も,国 際比較 した
結果 , 日本 の学 生 の特徴 として,父 へ の無 関心
な どが 育 って くる。一 方 ,適 応性 の低 い家族 で
が存在す ることを明 らか に して い る。
くい。
は,家 を出て,独 立 しようとい う意欲が育 ちに
4)自 立 と親子 関係
高坂 ・戸 田 (2005)は ,青 年 が家族機能 を肯
長崎 (2000)の 研 究 による と,多 くの母親 は
定的 に認知 して い るほ ど青年 の心理 的 自立が高
子 どもに対 し,子 ども 自身 の幸 せ な人生 を生 き
い こと,両 親 の家族機能 に対す る肯定的な認知
てほ しい と願 って い る。そのために,子 どもの
自立 の受 け入 れが高 い母親 は,子 どもへ の干渉
は,青 年 の家族機 能認知 を媒介 として,間 接 的
をひかえようとする意識的な努力 と,た とえ子
どもがつ まずいた として も自分で乗 り越 えてい
か に した。
くだろ うとい う信頼感 をもってい る。一方 ,子
どもの自立の受け入れが低 い母親 は,母 親 とし
どもの 自立 を促す要 因を明 らかに して い る。就
職や離家 ,進 学 といったイベ ン トは,親 子 関係
ての 自分や妻 としての 自分 に対す る自己評価の
を好転 させ る契機 になる。特 に親 との別居 ,就
低 さを抱 えてい ることが示唆 された。
赤津 (2004)は , 自立 して積極的に社会 と関
職 は,親 との密着 的な関係 か ら離れる機会 とな
わ りを持 とうとす る者 は,家 族 の絆 が強 く,親
は一貫 した養育行動であると報告 してい る。親
親 の子離 れ を即す契機 になる。 このことに よっ
の養育態度 に矛盾が少 ない と感 じて い る者 は
自律的な生活が出来 ている。 親か ら溺愛 されて
,
い ると感 じてい る者 は,遅 めに結婚 したい と考
えてい る者が多 い。 これについて,赤 津 (2004)
は,「 この点は,パ ラサイ トの一 因 になって い
るとも考えられる」 と述べ てい る。親の養育態
度に矛盾が多 いと感 じてい る者 は, 自律 してい
る者 とだ らしない者 と 2極 に分かれる。 また
,
に青 年 の心理的 自立 に関わって い ることを明 ら
米村 (2008)は ,親 子 関係 を良好 に保 ち,子
り,青 年 の「 自立」 の 意識 を育 て る と同時 に
,
て親 との関係が良好 になったとい う意識 が芽生
える。親子関係 を良好 に保 つ ためには,親 と子
どもがお互 い を大 人 として認識 し,そ れ に見
合 った距離 をとれるか どうかが重要である。特
に空間的分離が親子関係 に持つ意味は大 きいこ
とを米ホ
すは明 らかに してい る。
5,自 立 と居住環境
自立 と住居環境 に関す る研究の 目的,調 査の
対象 ・内容 は表 3に 示 した。
- 128-
青年期 の心理的自立に関する国内文献 レビュー
表4
タイトル・研究者名
「家族機能 と非行少年 の 自立
の関連」
心理的 自立 と社会 的不適応 に関す る研 究
・男子高校生
214名 (一 般群 )
・少年鑑別所収容
男子少年
福 田順 一
家族機能と非行少年 の 自立課題について検討する。
「拘
調査内容】質問紙調査。家族機能に関する尺度 :「 情緒的結合性J「 社会的活動性」
【
束性」(筆 者独 自で作成)。
「ひきこもりの心理特性と精神
的 自立との関連性 ―高校生の
意識「
JFB査 結果 の分析から― J
「ひきこもりの心理特性」と精ネ
申的 自立との関連性について検討・分析する。
両者に関連性があるという仮説 の検証を行い,そ の結果をもとに青年期の心
理的 自立について考察する。
調査内容】質問紙調査。①心理的自立 :職 業観・勤労観及び対人関係に関する意識調
【
査,② ひきこもりの心理特性 :「「神経症的傾向J,「 内向的傾向」
,「 対人不安
傾向Jを 測る調査。
山本健治
一人暮 らしの希望がないのに一人暮 らしをし
青年 の 自立 に とって親 か らの感情 的離脱や別
居が重要 とす る立場 の研 究者が多 くい る。 青年
W大
期 と成人期 の 間 にあ る
W過
人 になる
程 として
ている学 生 は,独 立性得点が低 くな っていた。
この ことについて城谷 (2001)イ ま,「 望 まざる
のポス ト青年期 の研 究 で は,離 家 の遅れ を自立
一人暮 らしを強要することは,独 立性 にとって
の遅れ と見 る視点が代 表的 であった。 若者 は成
人 した ら離家 すべ きであ り,そ れが 自立だ とい
はプラス に働 くとは限 らない」 と述 べ てい る。
渡邊 ・平塚 (1997)の 研究 目的の背景 となって
う規範 的前提 が存在 して い た とい える (米 村
いた,現 代 の大学生 を自立 させ るために「現在
,
2008)。
渡邊 ・平塚 (1997)は , 自立 につい て, 自宅
の大学生 には一人暮 らしこそ必要である」 とい
う考 えは,一 概 に言えない とい う結論 に結 びつ
通学生 と 自宅外通学 生 を比較研 究 して い る。そ
く。
の結果 ,男 女 とも自立 行動 は生 活形態 によ り異
自宅生 の場合 をみると, 自宅生活に満足 して
な り,身 辺的行動 で は 自宅外通学生 の方が ,経
い る学生 は,「 (一 人暮 らしだと)金 銭的,時 間
済 的行動 で は 自宅通 学 生 の 方 が 自立 的で あ っ
的にツライ」,「 親 と一緒 だと安心」な ど, 自宅
た。 しか し, 自立意識や 自立意欲 は生活形態 と
生活が楽 だか ら,今 のままでいたい とい う学生
は関連が なか った。 男子 では 自立 的行動 は 自立
意識 に, さ らに 自立意識 は 自立意欲 に結 び付 い
が多かった。一方,一 人暮 らしの希望 を持って
いた学生 は 自宅生活に不安 を持 っている者が多
て いた。 一 方 ,女 子 で は 自立的行動 は直接 自立
く,「 何 か と自立 したい け ど近 くに親が い ると
意識や 自立意 欲 と結 び付 いて はい なかった。
どうして もあまえて しまう」な ど, 自立欲求が
伺 えた (城 谷 ,2001)。 このことは,米村 (2006)
城谷 (2001)も 一 人暮 らしの希 望 の有無 ,暮
らしに対する満足感か ら,一 人暮 らしと自宅生の
心理 的 自立 につい て比較研 究 して い る。その結
果 ,一 人暮 らしの希 望 を持 って い た学 生 は高校
時代 に高 い心理 的 自立 を持 ち,現 在 の心理 的 自
立度 も高 く,反 抗・内的混乱 は低 い状態にあった。
一 人暮 らしの希 望理 由 は,「 自立 したか った」
,
「 親元か ら離 れたか った 」,「 自由な時 間が欲 し
も同 じような事例 をとお して紹介 してい る。そ
の事例 は,「 同居 してい る =精 神的な自立がで
きてい ない」 とい う感情 を吐露 し,同 居 に肯定
的な親や,そ の親へ の愛へ の感謝 によって,現
状 を自身で納得 しようとしてい る,親 の愛情 と
自身の 自立 との葛藤が顕著 に表れてい る事例 で
あ った。
6.自 立 と進路・職業選択
か った」。一 方 ,一 人暮 らしを希望 しない理 由は
,
「家事 な どが面 倒 くさい」が最 も多 く,そ の他 は
,
「家族 と暮 らす こ とに よって心理 的 に安 らぎが
得 られる」 な どであ った。
一 人暮 らしの希望 を持 ち,実 際 に一 人暮 らし
を して い る者 は,一 人暮 らしに よ り,「 大 人 に
藤 岡・須藤 (1992)は ,「 女子高校生 の進路
意識 についての研究」において,進 学希望の理
由 としては,「 知識や技術 の習得」,「 資格 の取
得」,「 就職時 の有利 さ」等が重要視 され,就 職
なった」,「 親 の あ りが たみが分か った」 な どの
希望 の理 由 としては,「 社会人 としての早期 自
立」が重要視 されていた ことや社会 に出ること
意見が多 か った。
は独立 ・ 自立す ることや大人になることと捉 え
-129-
月ヽ田美紀子
表5
自立 にお け る文化 ・ 国際比較 に関す る研 究
タイトル・研究者名
発表今
対象
「学生の 自立意識と親子関
・中国
係 ―四カ国の大学生比較―」
湖南大学生169名
。日本
犬塚
究 目的・
【目
的 】大学生の 自立意識と親子関係について,四 カ国の大学生を比較することによ
り明らかにする。
研究会が作成した年齢等の基礎情報 ,②
千葉大学生325名 【
調査内容】質問紙調査。①「青年と家族文化」
自立意識・親子関係に関する32項 目,③ 親子関係 の質問内容 :「 父親,母 親
・アメリカ
い身の理由で
と日常的にどのような関係として接しているかJ「 父親,母 親が′
アラバマ大学生
困難な状況に陥つた場合には,ど のよう1こ 対応したいと思つているのか」
177名
・イギリス
オンクスブルックス
大学生29名
計 727名
「青年 の 自立と適応との関連に 2006 ・日本人大学生
関する文化比較」
男性26名
山田裕子
女性56名
計 82名
カ人大学生
'ア メリ
男性49名
女性 105名
計 154名
的 】青年の自立と適応との関連について,文 化における差異を明らかにする。
質問紙調査。①行動的自立尺度 :自 立行動予定表19項 目
調査内容〕
【
(Fddman&Rosellth∬ ,1990),② 情緒的自立尺度 :情 緒的自立20項 目
(Stdnber談 罰 erberg,1986),③ 適応の尺度 :自 己認識プロフィール6項 目
(Neemann&Httter,1986),④ うつ尺度20項 目(Ra』 o転 1977),⑤ 問題行動
尺度8項 目(Feldman&Rosenthal)
ていることを明 らかにしてい る。 これは,米 村
(2008)の 研究 にお いて も20才 代 の青年 にお い
う意識 が薄 い。 また ,信 頼 で きる先生や仲 の良
い友 人,困 った ことを相談 で きる存在が い ない
て「働 くことを自立 と捉 える」 ことが示 されて
い る。 また,進 学希望 の理 由 として学年 の進行
人が多 い (山 本 ,2008)。
と共 に「社会 に出た くないか ら」が増加 してお
り,モ ラ トリアム的志向を持 つ生徒が少なか ら
との 関連 を非行群 と一般群 を比較す る ことによ
福 田 (1991)は
,家 族機能 と非行少年 の 自立
ず存在す る ことが明 らかになって い る (藤 岡
り分 析 して い るb家 族機能 の特徴 にお い て,非
行群 は,家 族 の病気 ・事故 や親 の離 婚 ,貧 困
1992)。
低文化 とい った家庭負 因に よ り,一 般群 に比 べ
,
7.心 理 的 自立 と社会的不適応
(ひ きこも り・
,
て家族機能が混沌 としてお り,連 帯や結 びつ き
を家族以外 の人 に求 めや す い状況 にある。家族
非行 )
心 理 的 自立 と社 会 的適応 に関す る研 究 の 目
的 ,調 査 の対象 ,内 容 は表 4に 示 した。
機能 につい て具体 的 にみ る と, 3つ の機能 にお
現在 ,青 年 の フリー ター志 向 の広が りや ニー
一 般群 よ りも情緒 的結合性 と拘束性 が強 く,社
と (無 業者 )の 増加 ,ま た,就 職 して も早期 に
会的活動性が弱 く認知 されて い る。 2)非 行群
離職 して しまうな ど,学 業か ら職業へ の移行 に
関 わる課題 は深刻 になってい る。 山本 (2008)
は,一 般群 よ りも家族 間の ま とま りを感 じ,家
族 を理想化す る傾 向が あるが ,同 時 に権威 や秩
は,心 理的 自立尺度の一つ として職業観 ・勤労
序が強調 されて,民 主的家族運営が妨 げ られる。
観 をあげてい る。働 くことを自立 と捉 える こと
は,藤 岡・須藤 (1992),米 村 (2008)の 研 究
3)経 済的,文 化 的理 由によ り家族 の社会 的活
い て両群 に有意差が認 め られた。 1)非 行群 は
,
動が不活発 で ある。
性 を表す「神経症的傾向」,「 内向的傾向」,「 対
非行群 の 中 で も特 にシ ンナ ー耽溺者 と暴力 団
所属者 の家族機能 につい てみ る と,両 者共 に家
人不安傾向」がある青年は,学 業 か ら職業生活
に移 行す ること自体に対す る漠然 とした不安が
庭 の情緒 的結合性 は弱 く,拘 束性 は強 い。両者
の特徴 は,シ ンナ ー耽溺者 の方が よ り拘束性が
あ った り,職 業選択に慎重 にな りす ぎて逆 に不
安 に陥った り, 自分に自信がな く職業選択 の前
強 く,社 会的活動性 は低 い,一 方暴力団所属者
で立 ち止 まって しまうことが起 こっている可能
シ ンナ ー耽溺者 は, 自立 につい ての不安 ,無
性があ る。親子関係 を含 む人間関係 の特徴 とし
力感が強 く,シ ンナ ー は,そ の よ うな不安 ,無
ては,「 内向的傾向」 にある者で は,親 と遊 ん
だ記憶が乏 しく,家 族か ら信頼 されてい るとい
力感 を忘れる手段 として用 い られ る と同時 に他
で も明 らかになってい る。ひきこも りの心理特
は,比 較的社会 的活動性が高 い。
者や家族 に対 し, 自分が無力 で救助 を必要 とし
-130-
青年期 の心理的 自立 に関す る国内文献 レビュー
て い る とい うメ ッセ ー ジ と しての意 味 を もつ 。
ま り,心 理的 自立 の尺度 開発 ,社 会 ・ 時代 的な
一 方 ,非 行少年が暴力 団に所属す る促 進要 因 と
状況 に 関連 させ た研 究 内容 が展 開 されて い た。
しては,家 族 に対す る否定 的感情 や家族か らの
青年期 の心理的 自立 を考 える上で,そ の背景 に
あ る社会 ・ 時代 的な状況 ,文 化 ,性 差 ,居 住環
早期 自立欲求があげ られて い る。
8.自 立 における文化・ 国際比較
自立おける文化 。国際比較 に関す る研 究 の 目
的,調 査 の対象 ・内容 は表 5に 示 した。
犬塚 (2002)は ,大 学 生 の 自立意識 と親子 関
係 につ い て,国 際比較 を して い る。 そ の結果
,
中国 の湖南大学生 は,両 親 を大変尊敬 し,父 親
境 は重 要 な要素であ る と考 え られた。それぞれ
の 要素 と心 理 的 自立 との 関連 につ い て 考察 す
る。
1.社 会・ 時代的背景 との関連
青年 期 の社 会 問題 と して,1960年 代 か らス
チ ュ ー デ ン ト・ ア パ シ ー 。
(学 生 無 気 力 症 ),
は厳格 な存在 として,母 親 は良 き理解 者 として
親子 関係が構成 されて い た。両 親 へ の 思 いや り
年代 よ り社会的 ひ きこ も りが注 目され,そ れぞ
は大変強 い。 これ と対照的 なのが 日本 の千葉大
れの時期 に関連 した研 究が取 り組み始 め られて
学生 であった。千葉大学生 は,父 へ の尊敬 ,母
との親 しい 関係 と併 せ て,父 へ の無 関心 ,母 と
いた。 このような社会的不適応 には,心 理的 自
の対 立 関係が存在 し,全 体 としての思 いや りの
気持 ち も相対的には弱か った。
自立意 識 につい ては,大 人である こ とを 自覚
す る時期 と理 由につい てみ ると,湖 南大学生 は
18オ お よび18オ 以下で ,半 数が周 囲へ の責任 を
,
あげ ている。千葉大学生 は,19∼ 23才 で ,ア ラ
バ マ大学生 とオ ックスブル ックス大 学 生 は,18
オ以下 で, 3大 学 は周 囲へ の責任 感 と職業 をあ
1980年 代後半 よ リパ ラサ イ ト・ シングル,1990
立に関する深刻な葛藤が背景 に存在す ると考 え
られて い ることか ら (福 田1991),今 後 も青年
期 にお ける新 たな社会 問題が生 じた際には,心
理的自立 をキー ワー ドに して研究 に取 り組む必
要があ ると考 えられる。
福 島 (1992)と 渡邊 (1992)が 行 った 自立 と
性差 の研究 は,時 代的背景 と関連が深 い と考 え
られる。両者が研究を始めた1992年 は,女 性 の
大学進学率が上昇 しは じめた時期である。2008
げ ていた。
年 の文部科 学省「学校 基 本調査 」 に よる と
山田 (2006)は ,ア メ リカ と日本 の 自立の差
異 につ い て検討 した。その結果 ,行 動 的 自立 に
つ いて, 自立行動欲求 ・ 自立行動 ともに, 日本
な り,短
このよ
の23.7%を
上回った。
期大学進学率
うな
,社
つい
の
ての価値観
状況 もとで,性 役割 に
会
人群 よ りもアメ リカ人群 の方が高か った。 つ ま
的規範 も多様化 し,社 会的役割 として女性 も男
リア メ リカ人の方が , 日本人 よ りも早 く自立行
性 と同等 の期待が課せ られる傾向になった。 し
動 に対す る欲 求や実際 の行動 が起 こってい る。
か し,一 方 で依然 として女性 に対す る伝統的女
性役割へ の期待 は強 く, 自己の性 にあった適切
,
これ らに対 し,山 田 (2006)は ,「 個 人 主 義 で
1996年
に女性の大 学進学率 が24.60/0と
それに基 づい た行動が重要視 され ,い わゆる『 自
な行動様式 を獲得 してい く青年期 とい う重要な
時期 にお いて,女 性 は,「 女性 として」 のあ り
立 す ること』 が文化 的 に も奨励 されて い るのに
方 と「人 間 として」 の あ り方 の間で葛藤するこ
対 し, 日本では,他 者 との 関係や社会 における
ととな り,い わゆる心理的 自立の獲得が男性 よ
地位 を重要 と考 えるため,自 立 を求 め なが らも
り困難 な状況 にあった (福 島,1992)。 この点
においては,今 後 の社会的 。時代的状況 の変化
あるア メ リカでは,自 分 の 内にある志 向や感情
,
,
自分 の欲求やそれ に基 づ く行動 は抑制 される と
い った パ ラ ドックスが 考 え られ る。」 と述 べ
,
個 人主義文化 であるアメ リカと集 団主 義文化 で
ある 日本 の文化 による影響 を指摘 して い る。
に伴 い,女 性 に期待 される役割 も変化 し,女 性
の 自立獲得 の困難 さも改善 されるのではないか
と考え られる。すでに福 島 (1992)や 渡邊 (1992)
が研究に取 り組み始めてか ら17年 経過 した現在
Ⅳ .考 察
は,女 性 の心理的 自立 は,以 前 よ り獲得 されや
す い状況になっていると考 えられる。
心理的自立の研究は, 自立の概念研究か ら始
-131-
2.文 化的背景 との関連
小 田美紀子
心理的 自立 に関す る最近 の研 究 にお いて注 目
されて い るのが ,文 化 的背景 の影響 につい てで
関係 を保 ちつつ 自立 を確立 して い く点 が特徴 的
である。
4.居 住環境 との関連
ある。
やす い文化 と獲得 され に くい文化があ ることが
城谷 (2001)は ,「 一 人暮 らしの希 望 を持 つ
こ とが ,い 理的 自立 を高めるのか ,心 理的 自立 の
,ア メ
高 ま りが 一 人暮 らしの希望 を産む のか,そ の 因
リカ と日本 を比較 した結果 ,個 人主義文化 で あ
るアメ リカの方 が早期 に 自立 に対す る欲 求や実
果 関係 は明 らかに出来 なか った, しか し,心 理
的 自立 の 高 ま りが 一 人暮 らしの希望 を産む と考
際 の行動 が起 こって い る こ とを明 らか に した。
そ の理 由 と して文化 の違 い を取 りあげ て い る。
えた方が説得力 はあるよ うに考 え られた」 と述
べ て い る。 この考 えは,パ ラサ イ ト・ シングル
山田 (2006)は ,「 個 人主義文化 は,他 者 か ら
独 立 し, 自分 自身 のユ ニー クな個性 を見 出 して
論 か ら検討 して も妥当である と考 え られる。心
理 的 自立 の 高 ま りが 一 人暮 らしの希望 を産 み
い くことが大人 になるため の 目標 であるのに対
実際 に一 人暮 らしをす る ことによって,親 へ の
して,集 団主義文化 の 日本で は,個 人 の欲求や
感謝 が産 まれ,心 理 的 自立が 促 され る。 また
主張 を抑 えて,所 属 して い る集 団 にお い て和 を
親 も子離す る機会 とな り,親 自身が,い 理的 に 自
保 てるようになる ことが一人前 の大人になるた
めの重要 な条件 と見 なされる」 と述べ て い る。
立す る こ とに よ り,良 好 な親子 関係 が築 かれ
また,国 外 の研究 の中で も,あ る人の主要な文
化的背景 が個人主義文化か集団主義文化 か とい
る。子 どもが 一 人暮 らしをす ることは,親 子 の
近年 ,心 理 的 自立 に とって,そ れが獲得 され
明 らか にされつつ あ る。 山田 (2006)は
うことが,そ の人 の 自立に対す る年齢的な期待
を大 きく左右する ことや,個 人 よりも集団を重
,
,
,
ます ます子 どもの心理的 自立 を促 す と考 え られ
間 に空 間的 に も精神 的 に も適 度 な距離 が 出来
そ の こ とが お互 い の 自立 に役 立 つ と考 え られ
,
る。
ん じるアジアの青年 とその親 は,個 人の 自立を
奨励す る欧米文化 の人 々 に比べ て, よ り遅 い年
しか し, ここで気 をつ けた いの が ,心 理的 自
立 を促 す ために,す べ ての青年 に一 人暮 らしを
齢 か ら自立的な行動 を取 り始 めることを明 らか
にしている。
勧 奨す べ きで はない とい うことで ある。 この こ
以上 のことか ら,心 理的自立 を検討する際に
は,そ の国や社会 ,地 域 の中で大人 として何が
とは,城 谷 (2001)の 研 究 に よ り,一 人暮 らし
の 希 望 が な い の に一 人暮 らしを して い る学 生
は,独 立性得点 が逆 に低 くな って い た とい う結
ることが重要であると考 えられる。
果か ら明 らか に言 える ことで ある。 この 点か ら
考 える と,心 理的 自立 をスムー ス に獲得す るた
3.性 差 との関連
め には,一 人暮 らしの機会が増 える大学生 まで
求 め られてい るのかなど,文 化的背景 を考慮す
心理的 自立 に関す る性差は,心 理的自立獲得
の困難 さ,獲 得過程 ,獲 得時期 に見 られた。
心理的 自立獲得 の困難 さについては,社 会 ・
時代的背景 との関連 で も述べ たように,性 役割
ふ理的自立 の獲
期待 に伴 うもので,女 性 の方が′
にい か に心理的 自立 を高め ることがで きるかが
重要 と考 え られ る。大学生 まで に心理的 自立 を
高 め る上 で重 要 なのは親子 関係 である。次 に親
子 関係 につい て考察す る。
5.親 子関係 につい て
得 が難 しい と考 えられた。 また, 自立獲得 の時
期 につい ても,性 役割期待 が関係 してい ると考
青年 の心理 的 自立 を促す良好 な親子関係 を築
くため に必要 な条件 の一つ は,親 自身 の心理 的
えられる。男性 は 自立意識が高 く,実 際 の 自立
獲得時期 も早 いことが明 らかになってい る。
自立 であ る と考 え られ る。長崎 (2000)1ま
心理的 自立の獲得過程 の性差 については,男
性 は,親 へ の情緒的な依存 を断ち切 って 自立 し
てい くが,女 性 は親へ の情緒的結 びつ きを保 ち
なが ら自立 を して い くとい う特徴 が明 らか に
なっている。特 に女性 は,母 親 との絆 ・依存 の
,母
親 自身 の 親 または妻 としての 自己評価 が親子 関
係 に影響 し,子 どもの 自立 に関連す ることを明
らか に して い る。 また,榎 本 (2005)は ,ひ き
こ も りの青年がツ
心理的 自立 を し始 めた きっか け
が ,母 親 自身 の仕事 を持 つ ことによって生 じた
心理 的 ・社会 的 自立が影響 し,母 子密着 の 関係
-132-
青年期 の心理 的 自立 に 関す る国内文献 レビュー
か ら両者 に適度な距離感が生 じた ことであ ると
い う事例 を紹介 してい る。以上のことか ら,青
意義 ,課 題 は下記 の とお りで あ る。
1,心 理 的 自立は,文 化 や社会 ・時代 に応 じて
年 の心理的 自立には,母 親 自身の心理 的 自立や
自己肯定感が重要である といえる。長崎 (2000)
求 め られる大人像 に強 く影響 を受 ける と考 え
も「母親 には,子 どもを自立 させ るために,良
い意味での 自分中心 の人生 を楽 しむ姿勢が重要
や尺度の開発 は,時 代 にあわせて ,今 後 も検
られた。 よって,心 理的 自立 の概念 の 明確化
討 され続 け ることが必 要 である。
2.青 年期 における新 たな社会 問題 が生 じた際
ではない だろ うか。 自分 の良い面 も積極的 に評
価 で き,幸 せ を感 じ取 る前向きな生 き方が女性
にも求め られると言えるだろ う」と述べ てい る。
には,心 理的 自立 をキ ー ワー ドに して冴 究 に
取 り組 む ことによ り,解 決 の糸 口が見 出せ る
長崎 (2000),榎 本 (2005)は ,い ず れ も子 ど
もにとって影響力 の強い母親 の心理的 自立 の必
3,心 理的 自立 を研 究す る際 には,そ の背景 に
要性 を明 らかにしてい るが,心 理的自立は,父
ある文化 ,社 会 ・時代 的な状況 ,性 差 ,居 住
親 にも必要であると考え られる。
心理的 自立 と親子関係 ・家族機能 との関連 に
環境 を充分 に考慮す ることが 求 め られる。
可能性 は大 きい。
4.心 理的 自立 に関連す る要 因 は,充 分 に解 明
つ い て は,赤 津 (2004),高 坂・ 戸 田 (2005)
の研 究 に よ り明 らか になって きて い る。 しか
されて い ない と考 え られ る。心理 的 自立 に影
し,家 族 関係 の基盤 を成す夫婦関係 に焦点をし
響 を及 ぼす と考 え られ る要 因を取 り上 げ,心
理的 自立 との 関連 につい て一つ一つ解 明され
ぼ り,そ れが青年期 の子 どもの心理的 自立に及
るこ とが今後 の研 究 に期待 され る。
ぼす影響 についての研究は見当た らなかった。
5.心 理的 自立 に関連す る要因 として,最 も重
夫婦関係 と子 どもの発達 との関連 をみた研究は
い くつかある。例 えば,菅 原 ら (2002)の 「夫
要 と考 え られる家庭環境 につい ては,家 族 関
係や親子 関係 の基盤である夫婦 関係 に焦点 を
婦 関係 と児童期 の子 ど もの抑 うつ 傾 向 との 関
連」,宇 都宮 (2004)の 「両親 の夫婦 関係 に関
あ てた研 究が必要 である。
す る認知が子 どもの 自己肯定に及 ぼす影響」な
文献
どの研究 である。
菅原 ら (2002)は ,夫 婦関係 と児童期 の子 ど
もの抑 うつ傾向 との関連について,夫 婦 間の情
緒的な絆 の あ り方が子 どもの精神的健康 に影響
してい ることを明 らかにしている。 また,宇 都
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宮 (2004)1ま ,子 どもの充実感, 自尊心 と密接
に関連 していたのは,父 親 の コ ミッ トメ ン トよ
律性尺度 の信頼性 と妥 当性 の検討 ,群 馬保
りも母親 の コ ミッ トメ ン トに関す る認知 で あ
犬塚先 (2002):学 生 の 自立意識 と親子 関係 ―
四 カ国の大学生比較 ―,千 葉大学社会文化
り,女 子青年 の 自己肯定において も同性である
母親 の コ ミッ トメ ン トの影響が大 きいことを明
らかにして い る。 いず れの研究 も,夫 婦関係が
子 どもの抑 うつ傾向や 自己肯定 に影響 を与える
健学紀要 ,25,7‐ 14.
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榎 本 和 佳 (2005):「 ひ き こ も り少 年 」 の 追 跡
研 究 一心理的 自立過程 の分析 を中心 に 一
,
ことを明 らかにしてい る。今後,心 理的 自立 と
日本女子大学 院人 間社 会研 究科 紀要 ,11,
家庭環境 との関連 を検討す る際には,家 族関係
57-70.
の基盤 を成す夫婦関係 に焦点をあてた研究が必
要 である と考 えられる。
宇都 宮 博 (2004):両 親 の 夫 婦 関係 に 関す る認
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青年期 の心理的自立 に関する国内文献 レビュー
A JapaneSe Review Of Psychological lndependence
inコ牡dolescence
MiHko ODA
Key Words and Phrases i psychologicalindependenca adolescence,re
-135‐ 一
ew
パス研究紀要』投稿規定
F島 根県立大学短期大学部出雲キャン
1.投 稿者 の資格
紀要 へ の投稿者 は,著 者 または共著者 の一人が本学 の専任教員 である こと。
ただ し,メ デ ィア ・図書委員会 が認 めた者 は この 限 りでない。
2.投 稿論文の内容 は,国 内外 を問わず他誌での発表 あるいは投稿中でない ものに限 る。
3.論 文 は,和 文または英文 とする。
4.原 稿の種類
原稿 の種類 は,[総 説],[原 著 ],[報 告],[そ の他]で あ り,そ れぞれの内容は下記 の とお
りであ る。
[総 説]そ れぞれの専 門分野 に関わる特定 のテーマ について内外 の知見 を多面的 に集め
また文献 を レビュー して,当 該テーマ について総合 的に学問的状況 を概説 し,考
,
察 した もの。
[原 著]研 究が独創 的で,オ リジナル なデー タ,資 料 に基 づい て得 られた知見や理解が示
されてお り, 目的,方 法,結 果,考 察,結 論等が明確 に論述 されている もの。
[報 告]内 容的に原著論文 には及ばないが,そ の専 門分野 の発展 に寄与す ると認 め られる
もの。
[そ の他]担 当授業科 目等 に関す る教育方法 の実践事例 などの報告 ,ま たは,そ れぞれ の専
門分野 の研究 に関す る見解 等 で,メ デイア・図書委員会が適当 と認 めた もの。
5.倫 理的配慮
人および動物 を対象 とす る研究 においては,倫 理的に配慮 され,そ の 旨が本文中 に明記 されて
い ること。
6.原 稿 の執筆要領
原稿 は原則 ワー ドプロセ ッサで作成 し,和 文 ・英文 ともにA4版 の用紙に印刷す る。
1)原 稿 の書式
(1)和 文 :横 書 きで 1行 を全角で21字 , 1頁 41行 とす る。図表 を含め24枚 以内
(2)英 文 :半 角で84字 , 1頁 41行 ,図 表 を含め12枚 以内 とす る。
なお,和 文 の場合 は原稿 2枚 が仕上が り1頁 に,英 文 の場合 は原稿 1枚 が仕上
が り1頁 に相 当す る。
2)原 稿 の構成
(1)和 文原稿
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
表 題
表題 が 2行 にわたる場合 ,い ずれ の行 もセ ン タリ ングす る。
著者名
本学 以外 の著者 の所属 は, *印 をつ けて 1頁 目の脚注 に記す。
300字 以内 の和文概要 をつ け る。
概 要
:和
ー
ー
キ ワ ド 文で5個 以内とする。
本 文
文 献 (引 用文献のみ記載する)
英 文 表 題 :英 文表題からはページを新しくし,各 単語の1字 目は大文字 とする。
(例 :The Role of Practitioners in Mental Health Care)
① 英文著者名 :英 文著者名は最初の文字のみ大文字,姓 は全て大文字にして2文 字目
-137-
編集後 記
研究紀要第 3巻 を皆さまのお手元にお届けできることになりました。2009年 をどうい う
年 だったと皆さんは振 り返 られるで しょうか。政権交代、新型インフルエ ンザの大流行、
長引 く不況など大学になんらかの影響 を与えることが目白押 しです。
紀要が教育・研究などの皆さんの成果物の発表の場 になればと考えています。お忙 しい中、
査読に協力頂いた査読者の皆さんに深謝 し、発行にあた りいろいろお手伝 い頂いたメディ
ア・図書委員会の皆さまに心よりお礼申し上げます。
査読者一覧
本年度は下記 の方 々 に査 読 をいただ きました。
名前 を付 し、感謝の意を表 します。
平野 文子
梶谷みゆき
福澤陽一郎
齋藤 茂子
三島み ど り
吉川 洋子
伊藤
松本亥智江
落合 の り子
三 島三代子
高橋恵美子
演村美和子
吾郷美奈恵
石橋
田中 芳文
山下 一也
長島 玲子
橋本
由里
吾郷ゆか り
狩野 鈴子
平井
由佳
別所
照子
智子
史恵
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要
雰33完 争 2009
2009年 12月 22日 発行
発行所 :島 根 県 立 大 学 短 期 大 学 部 出 雲 キ ャ ンパ ス
(編 集 :メ デ イア・ 図書委員会)
住所 〒693-8550島 根県出雲市西林木町151
TEL(0853)20-0200(4t)
FAX (0853)20-0201
URL httpノ /www.u‐ shimane,ac.jp
印刷所 :オ リジナル
住所 〒693-0021島 根県出雲市塩冶町267‐ 5
TEL(0853)25-3108 FAX(0853)25-0375
ISSN 1882-4382
Bunetin
Of
The University of Shilnane Junior College
Izumo Campus
Vol. 3
2009
CONTENTS
(Review Article)
Current Study on Care Needs and Nursing lntervention fOr Cヽ「A Patients and Fanlily Caregivers
・……………・…………………………………Ⅲ
・…………………………Ⅲ
'… …Miyuki KAJITANI… ……………………………………
……… ………Ⅲ
…………
……… 1
(Reports)
Changes of Learning of Students and Problems in Basic Nursing Practicum Reportヽ 7reeing
………Ayako A/1ATSUOKA,Yoko YosHIKAWA,IChie A/1ATSUMOTO,Kazumi TAWARA and
Yuka HIRAI ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………・ 13
The Lcarning Erech For Students Of The Conanement Tel Consulting On
laternal Nursing Practice
………Chiaki INOUE and Reiko NAGAS■
IMA
……………………………… ……………… …………・……………Ⅲ
……………………………………………
23
The Preparation and AMrareness about a Local Residents Disaster After Heavy Rain Disaster
―・…・Funlie BESS■ O and Ayunli lsIIBASEI
………………… ……………・……・………・……………………… ………… …………,… ……… …………
33
Study of Leading for Designing Nursing Reseach in the Basic Nursing Education
―・… EHliko TAKAHASHI,ふ ン
【
iyuki KAJITANI,Teruko lsHIBASHI,Reiko NACASHIMA
・… … … 43
… … … … … … … …Ⅲ
・…Ⅲ
… … … … …・… … …
…・…
…Ⅲ
…`… Ⅲ
Ayako A/1ATSUOKA,Chiaki INOUE and A/1aki WATANABE
HoM/to Encourage the Point of View‖ People‖ in Basic Nursing Practicum and Evaluation
―……Yoko
YosHIKAWA,IChie MATSUMOTO,Yukari Aco,Kazunll TAWARA,
Ayako h/1ATSUOKA,AyuHli lwvAIBARA,A/1iyuki KAJITANI and YJka HIRAI ………・…………・……………………… ………… ………… 51
h/1eaning That Generation of in the Prirnc of Life Participate in Regional Youth Development Activities
・AyuHli lsHIBASHI,ふ ア
……・
Iayu■ 1l
ARITA,Miyuki ITACAKI,Nanac INAOKA,
Hiroko lwASAKI,Yoshie lwASAKX,Yoko OTuKA,Chikako KTAYAMA,
Saori KAMIHIRASE,Eri KuBoTA and` 江inae AGO ……………………………………………………………………………………………………………… 61
The Transformation of the Nursing Students Social Skll and Sel=Esteem
・……・Ka2unli
TAWARA,Yoko YosHIKAWA,IChie h/1ATSUMOTO,Ayako A/1ATSUOKA and
Yuka HIRAI ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………, 71
The POint ofヽ rieM/Understood by People on the Basic Nursing Program
――Personal Evaluation of the Hospital Practice COmpared to tlle Home Visit Practice
………Yukari AGO,Yoko Yos■ lKAWA,IChie A/1ATSUMOTO,Ka2umi
TAWARA
IATSUOKA and Yuka HIRAI・ ………'… ……… ………………………………………………
77
A Study of Community― Based Nursing Education for The Aged
Contemporary Good Practice A Report of Community― Basedト ン
[edicine Course
……・Tomoko ITo,ふ ア
Iaki KATO,A/1akiヽ VATANABE,AyuHli lwAIBARA and Funュ iko HIRANO… ………………………………………
85
Ayumi lwAIBARA,h4iyuki KAJITANI,Ayako
(Others)
RepOrt of visit to the birthplace of sel=help groups in U S,
・…Ⅲ
…Reiko KANO,Funliko HIRANO,Funlie
BESSO,Tomoko ITo,
E■liko TAKAHASHI,Kazuya YAMASHITA and Yuichi IIzuKA…
Development‖ DAN DAN‖
e‐
・………………………,… ………………………………・ 93
………………… …………
portfolio system of the Nursing to Oneself Study
・…Ⅲ
…Minae AGO,ふ 江iyoko A/11sEIMA,h/1tyuki KAJITANI,Teruko lsHIBASHI,
YOichirO FuKUZAWA,ISaO SAKAMOTO,TOShihiro KANETUKI,Yukaふ 近ETUGI,
Kellii KoBAYASHI,Haruo ONDA andふ 71ichiaki OMuRA・ …………………………………………………………………………………………………… 105
Care SysteHi and lntervention for The Elderly with Dementia Living at Home
i Review of the Literature
…… AyunlilwAIBARA
and Yukari AGO・ …………'… ………………………………Ⅲ………………………………………… ………・………………………・113
A」 apaneSe Review of Psychological lndependence in Adolescence
Ⅲ
……Ⅲ
A/1ikiko
ODA・
・…Ⅲ
・―
・…Ⅲ
・…Ⅲ
・…
・………Ⅲ
・…,… Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…
…Ⅲ
…`… ,…・……Ⅲ
…Ⅲ
…
…
……………Ⅲ
………123
…Ⅲ
…
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ
…Ⅲ