VOL. 25 NO. CHEMOTHERAPY 7 2163 難 治 性 尿路 感 染症 な いし 肺 炎 を もつ 高 齢 患 者 に お け る KW-1062に よ る治 療 経験 中 内 浩 二 ・塚 田 修 東京都養育院附属病院泌尿器科 島 KW-1062は1971年 田 馨 ・稲 松 孝 東京都養育院附属病院 内科 に 本邦 に お い て 発 見 さ れ た,新 しいAminoglycoside系 の6'-Nにmethyl基 抗 生 物 質 で,Gentamicin な ど は詳 細 をTable1に C1a が 導 入 され た 化 学 構 造 を もつ1,2)。 本 剤 の抗 菌 スペ ク トル はGentamicinと 陽 性 菌,Gram陰 (b) り毒 性 が 弱 く,Aminoglycoside系 記 した 。 治 療 の方 法 KW-1062の 投 与 量 を は じめ の5例 に対 して は1回 量 を40mgと 同 様 にGram 性 桿 菌 な ど広 く,し か も,基 礎 的研 究 で はGentamicinよ 思 し,朝 夕 各1回7日 間連 続 して 筋 注 し,他 の3例 に 対 して は1回 量 を60mgと 朝 夕 各1回7日 副 作 用 を 調 べ る た め に,薬 す る影 響 が 弱 い こ とが 発 見 され て い る と い う3)。 に,尿 細 菌 培 養 検 査,尿 沈 渣 の検 鏡 最 近,老 人 の難 治 性 尿 路 感 染 症8例 お よび肺 炎1例 に 用 い て 治 療 す る機 会 を得 た の で,そ I. 1. (a) 治 療 の対 象 お よび 方 法 た,膀 胱 症 状,発 熱 な ど の臨 床 症 状 も注 意 して 観 察 した (c) の症 例 も検 査 前 よ り尿 路 感 染 と関 係 した と思 わ れ 効果判定基準 尿 培 養 検 査 お よび 尿 中 白血 球 の 変 化 に よ り総 合 判 定 基 治療対象 治 療 の対 象 と して,東 京 都 養 育 院 附 属 病 院 に 入 院 中 選 ん だ 。全 症 例 とも高 齢 者 で あ り,最 高87歳,最 均75.9歳 血 算,生 化 学 ・肝 る 症 状 は 認 め られ な か った 。 難治性尿路感染症 の,各 種 の基 礎 疾 患 を もつ 難 治 性 尿 路 感 染 症 患者8例 歳,平 剤 投 与 前 お よび 投 与 中 止 時 機 能 検 査 お よび 腕 時 計 に よ る 聴 力 検 査 を 行 な った 。 ま が,ど の 成 績 を報 告 す る。 じ く, 間 連 続 し て筋 注 し た 。薬 剤 の 効 果 お よび 抗 生 物 質 で 一般 的 に 問 題 とな る第8脳 神 経 お よび 腎 に 対 対 し,KW-1062を 増 量 し,同 で あ り,男 女 比 は5対3で を 低66 あ る。 基 礎 準 をTable2の よ うに定 め 効 果 判 定 を 行 な った 。 なお, 細 菌 尿 に 関 して の判 定 は,分 離 菌 の 種 類 と関 係 な しに, 全 分 離 菌 の菌 数 の比 較 に よ って お り,薬 剤 投 与 後 の分 離 菌 が 陰 性 の場 合 を 「陰 性 化 」,103/ml未 満 の も のを 「減 疾 患 と して は前 立 腺 肥 大症 お よび 神経 因 性 膀 胱 が 主 体 と 少 」 と し,こ れ らに 含 まれ ない も のを す べ て 「不 変 」 と な って お り,尿 道 カ テ ー テ ル 留 置 中 の もの,残 尿 の 存 在 した 。膿 尿 に 関 して は,400倍 Table2 Evaluation of clinical effects の 拡 大 に して1視 野 に 白 2164 CHEMOTHERAPY SEPT. 1977 VOL. 25 NO. CHEMOTHERAPY 7 血 球 の 無数 の も の(〓),多 (+),10未 数 を(〓),30未 満5以 上 を(±),5未 満10以 上を 満 を 陰 性 と し,投 薬 に 2165 い るが,Table4の aeruginosaが よ うに50μg /mlのMICを よ り白血 球 が 陰 性 と な った もの を 「正 常 化 」,上 の 分 類 MIC で2段 階 以 上 の改 善 を み た 場 合 を 「改 善 」 と した 。 い う矛 盾 した 結 果 もみ られ るや 2. 治療成績 (a) 総合効果判定 1, Poor 5と な り,ExcellentとGoodを せ て の有 効 率 は 約38%で あ る。 なお,1回 合 投 与 量40m霧 重感染 り分 離 され た 菌 種 に,Klebsiella 1,α-hemlytic 1の5菌 2, Proteus Streptococcus 1, Staph. 株 が あ る。 い ず れ も103/ml ∼ 104/mlの 菌 数を 投与量 出来 な い が,重 感 染 とす る と,治 療 面 で有 効 率 の 高 か っ たKlebsiellaが,こ 以 上 の 論 評 は不 可 能 で あ る と考 え る。 理 解 し難 い 。 (d) 起 炎 菌 に 対 す る効 果 菌 数 は 数 え て お らず,colony数 る。 そ こでcolony数 よ り菌 数 を 推 測 し て い よ り個 々の 菌 種 に つ き治 療 前 後 の 菌 数 の 変 化 を 比較 して み る と,Table3の Klebsiellaに 対 し良 い 成 績 がみ ら れ,Ps. Enterococcusに 対 して は 無 効 の も の が1部 こで2菌 株 も分 離 され て い る の は 副作 用 副 作 用 を発 見 す るた め に,聴 力,肝 混 合 感 染 の場 合,全 菌 数 は 数 え られ てい る が,個 々 の す る影 響 を 調 べ た(Fig.1)。 聴 力 は腕 時 計 の音 が 聞 え な 密 な もの とは い い に くい が,少 aeruginosa, 考 え られ る症 例 は1例 に 認 め られ で は(J.K.)例 測 定 され て 血 の 後19日 な くと も異 常 を示 した と も認 め られ なか っ た。 肝 機 能 検査 で,投 薬 後 にS-GOT, 3者 と もに 上 昇 して い るが,こ 治療 前 の 分離 菌 の 大 部分 に つ い てMmcが S-GPT, efficacy to the initial pathogens S-GPT 57, AI-Pase の検 査 日が手 術 の際 の輸 23と 前2者 目に はS-GOT 57, は さ らに上 昇 し,8日 後 に はS-GOT18,S-GPT22と BUN,ク Al-Pase 目に あ た る の で,い ず れ の影 響 に よる か の 判 定 が む ず か しい 。 なお,こ の後2日 3 Therapeutic ・腎,骨 髄 系 に対 くな る距 離 を 投 薬 の 前 後 で 比 較 した も の で,検 査 法 は精 と お り で, て い る。 Table mirabilis epidermidis の うち2例 が 有 効 と判 定 され て お り,効 果 に 差 が あ る よ うに もみ え るが,少 数 例 の こ とゆ え,こ れ (b) 無 効 で あ った と も つ と考 え られ る もの で,汚 染 の可 能 性 も必 ず し も否 定 の5例 の うち 有 効 例 は1例 で あ るの に 比 べ,1回 60mgの3例 aeruginosaに 投 薬 以 前 に は 分 離 され ず,投 薬 打 切 りの際 の検 査 に よ 上 記 の効 果 判 定 基 準 に 従 うと,8症 例 の うち, Excellent 2, Good 3.12μg /mlのPs. (c) もつPs. 治療 に よ り菌 数 減 少 して い る のに 反 し, ほ ぼ 正 常 化 し て い る。 レア チ ニ ン値 でみ る 限 りで は 腎機 能 に は 著 変 を 認 め た もの は な い.血 色 素 量,ヘ 血 球 数,白 血 球 数 に つ い て は,は マ トク リ ッ ト値,赤 じめ か ら正 常 範 囲外 の も の が 多 い が,投 薬 に よ り悪 化 した と思 わ れ る症 例 は認 め られ な か った0こ の 他,一 般 状 態 の 観 察 にお い て,何 らか の形 の 副 作用 と云 え る変 化 は 皆 無 であ った 。 3. 小 括 難 治 性 尿 路 感 染 症 を もつ 高 齢 男 女8症 例 に 対 しKW1062に Table 4 Relationship between MIC of initial よ る治 療 を 行 な った が,有 効 率 は38%で pathogen and therapeutic efficacy あっ CHEMOTHERAPY 2166 Fig. 1 Effect た 。5症 例 に は1日80 1日120mg投 of KW-1062 mg投 on the functions 与 に よ り,他 の3例 に は 与 に よ り,い ず れ も7日 間,朝 夕に2分 SEPT. of liver, kidney and bony 症 例: medulla 1977 in 8 cases ,66歳(45kg) 昭 和49年,肺 癌 で左 上 葉 切 除,50年 暮に左肺門陰影 して 筋 注 投 与 した 。 少 数 例 の た め 結 論 的 な こ とは い え な の腫 脹 と,残 存 して い る左 下 葉 の 無 気 肺 が み られ 肺 癌 再 い が,偶 然 の一 致 か1日120mg投 発 と診 断 さ れ た 。 い 。 また,Klebsiella 与の群に有効例が多 3 例 の 全 例 に 投 薬 量 と関 係 な しに 昭 和51年4月,38℃ 前 後 の 弛 張 熱,右 中 肺 野 陰 影, 有 効 で あ った 点 が 印象 に残 った 。 た だ し,Klebsiella 2 膿 性 疾 な どが 出現 し,喀 疾 か らはEnterobacter(〓)と 菌 株 の 重 感 染 と思 わ れ る 出現 は や や 気 に な る。 少 数 のPs, aeruginosa, ABPC,CEZが あ った 。 1.5g 5日 間,つ Staph. aureusが II. 呼 吸 器 感 染 症 ABPC 無 効 だ った 肺 炎 に1例 使 用 して 有 効 で 用 した が解 熱せ ず,KW-1062 回)筋 注 した と ころ7日 い でCefazolin 120 mg(40 検出された。 2g を3日 間使 mgを1日3 目に解 熱 し,陰 影 も消槌 して, VOL. 25 NO. CHEMOTHERAPY 7 2週 間 後 の 胸 部X線 写 真 で は 右 中 肺 野 に 索 状 陰 影 を 認 め る程 度 で あ った 。 な お,10日 bacterは 後 の 喀 痰 検 査 で はEntero 消 失 し,.Ps. aeruginosaと 2167 副 作 用 と して は,1例 - α- Stereptococcus Paseの S-GOT, S-GPT, 文 Al-Pase,尿 ま 1) と 老 人 の難 治性 尿路 感 染 症8例 KW-1062を め お よび 肺 炎1例 に 対 し, 尿路 感 染 症8例 と,40mg1日2回 2回 筋 注 例3例 2) 間 の 筋 注 で3例 中有 効1例, 60mg ABPC, 1日3回 CEZで RA : A C で あ った が,少 数 例 の た め 有 34, 3) がす べ て 消失 し た点 が 印 象 的 で あ った 。 奏 効 し なか った 肺 炎1例 献 KAWAMOTO, S. SATO, antibiotic T. J. R. S. XK-62-2 L. A. :A structure new of complex 27 C. XK-62-2, SINCLAIR a J. 1974 MUELLER, & XK new Antibiotics R. - 62 - 2. S. III. gentamicin 28 : 29•` 1975 大 越 正 秋 ほ か:第23回 日本 化 学 療 法 学 会 東 日本 支 部 総 会,新 薬 シ ン ポ ジ ウ ムII, セ ン タ ー ホ ー ル,1976 に は40mg NA- antibacterial S. L. antibiotic antibiotic. T. : 793•`800, DEVAULT, LEVENBERG, & (Sagamicin). and Antibiotics ; R. TAKASAWA, SATO physicochemical EGAN, I. I. S. new Isolation, The 意 の差 と はい え なか った.起 炎 菌 別 に み る と, Klebsiella を 検 出 した3例 YAMAMOTO, STANASZEK 1日 ; M. M. あ った 。1日 投 与 量 別 で み る 中有 効2例 R. properties. に対 し て は,本 剤7日 筋 注 例5例 OKACHI, I. 用 い て 治 療 した 。 に有 効(有 効 率38%)で Al- 所見 に は 異 常 が み られ な か った 。 III. S-GPT, 本 剤 の影 響 か 判 定 困 難 で あ った 。 が 分 離 され た が,痰 の 性 状 は 粘 液 性 で あ った 。 使 用 前 後 のBUN, に 投 薬 後S-GOT, 上 昇 を認 め て い るが,手 術 の際 の輸 血 の 影響 か, KW - 1062,都 筋 注 で,有 効 で あ った 。 KW-1062 THERAPY URINARY FOR TRACT KOJI AGED INFECTION NAKAUCHI and Department KAORU Metropolitan WITH DIFFICULT OR PNEUMONIA OSAMU TSUKADA of Urology SHIMADA and Department Tokyo PATIENTS TAKASHI INAMATSU of Medicine Geriatric Hospital, Tokyo KW-1062 was administered to 8 aged patients with difficult urinary tract infection and to 1 aged patient with pneumonia. In the urinary tract infection group, the therapy with this drug for 7 days resulted in "excellent" and "good" in 3 patients (38%). Of the 8 patients, 5 were administered 80 mg of KW-1062 daily and 3 were administered 120 mg. However, difference in the efficacy of the drug at different daily doses could not be estimated statistically because of the very small number of cases. It was impressive that all of the three Klebsiella, isolated from the urine before medication, had disappeared after the KW-1062 therapy. Another patient with pneumonia, who had not responded to ampicillin and cefazolin, was successfully treated with 40 mg t. i. d. of KW-1062. 市
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