CHEMOTHERAPY 井 田 士 朗 ・滝 島 任 東北大学医学部第一内科

VOL.33
CHEMOTHERAPY
S-4
405
呼 吸 器 感 染 症 に お け るImipenem/Cilastatin
sodium
(MK-0787/MK-0791)
臨 床 治 験 成 績
井 田 士 朗 ・滝 島
任
東北大学医学部 第一 内科
Imipenem/Cilastatin
sodium
(MK-0787/MK-0791)を
主 と し て 難 治 性 呼 吸 器 感 染 症11例
用 した 。全 例 に 喀 痰 定 量 培 養 に て 有 意 な 起 炎 菌 を 証 明 した が,そ
例,瓦influenzae2例,E.coli
1例
の 内 訳 を み る とP.aeruginosa
うち3例
は 本 剤 投 与 後P.
副 作 用 は4例
aerugimsaの
に 悪 心,食
(MK-0787)は
中4例
再 感 染 を お こ した 。 ま た,分
を 本 剤 投 与 前 と 投 与 後 で 比 較 す る とMIC値
離 さ れ たP.aeruginosaに
抗 生 剤 で あ り,以
前か ら知 られ てい たthienamycinよ
対
れ ら の 症 状 は,各
点滴 終 了
に ト ラ ン ス ア ミナ ー ゼ の 軽 度 上 昇 が 認 め ら れ た 。
米 国 メ ル ク社 研 究 所 に お い
て開発 された 新 しいcarbapenem系
で 消 失 し た が,
の上 昇 が 認 め られ た。
思 不 振 な ど消 化 器 障 害 が み とめ られ た が,こ
直 後 に 出 現 した 。 臨 床 検 査 値 異 常 は,1例
Imipenem
滴 静 注 に よ り投 与 し た 。
つ い て は 全 例 で 菌 消 失 した 。Raeru8inosaは8例
す る 本 剤 のMIC値
8
で あ っ た 。 こ れ ら の 細 菌 感 染 症 に 対 し てMK-0787/MK―0791
1回250mg/250mg,500mg/500mg,1000mg/1000mgを1日2回,点
πi解mnzae,E.coliに
に使
り一層 化 学 的 に 安
定である上に,抗 菌力 の 上で も優 れ て い る こ とが報 告 さ
示 す 菌 種 を有 意 菌 とみ な した2)。各 分 離 菌 に対 す る 本剤
のMIC測
定 は 日本 化学 療法 学 会標 準 法 に基 づ い て 実 施
した3}。な お,MIC測
定 につ い て 緑 膿菌 に 関 して は一 括
して 行 わ れ た 。
IV.治
れた1)。 しか し,本 剤 は 腎 尿細 管 上 皮 に 存 在 す るrenal
療効果の判定
dipeptidaseに よ り容 易 に 分 解 され る 欠 点を 持 っ てお り,
判 定 基 準 は症 状 の軽 快(呼 吸 困難 の消 失,喀 痰 量 の 減
それを補 うた めに,本 酵 素 に 対 し選択 的 な 阻害 作 用 を持
少 な ど),臨 床 検 査 値 の改 善(胸 部X線 陰 影 の改 善,血 沈,
っcilastatin sodium
CRP,白
(MK-0791)と
等量 配 合 され る こ
血 球 数 の 正 常 化,喀 痰 中起 炎 菌 の 減 少 あ るい は
とに な り,す でに 前 臨床 試 験 に お い て 本 配 合 剤 の抗 菌 薬
消 失 な ど)を 指 標 に して決 め た 。 即 ち 治療 後 短 時 日(通
として の有効 性 と安 全性 が 確 か め られ て い る1)。
常1週 間 以 内)に 症 状 が 軽 快 し,喀 痰 中 の有 意 菌 が 消 失,
今回,我 々はMK-0787/MK-0791を11例
の 種 々の
炎 症 が 治 ま った 場 合 に は 「著 効 」,臨 床 症 状 の 改善 が 緩
慢性呼吸器 疾患 患 者 で細 菌 感 染 を 合 併 した症 例 に使 用す
徐 な が ら見 られ るが,諸 炎 症 反 応 の改 善 が そ れ程 顕 著 で
る機会を 得た ので,そ の治 験 成 績 に つ い て報 告す る。
な く,喀 痰 中 の有 意 菌 が 必 ず しも消 失 す る に 至 らな い場
I.研
究
対
対象 と して選 ん だ患 者 は27歳
例の慢性呼吸 器疾 患(8例
象
合 には 「有 効 」,臨 床 症 状 の改 善 あ る い は 検 査 デ ー タ上
か ら67歳
まで の11
は 慢性 気 管 支 炎,3例
の改 善 が 見 られ て も互 い に併 行 せ ず,喀 痰 中 の有 意 菌 は
は気管
不 変 で あ る よ うな 場 合 には,抗 菌 力 の 点 で は 無効 で あ っ
支拡張症)の 患者 で,男 性9例,女
性2例
で あ った 。 全
た が 臨 床 的 に は 生 体 に何 らか の効 果 を 及 ぼ した と考 え て
例,呼 吸器感 染 の合 併 が み られ,喀
出痰 よ り有 意 な起 炎
「や や 有 効 」,臨 床 症 状 の改 善 な く,検 査 デ ー タ上 も 改 善
菌を検 出で きた。
のみ られ な い 場 合 には 「無 効 」 と判 定 した。
II.実
MK-0787と
施
法
し て1回250,500あ
(以下MK-0787量
V.結
る い は1000mg
と して 記 載)を1日2回,添
理食塩水100∼200m1に
溶 解 し,30∼60分
した。投与 日数 は 最 短2日,最
均投与 日数 は16.0日
9(平 均16.2g)で
方
長44日
付 の生
で点滴静注
に及 ん だ が,平
で あ った 。 総 投 与 量 は1.5∼28.25
あ った。
III.細
果
床治験成績
11例(症
例1,2,4は
間 隔 を お い て2∼3度
投 与繰
返 し)の 細 菌 性 気 道 感 染 の 治 療 にMK-0787/MK-0791
を 使 用 した 諸 デ ー タをTable
症 例1は67歳
1に ま とめ た 。
の女 性 で慢 性 気 管 支 炎 の患 者 で あ る。
基 礎 疾 患 に糖 尿 病 が あ り,年 来 細 菌 性 の 気道 感 染 を 繰 り
菌学 的検 査
喀痰定量 培養 に よ り原 則 と して107/ml以
1.臨
返 し,喀 痰 中 か ら常 にP,aerugimsaが
上 の菌 数 を
分 離 され た。 こ
れ ま で に種 々 の抗 緑 膿 菌 抗 生 剤 が使 わ れ,一 時 的 に 除 菌
406
CHEMOTHERAPY
Nov.
1985
VOL,33 S-4
CHEMOTI4EIRAPY
407
CHEM.OTHERAPY
408
Fig. 1
MICs
of
isolated
MK-0787
from
against
patients
atory
tract
infection
the chemotherapy
P. aeruginosa
with
chronic
during
the
あ り,急 性 中 耳 炎,慢 性 副 鼻腔 炎,急 性胸 膜炎などの罹
respircourse
NOV.1985
of
患 既 往 が 認 め られ た 。 喀疾 中 か らはRaeruginosaが
検
出 され,こ れ ま で に い くつ か の主 な抗 緑膿 菌抗生剤の使
用 が 行 わ れ た が,す ベ て そ の効 果 は 一 時的 な ものであっ
Case 1
た 。 そ こで,本
剤 を1回500mg,1日2回
投与し始め
た と ころ,臨 床 症 状 の 改善 と共 に炎 症反 応 が正常化 し,
起 炎 菌 のRaeruginosaが
Case
消 失 した 。投 与前 に分離され
た 本 菌 の本 剤 に 対 す るMIC値
2
は0.78μg/mlで あった。
しか し,本 例 に お い て は,投 与 開 始2目 目か ら,点滴後
の悪 心 の訴 え が あ り,制 吐剤 を用 いな が ら19日 間投与
Case
を 継 続 した 。 これ は 「
有 効 」 と判 定 した(症 例2a)。
3
そ の後,DKBの
吸 入 のみ で維 持 して きた が3週 間程
で再 燃,分 離 され たRaeruginosaに
Case
対 し再 び前回と同
量 の本 剤 が 投 与 され た。 しか し,本 剤投 与後再 び消化器
4
症 状 出 現,今 度は 下 痢 が主 症 状 だ った ため,3回
のみの
投 与 で 投 薬 を 中 止 した。 これ は効 果 判 定 「
不 能」とした
Case
5
(症例2b)。
同症 例 に再 度 本剤 が投 与 され た 。 それ は他 の薬剤に比
Case
9
べ 本 剤 のP.aeru8inosaに
対 す るMIC値
低 か った(0.78μg/m1)た
め で あ るが,前
考 慮 して,今 回 は 半量 の250mgを1回
が依然として
回の副作用を
投与 量 とし,1
日2回 宛 与 え られ た 。今 度 は 懸念 された 副作用 もなく順
Case
10
調 に経 過 した が,Rauuginosaの
菌 数 は不変 で,臨 床
的 にみ て も改 善 傾 向 が 明 らか で な か った 。 これは 撫
効 」 と判 定 した(症 例2c)。
Case
11
症 例3は 同 じ く気 管支 拡 張 症 で42歳
の男性である。
細 菌 性 の気道 感 染 を 頻 回 に繰 り返 し,そ のたび ごとに喀
*: The
day which bacterial
NT: not tested,-:not
MK: MK-0787/MK-0791
examination
were performed
疾 中 か ら 丑aeru8inosaが
を,1回500mg,1日2回
isolated
分 離 され て いた。 そ こで本剤
投 与 で開 始 した が,除 菌に
は 至 らな か った もの の喀 疾 量 の減 少 が見 られ,咳 啄など
出 来 て も 同菌 の再 感 染 を起 し,そ の度 毎 に 耐 性 を増 して
も 消 失 した の で臨 床 的 には 「有 効 」 と判 定 した。本例に
きて い た。Fig.1に
示 され る よ うに,本
菌に 対 す る
お い て も悪 心 の 訴 え が あ り,制 吐 剤投 与 を行 いながら治
MK-0787のMIC値
は 当初0.78μg/m1で
あ った が,本
療 を 継 続 した 。
剤1回250mg,1日2回,16日
間 の投 与 で,臨 床 的 な
症 例4は 基礎 疾 患 に糖 尿 病 を 持 つ63歳
の男性で,慢
改善 が見 られ ず,喀 疾 中 のP.aeru8inosaも
除菌 出来 な
性 気 管 支 炎 の 患者 で あ る。 再 三 気 道感 染 を繰 り返 し,今
か った の で 「無 効 」 と判 定 した(症 例1a)。
そ の後,1
回 は 喀 疾 培 養 か ら 君aeruginosaを
分 離 した ので,本
週 間休 薬 した が,そ の 間 に発 熱,自 覚 症 状 も増 して き た
剤 に よ る治療 を 開始 した 。 しか し,投 与 直後 よ り悪心
の で,本 剤 を 今 度 は1回500mgに
食 思 不 振 を 訴 え,制 吐剤 投 与 に よ って も充 分 に抑え切れ
増 量,1日2回
投与
で再 開 した 。 そ の 結 果,一 応 は解 熱 レー
一般 状 態 の 改善 が
ず,3日
見 られ た も の の喀 疾 中 のP.aeruigosaは
不 変 で あっ
4日 目,っ まり投 与を 中止 した 翌 日の菌 検 索 で有意菌が
た。14日
対 す るMIC
消 失 して い た 。 した が って細 菌 学 的 な 効果 は 見 られ た
間 投 与 後 の 本菌 のMK-0787に
値 は12.5μ9/mrと
上 昇 して い た 。 本 例 は 副作 用 認 め ら
れ ず,臨 床 的 な 改 善 度 か ら 「や や 有 効 」 と判 定 した(症
例1b)。
症 例2は27歳
間,6回
のみ で投 与 を 中 止 した。 本例 は,投 与
が,臨 床 的 効 果 は 「無 効」 で あ り,有 用性 の点では 「
不
満 」 と評 価 され た(症 例4a)。
本 剤 を 最初 に 使用 してか ら9か 月 後,再 度 の緑膿菌感
男 性 で気 管 支 拡 張 症 の 患 者 で あ る。 当
染 に対 して 本剤 の再 投 与が 試 み られ た 。前 回,消 化器症
人 は 幼 少 時 よ り頻 回 に細 菌 感 染 を 繰 り返 して い た よ うで
状 か ら投 与 中 止 した経 緯 が あ る ので,今 回 も制吐剤を用
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いなが ら注意 の上1回19,1日2回
の点滴静注が行わ
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に 示 され て い る よ うに本 菌 に対 す やMK.0787のMIC
れた。 しか し,投 与 終 了 時 に 前 回 同 様 の訴 え が あ り,食
値 は 当 初0.39μg/mlで
思不振が 募 って きた の で3日 間 投 与 後 中 止 し た 。 こ の
μg/mlに 上 昇 して い た。 本 例 に は 何 ら副 作 用 を 認 め ず,
間,臨 床的 に は喀痰 の量,性 状 共 に 変 化 は1見られ な か っ
総 合 的 な 判 定 か ら 「や や 有 効 」 と判 定 した 。
たが,細 菌 学的 に は直 後(投 与 中 止 後4日
で緑膿菌 の消失 が 見 られ た(但
目)の 菌 検 索
し更 に2週 後 の 検 査 で
症 例10は59歳
あ った のが,本 剤 投 与 中 に12.5
の 男 性 で 陳 旧性 肺 結 核 に 慢性 気 道 感
染 を 伴 った 患 者 で あ る。 喀 出膿 性 疾 か らP.
aeruginosa
は再び 出現)。 臨 床 的効 果 判 定 の結 果 「無 効」 で あ った
を 分 離 した の で,直 ち に本 剤1回1000mg,1日2回
(症例4b)。
与 で 治 療 を 開 始 した 。 臨 床 的 な改 善 傾 向 は顕 著 で あ り,
症例5は67歳
の 男性 で,長 期 間 肺 結核 の 治療 が な さ
投
喀痰 中 有 意 菌 も消 失 した が,本 例 も悪 心,胃 部 不 快 感 の
れてきた が,最 近 数年 慢 性 気 道 感 染 を 頻 回 に繰 り返 し,
訴 え が あ り,制 吐剤 の 併 用 で14日
今回も喀痰中 よ りEaeru8inosaが
が 出 来 た 。 本 例 は,こ の 時 点 で は 完 全 に除 菌 され て お り
分離 され 本剤 が使 用
された。 治療 に よ り,一 時 は 喀 痰 性 状,量
と もに 改 善 が
臨床 的 効果 と合 わ せ て 「有 効 」 と判 定 した 。 本 剤 の分 離
見られた が,そ の後 も との状 態 に戻 った。Raerugimsa
菌 に 対 す るMICは
も菌数不 変 であ り,わ ずか な臨 床 的 な 改善 傾 向 か らrや
な お,投
や有効」 と判 定 した 。本 例 では 消 化 器 症 状 な ど副 作用 は
値 は6.25μg/mlと
認め られなか った 。
投 与 前 に は1.56μ9/mlで
ある。 喀痰培 養 か らE.coliを
1回500mg,1日2回
男性 で
分 離 し,こ れ に対 し本 剤
の 投 与 で 治療 を開 始 した 。 そ の
上 昇 して い た 。
男 性 で 慢 性 気 管 支 炎 の急 性 増 悪 例
で あ る。 喀 痰 中 にP.aeruginosaが
MK-0787/MK-0791vsPIPCの
結果,短 時 日に喀 痰 中 有意 菌 消 失,白 血 球 数,赤 沈 な ど
の炎症反 応 の改善 が 認 め られ,臨 床 的 に も明 らか な 変 化
を1日2回
少,P.aemginosaは
見 られ なか った。
そ の 後amino91ycoside剤
男 性 で慢 性 気 管 支 炎 の患 者 で あ る。 幼
投 与 を 開 始 し た と こ ろ,喀
消 失 した 。26日
痰 中の
痰 量 が 著 明 に減
間 投 与 を 続 行 し,
に変 更 した が,1か
喀 痰 中 に 君aem8inosaは
月以上 も
検 出 さ れ な か った 。 本 例 は
「著 効 」 と判定 した 。
の既往があ り,最 近 数年 間膿 性 痰 喀 出が 続 い て い た 。 喀
2.副
痰培養か らH. inflwmzaeを
今 回 は,本 剤 を11例(延
検 出 した ので 本 剤 の 使 用 を
ちに
不 変 で あ った 。 引 き続 き 本 剤500mg
が現わ れた ので 「著 効」 と判 定 した 。 本 例 に も副 作 用 は
症例7は38歳
検 出 さ れ,直
比 較 試 験 を 実 施 した が,
14日 間 の経 過 で 臨 床 症 状 の改 善 が 見 られ ず,喀
Raeru8inosaも
少時 より易感 染性 の体 質 で,急 性 胸 膜 炎,慢 性 副 鼻 腔 炎
あ った 。
与 中 止後 約5か 月 後 の再 感 染 時 の本 剤 のMIC
症 例11は56歳
症例6は 気 管 支拡 張 症 の 急 性 増 悪 例 で,50歳
間継続投与す るこ と
作用
べ15例)の
慢性呼吸器感染
試みた。 そ の結果,当 初 に見 られ た 発 熱,膿 性 痰 な どの
症 の 患 者 に 使 用 した が,そ の 中 で 目立 った 副 作 用 は 「消
症状が軽 快 し,諸 炎 症反 応 も正 常 化,起 炎 菌 も消 失 した
化 器 症 状 」 で あ った 。4例(症
ので 「
著 効」 と判 定 した。 な お,分 離 され た π.influen-
た 症状 は,ま ず 点滴 直 後 の 消 化 器 症 状 で あ り,悪 心 と食
zaeに 対 す るMIC値
欲 不 振 か ら投 薬 中 止 を した 場 合 も あ った(症 例2,4)。
は0,78μg/mlで
あ った 。 本 例 に
おいては,投 与 中に 軽 度 のtransaminase値
の上昇が見
女性 で,
トク ロ プ ラ ミ ド,ド ンペ リ ド
本 剤 投 与 と関 係 が あ る と思わ れ る検 査 値 異 常 は,症 例
やは り慢性気 管支 炎 の患 者 で あ る。 最 近 気 道 感 染 徴 候 が
7でtransaminねse値
顕著にな り,粘 膿 性 疾 を 多量 に喀 出 す る よ うに な った 。
(Table2)。
培養か ら,H.inlzmnzaeが
見 られ
ンな ど)の 投 与 で 投 薬 を 継 続 七 た 。(症 例2a,3,10)。
られた が,自 他覚 的 な副 作 用 は 何 も見 られ な か った 。
症例8は 僧 帽弁 狭 窄 の手 術 既 往 の あ る54歳
軽 度 の場 合 に は 制 吐 剤(メ
例2,3,4,10)に
分 離 され,こ れ に 対 して 本 剤
が投与 された。 そ の 結果 ,本 菌 は た ち まち 消 失 し症 状 の
の軽 度 上 昇 を認 め た 一 例 で あ る
VI.考
MK-0787は
察
試 験 管 内 でGram陽
性,陰
性 の広 範 囲
改善 も明 らか だ った の で 「有 効 」 と判 定 した 。分 離 され
の菌 種 に 対 し強 い 抗 菌 活 性 を 有 し,中 で もP.aerugino-
たH. inflmnzaeに
saに 対 して はCFS,CPZな
対 す るMIC値
は1 .56μg/mlで
あ
った。本 例に も,副 作 用 は 見 られ な か った 。
症例9は48歳
男性,慢 性 気 管 支 炎 の患 者 で ,多 量 に
喀出され る膿 性疾 か らは常 にP. aemginosaが
検 出 され
た。 これ に対 して 本剤 を1回1000mg
治療を開始 した 。13日
,1日2回
投与で
間 の投 与 で 臨 床 的 な 改 善 傾 向は
軽微で あ り,喀 痰 中 の 有 意 菌 は不 変 で あ った 。Fig .1
ど よ りも一 層 強 い 抗 菌 力
を 有 す る こ とが 示 され た4)。 そ こで,我
々は 本 剤 を,今
まで 種 々の 抗 緑 膿 菌 抗 生 剤 の 使 用 に も拘 らず 除 菌 困難 で
あ った 慢 性 呼 吸 器 感 染 症 の患 者 に 投 与 す る こ とを試 み,
臨 床的 効 果 と 併 せ て 細 菌 学 的 効 果 の 検 討 を 行 った 。
11症 例 中 症 例6∼8を
除 く8症 例 がP.aemginosaに
よ る慢 性 呼 吸 器 感 染 症 で あ り,本 剤 投 与 に よ り一 時 的 に
410
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411
もせ よ除菌 の 目的 を達 成 出 来 た の が 症 例2,4,10,11の
は 偶 発 的 な もの とは 考 え 難 い 。 しか し,大 多 数 は 全 く症
4例 であらた。 除菌 効 果 の 見 られ た こ れ らの症 例 の うち'
状 な く投 与 が 行 わ れ た わ け で あ るか ら,消 化 器 症 状 の発
症例2,4は
現 に は個 人 差 斌 ある よ うに 思 わ れ る。 い ず れ に して も,
再 感染 を 起 こ し,再 度 本剤 投 与 が 試 み られ
たが,も はや効 果 を示 す に至 らな か った。 こ の 点 を細 か
本 症 状 の発 現 す る理 由 に つ い て 今 後 究 明 され な け れ ぽ な
く分析す るため に,本 剤 投 与 開 始 時 と頻 回投 与徐 の分 離
らな い。
菌に対す る本剤 のMIC値
VII.ま
を 比較 す る と0.78μg/ml→
12.5μg/m1,0.78μg/ml→25μg/mlと
と
新 しいcarbapenem系
短 期 間 内 にMIC
め
抗 生剤MK-0787と
本 剤 の腎
値の上 昇が認 め られ た。 初 回 か ら除 菌 不 能 で あ った 他 の
に お け る 分 解 を 阻 止 す るMK-0791の
4例 の場 合に もや は り同様 の傾 向 が 見 られ る6即 ち,'本'
慢 性 呼 吸 器 感 染 症 患 者 の治 療 に 使 用 した 。 全 治 験 例 中8
剤投与 前のMIC値
例 はRaeruginosaの
は0.2∼0.78μg/mlと
充 分 に低 い値
合 剤 を,11例
の
感染 で あ った が,そ の うち4例 は
を示 していた の であ るが,治 療 に よ り速 や か に 耐 性菌 が
本剤 の 使 用 に よ り完 全 に 除 菌 す る こ とが 出 来 た 。 分 離 さ
出現 し,結 局 は除 菌不 能 と な って しま った 。 本 剤 投 与 に
れ たP.aeruginosaに
より完全に除菌 され た 例 は症 例11で
与 前 と頻 回 投 与 後 で 比 較 す る と,比 較 的 短 期 間 に 耐 性 菌
あ り,1か
月以上
にわた って再 感染 が 見 られ なか った 。 緑 膿 菌 に よ る慢 性
呼吸器感染症 の治 療 の難 しさは 一 般 に 知 られ る と ころ で
あるが,そ の一つ の大 きな理 由は,こ
の もので好 中球 に よ るphagocytosisを
受 け に くい とい
副 作 用 に 関 して,本 剤 投 与 直 後 の 悪 心 あ るい は 胃部 不
謝
細菌 学 的 検 査 の 労 を 負 った 西 岡 き よ氏 に 感 謝 します 。
文
1)
KAHAN,
ther.
よる呼 吸 器 感 染 症2例 に 本 剤
2)
を使用 し好結 果 を得 た 。 しか し,こ こ で分 離 され たH.
KROPP,
J. G.
J.
12(Suppl.
対
D):
4)
第32回
永
1978
測定 法再改 訂 に つ い
29:
76∼79,
1981
日 本 化 学 療 法 学 会 西 日本 支 部 総 会,
SCHWARZMANN,
phagocytic
strain
を継続 出来 た症 例 もあ る が,嘔 気 のた め 投 与 中 止 に な っ
た時,同 様 の消化 器 症 状 が再 び 出現 した こ とか ら,こ れ
77∼89,
鈴木
意義。 日
新薬
岡 山,
1984
5)
不快感が見 られ た のは 注 目され る。 制 吐 剤 の 併 用 で 投 与
た症 例 もあ った。 これ らの症 例 で,本 剤 が 再 度 投 与 され
野 口 行 雄,
シ ン ポ ジ ウ ムII。MK-0787/MK-0791,
副作用 の発 現 につ い て,11症 例 の本 剤 投 与 例 中,4例
ち,悪 心 あ るい は 胃部
1983
武 毅,
(MIC)
て 。Chemotherapy.
J.
Chemo-
喀 疾 内 細 菌 叢 定 量 培 養 法 ≧107/mlの
最小発育阻止濃度
&
of
Antimicrob.
1•`35,
宇 塚 良 夫,
3)
程度劣 って い る ことが 示 され て い る。
SUNDELOF
development
本 胸 部 疾 患 学 会 雑 誌16:
する抗 菌力 は最近 の第 三世 代 セ フ ェム剤 に比 較 して 数 管
にまった く同様 の消 化 器症 状,即
献
H.
Thienamycin:
松 本 慶 蔵,
寛:
は それ ぞ れ0.78,1.56μg/mlで
あ り,こ れ まで の報 告通 り6},本剤 のH.infuenzaeに
M.;
imipenem-cilastatin,
回の ような結 果 を生 む 原 因 だ った よ うに 思 わ れ る。
irfluenzaeのMIC値
F.
BIRNBAUM:
部に薬剤が充 分 に到 達 しな い場 合 が 予 想 され,こ れ が 今
今回,H.infzuenzaeに
に認 め られ た 。
辞
を 充 分 に 上 まわ る量 の 薬 剤
が到達 して いな けれ ぽ な らな い。 しか し,実 際 に は 病 巣
を,本 剤 投
の 出 現 して い る こ とが 明 らか に され た 。
快 感 な どの 消 化 器 症 状 が4例
とにmucoidtype
う点であ る5)。した が って本 菌 に よ る感 染 の 治療 に あ た
っては,病 巣部 位 にMIC値
対 す る 本 剤 のMIC値
762•`767,
6)
S.
effect
of
P.
aeruginosa.
of
J.
R.
BORING
slime
from
Infect.
El:
a
Antimucoid
Immun.
3:
1971
MK-0787/MK-0791臨
会 記 録,
&
床 第 二 相試 験 第二 回研 究
日本 メ ル ク萬 有 (株)/鳥 居 薬 品 (株),
1984
CHEMOTHERAPY
412
NOV. 1985
CLINICAL STUDIES OF IMIPENEMJCILASTATIN
TREATMENT
OF CHRONIC RESPIRATORY
SHIROH IDA and
The First
Department
of Internal
SODIUM IN THE
INFECTIONS
TAMOTSU TAKISHIMA
Medicine,
Tohoku
University
School of Medicine
Imipenem/Cilastatin
sodium (MK-0787/MK-0791),
a new combination antimicrobial agent, was administered to 11 patients who were suffering from bacterial respiratory infections complicating chronic
respiratory desease.
Investigation
of the relevant pathogens using a quantitative
sputum culture
revealed 8 patients with Pseudomonas aeruginosa,
2 with Haemophilus
influenzae and 1 with Escherichia coli. The administration
of the drug was done by drip infusion, twice a day, with doses of
250/250-500/500-1000/1000 mg of MK-0787/MK-0791 administered each time. P.aeruginosa was eradicated
in 4 out of 8 patients,
although 3 of them became reinfected with the same pathogen shortly
after complete eradication.
MICs of the drug against P.aeruginosa
revealed that the increase in MIC value was remarkable
in such patients with persistent infections
With regard to adverse effects, gastrointestinal
symptoms such as nausea and vomiting were
observed in 4 patients,
and these usually occurred immediately
after drip infusion.
Laboratory
findings revealed slight elevation of transaminases in 1 patient.