〜石けん洗浄や消毒は 細菌尿を減らすか?〜 筑波大学附属病院 PICU 星野晴彦 筑波メディカルセンター病院 救急診療科 阿部智一先生 監修 1/14 はじめに カテーテル関連尿路感染症は院内感染の30%を占めている。 Stamm WE: Guidelines for prevention of catheter-associated urinary tract infections. Ann Intern Med 1975; 82: 386- 390. これらの予防のために石けんを使った陰部洗浄と カテーテル刺入部に消毒をする方法が知られている。 Kunin CM: Detection, prevention and management of urinary tract infections. 3rd ed. Philadelphia: Lea & Febiner. 1979: 171. Committee on Infections within Hospitals, American Hospital Association: Control of urinary tract infections due to catheterization. (Catalog No. GO05. Chicago, 111.AHA, 1977.) 2/14 はじめに この予防方法の効果をさらに分析し、 比較することが今回の論文の目的。 今回の論文 Burke JP, Garibaldi RA, Britt MR et al : Prevention of catheter-associated urinary tract infections. Efficacy of daily meatal care regimens. Am J Med 70(3):655-658, 1981 3/14 方法 場所:Salt Lake City LDS Hospital デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 観察:挿入から24時間以内に採取した尿、 その後カテーテル抜去まで毎日採取した尿の細菌数 細菌尿の定義:1,000 colonies/ml 以上 4/14 方法 介入方法 ①1日に1度のグリーン石鹸(通常の石鹸)による洗浄を行う。 石けん洗浄 VS 水のみの洗浄 ②1日2回のポビドンヨー ドによる尿道口周囲の消毒 消毒VS水のみの洗浄を比較 5/14 結果 患者の特徴 合計で3521の患者を選出した。 そのうち2675人は研究デザインに適さなかったことなどの理由から排除した。 患者群は年齢分布、カテーテル投与中の全身の抗生剤投与は類似していた。 しかし、ポピドンヨードを受けた介入群は非介入群と比較して 男性人数が多かった(111 of 200 versus 86 of 194, p <0.05) 。 6/14 結果 ポピドンヨード群 総患者数 : 総数394名。 処置群 : 男性111名 女性89名。 非処置群 : 男性86名 女性108名。 処置群で32人(16%)、非処置群で24人(12.4 %)に細菌尿が検出された。 処置群と非処置群の間に有意差はなかった。 日々の累積有罹患率を測定すると、非処置群よりも処置群が高い状況が 10日中8日であった。 7/14 結果 ポピドンヨード群 日累積有罹患率は処置群が 10日中8日高かった。 8/14 結果 石けん洗浄群 総患者数(石けん消毒):総数452名。 処置群:男性113名女性95名。 非処置群: 男性116名女性107名 処置群で 28人(12.2%)、非処置群で18人(8.1%)に細菌尿が検出された。 処置群、非処置群の間に有意差はなかった。 累積罹患率は一貫して処置群のほうが非処置群よりも高かった。 9/14 結果 石けん消毒群 日累積有罹患率は処置群が 一貫して高かった 10/14 結果 ポピドンヨード,石けん洗浄群の統合データ 11 /14 結果 抗生剤が投与されていない患者群を比較しても 処置群の方が累積罹患率が高い(p = 0.03 ) また50歳以上の抗生剤投与を受けていない 女性患者(High risk patient)をみると, 処置群の方がより高い有意確率で、 細菌尿発生の危険性を示唆している 。 (41.8% vs 16.1% : p=0.002)。 12/14 結論 推奨されている2つの方法は より高い率で細菌尿の発生させた。 理由としてポピドンヨードは温かい湿潤環境内で活性せず 、石けん洗浄には抗菌作用がなかったことが考えられる。 今後は、その他の予防方法を検討していく必要がある。 13/14 私見など 患者の病態などの患者特徴のデータが少なく、 全ての患者に共通し言えるか不明。 処置群を統合後に統計処理を行っているため、抗生剤を投与されていない 患者群のポピドンヨード、石けん洗浄の両方に有意に細菌尿を減少するか は分からない。(片方だけかもしれない) 現在の診断基準では細菌尿だけではUTIの診断はできない。また細菌尿の 定義も現在より少ない(現在は男性:104/mL、女性 105/mL)。 そのため細菌尿を減らすためには有効かもしれないが、 臨床的有用性はどの程度あるかは分からない。 古い論文であるが、陰部洗浄のRCTは近年のものはなく、2009年にCDCで 発表された「カテーテル関連尿路感染の予防のためのガイドライン 」でも この論文が引用されている。 14/14
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