CHEMOTHERAPY 大山 馨 ・日比輝彦 ・福田完治 ・金木美智子 富山

VOL.
23
NO.
CHEMOTHERAPY
5
Fosfomycin
大山
capsuleの
1733
基 礎 的,臨
床 的 検 討
馨 ・日比 輝 彦 ・福 田完 治 ・金 木 美 智 子
富山県立中央病院内科
清
水
隆
作 ・松
同
I.
HENDLIN1)に
は
じ
め
に
報告が
な さ れ て か ら 多 数 の 基 礎 的1)2)臨 床 的3)4)5)研
究 が 行 なわ
の 特 徴 と す る こ と は,分 子 量 の 小 さ い 抗 生
物 質 で あ り,そ
の 作 用 機 転 はAcetylmuramicacidの
合 成 阻 害 で あ っ て,耐
害 で あ る こ と で,従
障
来 の不 活 化 酵 素 に よる 耐 性 獲 得 とは
たanaerobicの
環境 で 効 果 が
増 強 す る とい うよ うな変 っ た性 質 を持 っ て い る こ とが 知
られ て い る 。
国 内 導 入 に 際 し て,臨
な う機 会 を 得 た の で,そ
II.
1)
較 べ て か な り抗 菌 力 は 弱 く,KMに
P3eudomnasaeruginosaに
FOM-Naと
床試験を行
の評 価 を 試 み る こ と と した 。
試験 管内抗菌力の測定
菌 力 はKMよ
阻 止 で きな い も の もあ った
り も優 れ て い た が,DKB,GMよ
りは か な り劣 っ て い た 。
ま たFOM-CaとFOM-Naの
る 目的 で,臨
nzonas
抗菌力に ついて比較す
床 分 離 のStaphylococcus
aeruginosa,E
よ びEuterococcusに
PseudoSer-
つ い てMICを
そ の 結 果 はTable2お
25μg/mlに
aureus,
.coli,Klebsiella,Proteus,
よ び3の
山 が あ っ た が,ど
比 較 した 。
よ う に 両 者 のMICは
ち ら か と い えばFOM-Ca
の 抗 菌 力 の ほ う が 強 い よ うで あ っ た 。
臨
供試菌株
1)
最 近 富 山 県 立 中 央 病 院 で 分 離 し たStaP乃ylococcus
aureus15株,Pseudomonas
較 べ
対 し て のMICはFOM-Ca,
も100μg/mlで
ratiaお
我 々 は 今 回FOMの
毅
て も や や 抗 菌 力 が 劣 る よ うな 成 績 が 見 ら れ た 。い っ ぽ う,
が,抗
性 機 転 がtransportsystemの
か な り異 な っ て お り,ま
正
DKB,GMに
よ っ てFosfomycin(FOM)の
れ て い る が,そ
田
検査部
aeruginosa15株,E.
coli
床
成
績
対 象 症 例 お よび 投 与 方 法
対 象 患 者 は 当 院 内 科 入 院 の15名
で,そ の 内 訳 は 気 管
10株,Klebsiella5株,Proteus10株,Serratia3株,
支 炎3名,気
Enterococcus5株
お よ び 腎孟 腎 炎1名 で あ っ て,い ず れ も入 院時 の 最 初 の
2)
を試 験 に 供 した 。
試験薬剤
FOMの
抗 生 物 質 と してFOMを
各 種 の 菌 に対 す る抗 菌 力 を 他 の 薬 剤 と比 較 す
について
同時 に 抗 菌 試 験 を行 な った 。
成
感 染 症1名,
投 与 した 。 対 象15名
の内にい
績
治 療 対 象者,病 巣 分 離菌FOM投
治 療 効 果,お
実験方法
炎6名,肺
わ ゆ る重 症 感 染 症 は 含 まれ て い な い。
2)
る た め,FosfomycinCalcium(FOM-Ca),Fosfomycin
Natrium(FOM-Na),DKB,GM,KMの5種
3)
管 支 拡 張 症4名,肺
与 量,症
状 の 変 化,
よび 副 作 用 に つ い て はTable4に
一括表
示 した 。
上 記 菌 株 に 対 す る 各 薬 剤 のMICは
日本 化 学 療 法 学 会
標 準 法 に 準 じ寒 天 平 板 稀 釈 法 に よ り測 定 し た 。 増 菌 に は
ト リ プ ト ソ イ ブ イ ヨ ソ(栄 研)を
使 用 し,こ
れ に 約20時
臨 床 効 果 の 判定 は,臨 床 症 状 の 消失 と と もに 病 巣 分 離
菌 の 消 失 を も って 著 効(++)と
っ て有 効(+)と
し,臨 床 症 状 の 改 善 を も
し,臨 床 症 状 が 変 ら な い で,病 巣 分 離
間培 養 した もの を接 種 菌 液 と して用 い 各 薬 剤 を 含 む 寒 天
菌 の 消 失 しな い もの,ま た は前 者 だ け の もの を 無 効(-)
平 板 培 地 に1白
と した 。
金 耳(内
径 約1mm)量
を2cmの
長 さ
そ の 結果,気
に 画 線 塗 抹 し た 。 感 受 性 測 定 用 培 地 と し てDKB,GM,
KMはHeartInfusionAgar(栄
Agar(Difco)pH6.8を
μg/mlか
4)
研),FOMはNutrieut
用 い,薬
ら0.2μg/m1ま
成
効,腎 孟 腎 炎1例 は 著 効 で計15例
有 効 で あ った 。
管 支 拡 張 症4
感 染 症1例 は 無
中11例73.3%に
次 に 主 な 症 例 を 示 す と,
aureus15株
とPseudonmas
に つ い て のMIC測
ほ と ん ど 同 じ抗 菌 力 を
し め した 。 す な わ ちStaphylococcus
大 部 分 が6.25μg/mlか
aeru-
定 の 結 果 はTable1の
よ うに,FOM-CaとFOM-Naは
MICは
剤 の 濃 度 段 階 は100
希 釈 法 に よ った 。
績
Staphylococous
ginosa15株
で の2倍
管 支 炎 例 は と もに 有 効,気
例 中2例 著 効,肺 炎6例 中5例 著 効,肺
aureusこ
ら25μ9/mlの
対 しての
間 に あ り,
症 例1(CaseNo.11)0.M.29才
♀(Table5)
臨 床 診 断:急 性 肺 炎
主 訴:発 熱,呼 吸 困難
既 往 歴:特
にな し
現 病 歴:昭 和49年5月9日
頃 か ら咳,疾 が あ り微 熱 が
CHEMOTHERAPY
1734
Table 1.
Table 2.
In vitro antibacterial
In vitro antibacterial
activity
activity
MAY1975
of FOM (Agar plate dilution
of fosfomycin
method)
(Method by MIC subcommitee
of FOM-Ca)
VOL.
23
NO.
Table 3.
CHEMOTHERAPY
5
In vitro antibacterial
activity
Table
あ っ た が5月11日
体 温39℃
を 超 え,呼
4.
of fosfomycin
Clinical
trials
吸 困難 を 生 じた
の で 同 日 入 院 した 。
入 院 時 現 症:体
中 等 度,爪
温39.2℃,血
格,栄
養
with
部X線
フイ ル ムで
診 断 しFOM2,000mgを1日4回
血 球 数19,200で
失 し,5日
与 後3日
急 性肺炎 と
に 分 け て投 与 した。
目に は解 熱 し,呼
吸 困 難 も消
目に は 自覚 症 状 も全 く改 善 され 血 沈 も1時 間
血 数 は7,600と
な っ た。10日 後 の 胸 部X
線 フ ィル ム で は 陰 影 は か な り淡 くな り,15日 後 の 胸 部X
線 フ ィル ム(Fig.2)で
左 下 肺 野 に 広 く陰 影 を 認 め た(Fig.1)。
of FOM-Na)
fosfomyci
値22mm,白
床 に軽 度 の チ ア ノー ゼ を 認 め た。
間 値561nm,白
(Method by MIC subcommitee
経 過:FOM投
圧128/80,体
胸 部 で は 左 下 方 に ラ音 を 聴 取 し,胸
血 沈1時
1735
退 院 した。
は 陰 影 が ほ とん ど消失 した の で
CHEMOTHERAPY
1736
Table
5.
A case
of
pneumonia.
29
MAY1975
Table
F.
6.
A case
heart
Fig.
1.
A case
症 例2(Case
pneumonia
No.12)M.
臨 床 診 断:急
主 訴:喘
of
C.
性 肺 炎,心
鳴,呼
before
treatment
713(Table6)
血圧
現 病 歴:昭
和49年5月4日
あ っ た の で 近 医 を 受 診,5月6日
か ら38℃
の 発 熱 あ り咳 が
肺 炎 と診 断 され 加 療 を
喘 鳴 も か な り著 明 に な っ た の で,5月8日
温38,2Qc,血
入 院 した。
圧162/118,体
唇 に チ ア ノ ー ゼ を 認 め,下
吸 困 難,
格 中 等,
腿 に は軽 度 の浮
胸 部 で は 両 側 下 方 に ラ音 を 聴 取 し,胸
部X線
フ ィル ム
pneumonia
after
treatment
両 肺 下 部 に 広 く 陰 影 が み ら れ,と
くに 右 は 下
陰 影 も増 大
を1日4回
間 値46mm,白
血 球 数12,400を
に分 け て経 口 投 与 した。
経 過:FOM投
し,咳
数
不 全 合 併 と 診 断 し,FOM2,000mg
与 後3日
目か ら 熱 は 下 降 し4日
し た が 同 時 に 喘 鳴 は 消 失 し,呼
吸 困 難,胸
も 疾 も 減 少 の 傾 向 を 示 し,胸
週 後 に は か な り陰 影 も 消 槌 し,白
さ れ,16日
し,3週
腫 が あ っ た。
of
with
71 M.
肺 野 上 部 外 側 に や や 濃 厚 な 陰 影 が み ら れ,心
して い る 。 血 沈1時
熱
受 け て い た が 解 熱 せ ず 咳 の 発 作 も 強 く な り,呼
栄 養 良 好,口
A case
え た の で 急 性 肺 炎,心
既 往 歴;高
入 院 時 現 症:体
2.
(Fig.3)で
不全
吸 困 難,発
Fig.
of pneumonia
insufficiency
後 のX-線
部X線
フ ィ ル ム も1
血 球 数 も9,700と
フ ィ ル ム(Fig.4)で
後 に 退 院 した 。
で 解熱
部 ラ音 は 著 減
改善
は陰 影 も消失
>OL,
23
Fig.
NO.
3.
CHEMOTHERAPY
5
A case
of
insufficiency
副
pneumonia
before
作
with
Fig.
heart
痢 腹 痛,嘔
た(Table7)。1例(CaseNo.6)にFOM投与3日
気,
カ は,は
と
副 作 用 で あ った
with
heart
treatment
した。
先 づ 抗 菌 力 に つ い て い えば,FOMの
pHの
7.
Liver
and
間 よ り早 い時 期 に 判 定 す る と
強 い抗 菌 力 を示 す と いわ れ て い る6)。 しか し なが らpH
間 判 定 で はそ のMICはDKB,GMに
て弱 く,KMと
め
そ の 作用 機 序 と耐 性 獲 得 の機 点 が極 め て 特 徴
抗 菌 力 測定 に は
影 響 が 大 き く作 用 し,酸 化 側 で 抗 菌 力 が 強 く,ま
6.8,24時
Table
after
は 既 存 の薬 剤 と抗 菌 力 を 比 較 し,併 せ て臨 床 効 果 を検 討
た 時 間 的 影 響 と して24時
の 症 例 はindomethacin
っ き りしな か った 。
ま
FOMは
目か
してFOMの
of pneumonia
的 な 新 しい抗 生 物 質 で あ る とい わ れ てい る。 そ こ で我 々
用
我 々 の 症 例 で は こ の よ うな 副 作 用 を 認 め た も の は な か っ
と の 併 用 で あ っ た た め,果
A case
insufficiency
上 昇 が あ る と いわ れ て い る 。
ら 全 身 に 発 疹 が み ら れ た が,こ
4.
treatment
従 来 の 報 告 に よ る と 副 作 用 と し て は,下
頭 重 感 の 外,GOT,GPTの
1737
似 た よ うな成 績 で あ り,ま
とFOM-NaのMICに
kidney
function
較べ
たFOM-Ca
つ い て い え ば,両 者 の差 は ほ と
tests
CHEMOTHERAPY
1738
ん ど認 め られ な い が,強 い て い え ばFOM-Caの
MAY1975
ほ うが
et
また 臨 床 効 果 に つ い て は14例
の 尿 路 感 染 症 の 合 計15例
の 呼 吸 器 感 染 症 と1例
を対 象 と した が,こ
中10例,71.4%に
吸
FOLTZ
L
&
H.
in
Chemoth.
E. L.
5)
献
-1969,
Pharmacodyna-
Agents
&
316•`321
WALLICK,
man.
-1969,
intravenous
Antimicr.
et
al.
phosphonomycin
in
HOLLOWAY
: Pharmaco-
after
Antimicr.
Agents
oral
admi&
Che-
322--326
WILLIAM
J.
clinical
trials
Preliminary
mycin.
:
after
man.
H.
of
nistration
れ な か った 。
WALLICK
in
-1969,
EOLTZ,
moth.
EXPERIMENTAL
Evaluation
&
phosphonomycin
dynamics
くに と りあ げ るべ き も の は み ら
CLINICAL
E.
of
Chemoth.
効 果 が み られ,
1) HENDLIN,D. B. M. FROST, et al. : Phosphonomycin. III. Evaluation in vitro. Antimicr.
Agents & Chemoth. -1969, 297--302
2) MILLERA. KATHRINE, BATTINAM. FROST,
V.
Agents
administration
4)
文
Phosphonomycin.
Antimicr.
mics
尿 路 感 染 の1例 に は 著 明 な効 果 が み られ た。
副 作 用 に つ い ては,と
:
310--315
3)
の中には
い わ ゆ る重 症 感 染 症 は含 ま れ て い な い 。 そ の結 果,呼
器 感 染 症 で は14例
al.
mice.
や や 優 れ て い る よ うな成 績 で あ った 。
Antimicr.
&
Agents
JANET
with
&
Chemoth.
CLARK
phosphono-1969,
327•`331
6)
Fosfomycin検
STUDIES
討 会,昭49年2月22日
ON FOSFOMYCIN
KAORUOOYAMA,TERUHIKOHIBI, KANJI FUKUDAand MICHIKOKANEMI
Department of Internal Medicine, Toyama Prefectural Central Hospital
KOUSAKUSHIMIZUand MASAKIMATSUDA
Central Laboratory, Toyama Prefectural Central Hospital
Fosfomycin, a new antibiotic, was reported to be quite characteristic in the basic points of its
action mechanism and resistance acquisition. The present authors have compared the antibacterial
activity of fosfomycin with that of other available antibiotics, and examined the clinical effectof the
drug as well.
As for the antibacterial activity of fosfomycin, MIC was judged for 24 hours at pH 6.8. The result
revealed that MIC of the drug is weaker than that of DKB and GM, while similar to that of KM.
As to the clinical effect of fosfomycin, the antibiotic was administered clinically in 14 cases of respiratory infections and 1 case of urinary tract infection, totalling 15 cases, without including there a
so-called severe infection.
As a result, effectiveness was obtained in 10 cases out of 14 cases (71. 4
%) of respiratory infection, while remarkable effect was observed in 1 case of urinary tract infection.
No noteworthy side effect was noticed with fosfomycin.
: