泌尿器科領域におけるCeftezoleの 基礎的臨床的 - 日本化学療法学会

CHEMOTHERAPY
1112
APR.
泌 尿 器 科 領 域 に お け るCeftezoleの
近
藤
捷
嘉 ・高
本
鎌 田 日 出 男 ・新
1976
基 礎 的 臨床 的 検 討
均 ・平
野
島
夫
端
学
岡山大学 医学部泌尿器科教 室
(主任:新 島端夫教授)
泌 尿 器 科 領 域 に お け る感 染 症 に 対 し,Ceftezole(C
TZ)を
使 用 した の で,若
Pr.mirabilis18株
干 の基 礎 的 検 討 成 績 と あ わせ
て そ の 臨 床 成 績 を報 告 す る。
縁 化 合 物 の1つ
合成 され た 新 しいCephalosporin系
と して
抗 生 物 質 で あ る。
よ うな 構造 式 を 有 し,分 子 式C13H11
N8O4S3Na,分
子 量462。47,白
性 粉 末 で あ る。 ま た,本
色 な い し微 黄 白色 の結 晶
剤 は 水 に 溶 けや す くエ タ ノー
ル,エ ー テ ルな ど の 有 機 溶 媒 に は難 溶 で あ るD。
抗
菌
尿 路 感 染 症 か ら分 離,保
グ ラム 陽 性 球 菌6株
がMIC6.25μg/ml
以 下 に 分 布 して お り,と もに 強 い 抗 菌 力 を 示 し た 。 しか
し,Pr.vulgaris,Pseudomonasで
CTZはCefazolin(CEZ)類
CTZはFig.1の
で は,12株
μ9/m1以
全 てMICO.39μg/ml以
CTZの
抗 菌 力 を 以 前 に 検 討 したCEZ2)の
較 す る と(Table2),E.coliで
3.12μg/mlに
抗 菌 力 を 検 討 した 。
測 定 は 日本 化 学 療 法 学 会 標 準 法 に 準 じて 行 な い,接 種 菌
量 は108個
で行 な った 。 成 績 はTable1に
coli30株
で は17株
がMIC3.12μg/ml以
はpeakは
μg/ml以
は18株
下 に あ り,CTZはCEZに
もほ ぼ
と もに
中6株 が3.12
比 して や や 強 い
もCTZ
り強 い 抗 菌 力 を 示 して い る。
示す。 瓦
下 に あ り,
と もに
はpeakは
あ るが,CTZで
抗 菌 力 を 示 して い る 。 ま たStaph.aureusで
はCEZよ
そ れ と比
あ り,そ の 分 布 はCTZ,CEZと
6.25μg/mlに
存 した グ ラム陰 性 桿 菌67株,
は
下 で あ った 。
同 様 で あ っ た 。Pr.mirabilisで
力
に対 す るCTZの
は いず れ も100
上 の 耐 性 を 示 した 。Staph.aureus6株
血 中 濃 度,尿
中排泄
健 康 成 人1名 にCTZ500mg,1回
筋 注 し,注
射後
6時 間 ま で の血 中 濃 度 の 推 移 を検 討 した 。血 中濃 度 の 測
Fig.
1
Structure
of CTZ
定 はB.subtilis
ATCC
6633を
検 定 菌 と した 薄 層 カ ッ
プ法 で 行 な い,標 準 曲線 はphosphate
buffer(pH7.0)
に よ り作 成 した 。 血 中濃 度 のpeakは
注 射後30分
り,14.6μ9/mlの
濃 度 を 示 した 。 以 後,速 や か に 血 中
か ら消 失 し,注 射 後4時 間 で0.7μg/ml,6時
Table
1
Susceptibility
of organisms
isolated
from
urinary
にあ
tract
infections
to CTZ
間目には
VOL.
24
NO.
CHEMOTHERAPY
4
血 中 か ら検 出 しえ な か った(Fig.2)。
排 泄 が,速 や か で あ る こ とを 示 して い る 。注 射 後6時 間
血 中 濃 度 を 測 定 した 同一 人 に お い て,注 射 後6時
間ま
での尿中排泄を検討 した。尿中濃度の測定は血中濃度 と
同 様 に 行 な い,検 体 の希 釈 は 同一 のPhosphate
に よ り行 な った 。注 射後4時
1370μg/mlと
間 まで は760μg/mlか
Table
収 率 は56.5%で
2
Susceptibility
to
CTZ
and
で の総 排 泄 量 は372.0mg,回
臨
ら
あ り,尿 中 へ の
of organisms
昭 和49年5月
床
成
か ら昭 和50年2月
科 入 院 患 者17名 を 対 象 にCTZを
腎 炎8名,膀
isolated
from
胱 炎8名,前
Serum
あ った
urinary
績
の 間 に 岡 山大 学 泌 尿 器
使 用 した 。疾 患 は 腎 孟
立 腺 炎1名 で,い ず れ も,な
tract
CEZ
Fig. 2
収 率 は74.4%で
(Table3,Fig.3)。
buffer
高 い 濃 度 を 示 して い る。 排 泄 量 は 注 射後
2時 間 で282.7mg,回
1113
levels of CTZ
CTZ 500 mg i.m.
Cup plate method
B. subtilis ATCC 6633
Phosphate buffer (pH 7.0)
infections
CHEMOTHERAPY
1114
APR.
1976
ん らか の基 礎 疾 患 を 有 す る慢 性 複 雑 性 感 染 症 で あ る 。 患
い は 投 与 後 に 発 疹 な どの ア レル ギ ー症 状,注 射 部 痛,嘔
者 の年 令 は23才
気,嘔 吐,そ
名,女5名
か ら81才,平
均59.6才
で あ る。CTZの
で あ り,男12
投 与 は1日29を2回
に分
の 他 の 胃腸 症 状 を 認 め た例 は ない 。 また,
本 剤 投 与 前 後 に 血 液 像,BUN,GOT,GPTな
け て 静注 あ るい は 筋 注 に よ り行 な っ た 。 投 与 期 間 は4日
い て検 討 を 行 な った(Table6)。
か ら8日,平
常 を 示 した例 は な い が,WBCが
均6.6日
で,い ず れ も連 続 投 与 で あ る 。
臨 床 効 果 の 判 定 は 以下 の基 準 に 従 が っ て行 な っ た 。
例(症
著 効:1)臨
著 変 は 認 め な い 。GOT,GPTで
床 症 状 の 消 失,2)尿
の 消 失,3)尿
所 見,と
くに 白 血 球
培 養 成 績 の陰 転 化,以
上3条 件
例14,16)は
どに っ
血 液 像 で は と くに 異
投 与 後 増 加 して い る2
い ず れ も無 効 例 で あ る。BUNで
剤 投 与 後GOT,GPTと
は1例(症
も
例2)に
本
も 上 昇 して い る。 この 症 例 は
術 後1週 間 目 の使 用 で あ り,ま た 本 剤 投 与 前 か らGOT
を 満 した もの 。
有 効:上 記3条 件 の うち2つ 以 上 に改 善 を 認 め た も の 。
48単
無 効:著
て お り,本 剤 の影 響 と断 定 で きな い 。 また,投 与 終 了 後
効,有 効 以 外 の もの 。
上 述 の 判 定 基 準 に 従 が うと慢 性 腎孟 腎 炎8例 で は 著 効
な く,有 効4例,無
著 効2例,有
効4例
効3例,無
で あ る。 慢 性 膀 胱 炎8例 で は
効3例 で,急 性 前 立 腺 炎1例 は
有 効 で あ った 。全 症 例17例
効7例
中 著 効2例,有
今 回CTZを
5日 目に はGOT300単
はGOT37単
投 与 した17例
位,GPT890単
位,GPT145単
に お い て は,投
与中 ある
目に
とな り,ほ ぼ 投 与
考
按
抗 菌 力 は 他 のCephalosporin系
ほ ぼ 同 様 で あ る。CEZと
用
位,10日
位
前 値 に 復 して い る 。そ の他 重 篤 な 副 作 用 は 認 め て い な い 。
CTZの
作
位 とす でに 軽 度 な が ら高値 を 示 し
効8例,無
で あ る(Table4,5)。
副
位,GPT71単
抗生物質 と
比 較 し て み る と,E.colt,
Pr.mirabilis,Staph.aureusで
はCTZの
ほ うが や
や 良 い 成 績 か あ る い は ほ ぼ 同 程 度 の抗 菌 力 で あ る 。両 剤
Fig.
3
Urinary
recovery
of
の 感 受 性 相 関 につ い て は,こ れ ら の検 討 を 同時 に 行 な っ
CTZ
てい な い の で 判 定 で きな い 。血 中濃 度,尿
中排泄の成績
をみ る と,本 剤 は 筋 注 に よ り速 や か に 血 中 へ 移 行 し,ま
た 尿 中へ の 排 泄 も良 好 で あ る 。 これ らの 成 績 か ら み て
CTZは
尿 路 感 染 症 に 対 す る 薬剤 と して 有 用 と考 え られ
る。
しか し,入 院 患 者 の尿 路 感 染 症 の 場 合,多
くの 症 例 に
お い て,な ん らか の基 礎 疾 患 を 有 す るか,ま た 尿 路 カ テ
ー テル を 有 す る慢 性 複 雑 性 感 染 症 で あ る 。 さ らに これ ら
の 感 染 症 はProteus属,Pseudomonasな
ど を起 炎 菌
と して お り,菌 種 に よ って は 本 剤 の適 応 外 と な り,CTZ
の 使 用 し うる症 例 は 限 定 され る。
今 回 の検 討 症例 で,本 剤 投 与 前 尿 中 か ら分 離 しえ た菌
は22株
で,そ
の うちEnt.cloacaeが
もっ と も多 く7株,
つ い でPseudomonas4株,Proteus属,Strept
f4emlis,Stop翫epide7midi3各
Klebsiella各
々3株,瓦6oli,
々1株 で あ る(Table7)。
Staph.epidermidisに
この うち,
つ い ては い ず れ も菌数 が101/ml
で あ り,尿 路 感 染 症 の 起 炎 菌 と して は 問題 が あ る と考 え
Table
3
Urinary
recovery
of CTZ
500 mg
i.m.
るが,本 剤 投 与 前 に 使 用 され た薬 剤 の 影 響 もあ り,こ こ
で は い ち お う分 離 菌 と し て記 載 した 。 これ ら分 離 菌 別 の
臨 床効 果 を み る と,Emt.cloacae7株
効4株,無
効2株 で あ る 。Proteus属3株
中 著 効1株,有
で は 有 効2
株,無 効1株,Stmpt.faecalis3株
で は 有 効2株,
無 効1株 で あ った 。Pseudomonasは
い ず れ も無 効 で
あった。
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CHEMOTHERAPY
1117
CHEMOTHERAPY
1118
Table
CTZの
7
投 与 量 は 全 て1日29を2回
Isolated
organisms
に分け て 投与 し
た が,投 与 方 法 は 静 注 した もの10例,筋
APR.
注 した もの7
and
注 例7例 中 著 効,有
2.
効
results
たが,Pr.vulgaris,Pseudomonasで
μg/ml以
例 で あ る 。投 与 方 法 別 の臨 床 効 果 を み る と,静 注 例10
例 中 著 効 あ る い は 有 効 は6例,筋
clinical
は い ず れ も100
上 の耐 性 で あ った 。
健 康 成 人 にCTZ500mg1回,筋
濃 度,尿
30分 に あ り,14.6μg/mlで
てい る。
中 に 認 め な か った 。 注 射 後6時
臨 床 効 果 は17例
中10例
において著効 あるい
74.4%で
は 有 効 で あ っ た が,対 象 と した 症 例 が い ず れ も,な ん ら か
3.
注 しそ の 血 中
中 排 泄 を 検 討 した 。血 中濃 度 のpeakは
は4例 で あ り,い ず れ の 方 法 で もほ ぼ 同 程 度 の効 果 を 得
CTZの
1976
間までの尿中 回 収 率 は
あった。
泌 尿 器 科 領 域 の 感 染 症17例
に 分 離 菌種 を 問 わ ず
の基 礎 疾 患 を 有 す る慢 性 複 雑 性 感 染 症 で あ る こ と,ま た
CTZを
尿 路 カ テ ー テル を有 す る患 者 を 含 む こ と(17例
効4例 で あ っ た 。慢 性 膀 胱 炎8例 で は 著 効2例,有
な ど比 較 的 難 治 性 の 症 例 が 多 い こ と,さ
菌 種 と関 係 な く使 用 した の で,CTZに
Pseudomonasな
中7例)
らに 今 回 は 分 離
例,無
は 耐 性 で あ る
ど,む し ろin vitroの
抗菌力上では
4.
注射後
あ り,注 射 後6時 間 で は 血
投 与 した 。 慢 性 腎 孟 腎 炎8例
効3例,急
では 有 効4例,無
効3
性 前 立 腺 炎 の1例 は 有 効 であ った 。
副 作 用 と して,発 疹 な どの ア レル ギ ー症 状,注 射
部 痛,嘔 吐 な どの 胃 腸 症 状 な ど認 め た 例 は な い 。臨 床 検
適 応 外 の 感 染 例 が 多 く含 まれ て い る こ とな どか ら考 え て,
査 で は1例 に おい て,本
この程 度 の 成 績 は 当然 と思 わ れ る。 い っ ぼ う,分 離 菌 の
した 例 が み られ た が,こ の 症 例 は 投 与 前 す で に や や 高 値
CEZに
を 示 して い た こ と,術 後1週 間 目 の使 用 で あ った こ と な
対 す るdisc感
受 性 を み る と(+)あ
る い は(〓)
を 示 した症 例 は い ず れ も著 効 も し くは 有 効 と な っ て お り,
本 剤 の 選 択 に 当 り充 分 な検 討 を 行 な え ば,有
結
1.
Pr.mirabilis,Staph.aureusに
文
1)
献
第23回 日本 化 学 療 法 学 会 総 会
新 薬 研 究 会 報 告(H)
Ceftezole,1975
籍
尿 路 感 染 症 か ら分 離 し た グ ラム 陰 性 桿 菌,グ
陽 性 球 菌 につ い て,CTZの
上昇
ど か ら,本 剤 の 影 響 とは 断 定 で きな い 。
効例は さら
に 増 え る もの と考 え る 。
剤 投 与 後GOT,GPTの
ラム
抗 菌 力 を検 討 した 。E.coli,
は強 い 抗 菌 力 を 示 し
2)
新 島 端 夫,荒 木 徹,近
るCefazolinの
744∼748,1970
藤 捷 嘉:泌 尿 器 科 領 域 に お け
使 用 経 験。Chemotherapy,18:
VOL.
24
NO.
CHEMOTHERAPY
4
CLINICAL
AND
CEFTEZOLE
1119
EXPERIMENTAL
IN UROLOGICAL
STUDIES
FIELDS
ON
KATSUYOSHI KONDO, HITOSHI TAKAMOTO, MANABU
HIRANO, HIDEO KAMATA and TADAO NIIJIMA
Department of Urology, Okayama University Medical School, Okayama
(Director:
1)
tract
Minimal
inhibitory
infections
by
concentration
2)
In
minutes
was
74.4%
3)
good
4)
of
one
case
i.m.
within
results
were
Side
effect
concentration
plate
with
All
normal
cases
obtained
(elavation
after
with
10
of
Pr.
of
(CTZ)
Most
vulgaris
function,
CTZ
injection
urinary
in
of
renal
of
ceftezole
method.
strains
administration
6 hours
of
dilution
6.25 ƒÊg/ml.
after
Seventeen
the
Prof. T. NIIJIMA)
and
the
blood
mg,
decreased
CTZ
500
mg.
infections
determined
of
E.
level
and
Pr.
were
reached
rapidly
were
on
coli
Pseudomonas
500
tract
was
strains
treated
73
resistant
to
the
CTZ
isolated
were
to
100
and
2.0
g
the
per
from
(14.6 ƒÊg/ml)
urinary
day,
and
GPT)
was
observed
in
1 of
17
cases
throughout
the
at
the
CTZ.
recovery
and
eases.
GOT
urinary
inhibited
pg/ml
maximum
thereafter,
with
strains
mirabilis
treatment.
excellent
at
30
rate
or