数理科学特論 B2 §5 grad , rot , div の関係 / ポテンシャル論 (1) スカラーを表す文字 (A, B, C, . . . ) とベクトルをあらわす文字 (A, B, C, . . . ) を必 ず使い分けること. また, スカラー倍 kA, 内積 A · B, 外積 A × B の記号も使い分け ること. 混同して使用した場合は不正解とする. 課題 次の問題を解き, 裏面の解答を見て答え合わせをし, 誤りがあれば訂正せよ. 問題 1. スカラー場 φ = 3x2 − yz に対して ∆φ を求めよ. 問題 2. 次の公式を, grad , rot , div を使わずに ∇ を用いて表せ. ただし, ベクトル 場 F , G = (Gx , Gy , Gz ) に対して (F · ∇)G = (F · ∇Gx , F · ∇Gy , F · ∇Gz ) と定義する. (1) div (A × B) = (rot A) · B − A · (rot B) (2) rot (rot A) = grad (div A) − ∆A (3) grad (A · B) = (A · ∇)B + (B · ∇)A + A × rot B + B × rot A (4) rot (A × B) = (∇ · B)A + (B · ∇)A − (∇ · A)B − (A · ∇)B 上記の 4 つの公式は任意のベクトル場 A, B に対して成立する. 問題 3. ベクトル場 U , F とスカラー場 ρ, φ が方程式 ∇ · F = 4πρ, F = −∇φ + ∇ × U をみたすとき, ∆φ = −4πρ を証明せよ. 問題 4. ベクトル場 A = (yz, zx, y 2 ) はスカラー・ポテンシャル φ を持つか. 持つ ならば φ を計算せよ. 問題 5. ベクトル場 A = (z 2 , y, 2xz) はスカラー・ポテンシャル φ を持つか. 持つ ならば φ を計算せよ. 追加課題 答案は添削して次回返却する1. 問題 6. 問題 2 の (2) の公式を証明せよ. 問題 7. c を正の定数, t の関数でもあるベクトル場 H(x, y, z, t), E(x, y, z, t) が ∇ × 1 ∂E 1 ∂H 1 ∂2H H= , ∇×E =− , ∇ · H = 0 を満たすとき, ∆H = 2 を示せ. c ∂t c ∂t c ∂t2 問題 8. 質問があれば具体的に述べよ. 1解答例の公開 (約 2 週間) → http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/c/math/noda/ ∂ 2φ ∂ 2φ ∂ 2φ + 2 + 2 =6 ∂x2 ∂y ∂z [ あるいは ∆φ = ∇2 φ = ∇·(∇φ) = ∇·(6x, −z, −y) = 解 1. ∆φ = ∂ ∂ ∂ (6x)+ ∂y (−z)+ ∂z (−y) ∂x = 6] 解 2. (1) ∇ · (A × B) = (∇ × A) · B − A · (∇ × B) (2) ∇ × (∇ × A) = ∇(∇ · A) − ∆A (3) ∇(A · B) = (A · ∇)B + (B · ∇)A + A × (∇ × B) + B × (∇ × A) (4) ∇ × (A × B) = (∇ · B)A + (B · ∇)A − (∇ · A)B − (A · ∇)B 解 3. 第 2 式の両辺の発散を計算すると, ∇ · F = −∇ · (∇φ) + ∇ · (∇ × U ) = −∇2 φ + 0 = −∆φ. よって第 1 式より ∆φ = −∇ · F = −4πρ. 解 4. rot A = ∇ × A = (2y − x, y, 0) ̸= (0, 0, 0) より, スカラーポテンシャルを持 たない. 解 5. rot A = ∇ × A = (0, 0, 0) よりスカラーポテンシャル φ をもつ. 公式により, ∫ x ∫ y ∫ z φ = − Ax (s, 0, 0)ds − Ay (x, t, 0)dt − Az (x, y, u)du 0 0 0 ∫ x ∫ y ∫ z = − 0ds − tdt − 2xudu 0 0 0 1 = − y 2 − xz 2 2 別解. 公式を使わずに, 次のように直接探すこともできる: ∂φ ∂φ ∂φ Ax = − , Ay = − , Az = − ∂x ∂y ∂z を満たす φ を見つければよい. ∂φ (1) = −Ax = −z 2 より両辺を x で積分すると, φ = −xz 2 + g(y, z) と書ける ∂x (ただし g(y, z) は任意関数). ∂φ ∂g ∂φ (2) この φ は = を満たし, ポテンシャルの条件から = −Ay = −y で ∂y ∂y ∂y ∂g 1 あるから = −y. 両辺を y で積分すると g(y, z) = − y 2 + h(z) と書ける ∂y 2 (ただし h(z) は任意関数). ∂g ∂φ = −x + = −2xz + h′ (z) であり, ポテンシャルの条件から (3) さらに ∂z ∂z ∂φ = −2xz であるので h′ (z) = 0, よって h(z) は定数関数. ∂z 1 以上より, h(z) = 0 とすれば φ = −xz 2 − y 2 . 2
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