神戸大学海事科学部 2014 年度後期 応用数学 4 講義ノート 9 ベクトル場の発散と回転 9.1 ベクトル場の流線 A = A(x, y, z) をベクトル場とし,ここでは A(x, y, z) ̸= 0 であるとする.曲線 r = r(s)(弧長パラメー タ表示)が A(r(s)) dr (s) = ds |A(r(s))| (9.1) を満たすとき,すなわち r の接線ベクトルが A と平行であるとき,r を A の流線という. r のパラメータが弧長パラメータでない場合(r = r(t))は,流線の方程式は式 (9.1) の代わりに dr (t) A(r(t)) dt = dr |A(r(t))| (t) dt となる. いま,微小な面分 S を考え,その面積を △S ,法単位ベクトルを n とする. A n △S このとき, A · n△S を,S を通る A の流量という.また A · n を流量密度という.A が流体の速度場のときには,A · n△S は単 位時間あたりに S を通り n 方向に流れる流体の質量を表す. 1 9.2 ベクトル場の発散 ベクトル場 A = A(x, y, z) = (Ax , Ay , Az ) に対し, div A = ∇ · A = ∂Ax ∂Ay ∂Az + + ∂x ∂y ∂z を A の発散という. 注意 9.1. ∇ · A と書く理由は ( ∇·A= ) ∂ ∂ ∂ ∂Ax ∂Ay ∂Az i+ j+ k · (Ax i + Ay j + Az k) = + + ∂x ∂y ∂z ∂x ∂y ∂z からきている. 発散の意味は次の通りである.いま,下図のように,点 P (x, y, z) を頂点とする微小直方体 C を考える. z y z + △z Ax (x + △x, y, z) Ax (x, y, z) P (x, y, z) x + △x x 左側の x 軸に垂直な面を通って C 内に流れ込む流量はおおよそ Ax (x, y, z)△y△z である.また右側の x 軸に垂直な面を通って C 内から流れ出す流量はおおよそ Ax (x + △x, y, z)△y△z 従って,合わせて . ∂Ax (x, y, z)△x△y△z Ax (x + △x, y, z)△y△z − Ax (x, y, z)△y△z = . ∂x が x 軸方向に関して C から流れ出る流量である.y 軸,z 軸方向についても同じなので,全体として C の外 部に流れ出す流量は ( ∂Ay ∂Az ∂Ax + + ∂x ∂y ∂z ) △x△y△z = div A△x△y△z となる.△x△y△z は C の体積なので,div A はその点における単位体積あたりのベクトル場 A の沸き出し 量を表す(div A < 0 のときは吸い込みがあることになる). 2 9.3 ベクトル場の回転 ベクトル場 A = A(x, y, z) = (Ax , Ay , Az ) に対し, ( rot A = ∂Az ∂Ay − ∂y ∂z ) ( i+ ∂Ax ∂Az − ∂z ∂x ) ( j+ ∂Ay ∂Ax − ∂x ∂y ) k を A の回転という∗ . 注意 9.2. rot A は ∇×A= i j k ∂ ∂x ∂ ∂y ∂ ∂z Ax Ay Az とも書ける. 回転の意味は次の通りである.先ほどと同様に,点 P (x, y, z) を頂点とする微小直方体を考える. z y z + △z P (x, y, z) x + △x x y 軸に対し右ねじの回転方向の,図の直方体に対する渦の強さは, Az (x, y, z)△z + Ax (x, y, z + △z)△x − Az (x + △x, y, z)△z − Ax (x, y, z)△x ( ) .= A (x, y, z)△z + A (x, y, z) + ∂Ax (x, y, z) △x . z x ∂z ( ) ∂Az − Az (x, y, z) + (x, y, z)△x △z − Ax (x, y, z)△x ∂x ( ) ∂Ax ∂Az = (x, y, z) − (x, y, z) △x△z ∂z ∂x = (rot A)y △x△z よって,(rot A)y は,その点における y 軸のまわりの単位面積あたりの渦の強さを表す.(rot A)y > 0 なら 右ねじの渦,< 0 なら反対向きの渦があることになる. また,ベクトル場 A に対し, A = rot p を満たすベクトル場 p が存在するとき,p を A のベクトルポテンシャルという. ∗ curl A とも書く. 3
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