Finite-amplitude crossflow vortices, secondary

日本海洋学会秋季大会 2006.09.28
潮流によって形成される海底境界層の
不安定とその混合効果 (III)
○坂本圭、秋友和典
(京都大学大学院・理学研究科)
1 はじめに(1) 背景
潮流海底境界層:回転系において潮流が形成する海底境界層
シアー不安定に伴う乱流は海水混合に寄与
特にコリオリ・パラメータfとM2潮振動数が近づく極域で重要
粘性係数ν一定(層流)の下での鉛直スケール:
南半球
潮流振動数:σ
時間ロスビー数:Rot = σ / f
極域では、Rot~1
→Htideの増大
→不安定による混合が海底からはるか上方まで及ぶと考えられている
(Furevik and Foldvik 1996, Pereira et al. 2002)
1 はじめに(2) これまでの成果
潮流の振動と地球の回転の効果が同程度となるRot~1の場合も含めて、両
者が存在する下での、境界層における乱流の振る舞いは明らかでない
そこで2006年度春季大会では、3次元数値モデルを用いて、乱流の速さスケー
ルqと長さスケールlのRotに対する依存性を調べた
結果:Rot~1におけるHtideの増大に対応して長さスケールlが増大
→混合強化、極海域での観測と一致
定性的な議論は行えたが、Htideを用いたスケーリングでは乱流に関する普遍
的な定式化ははっきりしなかった。
1 はじめに(3) 目的
これまでの研究から、乱流エクマン層では、次のouter scaleでスケーリングを行
うことで乱流が相似性を持つ (Coleman 1999)
時間:1/|f|
速さ:摩擦速度u* =(海底応力/密度)1/2
乱流境界層の厚さ:u*/|f|
これを参考に
時間:T=1/|f+σ| (回転と振動を考慮)
速さ:摩擦速度u*
乱流境界層の厚さ:δ=u*/|f+σ|
というスケーリングを導入すると、潮流海底境界層の乱流が相似性を持つとい
う結果が得られた
本報告の内容:
1.乱流の相似性(3節)
2.乱流混合(4節)
2 領域、支配方程式系
数値モデルは春季大会と同じ
モデル領域
Lx×Ly×Hの矩形海領域。
支配方程式系
回転系、密度一様、非圧縮、非静水圧、リジッド・リッド条件。
変数を基本潮流場(
、後述)と擾乱場( )に分ける。
運動方程式
連続の式
渦粘性係数
=1cm2/s (等方) 、標準密度
南半球を想定し < 0
変数のチルダは有次元量であることを示す
=1.027g/cm3
2 境界条件、初期条件、差分
境界条件
海面:リジッド・リッド、非粘着
海底:粘着条件
水平:周期条件
初期場:微小擾乱
積分期間:12潮流周期
実験領域とグリッド間隔: (Htideで無次元化した値)
Lx=Ly=64, H=256 ⊿x=⊿y=0.125 ⊿z=0.02-10 (160グリッド)
春季大会報告より領域を拡大
Htideと潮流振幅を用いて方程式を無次元化し実験を行うが、実験結果
にはouter scale (T=1/|f+σ|,u*,δ=u*/|f+σ|)でスケーリングした無次元量
(チルダなし)を示す。
e.g.
2 実験ケース、基本潮流場(層流解析解)
春季大会と同じ
時間ロスビー数Rot(慣性周期/潮流周期)に対する依存性に注目
潮流振幅は全て一定(8.53cm/s)
エクマン層
Ek
A
B
ケース:
Rot
0
0.5
0.95
Htide (m)
レイノルズ数
1.2
1000
1.2
1000
潮流構造に大きな違いはない
ケース:
Rot
C
1.05
D
2.0
厚さ (m)
レイノルズ数
5.4
4580
1.7
1410
5.1
4350
非回転系での振動流
ストークス層
St
∞
1.2
1000
3 結果 渦運動エネルギーEKEの時間発展
(領域平均)
準定常
解析に用いる
ケース:
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
3 各ケースの乱流場
Ek
A
B
C
D
St
z
実験終了時
wの鉛直断面分布
4
0
-4
0
0.7
outer scale
Rot
摩擦速度:u*
u*/Utide
時間スケール:T=1/|f+σ|
乱流境界層厚さ:δ=u*/|f+σ|
x
Ek A B
C
D St
0 0.5 0.95 1.05 2.0 ∞
4.6 3.8 3.3 3.2 3.5 3.0 ×10-1 (cm/s)
5.4
4.4
3.9
3.7
4.1
3.5 ×10-2
6.9 6.9 130.6 144.4 13.8 6.9 ×103 (s)
32 26 434 460 48 21
(m)
3 渦の速さスケールqと長さスケールl
(領域・時間平均)
l = 積分スケール
z
q=EKE1/2
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
q
z < 0.5: q,lとも各ケースでほぼ相似
z > 0.5: 各ケースでばらつき
q:St以外では各ケースで一定値に落ち着くが
その値はRot~1(B,C)では約5倍
l: Rot~1(B,C)では約1/5
→この相似形からのズレは慣性波の影響
l
積分スケール:
wの相関を鉛直積分した値
ただし相関が正の範囲のみで積分
3 慣性波 ケースC
渦運動エネルギー水平平均の、t-zダイアグラム
海面
z
EKE
海底
t
慣性波群速度での、エネルギーの上方への輸送と反射
・Rot~1では波長δの慣性波が盛んに上方へと伝播
・他のケース(St以外)では、慣性波の波長は大きくエネルギーは小さい
→上層のqとlに差
3 乱流の相似性
応力 (レイノルズ応力+モデルの粘性応力)
波は、砕波しない限り混合
に影響しない
ケース:
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
波を除いて乱流を見るため、
波の影響をほとんど反映し
ない応力の分布を調べる
z
応力:乱流エネルギーの供
給と関わる特に重要な統計
量
慣性波を除けば、乱流
は相似性を持つ
ストークス層(St)を除いて、
outer scaleで無次元化すれ
ば鉛直分布はほぼ重なる
平均流速も相似形
潮流方向
潮流に直交する方向
4 乱流混合:l×q
乱流理論:
乱流拡散の強さ ∝ l×q
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
波の影響によって、相似性がある
とは言い難い
z
l×q:オーダーとしては同程度
同じような分布だが、
しかし、砕波が起こらず波の影響
が無視できれば、引き起こされる
乱流混合も相似性を持つはず
→トレーサーによる混合効果の
見積もり
l×q
4 乱流混合:トレーサーによる見積もり
鉛直に線形な初期値を持つトレーサーの
時間発展を計算する
C:トレーサー濃度
z
→「見かけの鉛直拡散係数」κapを評価
する
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
St以外のケースでκap
もほぼ相似形
Rot~1で見られた波長δの強い慣性波
は、混合にとって重要でないという実
験結果
→現実の海洋における慣性波の砕波
に関してさらに調べる必要性
κap
4 乱流混合:有次元
有次元でのκap
有次元では
Rot~1(B,C):
δの増大に伴い
最大400-600cm2/s
海底から数百mに及ぶ
その他:
最大50cm2/s
海底から数十mまで
~
Ek, A, B,
C, D, St(点線)
5 まとめと課題
潮流海底境界層の乱流に関して、次のouter scaleでスケーリングすることで、
時間:1/|f+σ| 速さ:摩擦速度u* 長さ:δ=u*/|f+σ|
ストークス層を除いて、乱流が相似性を持つことが分かった。
しかし、慣性周期と潮流周期が近い場合、波長δの強い慣性波が現れ、
渦の速さスケールqと長さスケールlは相似形から離れる。
乱流が相似性を持っていることから、今後、慣性波の影響を除いたqとlが分か
れば、乱流拡散κを緯度と潮流振幅から定式化できるだろう。
κ(z) = c u*2/|f+σ| l(z) q(z) c:定数
実際、トレーサー実験から見積もられた見かけの拡散係数は相似形を持つ。
課題:
1.慣性波の励起と砕波の解明
2.乱流エクマン層では、相似形は103~106のレイノルズ数で成立(Coleman 1999)
潮流海底境界層でも高レイノルズ数実験によって確認する
3.成層の影響
4.観測との対応
粘性係数を一定とした場合の潮流海底境界層の解析解
振動数ωの潮流楕円 V(z,t)を反時計回り成分(振幅R+、初期位相φ+)と時計回り成
分 (R-、φ-)に分解する。
それぞれの回転成分に対する境界層の厚さHtide+,Htide-
Htide+
Htide-
ν,fは鉛直渦粘性係数、コリオリ・パラメータを示す。
f > 0 → 潮流楕円は時計回り → R-が支配的
f < 0 → 潮流楕円は反時計回り → R+が支配的
Prandle (1982)
議論:Rot~1における慣性波
群速度の見積もり
l:波長
粘性の時間スケール
波の到達距離
境界層では波長δの擾乱が発生
Rot~1 → 群速度大 → 波長δの波がエネルギーを維持したまま上層へ
その他 → 群速度小 → δより波長が大きい波、エネルギーは小さい