1 5 章の捕足 ○ 2 変数による 2 階の偏微分 講義では、 ∂ ∂ ∂V ∂2 Fx = − =− V ∂y ∂y ∂x ∂y∂x が等しいことを用いて、保存力 F では と ∂ ∂ ∂V ∂2 Fy = − =− V ∂x ∂x ∂y ∂x∂y ∂ ∂ Fx = Fy などが成り立つことを説明した。ここで ∂y ∂x ∂2 ∂2 V = V であることを、微分の定義に戻った計算で示しておく。(ただし、煩雑 ∂y∂x ∂x∂y さを避けるために lim や lim の記入は省略する。) は、 ∆x→0 ∆y→0 ∂ ∂V ∂ V (x, y+∆y, z) − V (x, y, z) ∂2V = = ∂x∂y ∂x ∂y ∂x ∆y ここで、 V (x, y+∆y, z) − V (x, y, z) の全体を x, y, z の関数であると考えると ∆y ∂ V (x, y+∆y, z) − V (x, y, z) ∂x ∆y = = V (x+∆x,y+∆y,z)−V (x+∆x,y,z) ∆y − V (x,y+∆y,z)−V (x,y,z) ∆y ∆x V (x+∆x, y+∆y, z) − V (x+∆x, y, z) − V (x, y+∆y, z) + V (x, y, z) ∆y∆x 同様に ∂ V (x +∆x, y, z) − V (x, y, z) V (x+∆x, y+∆y, z) − V (x, y+∆y, z) − V (x+∆x, y, z) + V (x, y, z) = ∂y ∆x ∆x∆y 従って両者は等しく、 ∂2V ∂2V = である。 ∂x∂y ∂y∂x ○ 上の関係式が成り立てば、F が保存力であることの証明 (以下は Advanced) 先ずは x–y 平面上の 2 次元で考えよう。力が位置の関数 F(r) = (Fx , Fy ) で与えられるとき、右図のように近接した 4 点 A、B 、C 、 D を通る径路を考えると、各径路での仕事量は ∆x D C y+∆y , y) ∆x A → B: Fx (x + 2 ∆y B → C: Fy (x + ∆x, y + ) ∆y y 2 B A FA=F(x,y) ∆x C → D: −Fx (x + , y + ∆y) ∆x x+∆x x 2 ∆y D → A: −Fy (x, y + ) ∆y 2 ] [ → D と D → A では積分方向が座標軸の と計算できる C 。ただし、せまい領域で考えているため、F 方向と逆になり、符号が反転することに注意。 2 は線分の中点での値とした1 。さらに、 ∂Fx ∆x ∂x 1 1 ∂Fx ∂Fx Fx (x + ∆x, y + ∆y) = Fx (x, y) + ∆x + ∆y 2 2 ∂x ∂y [ ] ∆x、∆y の高次 などであるので やはり 、 の項は無視している。 ( ) ( ) ∂Fy 1 ∂Fx 1 ∂Fy 2 2 A→B →C →D→A : Fx (x, y)∆x + ∆x + Fy (x, y)∆y + ∆x∆y + ∆y 2 ∂x ∂x 2 ∂y ( ) ( ) 1 ∂Fx ∂Fx 1 ∂Fy 2 2 − Fx (x, y)∆x + ∆x + ∆y∆x − Fy (x, y)∆y + ∆y 2 ∂x ∂y 2 ∂y ) ( ∂Fy ∂Fx − ∆x∆y (1) = ∂x ∂y Fx (x + ∆x, y) = Fx (x, y) + ∂Fy ∂Fx = であれば、この一周する径路での仕事量 ∂x ∂y の積分値が 0 となる。y–z 平面内の径路、z–x 平面内の径路について も同様である。任意の閉曲線に沿った線積分は微小な閉曲線に沿っ た線積分の和で書くことができるので (右図:微小な閉曲線に沿った 積分は隣同士が打ち消し合い、最外周部のみが最終的に寄与する)、 考えている領域内のどの点でもこの条件が成り立てば、F は保存力 H の条件 F(r) · dr = 0 を満たすことになる。 と計算でき2 、 ○ [参考] ベクトルの回転 上の (1) 式で、∆x∆y は径路 A → B → C → D → A で囲われる面積になっている。すなわ H ∂Fy ∂Fx − は、小さな閉径路に沿った周回積分 F · dr の値を、その閉径路で囲われる面 ち、 ∂x ∂y 積で割った値である。また、この閉径路あるいは微小面積と垂直な方向を閉径路の “方向” と z 軸と平行である [考える。上の例では閉径路を x–y 平面と平行に取っているので、その向きは ] 右ねじが進む方向にとる。従って、同じ閉曲線 。 を逆向きに辿る閉径路は逆方向と考える。 ∂Fy ∂Fx − に相当する値を 3 成分とするベクトル ∂x ∂y ( ) ( ) ( ) [ ] ∂Fy ∂Fx ∂Fz ∂Fy ∂Fx ∂Fz i, j, k は x, , y, z 方 rot F = − i+ − j+ − k 向の単位ベクトル。 ∂y ∂z ∂z ∂x ∂x ∂y このような性質を持つ を考える。“rot” はローテーションと読み、日本語では “回転” という。また、先に定義した ∇= ∂ ∂ ∂ i+ j+ k ∂x ∂y ∂z を用いて rot F = ∇ × F 1 たとえば、代表値として線分の両端での F の値の平均値をとっても結果は同じになる (試みてみよ)。線分間で の F の値の変化は、より高い次数の差に過ぎないということである。 1 2 講義の板書で の因子を付けたのは間違いでした。訂正します。 2 3 とも書かれる3 。 高校での物理で、直線電流の周りには電流を取り巻く形の磁場が生じていることを学んだで あろう。実は、磁場 [ B があるとき、rot B]は電流のある点で有限の値となり、その方向も電流 z 軸方向に流れていれ の方向と一致する 電流が 。F と rot F との関係は、磁場と電流との関係に相 ば、上の例と同じ状況である。 当しているということである。 講義ではベクトルの外積 (ベクトル積) を後送りにしたので取り扱わなかったが、rot F は ∇ と F との外積の 形になっている。 3
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