1 四次元のナブラ 島田義弘 (クロメル) 2014.9.25 どうも、クロメルこと、島田義弘です。今回は4次元のナブラ演算子を求 めます。 2 最初の手探り 最初のアプローチは微分形式の理論からでした。なんらかのポテンシャル ϕ を考えます。次元は4次元で軸の名前は w, x, y, z とします。微分形式で はご存じのとおり、外微分を用いますね。 d1 ϕ = ∂ϕ ∂ϕ ∂ϕ ∂ϕ dw + dx + dy + dz ∂w ∂x ∂y ∂z (1) と、これは、問題ないと思います。ここで d1 の 1 は、いくつかナブ ラには種類があるので、それを識別するための記号です。ほら、三次元 で言えば、grad,rot,div の三種類があったでしょう?しかし、そこから 先は大変です。微分演算は出来るのですが、符号が分かりません。 f = f0 dw + f1 dx + f2 dy + f3 dz とすると、 ∂ f0 ∂ f0 ∂ f0 dw ∧ dx ± dw ∧ dy ± dw ∧ dz ∂x ∂y ∂z ∂ f1 ∂ f1 ∂ f1 ± dw ∧ dx ± dx ∧ dy ± dx ∧ dz ∂w ∂y ∂z ∂ f2 ∂ f2 ∂ f2 dw ∧ dy ± dx ∧ dy ± dy ∧ dz ± ∂w ∂x ∂z ∂ f3 ∂ f3 ∂ f3 ± dw ∧ dz ± dx ∧ dz ± dy ∧ dz ∂w ∂x ∂y d2 f = ± 1 ( ) ∂ f0 ∂ f1 = ± ± dw ∧ dx ∂x ∂w ( ) ∂ f0 ∂ f2 ± dw ∧ dy ± ∂y ∂w ( ) ∂ f0 ∂ f3 ± ± dw ∧ dz ∂z ∂w ( ) ∂ f1 ∂ f2 ± ± dx ∧ dy ∂y ∂x ( ) ∂ f1 ∂ f3 ± ± dx ∧ dz ∂z ∂x ) ( ∂ f2 ∂ f3 ± dy ∧ dz ± ∂z ∂y (2) こ れ ら の 符 号 を 決 め る の は 大 変 で す 。わ か る こ と は 、d2 (d1 ϕ) = 0、 d3 (d2 f ) = 0、d4 (d3 f ) = 0 となること、そして、扱われる基底ベクトル の数、つまり成分数は d1 , d2 , d3 , d4 それぞれに対して次のように考えられま す。スカラーを入力値とする d1 の戻り値は dw, dx, dy, dz の内の一つが基底 となり、組み合わせ論での n Ci を用いて、4 C0 →4 C1 つまり、1 → 4 の対応 になります。同様に、d2 では、入力の 4 成分に対し、出力の基底は dw ∧ dx 等ですから、4 C1 →4 C2 つまり、4 → 6 の対応になります。つまり、これ らは同様に d1 は 1(成分)→ 4(成分)、d2 は 4 → 6、d3 は 6 → 4、d4 は 4 → 1 と言う成分の対応になります。 3 方向転換 ここで、行き詰ってしまいましたので、別の角度からアプローチをしてみ ました。電磁気学の4次元に関する演算です。 a · b = −c2 a0 b0 + a1 b1 + a2 b2 + a3 b3 2 (3) でしたね。c2 は光速の二乗です。後のつじつま合わせの為なので、あま り気にしないでください。ここで、第 0 成分だけ特別扱いなので、虚時間 (ict, x, y, z) = (x0 , x1 , x2 , x3 ) = (w, x, y, z) を導入して、平等な4次元のナブラ の一般的な形を探ることにします。とりあえずは、第ゼロ成分を ic を掛け るものとして考えます。 すると、内積は a = (ica0 , a1 , a2 , a3 )、b = (icb0 , b1 , b2 , b3 ) とすれば、x · y = ∑3 i=0 xi yi と置けば、演算はどの座標に対しても対等で、a · b = −c2 a0 b0 + a1 b1 + a2 b2 + a3 b3 は正しい値になっています。虚時間と言うことで、偏微分 ∂t は ∂w = となるでしょう。 ic 4 結論と応用 いろいろ試行錯誤をしてみると、面白いことが分かりました。電磁気には 種々の関係式がありますが、結論から言うと (d1 , d2 , d3 , d4 ) にふさわしいもの は、それぞれ、Grad,Rot,Med,Div と名付けると、 (Med は中間”Medium” から取りました。最初の文字が大文字なのは、4次元だからです。)ここで、 α はスカラー、alpha, β は3成分ベクトルです。 ( ) ∂w α Gradα = (1 → 4) gradα ( ) ( ) α gradα − ∂w β Rot = (4 → 6) β −rotβ ( ) ( ) α divβ Med = (6 → 4) β rotα − ∂w β ( ) α Div = ∂w α + divβ (4 → 1) β (4) (5) (6) (7) と な り ま す 。こ れ ら は 、連 続 し た 演 算 、つ ま り RotGradα = 0, 3 α α MedRot = 0, DivMed = 0 を満たすことが容易に分かります。これ β β を逆に電磁気学に当てはめて、どんな式がこれらで表せるのか見て行きま しょう。虚時間を導入すると、登場人物は、 ゲージ自由度 χ (8) 4元ポテンシャル − ϕ ic A (9) 電場磁束密度6元ベクトルの E ic −B (10) 磁場電束密度6元ベクトルの ( icD H ) (11) 4元電流密度 ( icρ j ) (12) と、なります。ポテンシャル ϕ の符号に注意してください。まずは、ゲー ジの式、 4 ϕ′ = ϕ − ∂t χ A′ = A + gradχ (13) − ϕ − ∂t χ − ϕ ic + Gradχ = ic A A + gradχ (14) これは、 となります。この式の Rot を取ってやれば、電場磁束密度6元ベクト ルは、 E = −gradϕ − ∂t A (15) B = rotA (16) の関係があります。ゲージの項は RotGrad χ = 0 ですから、つまり、 E − ϕ ic = Rot ic + RotGradχ −B A grad −ϕ − ∂t A = ic ic −rotA (17) が言えます。更に進みましょう。次に、電場磁束密度6元ベクトルの Med を取ってみましょう。これは、4元ポテンシャルの Rot から作られた式です ので、Med を取るとゼロベクトルになります。 E ( div(−B) ) = 0 ∂ E Med ic = t − (−B) rot −B ic ic 5 (18) これはマクスウェル方程式の内の二式を書き換えたものに他なりません。 つまり、 divB = 0 (19) rotE + ∂t B = 0 (20) です。次に、磁場電束密度6元ベクトルの Med を取ってみましょう。 div(icD) H Med = ∂t icD rotH − (icD) ic ) ( ) ( icdivD icρ = = rotH − ∂t D j ( ) (21) つまり、これは次のマクスウェル方程式の残りの二式です。 divD = ρ (22) rotH − ∂t D = j (23) そして、次に4元電流密度の Div を取ってみます。これも、6元ポテン icρ シャルの Med を取った値が ですから、Div を取ると、ゼロになり j ます。 ( ) ∂t icρ Div = (icρ) + divj j ic = ∂t ρ + divj = 0 (24) これは連続の方程式ですね。 4元ポテンシャルの Div を取ったものはローレンツゲージであります。 6 ( ) −ϕ ∂t −ϕ Div ic = + divA ic ic A 1 = 2 ∂t ϕ + divA = 0 c (25) また、これらのナブラの使い道はこれだけではありません。二つを組み合 わせることを考えると、DivGrad(1 → 4 → 1) や、RotMed(6 → 4 → 6) が あり得ます。 前者は言わずと知れたダランベルシアンです。後者と組み合わせて興味深 い関係が成立します。よって、式 (25) のローレンツゲージの下では、4次元 ベクトルの全ての成分に個々に作用する、4 → 4 の演算子 DivGrad4 とし て、(ラプラシアン △A みたいな使い方です。 ) ( ) −ϕ −ϕ icρ □ ic = DivGrad4 ic = −µ j A A (26) と表せます。つまり、 ρ ε □A = −µj □ϕ = − (27) のことです。さらには、同様に6次元ベクトルにダランベルシアンを適用 できます。 表現の対象となる式は、 ρ + µ∂t j ε □H = −rotj □E = grad 7 (28) (29) です。これを4次元のナブラで表すと、 ( ) E ∂t □ = (−µ) grad(icρ) − j ic ic □(−B) = (−µ) · (−rotj) (30) (31) つまり、 ( ) E icρ (32) □ ic = (−µ)Rot j −B icρ 更には、この式の右辺から、式 (21) で を消去することにより、6元 j ベクトル間の美しい関係が成立します。 ( ) E H DivGrad6 ic = −µRotMed icD −B 以上で、報告を終わります。 8 (33)
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