数理科学特論B2 §6 grad,rot,div の関係とポテンシャル

§6 grad, rot, div の関係とポテンシャル
数理科学特論 B2
6.1. 場の微分のまとめ. ナブラ: ∇ = (∂x , ∂y , ∂z )
勾配・回転・発散
• スカラー場 φ 7→ ベクトル場 grad φ
grad φ = ∇φ =[
]
• ベクトル場 A 7→ ベクトル場 rot A
rot A = ∇ × A =[
]
• ベクトル場 A 7→ スカラー場 div A
grad A = ∇ · A =[
]
図形的意味
勾配 grad φ: 方向微分係数が最大となる向き, 大きさはその最大値
回転 rot A: 各点での A の回転の軸の向き (右ネジ進む向き), 回転の速さ
発散 div A: 各点での体積膨張率
図形的な意味がある
=⇒
成分表示と独立に定義可能
=⇒
座標変換で成分表示は変化する
積の公式
• ∇(φψ) =[
]
• ∇ × (φA) =[
]
• ∇ · (φA) =[
]
6.2. grad, rot, div の関係式. 2 階微分の関係式
任意のスカラー場 φ とベクトル場 A について次が成り立つ.
(1) rot grad φ =[
]
(2) div rot A =[
]
1
2
Proof.
(1) grad φ =
rot grad φ =
(2) rot A =
div rot A =
□
ラプラシアン
スカラー場 φ に対し, スカラー場
∆φ =[
]
を定める. この演算子 ∆ を [
ベクトル場 A = (Ax , Ay , Az ) に対しては, 次で定める.
∆A =[
] とよぶ.
]
∆ を ∇2 で表すこともある.
注. スカラー場 φ に対しては, ∆φ = ∇ φ = ∇ · (∇φ) = div grad φ が成り立つ.
2
例題 6.1. φ = 3x3 y − xy 3 + xyz 2
3
例題 6.2. φ =
1
1
=√
r
x2 + y 2 + z 2
例題 6.3. A = (x2 , x2 + y 2 , x2 + y 2 + z 2 )
6.3. ポテンシャル. grad, rot, div をある種の “微分”と思うならば, その逆の “積分”のようなものを考
えるのは自然である. しかし, 1 変数関数のように単純ではない.
スカラーポテンシャル
ベクトル場 A に対して, A = − grad φ (= −∇φ) をみたすスカラー場 φ が存在するとき,
これを [
] とよぶ.
ポアンカレの補題 (1)
注. A = − grad φ と, 負の符号をつけるのは単に慣習上の理由による. (A = grad φ で定義する文献
もある.)
3 次元空間で定義されたベクトル場 A に対して,
A にスカラー・ポテンシャル φ が存在 ⇐⇒ rot A = 0
注. 微分と積分の関係において, 次のような公式を証明中でつかう (証明は各自考えよ).
∫
∫ x
∫ b
d b
d
∂f
f (s, t)dt =
(s, t)dt,
f (t)dt = f (x)
ds a
dx a
a ∂s
Proof. (=⇒) A = − grad φ をみたすスカラー場 φ が存在すると仮定する.
rot A =
(⇐=) A = (Ax , Ay , Az ) とおくと
rot A =[
] = (0,
0, 0)
よって, [
], ∂z Ax = ∂xAz , ∂xAy = ∂y Ax が成立する. ここでスカ
ラー場 φ(x, y, z) を次の式で定義する:
∫ x
∫ y
∫ z
φ(x, y, z) = −
Ax (s, 0, 0)ds −
Ay (x, t, 0)dt −
Az (x, y, u)du
0
0
0
4
□
例題 6.4. r = (x, y, z)
ベクトルポテンシャル
ベクトル場 A に対して, A = rot B (= ∇ × B) をみたすベクトル場 B が存在するとき,
これを [
] とよぶ.
ポアンカレの補題 (2)
3 次元空間で定義されたベクトル場 A に対して,
A にベクトル・ポテンシャル B が存在 ⇐⇒ div A = 0
(∫
∫ z
∫ x
z
B=
Ay (x, y, t) dt, −
Ax (x, y, t) dt +
Az (s, y, 0) ds,
0
0
0
)
0
とすればよい.